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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 寂しがりやのカリンandママの店


カリンは寂しがりやで、他の猫が可愛がられていると
すぐに飛んで行き、自分も甘える。
トウとよく似ているが、カリンのほうが
ふっくらとしていて女の子らしい。
でも、いつもカメラを向けるとすぐに口を開けるのは
何故だろう・・・

1 (続ママの店)

夢の中での私の身分は大学生だ。

大通りに出て、デパ−トと反対側に行くと駅がある。
そこから電車に乗って花ヶ丘公園と言う駅で下車、
大きなスクランブル交差点を渡ったところに
私の通っている大学がある。
正面入り口を入ると広い石造りの階段があり、
上ると各教室に続く通路になっている。
通路の真ん中に大時計があって何故か文字盤が
グニャリと抽象的に歪んでいる。
学生達はその時計の側に行くと、
まるでビデオの早回しのように超スピ−ドで
各教室に吸い込まれて行くのだ。

私の所属している学部は何なんだろう・・・

教科書は大きな外国の絵本だ。
でも、先生の話なんかほとんど聞いていなくて、
おもしろい絵がいっぱい載っている
教科書ばかりを見てしまう。
だから、たまにあるテストのとき大変なことになるのだ。
山ほどあるテスト用紙を前に、
冷や汗ビッショリの悪夢・・・
しかし、まあそんなことはめったになく、
私なりに学校生活を楽しんでいる。

緑艶やかな芝生の中に、
色とりどりに香る美しい洋花が
たくさん植えられているキャンパスを
歩きまわるのもひとつの楽しみだ。
でも、かと言って決して静かな世界でもない。
時々空から、
髪に大きなピンクのリボンをつけた女の子が
落ちてくることがある。
落ちてもフンワリとした芝生の上だから、
絶対怪我することはないのだが、
メソメソと泣く女の子を取り囲んで、
ワイワイガヤガヤ大騒ぎをしている。

ハレルヤ
2006.02.28. (00:19) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 湯たんぽ、まだ?


台所で湯たんぽを作っていたら、ナナが来た。
熱湯を入れるから危ないよと言うと、
キョトンとした顔をする。
今日は雨だったせいか、随分暖かい。湯たんぽも
もうすぐいらなくなるんだな・・・
ママの店5

(続ママの店)

そういえば、
この頃ママの店に行っていない。
今夜あたり行ってみようかなと思う。
夢の中の世界はとにかく美しい。
まず、町全体の色が現実と違う。
空の色も現実ではありえないような濃いブル−で、
建物の色もグリ−ン、ホワイト、
イエロ−、ピンク、エトセトラ・・・
実にファンタジックな世界なのだ。
ママの付き添いで
大通りのつき当たりにある
デパ−トによく行くが、
そのデパ−トの色はグリ−ン。
大通りには買い物に来た人達の
車がいっぱい停まっている。
その車の色もまたすごい。
ショッキングピンクの車の窓から、
パ−プルカラ−のプ−ドルが顔を出す。
ポ−ンという大きな音に驚いて見上げると、
デパ−トの屋上から、ものすごい数の
風船が飛んでいく。それはまるで、
大空にマ−ブルチョコレ−トを
バラ撒いたような騒ぎだ。
そんな世界に一度行ったら、
もう現実の世界になんて戻りたくなくなる。
しかしそこに、
とどまり続けると言う訳には
いかないのだ。
だって、私は
そことは別の世界の
人間なのだから。
2006.02.27. (00:28) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 カスガとシマジロ−


シマジロ−はオムツをつけている。
オムツをつけていてもトイレでちゃんと出来たら
お尻をなでて褒めてあげる。
「シマジロ−お尻 タカタカ−」
そうするとシマジロ−は、誇らしげに
上げれるだけ高くお尻を上げる。
本当に可愛いものだといつも思う。
人間の子供も、猫も同じだ。
今我が家では猫がたくさんいる。
昔一匹しか飼っていなかった頃、
これほど可愛いと思わなかったのは
何故だろう。
普通は数が多いと、愛情も薄くなるのではと
思いがちだが、そんなことは絶対ない。
むしろ逆だ。たくさんの猫を飼うということは
精神的にも肉体的にも、また金銭的にも大変だ。
でも、苦労すればするほど
猫達が可愛くてたまらなくなるのだ。
2006.02.26. (00:14) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 休業日


ママの店5

ママの店をハレルヤ上にUPした。ついでに画像などを入れて
アレンジを試みた。
やはり文字だけでなくイメ−ジ画像などを加えると、
とても感じがよくなる。
さすがに今日はママの店はお休み。
やることがいっぱいあって、チトしんどい。
いつもコタツの上にパソコンを置いて
作業しているのだが、
絶対に猫が膝に乗ってくる。
パソコンをやりだすと
どうしても時間が長くなる。
膝の猫が重くてまるで石責めの拷問だ。
続きを読む
2006.02.25. (00:19) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 前回のつづき


ママの店5

(ママの店 前回のつづき)

少年は
今ママの店で静かに眠っている。
どんな事情があったにしろ、
人の命を奪った罪は重い。
悲しみと憎しみの念が、少年の魂を
食い尽くしてしまわぬように、
ママは少年の魂を封印したのだ。
憎むべきは鬼畜のような両親。
少年に愛する者を奪われた人達は、
その怒りを、今まだ生きている親の方に
ぶつければよいのだ。

そんなことを考えながら海に来た。

今日の海は何て美しいんだろう・・・
まるで翡翠が溶けているような色をしている。

海はママの心だと私は思う。
ママが怒ったり 泣いたりすると、
海が黒く荒れる。

今目の前にひろがる海はおだやかで美しい。

これからママの店に行くつもりだが
きっと、とびっきりの笑顔で私を
迎えてくれるだろう。

でも・・・ひょっとしたらまた、

ママは例のトランプを出してきて
ねえ、ババヌキやりましょうよ・・・なんて。

この前は等活地獄だっけ、今度は火焔地獄かな。

ガスバ−ナ−で焼かれる自分を想像してしまう。

いやだ いやだ・・・嫌な予感がしてきた。

今日は行くのをやめようかな・・・

そんなことを考えながら歩いていると、

ママの店についてしまった。
続きを読む
2006.02.24. (00:18) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 前回のつづき
笑うナナ

(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5 6 7 8 9

「じゃあ、あなたを封印するけど、
 その前に何かしてほしいことない?
 食べたいものでもいいのよ。
 ここには何でもあるからね」
ママの言葉に少年は恥ずかしそうに
モジモジしだした。
「うん?」
ママが顔を近づけて聞こうとする。
「ド−ナツが食べたいです。あの・・・もし
 出来れば手作りのものを」
少年は、幼い頃母が作ってくれた
ド−ナツを食べたいと言う。
メリケン粉を水で練り、油で揚げて
砂糖をまぶしただけのド−ナツで、
後にも先にもそれ一回こっきりだったが、
彼にとって母の作ってくれた
唯一の美味しいものだった。

どんなに母に甘えたかったろう、
どんなに父に遊んでもらいたかったろう。

普通の子供なら、親の愛情を一身に受けて
育つものなのに、この子に与えられたものは
冷酷な虐待だけだった。

ママはド−ナツを作りに行った。
少年は穏やかな顔をして静かに待っている。
私は何か話しかけようかと思ったが、止めた。
かける言葉が見つからなかったというのもあるが、
もうそっとしておいてやりたかったのだ。

中田先生が私に耳打ちしてきた。
「さっきママが言っていた封印って何だろう」
そういえばそんなことを言っていた気がする。
「壷みたいなものに入れて
 御札を貼っつけるんじゃないですか」
我ながら乏しい発想だと思ったが、
そんなことくらいしか思いつかない。
「君に聞いたのが間違いだったね。
 あ、聞かなかったことにして」
「えぇ−?そんなに変ですか、
 壷に悪霊封印って書いた御札
 貼ってあるのを見たことないですか?
 封印といったら、やっぱ壷ですよ」
「悪霊だなんて・・・いや、本当にもういいよ」
先生は溜息をついて離れて行った。

ママが砂糖をいっぱいまぶした
ド−ナツを持ってきた。
それを見た少年の顔がパッと輝く。
「お母さんのド−ナツだ・・・」
少年は涙をポロポロこぼしながら、
ド−ナツをほうばっている。
それを見ているママと中田先生の目にも
涙が光っている。
「ぼうず、よかったな」
私は思わずそう話かけていた。

念願のド−ナツも食べ終わり、
いよいよママが言っていた封印の時が来た。

「ちっとも怖くなんかないからね、
 これからは私があなたを守ってあげる。
 あなたの魂が許される時まで、
 ゆっくりお休みなさい・・・」

何をするんだろうかと興味しんしんの
私と中田先生が見守る中で、
ママはまた呪文を唱え始めた。
黒いレ−スの袖をひるがえし、
少年の頭から足先に向かって
両手を一気に振り下ろすと
少年の姿は掻き消えて、床の上に一枚の
写真が残った。
写真には少年が
幸せそうな笑みを浮かべて写っている。
ママはその写真を大事そうに拾い、
胸に抱いてつぶやいた。
「あなたが本当に許されて、
 きれいな魂になったら、
 今度こそ幸せな子供に
 生まれ変わりなさい」

ママは少年の写真を額に入れて、
カウンタ−の後ろの壁に掛けた。

ハレルヤ
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2006.02.23. (00:18) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 前回のつづき


(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5 6 7 8

私はママの店に戻っていた。
ママも中田先生も沈鬱な顔をしている。
二人とも私と同じ映像を見ていたらしい。

「信じられん・・・
 こんな酷いことがあっていいのだろうか」
先生の声が微かに震えているのがわかる。
「この子は悪くないよ。悪いのはあの親だ」
 私は怒りを込めて言い放った。

「確かにこの子の親は人間じゃない。
 悪い因子を持ったまま
 何度も生まれ変わって来ているのは
 この子じゃないわ。
 親の方よ。
 でも、だからと言って
 この子が許されることにはならないわ。
 何の落ち度もない
 大勢の人を死なせた罪は重いの」
少年を見るママの目が厳しい。

「わかっています」

か細い声で少年が言う。
「僕がやったことは絶対に許されません。
 僕は一人で死ぬことも出来なかった。
 おまけに馬鹿でノロマで、
 いくら殴っても直らないから、
 父や母に嫌われていました。
 僕は小さな動物も殺したんです。
 最低な人間です。
 僕なんか
 生まれてこなければ良かった」
しんと静まり返った店の中に、
少年の嗚咽が低く聞こえてくる。
ママは少年の側に行き、
今にも折れそうな細い体を抱いた。
「あなたはもう、死んでるの」
「えっ?」少年がママの顔を見る。
「あなたお風呂場で、
 お父さんに頭を殴られたこと覚えている?
 シャワ−のノズルで何度も。
 直接の死因はそれ。
 あなたは警察の取り調べ室で倒れたのよ。
 背中の火傷も酷いし、体も弱っていた。
 ろくなものを食べていなかったのね。
 警察病院の医師があなたの体を調べて
 驚いているわ。
 それから、お父さんは死んでないからね。
 気絶していただけよ。お母さんに救急車を
 呼んでもらって病院にはこばれたわ」
 
「よかった・・・」少年の顔がほころんだ。
あんなに酷い仕打ちを受けながら、
この子はまだ
親のことを気にかけているのだ。

ハレルヤ
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2006.02.22. (00:07) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 前回のつづき



(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5 6 7

少年は実の親からの虐待で、
精神も肉体もボロボロに病んでいた。
早く死んで楽になりたかった。
しかし、何度死のうとしても失敗する。
殴られるたび、蹴られるたび、
その傷が致命傷になるように祈ったが、
不幸なことにその願いも叶えられなかった。
少年にとって、死は憧れであり、
生きるということは苦しみだった。
だから、あの日可愛がっていた鶏を
絞め殺した。
鶏は少年の分身、死んだのは鶏ではなく、
彼自身だったのだ。
自分は死ねない。
だから、何かにその思いを転化して、
転化したものを殺すことで救われようとしたのだ。

やがて少年は不良グル−プに入り、
おきまりの転落コ−スを行くことになる。
彼を理解してくれるのは、親や学校から
見放された不良達だけだった。

その日少年は一人で街中をぶらついていた。
髪型が恥ずかしく、仲間の所へ行けなかったのだ。
「おまえを散髪屋にやる金なんかない」
そう言いながら母親が彼の髪を切った。
それは自分達がしている虐待の痕を
人に見られたくなかったからだ。
ボサボサの髪に、栄養不良の青白い顔。
父親に蹴られた脇腹が痛み出し、少年は
どこかの店先でうずくまってしまった。
すぐに店から誰かが出てきて、
追い払おうとしたが、
彼は立ち上がることが出来なかった。
そして警察に通報されたのだが、
親に連絡されると半殺しのめに遭う。
親だけは呼ばないでと懇願したがムダだった。
未成年の場合は、保護者に連絡をする決まりらしい。
迎えに来たのは父親で、
少年を連れて帰って行った。
家のドアは地獄の入り口、
少年は裸にされて風呂場に正座させられた。
百度に近い熱湯シャワ−を背中にあびて、
悲鳴をあげながら意識が無くなるのを待った。
しかし、度重なる折檻に神経が麻痺していて、
意識はなかなか無くならない。
どこまでも続く苦しみに、少年の脳が破壊された。
獣のように叫びながら父親に襲いかかり、
渾身の力を込めてその首を絞める。
苦し紛れに父親がシャワ−を振り回し、
それが当たり少年の頭は血だらけになったが、
それでも少年は手を緩めなかった。

横たわったまま動かなくなった父親の目が、
カッと見開いて少年を睨みつけている。

許さん、酷い目にあわせてやる。

少年には父親がそう言っているように思えた。

大変なことをしてしまった。

少年は服を着て表に飛び出した。
殺してしまった、父親を殺してしまった。
自分も死んで罪を償わなくてはならない。
でも自分は死ねない。
そういうときにはどうすればよいのか、
少年は、コンビニの前に停まっていた
トラックを盗み、
買い物客で賑わう商店街に突っ込んでいった。

重罪を犯した自分の分身を殺すために。

ハレルヤ
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2006.02.21. (00:28) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ママの店 前回のつづき


(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5 6
中田先生はママに引き寄せられて
この店に来たと言うが、
多分それは当っている。
私自身もきっとそうだからだ。

「許せない!」
ママがいきなり叫びだした。
先生と私がビックリしてママの顔を見る。
「どうしたのさ、何が許せないの?」と私。
ママは私に顔を近寄せて来る。
眉間のたて皺がものすごく深い。
私は思わず壁にへばりついた。
「どうしたんですか、何かこの青年が
 やらかしましたか?」
先生が私を指さしている。
冗談はやめてくれ、私は何もしていない。
「違うのよ、あんたじゃないわ。
 あの殺人トラックの犯人のことよ。
 ここへ呼び出したいの」
それを聞くなり、私と先生は
とんでもない、止めなさいと口をそろえた。
「ママ何を言い出すのさ、
 そんなヤツここに呼んだら
 大変なことになるよ。
 きっとママでも相手に出来ない怖い男だよ。
 自分でもさっき言ってたじゃない、
 悪い因子を持って
 何度も生まれ変わってきているって」
私は必死でママを止めたが、ママの形相が
止めてもムダだと言っている。
「ママさん、おやめなさい・・・」
中田先生の言葉を最後まで聞かず、
ママはフロア−の真ん中に仁王立ちになった。
広げた両手でゆっくりと円を描きながら
低い声で何やら呪文のようなものを唱えている。

やがてカウンタ−の中央下あたりに、
もやもやとした黒い煙のようなものが現れ、
だんだんと人の形になってくる。

ママは殺人鬼を召喚した。

しかし、それは
殺人鬼と呼ぶにはあまりにも幼く、
顔にまだあどけなさが残る少年だった。
いきなり知らない場所に現れたからか、
不安気に辺りを見回している。
色白で肩幅が狭く痩せていて、
神経質そうだ。
とてもあんな重罪を犯すようなヤツには
思えないのだが、
ここは念の為に一発かましておこう。
「おい、お前!何でここに呼ばれたか
 わかってるな、お前をこれから地獄に落とす」
私は立てた親指を下に向けた。
少年はブルブルと体を震わせ、
泣きそうな声でヤメテクダサイと言った。
「おいおい・・・それは驚かせすぎだ」
中田先生が私を止める。
「何を言うんですか、こいつは平気で人を
 轢き殺したんですよ。
 おとなしそうに見えているが、
 実は人間の皮をかぶった悪魔だ
 騙されちゃいけない。
 ねえ、ママそうでしょ」
私はママを見た。でもママはまだ目を閉じて何やら
ブツブツつぶやいている。
「ママ?」と声をかけたとき、
私はいきなり瞬間移動をしてしまった。

どこかの部屋の中にいる。

近くで子供の泣く声がしている。
それはとても哀しく、絶望の響きを持っていた。
私は部屋を出て、声のする方向に進んだ。
廊下突き当たりの部屋の前に立つ。
この中だ、子供はここにいる。
「苦しいよ・・・ごめんなさい・・・ 」
何度も繰り返しながら泣く声が弱々しくなってきた。
これはいけないと思い襖を開けると、
欄間に掛けられたロ−プの先に
二つか三つくらいのまだ小さい男の子が
逆さ吊りにされていた。
「おいっ、何をしている!早くおろすんだ」
私は子供に駆け寄って
体をささえてやろうと抱きついたが、
手に触れる感触はまるでなく、
むなしく素通りするばかりだ。
「あんた、もうそのへんでやめたら。
 死んだら困るし」
母親らしき女が亭主に言う。
「このクソガキ、今度ションベン垂れやがったら
 殺すぞ」
私は怒りで、頭の中にある
すべての血管が膨れ上がるのがわかった。
「このヤロウ!お前ら、それでも親か」
しかし、彼らには私の声も聞こえないし、
姿も見えていないようだ。

どうやらこれは過去の映像らしい・・・

男は足首に巻いてあるロ−プをほどき、
子供を床に投げ下ろした。
子供はもう意識がないのか、ピクリとも
動かない。
そして鬼畜の両親は卑猥な冗談を言いあい、
笑いながら部屋を出て行った。

場面が変わる。

小学校だ・・・
少年が一人ポツンと本を読んでいる。
他の子供達は楽しそうに話をしているのに、
少年の周りには誰もいない。
机の上にあった鉛筆が、転がり落ちた。
少年がそれを拾おうとして身をかがめた時
首筋から肩のあたりに、
紫色の丸いあざが見えた。
それは殴られたあとに違いない。
虐待がまだ続いているのだ。

また場面が変わる。

校庭にある鶏小屋だ。
少年が中に入って鶏に餌をやっている。
この子には鶏しか友達がないのだ。
いつも餌をやっているからか、
鶏はとてもなついているようだ。
次の瞬間信じられないことが起こった。
餌をついばんでいる鶏の首を少年が絞めたのだ。
ふいを衝かれた鶏に逃げるすべはなく、
暴れたのも一瞬だった。
「何をするんだ、お前の友達だろ・・・」
胸の痛みに耐えかねて、
私の目から涙があふれ出る。

ハレルヤ
2006.02.20. (10:35) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 最悪の朝
20060218223125.jpg

私は毎朝アクセス解析を見て、
昨日はどれくらいの人が私のHPやブログに
どんな経路で見に来てくれているかを調べている。
いつも大抵、猫とか小説関係で検索して来てくれているが、
昨日シッポの無いフクのことを書いた為、虐待に関する事項で
検索して私のブログを見に来ている方が多かった。
検索記事の見出しの文を読んだだけで、
そのショックが寝起きの頭を直撃した。
私は我が家の猫達を愛している。我が子と同じだ。
虐待をする人間が許せない。
そんなヤツと同じ空気を吸っているだけでも耐え難い。
○チャンネルで猫を虐待した男の写真が晒されていたが、
人権的配慮なのか、すぐに削除されていた。
そんなヤツの人権など紙切れより薄いと思う。
「猫が可愛いのはよくわかった。そんなに熱くなるな」
などと言う人は
「子供が可愛いのはよくわかった。殺されたくらいで
 熱くなるな」
そう言えるのだろうか。
人も動物もみんな同じ命がある。
どちらが重くてどちらが軽いなどありはしないのだ。
命を奪ったヤツに厳罰を与えたい。
続きを読む
2006.02.19. (00:51) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 シッポの無い孤独
フク

フクは人間といるときが一番幸せそうに見える。
どの猫とも合わないのだ。
何年か前、息子のチャ−と大喧嘩して、
チャ−は頚動脈が切れて死にかけた。
親子なのに殺し合いをするなんて
信じられない。
チャ−達が生まれたとき、親子で仲良く
バスケットの中で眠っていたことを思い出す。
猫はシッポの立派さで優劣が決まると
何かの本で読んだことがあるが、
フクはシッポが無いから
仲間はずれになったのだろうか。

そうだったらとても哀しい。


(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5

「えっ・・・どうして消したの?」

「あの人達自分が死んだことを知らないのよ。
 だから出ていってもらったの。
 ここで地縛霊にでもなられたら困るでしょ」
振り返ったママは、とても疲れているみたいだった。
そう言われればその通り、自分が死んだことを知らない霊が
特定の場所から離れられなくなることがある。
大抵は死んだ場所に居つくのだが、あの人達はなんで
ここに来たんだろう。
私は素直に疑問を口にした。
「ねえママ、あの人達なんでここに来たんだろう。
 事故現場でウロウロしているんだったらわかるけど」
ママは、困った顔をして首を傾げた。

「それはですね・・・」

耳もとでいきなり声がした。
ギョッとして飛びのくと、中田先生が隣に座っている。
「先生、いつからいらしたんですか!
 もう心臓が止まるかと思いましたよ」
「おう、ビックリさせてしまったね。すまんすまん」
中田先生は頭を掻きながらあやまった。
「いきなりお二人の話の中に割り込んで申し訳ないが、
 霊のことなら私のほうが詳しいんじゃないかと
 思いましてね」
アハハと笑う中田先生。
そりゃ詳しいだろう、先生も霊なんだから。
「で、どうなの?なんであの人達ここに来たのかな」
私はさっそく先生に質問した。
「つまり、地縛霊になる暇もなかったってこと」
「えっ?」
私が何か言うより先に先生が説明しだした。
「あの人達は一瞬にして死んでしまった。
 多分苦しむこともなかったのではないかな。
 もちろんトラックが次々と人を轢き殺していくのを見ているし、
 自分が轢かれる瞬間も記憶に残っていると思う。
 けれど、あんまり突然すぎると
 人間は自分にとって一番嫌な記憶だけ切り取ってしまうんだ。
 彼らが覚えているのは
 事故が起こる寸前にしていた行動だけだ。
 事故が起こる前と言ったら、買い物をしていたり
 誰かと立ち話をしていたりだろうな、
 そこで記憶がなくなるわけだから、便宜上
 どこかでお茶でも飲んでいたことにしよう・・・
 となったんじゃないかな。
 同じ場所で同じ条件で死んだ霊達の意識が合体して
 お茶をしにここに集まった・・・
 なんてえのは、どうだ?」
私には難しすぎてよくわからなかったが、
一番聞きたかったことを口にした。

「何でここでお茶にするわけ?」

先生は困った顔をして、
「私も正直そこのところがわからないんだ。
 私も死んでいる身だ。しかも飛び降り自殺した。
 本来なら病院の屋上か落下場所に
 縛りつけられるはずだろ?なんでここに来ているのかな」
そこで一呼吸おいた後、
「ひょっとしたらママに
 引き寄せられたかも知れないな・・・」とつぶやいた。
2006.02.18. (00:13) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 オムツをつけたチャ−
オムツをつけたチャ−

我が家ではチャ−とシマジロウが
オムツをはかされている。
この二匹はどうしてもオシッコの管理が悪い。
トイレ以外の場所に、隠れてひっかけるのだ。
いくら怒っても直らないから、オムツをつけた。
昔母が、尻癖の悪い猫はいくら躾けても
ダメだと言っていた。でも、
猫にとってオシッコは縄張りを決める臭い付けでもある。
我が家のようにたくさん猫がいれば、
自分の場所を脅かされないように、臭い付けを
したくなる気持ちもわかる。

しかし、オムツをつけているからといって
どこにでもお尻を向けていいってことはないんだゾ。
オイオイそんなところに・・・と言うような場所に
絶対するな!
もし、オムツをつけ忘れていたらどうするんだ。


(ママの店 前回のつづき)1 2 3 4 5

すべての客に注文の品を出し終わると、
ママがやっと私の側に来た。
「今日はまたすごいね」
「ほんと、もう大変よ」
ママはパタパタと手で顔を扇いでいる。
「こんなにお客が来るなんて
 めずらしいんじゃない?」
「そうね、こんなことめったにないわ」
「なんかあったのかな・・・」
「なんかって?」
「いや、その・・・ここに来る客はみんな
 死にかけているか、死んでるかの人ばかりでしょ。
 まあ、夢の中ってこともあるけど」
「この数だもの夢ってことは考えにくいわねえ、
 集団催眠なら・・・け・・ど・・・」

「ママ?」

ママが急に黙り込んだ。目が遠くを見ている。
こういう時は
へたに話かけないほうがいいのだ。
私はママが覚醒するのを待つことにした。
時間にすればほんの数分かもしれないが、
待っている間がとんでもなく長く感じる。

やっとママの意識が戻ったものの、
鳶色の目が暗く沈んでいる。
「あの人達、商店街で買い物しているときに
 突っ込んで来たトラックに轢かれたみたい」
「えっ、商店街にトラックが?」
ママは眉をひそめて頷いた。
「夕方の買い物客で賑わっている時に、
 十トンもある大きなトラックが突っ込んできたから、
 大惨事になった・・・
 可哀相にあんな小さな子供まで」
向こうの椅子で、三つくらいの女の子が
無心にチョコレ−トパフェを食べていて、
側にいる母親が、自分達が死んだことも知らず、
今晩のおかずを何にしようか子供に聞いている。
「トラックの運転手はどうなったの?
 なんでそんなことになったのさ」
「運転していたのは十七歳の少年よ。
 もちろん無免許。国道沿いのコンビニで
 運転手がタバコを買いに外へ出たときに
 トラックを盗んだの。
 無免許運転の常習犯でね、
 一度大型車を運転してみたかった
 なんて警察で話してる」
「ふう−ん・・・
 じゃあ、こんなことになって
 さぞかし後悔してるだろうねえ」
「それが後悔どころか、ゲラゲラ笑ってるの。
 気味悪いったらありゃしないわ」
ママは思い出したくも無いといったふうに
身震いをした。

「じゃあ、人が死んでも平気って言うことだ」
「そういうこと。
 人が死ぬのを見たかったらしい。
 大きなタイヤに人間が潰されるのを見て
 興奮したなんて話してる」
ママの唇が震えている。
「今子供達の間で、人やモンスタ−を殺す
 ゲ−ムが流行っているけど、そういうものが
 悪影響を及ぼしてるんじゃないかな」
「ところがねえ、
 テレビやゲ−ムの影響ばかりじゃないのよ。
 もともと残忍な因子を持って生まれてくる
 場合があるの。愛だとか思いやりだとか、
 人が本来持っている暖かい心が始めから無いの。
 何度死んで生まれ変わっても、同じ」 
「へえ・・・そうなんだ・・・
 そういう悪人は生まれて来なければ
 いいのに。そういう人間こそ地獄に
 ずっといればいいんだ。神様とか仏様が
 もしいるのなら、世の中の平和の為に
 悪い芽を是非摘み取って頂きたいもんだ」
私の言葉を聞いて、ママは寂しく首を横に振った。
「神も仏も人間が作り出したものだわ。
 だからもちろん天国も地獄もない。
 悪い因子を持っていようが、人は何度も
 生まれ変わって来るの」
「そうか、神も仏も無いのか・・・
 善よ来たれ、悪は去れって叫びたくなるねえ」
私も溜息が出た。

その時いきなりママが立ち上がり、
客席の方を向いて大きく右手で弧を描く。

一瞬にして客達の姿が消えた。 

       つづく
2006.02.17. (00:00) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 トウ
トウ

トウ(女)は今我が家の猫達の中で一番小さく、また
スマ−トです。姿はカリン(女)とよく似ているのですが、
性格はカリンよりク−ルです。
我が家の猫達は、お休み前の牛乳タイムがあって、
温めた牛乳を飲んで眠るのですが、トウは最近まで
牛乳が飲めませんでした。嫌いなのではなく、
食事だけでお腹がいっぱいになってしまい、
牛乳の入る余地がなかったのです。
それが今ではグビグビ飲んでいる・・・
トウもデブになる予感がします。


(ママの店 前回のつづき)

ママの店に行った。
今日は盛況で、ママはとても忙しそうだ。
いつもの席は・・・と思って左奥を見ると、
嬉しいことにそこだけ空いている。
そういえば、どんなに客が多くても、
私の席だけいつも空いているのだ。
ママは銀の盆にコ−ヒ−を載せて
客席の間を飛び回っている。
黒いレ−スの袖口がヒラヒラして、
まるでアゲハ蝶が飛んでいるみたいだ。
ふんわりとしたブロンドの髪と、鳶色の瞳。
細くしなやかな体に黒のロングドレスが良く似合う。
絶世の美女というわけでもないが、
その顔は、人を惹きつけて離さない。
ママの笑顔は心を癒してくれる・・・
時々度を越した悪戯をされることもあるが、
やっぱり私はママの店に来てしまうのだ。

「あら、いらっしゃい!今日は満員よ」
ママはとっても嬉しそう。

でも、なんかおかしい・・・

この店はカウンタ−に八人、
私が座っているソファ−は詰めて二人まで。
奥のソファ−を向かい合わせに座っても十人まで。
まあ、二十人がやっとの小さな店だ。
ところが、今五十人以上の客がいる。
それが全員、ゆったりと座席を確保している。
どうやって入れたのだろう・・・

あれ? そういえば部屋が広くなっている。
ソファ−の数も増えている。

どうやらママの店は、
客の数によって部屋の大きさが変るらしい。
2006.02.16. (00:29) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 シマジロウ
シマジロウ

シマジロウはオシツコがなかなか覚えられない。
ちゃんとトイレですることもあるのだが、
油断をしていると、とんでもない所にひっかける。
一度私がこっぴどく怒った時、
心身症になって通院した。
とてもナイ-ブなボウヤだ。
仕方がないのでオムツをはいてもらっている。
シマジロウの別名はタヌキだ。
シッポがタヌキのように太い。でも、それは
毛だけで、実際には細いシッポなんだけど。

昨日突然携帯が壊れ、急いで新しいものを買ったのだが、
慣れていない為ブログに画像が送れない。
やっと送ったもののサイズが大きすぎた。
せっかくシマジロウのオムツ写真をUPしたのに
顔だけになってしまった。
オムツを後で撮りなおそう。

(ママの店 前回のつづき)

ガタガタと家が鳴っている。
今日の天気は大荒れだ。
窓から巨大な蛇のようにうねり狂う海が見える。
外出はダメ。
家で本でも読もうかと思ったが、
さっき冷蔵庫を開けた時、足らないものが
いくつかあった。
今日は買い物に行かないといけない。
恐々外に出て見ると、
風は止んで、海も静かで波ひとつない。
空の青さが目に痛いほど。
だけど私は驚かない。
ここではこんなことはしょっ中なのだ。
家を出て右方向に歩いて十分、
ママの店に行くのと反対側にあるス-パ-に向かう。
ほんとに近くにあって助かるのだが、
このス-パ-はちょっと変だ。
まず店内が暗い。活気がない。音がない。
店の入り口に警備員が一人無表情で立っているのも、
なんとなく気味が悪い。
中に入ると
野菜類が両側の壁沿いに並べられており、
その向こうが魚と肉、卵の類。
そして一番奥に乾物屋がくっついている。
パンとかお菓子などは、この乾物屋で買う。
あまり広くない店なのに、ほしいと思った品物は
何でもそろうのだ。
そしてもし、サイフの中のお金が、
ただの紙切れになっていても困ることはない。
お金がなくても品物はもらえる。
あちらの世界では、お金で買い物をするが、
こちらの世界に来る人に、お金などもう必要ないからだ。
本当は買い物もしなくていいのだが、
あちらでの習慣は なかなか止められない。
こちらの世界に来る人は、
完全に死んだか、死線を彷徨っている人達、
あるいは私のように、夢という経路を
伝って紛れ込んで来る者達だ。

私はサラダ用の新鮮な野菜と卵をカ-トに入れ、
そのまま乾物屋に向かった。

ママの為にアップルパイを買うのだ。
2006.02.15. (00:24) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ナナ
20060214000922

昨日の続き。
ナナは、子供が生まれた時は本当に嬉しそうで、
とても可愛がっていた。それなのに何故
突然冷たくなってしまったのだろう。
母親になりたくてもなれなかったチャコが、
無理やりナナの子供を奪ってしまったのだろうかとも
考えたが、あの時あきらかにナナは育児を放棄していた。
ナナは今、子供達から憎まれている。
近づいても威嚇して寄せつけない母親を
子供達は大変嫌っている。
悲しいことだと思う。
他の猫達は我が家で生まれるか、まだ目も開いていないのを
連れて来ている。世の中の辛さを知っているのは
ナナだけだ。ひよっとしてナナは厳しい外猫としての
生き方を、子供に教えようとしたのだろうか。
動物の子供はある程度成長したら、一人で生きて行かねば
ならない。それが自然界の掟なのだ。
でも、私はナナに言ってやりたい。
私はあんた達を外猫にするつもりはないのだ。
ずっと死ぬまで一緒なんだから、親子仲良くしてほしかった。


(ママの店 前回のつづき)

いつも思う、なんでママのトランプはデカイのだ。
私も結構手は大きいほうだが、
それでもシャッフルが一度に出来ない。
二〜三組に分けて混ぜ、後で重ねるしかないのだ。
やるのが正直メンドクサイ。
しかも今日はママのお楽しみのバツがくっついている。
とっても嫌な予感がする。

「ちょっと何してんのよ、早く混ぜて配ってよ」
ママが私を睨む。
「はいはい、わかりましたよ今すぐ配りますから」
「あ、手伝いましょうか」と犬山さん。
「いいですよ、私は慣れてますから」

楕円形のテ-ブルを囲み、
四人がそれぞれ、手持ちのカ-ドを見て考えながら
慎重に相手のカ-ドを抜いていく。
抜いたカ-ドと手持ちのカ-ドが同じものを
場に捨てることが出来る。
私がママのを抜き、ママが中田先生のを抜き、
中田先生が犬山さんのカ-ドを抜く。
そして私のカ-ドを犬山さんが抜くのだ。
結構合うな、と楽観していたら
ママからババを頂いた。
くそ、何が何でも犬山に・・・
そう思って私はわざとババの横にあるカ-ドを少し高くした。
犬山、抜け! と心で念じたのが幸いしたのか、
ババは彼の手に渡った。
そしてまた一周、ママからまたババを頂いた。
今度は同じ手を使えない。
みんなそれぞれ手持ちが少なくなってきている。
犬山さんも、残り一枚しかないではないか。
私から抜いたカ-ドが合えば上がりだ。
私の額から脂汗が滲み出る。
ババ抜きくらいでこんなに焦るのは、
すべてバツケ-ムのせいだ。
犬山さんがゆっくりと私のカ-ドを抜く。

「ワオッ!上がりです」

この虚脱感は何なのだろう・・・

私は空ろな目をしてママのカ-ドを抜く。

ママも上がりになった。

残っているのは私と中田先生だ。
確か先生はいつも病院の子供達とトランプをしている。
手強い相手だ。
何度かババが行ったり来たりしていたが、
とうとう先生の方が先に上がってしまった。

「決まったわね・・・」
ママが手にタオルを持っている。
「ソレどうするの」
「ちょっと目隠しを・・・」とママが私の目をタオルで塞いだ

「さあ、何も怖がることはないわ 心を空っぽにしていて」
あぁ、また何か見えるんだとちょっと安心した。
私は今まで何度もこうしてママに映像を見せられている。

ここはどこだろう・・・
気がつくと暗い森の中にいた。
前方から
灯りがザワザワと音をたてて近づいて来るのが見える。
それが何か解かった時、
私の神経が凍りついた。
ソレは松明を持ったゾンビの群れだ。
高く掲げた手から腐った肉の汁が滴り落ちている。
そいつらは手と足をガクガクさせながら、
あっという間に私を取り囲み、
口から白いドロドロしたものを吐きながら
襲い掛かる。
「わっ! 気持ち悪いっ ヤメロッ」、
無我夢中で抵抗しようとした時、
頭の中でママの声が聞こえた。

「ダメよ・・・あんたがいるところは
 等活地獄と言って
 喧嘩が大好きな人が行く地獄なの。
 無限に殺し合いをするの。
 手を出したらあんたも仲間入りよ。
 されるがままに身をまかせなさい。
 どうせ、痛くも何ともないでしょ。
 夢なんだから」

そう言われてみれば痛くはない。
しかし、殴られたり蹴られたりするだけでも恐ろしい。
なんで私がこんなメに・・・「たすけてぇ-!」

どのくらいの時間が経ったのだろう、 

「もう目を開けていいわよ」
ママに目隠しを取ってもらい、我れに返った私は
床に座りこんでいた。

ソファ-もテ-ブルも乱闘の後のように
飛び散らかっている。
ママも中田先生も犬山さんも肩で息をしていて
顔が真っ赤にホテッているのは何故だろう。
いろいろな疑問が頭の中をクルクルまわっているとき、
ママが何かを後ろにサッと隠したのを見た。
「それ何よ、今何隠したの?」
私は急いでママの後ろに回り、それが何か確かめた。

「ねえ、これバットじゃない? しかも金属。 
 なんでこんなもん持ってるの」

ママは目をパチパチさせて横を向いた。
ハッと気がついて中田先生を見ると、
先生は手にカナヅチを持っている。
犬山さんは角材・・・

「あ・・・あのね、これはバツゲ-ムだからね。
 私はやめなさいって言ったんだけど、
 ママが、そのう・・・」
中田先生が申し訳なさそうに言い訳をした。
「私も、その・・・すんません」
犬山さんの手から角材がポトリと落ちる。

「最初からバツは私って決まってたんだ。
 三人で相談してたんだ。酷いじゃない」
私の目から悔し涙がこぼれ落ちる。
「何が地獄だよ、みんなママらが仕組んでたんだ。
 経験しとくほうがいいなんて、よく言うよ。
 ゾンビの映像だけ見せといて
 実際に殴ったのはママ達じゃないか!」

「悪かったわよ・・・何も泣かなくってもいいじゃない。
 あんたは夢なんだし、死んでる人達にちょっとは
 楽しみあげたっていいと思うんだけどなあ・・・
 痛くなかったでしょ、夢なんだから」ママが口を尖らせる。

「心が痛いんです!」
私はまた泣いた。
2006.02.14. (00:09) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 チャコ
20060213121513

チャコはナナの子供達の育ての母親になった。
ナナは子供を生んで半年くらいはフクパパと一緒に、
子供達を育てていたのだが、ある日突然子育てを放棄した。
半年もたてば、人間でも育てられるが、親が側にいれば
子供は親を慕う。それなのにナナは子供達が甘えて寄って来ても、
怒って寄せ付けなくなったのだ。
親に甘えられず寂しく泣くシュウやカリン、トウ、シマジロウ、
チャ-の母親になったのがチャコだった。
母性本能がもともとあったのか、
母親ゴッコを楽しんでいるかのように
チャコはナナの子の面倒を見た。

(ママの店 前回のつづき)(ママの店)

私は夢の中に、もう一つの世界を持っている。
住んでいる家は今の家なのだが、ドアを開けると
外は別世界に続いている。
まず、現実には無いものがあり、家の向かい側は海だ。
その海の状態が、その日によって違う。
穏やかに波一つない時の海の色は、胸に染み入る藍色だ。
それが、嵐のように荒れ狂っている時があり、
水の色も白っぽい氷のような青に変わっていることがある。
波も高く、今にもこちらに押し寄せて来そうになるが、
かと言って べつに怖くは無い。
どうせ夢だ。自分がそう望まないかぎり、
波が私を襲って来ることはない。

家を出て左方向に二十分ほど歩けば、広い道路に出る。
そこをまた左に曲がって五分ほど、
そこにママの店がある。
ドアに向かって左横に、
縦長の黒っぽい木で出来た看板が掛かっているが、
名前の部分が薄くなっていて読めない。
何て名前の店なのか、気にはなっているのだが、
いつもママに聞きそびれてしまう。
格子状に四角いガラスをはめ込んだ黒いドアには、
同じ色の取っ手が付いていて、手前に引いて開けると
カラ〜ンコロ〜ンと軽やかな音をたてる。
そして黒いレ-スのワンピ-スを着たママが、
「いらっしゃ-い」と笑って迎えてくれるのだ。
中に入ってすぐ右にカウンタ-の席ががあり、
左側と正面には向かい合わせで座われる
濃いエンジ色のソファ-とテ-ブルのセットがある。
床もエンジ色の絨毯が敷いてあり、少し暗い雰囲気だが、
どことなくエキゾチックな感じがとてもいい。

私が入っていくと、ママが待ってましたとばかりに
例のあの大きなトランプを持って来た。
「ねえ、今日はトランプしましょうよ」
狭い店の中を見回すと、客は私だけ。
トランプといってもママが好きなのは
神経衰弱と、ババ抜きだけ。
それでも何人か一緒なら楽しいが、
二人だけではつまらない。
「今日は誰も来てないの? 二人じゃつまんないよ」
と私が言うと、
「何言ってんのよ、いるじゃない」
とカウンタ-に目をやる。
どこに・・・と言いかけたとき、
カウンタ-の止まり木に、二つの青白い炎がボ-ッと現れた。
うぅっ・・・こ、怖い!
背中に冷たい物が流れていく。

「よおっ、ここにいるぞ!」
その声は中田先生だ。
「私もおりますです・・・」犬山さんだ。
「怖いじゃないですか幽霊かと思いましたよ」と私が言うと、
「だって幽霊だもの」とママが笑う。
やがて炎は中田先生と犬山さんの姿に変わり、
二人ともニコニコ笑ってこちらへやって来る。
「悪い悪い、驚かせちゃったね」と中田先生。
「仕方ないですよ、我々は死んでるんですからね」
犬山が申し訳なさそうに言う。

「じゃあ、三人揃ったところでトランプしましょ」

「今日はババ抜き?それとも神経衰弱?」私が聞くと、
「ババ抜き」ママが嬉しそうに答えた。
「でもねえ、今日のはちょっとおもしろいの」
「ババを増やすとか?」と私が言うとママは首を振り、
「いいえ、ババは一枚だけ。でもバツゲ-ム付きなの」
「ゲッいやだなあ・・・ママのバツは酷そう」
私が露骨に嫌な顔をした為、中田先生と犬山さんも
嫌な予感がしたのか、顔をしかめた。
「どんなバツなんですか?」中田先生が聞く。
「負けた人は地獄行き・・・」とママが笑う。
「地獄ってやっぱりあるんでしょうか」
犬山が不安そうに言う。
そりゃそうだろう、
あれだけ人に恨みをかって死んだ犬山だ。
地獄は決して他人事ではない。
「ゲ-ムよ、そんなに怖がらないで。
 バカねえ、地獄なんて
 そんなものありゃしないわよ。
 宗教での戒めにすぎないんだから。
 でも、体験してみる価値はじゅうぶんあるわ」
ママが片目をつぶって笑って見せた。

体験なんてとんでもない、こりゃ絶対負けられない。

(つづく)
2006.02.13. (12:15) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 チャオ
20060212084503

我が家の猫達は室内暮らしの為か、運動不足で
太りすぎたり病気をしたりで大変だ。
十二匹の内、トウ(女)だけが細い。
以前はカスガ(女)もほっそりしていたが、病気をしてから
よく食べるようになり、デブになった。
猫や犬は病気になると、普段あれほど良く食べるのに
水すら口にしなくなる。
好物を目の前に出しても横を向かれた瞬間がとても悲しく
また、その病気の重さが伝わってくる。
言葉の通じない悲しさで、どこがどう悪いのか
また痛むのかもわからない。獣医に飛んで行くのだが、
あとは祈るしかないのだ。
検査して癌でもあったら、人間と違い、一ヶ月
持ったらいいほうだ。点滴、投薬、何をしても
人間の気休めでしかない。
獣医の先生は飼い主の為に治療してくれる。
本当は、もう何をしてもダメだとわかっていてもだ。
十三匹いた猫の内ゴンが去年亡くなった。
後に残された猫達の年齢も皆同じくらいだ。
どんなにあがいても、動物の寿命は人間より短い。
覚悟して飼っているのだが、いざ その時が来たら
きっと・・・辛いだろうな。

(ダイエットの話)
一ヶ月で十キロ痩せた。
もちろん病気のせいではない。
食事のダイエットで家族全員スマ-トになった。
どんな人にでも効果あるかわからないが、
日頃食べている ある食品を食事の前に食べるだけ。
ニガリとか、サプリとかではない。
これを 本当に痩せたい人にだけ
教えてあげたい。というのも、
好き嫌いのせいにして、私そんなん食べれない
などと言われてはイヤだからだ。
何も特殊な食べ物ではない。
とっても美味しい組み合わせだ。
健康に、髪もフサフサと、お通じも良く
そして痩せるのだから。
2006.02.12. (08:45) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 私の宝物
20060211000337

昨日AliceBoyのお母様から頂いた幸運のブレスレットです。
彼は私が主催するアンデパンダン美術クラブの生徒さんです。
今私の体調悪く休講中ですが、こうしていつでも
気にかけてくれています。
ありがたいことです。
思えば私の人生は、
天使のようなこの子達と共にありました。
子供達に色のある生活を という目標で
頑張って来たのですが、
今は無理をお願いして休ませてもらっています。
教室の子供達の顔ばかり思い出します。
早く良くなりたいです。
AliceBoy 元気で頑張ってね、私も頑張ります。
素晴らしい贈り物ありがとう・・・
続きを読む
2006.02.11. (00:03) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 睡眠中
20060210095106

猫はよく眠る、だからネコなんだと言うらしい。
兄妹は兄妹で、仲良しはいつもペアで
昼の一番暖かい時間、陽だまりの中で熟睡している。
その寝顔の可愛いことといったらない。
猫達が目覚めて、いの一番に考えるのは、
何かおもしろい玩具はないか・・・だ。
それは小さなビンの蓋であっても良いし、
紙くずでもよい。
一匹の猫がビンの蓋を転がすと、皆一斉に追いかける。
それから運動会が始まるのだ。
(ママの店)
(ママの店 4)
2006.02.10. (09:51) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 チャー
20060209100009

チャーの毛はハチミツ色で、
尻尾はフクパパに似て短くカ−ルしており、
クロワッサンみたいでおいしそうです。
とても小心で、冒険心が薄いので、
悪戯はしないのですが、オシッコを時々失敗する為
オムツをはかせています。

(ママの店 前回のつづき)

「中田さん、あなたすごいお医者様ね。
 あの子の心まで治しちゃった」
ママが尊敬の眼差しで中田を見ている。
中田は恥ずかしそうに頭を掻いてから
「そう言ってもらえるなんて嬉しいですよ。
 しかし、犬山さんも可哀相だ。
 なまじ娘さんに会ったりしたから、
 これからが辛いでしょうね。
 死んだ者と生きている者が会えるのは
 夢の中でしかない。
 しかし、夢は思うようになりません。
 いつまた、ここに来るのやら・・・」
「いや、私みたいに何度も来るかもしれませんよ。
 昌子さんどころか、
 奥さんや下の娘さんも来たりして」
「アンタは特別よ。普通の人はそんなに都合よく
 おんなじ夢見たりしないものなの。
 犬山さん・・・きっとこれから毎日
 娘さんが来るのを待つようになるわね」
語り合う犬山父娘を見てママが溜息をついた。
「そうですね、昌子さんは今日お父さんに会えて
 自分の心を伝えることが出来たから、
 もうここに来る理由がなくなったかも」
中田も寂しそうに言う。
あっ!とママが小さく叫んだ。
昌子さんの姿がだんだん薄くなって来ている。
「あの子・・・目覚めようとしてるんだ・・・」
中田がつぶやいた。
「昌子!お母さんと良子のこと頼むぞ・・・」
犬山は泣きながら
消えてゆく昌子さんに向かって叫んでいる。
「お父さん、また会えるかな・・・」
その言葉を最後に昌子さんは消えた。

ママが犬山の側に行き、肩を抱くようにして
我々のところに連れてきた。
犬山の目は赤かったが、もう泣いてはいない。
大丈夫?とママが聞くと
「大丈夫です。これでもう昌子については何も
 思い残すことがありません。
 でも、私は妻や下の娘の良子にも
 話したいことがたくさんある。
 それに、私の為に苦しんだ人達にも
 お詫びしなくてはなりませんしね。
 泣いてなんかおられませんよ。
 どうすればいいかゆっくり考えます。
 時間はたくさんありますからね、なんせ私は
 死んだんですから」
犬山は寂しそうに微笑んだ。
「犬山さん、一杯やりませんか」
中田が誘う。
「そうよ、そうよ飲みましょう。四人でパ−ッと
 やりましょうよ」
私達はカウンタ−に移動した。

私は思う。
目が覚めた昌子さんは、
お父さんの夢を見たことを
母や妹に話すのだろうかと。
でも・・・
口に出すのはやめにした。
そんなことを詮索してもしょうがない。
生きている人と、死んだ人とは世界が違うのだから。

けれど、その二つの世界を繋ぐものが必ずある。
それはお互いを思う心だと、私はまた一つ勉強をした。 
 
 (つづく)

2006.02.09. (10:00) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 湯たんぽに乗って
20060208083907

冬は一日二回猫達の為に湯たんぽを四個作る。
それを四つのケ−ジに入れてやる。
私が自宅で絵画教室をしていた関係で、
昼の数時間はケ−ジに入って寝る習慣が
ついているのだ。
生徒は皆猫が好きで可愛がってくれるが、
アレルギ−の問題もあるし、
チョロチョロ足元を動き回れば
事故が起こる可能性があるからだ。


(ママの店 前回のつづき)

「本心を話してみませんか、今は夢の中なんですから」
中田が落ち着いた声で昌子さんに話しかける。
「あなたには何か悩みごとがあるはずだ」
昌子さんの顔から笑みが失せ、
強張った顔で中田を睨みつける。
「あなた・・何が言いたいわけ?」
中田は彼女のことなど全く気にせず
話を続けた。
「あなたはさっき、どうしてここに来たのかなって
 思いましたよね、それはここにあなたのお父様が
 いらっしゃるからなんですよ。
あなたは お父様に引き寄せられた」
「えっ?」
昌子はサッと立ち上がり店内を見回す。
その瞬間犬山は、
さっきあれほど娘と話したがっていたのに、
いきなり机の下に隠れた。
中田の爆弾発言に、
店内の空気がピンと張り詰めたのがわかる。
「父がどこにいるって言うのよ!」
昌子さんは、唇を震わせ中田に詰め寄った。
「いいかげんなことを言わないで!
 父は死んだって言ったでしょ、
 電車に・・・ひっ、轢かれたのよ」
「落ち着きなさい、お父様がここにいるのは
 本当ですよ。さっきからずっと心配そうに
 あなたを見ていますよ」
犬山が机の下からモゾモゾと出てきた。
中田は話を続ける。
「お父様は、あなたがこの店に入って来たとき、
 すぐにあなたの側に飛んで行ったんですよ。
 でも、あなたには見えていなかった。
 あなたが何故、お父様だけ見えないのか、
 考えてみました。
 あなたはお父様に会うのが怖いんだ。
 自分が死ねと思ったから、死んでしまったと
 後悔しているんだ。
 早く仲直りしたかったんだろ?
 あやまりたかったんだろ?
 意地を張るのは止めなさい。
 もっと自分に素直にならなくっちゃ」
「その通りよ、私が悪かったのよ!」
昌子さんが絶叫した。
「でも、もう遅いのよ・・・
 ごめんなさいって言えないよ。
 お父さん死んじゃったんだもん」
「もうヤメロ!やめてくれ・・・昌子を
 責めないでやってくれ。
 俺の行いが悪かったんだ、
 昌子が悪いんじゃない!
 俺が、お れ が 悪かったんだ!
 嫌われてあたりまえだ。
 顔も見たくないだろう・・・
 もう俺を見てくれなくていい。
 昌子が幸せでありさえすれば
 何もいうことはないんだ」
犬山は半狂乱になって中田にしがみついた。
そのとき、
「お父・・・さん・・・?」
犬山がギョッとした顔で振り返る。
「お父様が見えたんだね」
中田はやさしく昌子さんに声をかけ、
犬山から離れた。
「お父さん・・・」
犬山の胸に昌子さんが飛びついた。
「昌子・・・俺が見えるのか?」
「うん、見えるよ、お父さん・・・会いたかった」
抱き合って喜ぶ父と娘を残して、
私達は奥のソファ−に腰を下ろしに行った。

(つづく)
2006.02.08. (08:39) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(1) /
 ダッコ大好きブチ
20060207090904

ブチは11年前の初夏、
近所の公園に捨てられていたのを救出しました。
そこは私がよく散歩していた公園で、
犬を連れた人も多くて、
犬仲間同志が話しをしている間
犬を放して勝手に走り回らせている場所なのです。
そんな場所だと知っていたのかどうか
わかりませんが、ダンボ−ルにブチ達兄妹が
入れられておりました。
まだ目も開いていなくて、4匹が寄り添って
震えています。
そりゃ震えます、ダンボ−ルの周りを、
何匹かの犬がウロウロしているのですから。
中には唸り声をあげているのもいました。
家ではすでにゴンを飼っていましたが、
何も考えず、持っていた買い物袋に
ブチ達を入れて抱いて帰りました。
ゴンは雄でしたが、
まるで母親のようにブチ達を育ててくれました。
一挙に5匹になった瞬間です。


(ママの店 前回のつづき)

カウンタ−の昌子さんは、
携帯電話をバッグから取り出して
どこかへ連絡しようとしているみたいだが、
思うように掛けられないのか
四苦八苦している。
ママが彼女の側へ行った。
どうしたの?とママが聞く。
「えっ?あ・・この電話変なんです。
 妹にメ−ルしたいんですけど、
 操作が出来ないんです。
 ほら・・・」
昌子さんがママに携帯を見せる。
「あぁ、こりゃ変だわねえ・・・
 ちょっと待ってて
 あそこにいる人達に聞いてみるからね」
ママが戻ってきた。
「ねえ、携帯ってこんなだった?
 私はこんなもの
 使ったことがないからわかんないわ。
 オイッ、そこのビジタ−
 あんたなら知ってるでしょ
 教えなさい」
どうやら私はママに嫌われているみたいだ。
言葉使いが酷い・・・
でも、これが人にものを聞く態度かと
怒る・・・いや、情けなくなる。
グスン・・・と鼻声を出して携帯を
受け取った。
なるほど変だ。プッシュの部分が
触ろうとすると素早く移動する。
でも、私は夢でこういう現象に
何度もお目にかかっているのだ。
「あ−、これはよくあることです。
 つまり、夢だからです」
「なによ、それじゃ全然わかんないわよ。
 もっとわかりやすく説明しなさい」
だから夢だって・・・
ボソッとつぶやくと
ママの片方の眉がピクッとした。
中田はニヤニヤしているし、
犬山は真剣だ。
よし、わかった
説明してやろうじゃないか
「つまりですね、
 なんでだかわかんないけど、
 私も夢の中で誰かに電話しようとしたら
 こんなふうに数字がバラバラになったりして
 なかなか操作出来ないんですよ。
 やっと相手が出ても言葉が通じないとかね、
 彼女も今夢を見ているんでしょ、
 だからこんなことになっているんだと
 思いますよ」
「あのぅ−・・・」
カウンタ−にすわっている昌子さんが
こちらを向いている。
我々に話かけようとしているのだ。
皆の視線が犬山に行く。
犬山は嬉しそうに手招きをしている。
「昌子、こっちにおいで」
「だからぁ、聞こえないって!」
いくら言っても犬山の耳には入らない。
「あなたも、よかったら
 こちらにいらっしゃいな。
 今携帯のこと、この人に聞いていたところよ」
ママが誘うと彼女は嬉しそうにうなずいた。
昌子さんが近づいて来る。
犬山は、泣きながら喜んでいる。
昌子さんはママの隣に座り、
その横が中田、テ−ブルをはさんで
向かいが私と犬山だった。
「昌子、お父さんだよ・・・」
「あのぅ・・・初めまして、
 私犬山昌子です。
 帰るの遅くなっちゃって、
 妹に連絡したいんですが
 これ・・・変なんです。
 壊れてるみたい」
昌子さんは犬山を無視して、私に話しかけた。
犬山は唇を噛み締めて娘の顔を見つめている。
「あのね、昌子さん・・・
ここがどこだか分かってる?
 あなたは夢を見ているんです。
 つまりここは夢の中。
 だから、いろんなことが起こります。
 そして私の経験上、
夢の中では必ずと言っていいほど
 電話がおかしくなる。
 よく考えてごらんなさい、
今までにこんな経験したことが
 なかったですか?」
「夢・・・?」
昌子さんは首を傾げて考えている。
「そういえば、前にも
 こんなことありました。
 そうか・・・夢なんだ・・・でも、
 あなた方とは現実の世界で
 お目にかかったことが
 あるのでしょうか」
「いいえ、多分我々とは・・・
 ないでしょうね」
私は犬山を見た。
犬山は口に手を当てて泣いている。
「昌子さん・・・でしたね、
 私は医者の中田です。
 医者といっても小児科ですが」
中田が挨拶をした。
昌子さんも頭を下げる。
「今日はどちらへ行かれたんですか?
 その帰りにここへ寄られたんですよね」
中田の質問に昌子さんは
ちょっと考えているようだったが
「父に用事があった・・・あれ?
 父は亡くなったはず・・・
 私どこへ行こうとしていたんだろ」
犬山が涙に濡れた顔で娘を見つめている。
私は胸が痛くなってきた。
ママもパチパチと目をしばたかせていて、
涙を我慢しているのが伝わってくる。

       (つづく)
2006.02.07. (09:09) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(0) /
 在りし日のゴン
20060206084206

どこかの掲示板に行くと、
心ない書き込みを目にすることがある。
自分の車に悪戯をするノラ猫を捕まえて、
とても私には書くことの出来ない酷い虐待を
まるで自慢するかのように書いている。
その人は後で自分のしたことに、後悔しないのだろうか。
もし、自分が同じことをされたら、
もし将来生まれた自分の子供が そういうめに
あったら、どういう思いをするのだろう。
人も動物もみんな同じ感情をもっている。
生きているのだ。


(続ママの店 前回のつづき)

犬山が何を言っても娘は反応しなかった。
それでも一生懸命娘に話しかける犬山、
私は犬山が可哀相になった。
「昌子、どうしてここに来たんだ?
 ここは死んだ者しか来ないんだ。
 もしかしてお前・・・」
犬山は娘が死んだのではないかと思ったらしい。
「昌子さんとやら、あんたお父さんが
 こんなに一生懸命話しかけているじゃないか
 少しは返事してやれよ」
私がそう言うと、彼女は怪訝な顔をした。
「父・・・ですか?父は亡くなりましたけど」
目の前にいるじゃないか、と言いかけて
私は言葉を飲み込んだ。
彼女には見えていないんだ・・・
ママが犬山の娘をカウンタ−の席に案内した。
メニュ−を渡し、注文を聞いている。
私と犬山、中田の三人は顔をつき合わせて
ママと娘の様子を窺っていた。
とくに犬山は、今にでも娘の側に
飛んで行きそうにするので、
中田と二人して、引き止めるのに苦労した。
「ちょっと待って、
 何か事情があるのかもしれません。
 へたに あなたが出ると
 娘さん店を出てしまうかもしれないでしょう?
 ここはママにまかせて
 少し様子を見たほうが懸命ですよ」
中田の説得に、犬山も落ち着いたらしく
おとなしく腰を下ろした。
犬山はよく耐えているなと私は思う。
もう二度と会えないはずの我が子に会えたんだから、
つもる話しがあって当たり前だろう。
ミックスジュ−スらしきものを娘に出して
ママがこちらに戻って来た。
「どんな具合でした?昌子は何か私のことを
 言ってませんでしたか」
犬山がママの顔を見るなり聞く。
ママは首を振って、何も言わなかったわと答える。
犬山の肩が落ちるのがわかった。
「私は娘に嫌われていたんですよ。
 生きている時でも会話が無かったんだから、
 死んでも同じですよね・・・」
犬山の目から大粒の涙がこぼれる。
「それは違うわ、あの子にはあなたが
 見えてないみたいよ。
 それに、あの子ビジタ−よ。
 まちがいないわ死んでない」
ママが小声で言う。
「えっビジタ−・・・じゃあ夢見てるってこと?」
私が聞くとママが、そうあんたと同じよと言った。
「夢の中か・・・あれっ、でも変だなあ・・・
 我々はこうして見えているし、話しもしている。
 私もビジタ−で、あの子もビジタ−、
 なのに見えていない。
 ママ、どういうことだろ・・・?」
ママの顔が曇る。
「それがねえ、ちょっと違うのよ・・・
 見えてないのは、お父さんだけなのよ。
 私達のことはちゃんと見えてる」
犬山の肩がもう一段落ちた。
「あっ、犬山さんそう落ち込まないで、
 そもそも娘さんがあなたのいる所に現れたって
 いうことはね、あなたのことを考えていたから
 なのよ。会いたいって心の中で思ったから
 夢でここに来たのよ」
犬山の顔が一瞬明るくなるのがわかった。
「それじゃあ、なんで自分の父親だけ
 見えないんだろ」
私はべつに禁句を口にしたわけではない。
だのに、犬山の顔色がまた悪くなり肩が落ちた。
ママにまた睨まれると思ったが、
今度は完全に無視された。
中田が割って入る。
「娘さんの心の中で、
 お父さんに対する二つの気持ちが
 葛藤しているのだと思います。
 お父さんともっと仲良くしたかったのに
 出来なかった。
 意地を張っていたのかも知れません。
 仲良くするきっかけを掴めないまま、
 お父さんが死んでしまった。
 自分を責める心と、
 自分は悪くないと言う心とがあって
 苦しんでいるのかも知れません。
 だから、拒否をしているんですよ、
 お父さんに会うことを。
 もし今お父さんと話しすれば、
 一挙に自分の父親が死んだ悲しみを
 受け入れることになりますからね。
 あんな親父死んじゃえばいいんだと言ったから
 本当に死んでしまった。
 本心で言ったわけではないだろうから、
 そりゃあ苦しいですよ。
 あの子を見る限り、やさしい、素直な娘さんに
 思えますからねえ」
中田の話を聞き終わると、
犬山は真っ赤に泣きはらした目で
カウンタ−に座っている娘の後姿を見つめていた。

          (つづく)
2006.02.06. (08:42) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) /
 カスガとシュウ
20060205094506

カスガとシュウは兄妹ではないけれど、とても仲良しです。

(続 ママの店) (ママの店)

「いつまでもアボカドさんとお呼びするのも
 なんですし、みなさん自己紹介なさっては
 いかがですか」
ママがニコニコ笑いながら言った。
そういえば私はアボカドの名前はもちろん
先生の名前すら知らなかった。
今私達は奥のソファ−に座っている。
先生が軽く咳きを一つして
「え−、じゃあ私から自己紹介します。
 私は中田弘之(なかたひろゆき)と申しまして
 総合病院の小児科担当の医師です。
 パンを焼くのが得意です。
 今度また皆さんにお持ちいたしますね。
 まあ・・・ここに来たのも何かの縁です
 どうぞよろしくお願いします」
不思議なもので、先生の名前を私は突然
思い出していた。
そうだ・・・中田先生だった・・・
「あの、それでは次に私が自己紹介いたします」
アボカドが立ち上がった。
「あら・・お座りになったままでいいですよ」
ママが微笑む。
アボカドはポッと赤らんで座った。
「私は犬山猛(いぬやまたけし)と申します」
「犬山さんかあ、どおりでよく吠える・・イテッ」
私はママにこづかれた。ママは怖い。
「ヤダなあ・・・冗談ですよ」
私はママと犬山に愛想笑いをする。
犬山はべつに嫌な顔もせず話を続けた。
「私は父親と一緒に茶道具店をしておりました。
 茶道関係の道具屋です。
 家族は両親と、妻と、娘が二人おります。
 気が短いのが欠点ですが、ここに来て
 何かが変わった気がしています。
 こんな私ですが、よろしくお願いします」
次は・・と辺りを見回したら、
後は私とママしかいない。
それじゃ私の番と、自分の名前を言おうとした時
「私は○○○○アレ?○○○○・・・
 どうしたんだろう言えないよ・・・」
驚いたことに、
名前を言おうとすると声が出なくなる。
「あなたは仕方がないのよ。
 ビジタ−なんだから。
 気がつかなかった?」
ママが慰めるように私に言った。
「ビジタ−?何ソレ」
「あなたは、生きてるの。
 つまり眠っているだけなのよ。
 なんでここに来るのかわからないけど、
 あなたみたいな人、たま−に来るわね」
私は・・・そういえばそうだった。
これは夢の中だった・・・。
犬山と中田が私をジ−ッと見ている。
あきらかに羨ましいといった顔つきだ。
そりゃそうだ、羨ましいだろう。
自分達は死んでいるのだから。
でも、それは私のせいではない。
「でも、なんで自分の名前が言えないんだろう」
私が首をかしげるとママも
「それはわからないわねえ・・・」
と言った。
「それはきっと、君自身の自己抑制だよ。
 夢を見ている君の脳が、君を完全に
 こっちの世界に留めておかないように
 規制をかけているんだ」
さすがに医師だけあって中田の説明には
説得力がある。
今の説明だけで十分わかった気がする。
その時いきなりドアが開き、
二十歳前後くらいの女性が入って来た。
その娘の顔を見て犬山が驚いた。
「昌子・・・」
犬山は娘の側に飛んでいった。
そうだ、この娘は犬山の長女だと
私も思い出した。
ママに見せてもらった犬山の過去、
彼の家の台所で、
母親と妹としゃべっていた
娘だ。
父親を嫌っていて、死ね死ねを連発していた
娘だ。

       (つづく)
2006.02.05. (09:45) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) /
 「闇の中の住人」のモデルです
20060204094206

カウンタ−の上に乗って考え事をしているフクです。
短篇 闇の中の住人に出てきたフーのモデルです。
フクは シュウ達兄妹のパパですが、
何故かはみ出てる。
尻尾の長い短いが 彼ら猫の間の優劣になると
何かで読んだことがありますが、
親子でも関係あるのでしょうか・・・
もしそうなら、ちょっと悲しいです。
2006.02.04. (09:42) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(1) /
 まぶしいよ〜
20060203001214

あんまり暖かいので、シュウは眠たくなったようです。
こういう可愛い顔をするのが、本当に得意なシュウです。
しかし、その実態は・・・ちょっぴり意地悪なんです。

 小説の話
小説を書いていて、時々同じ趣味の人がいたら
話したいと思うことがある。
以前パドという配布誌に
「小説を書く方 お友達になりましょう」
というような募集を出したが、
小説にはなんの関係もなく
ただ話しがしたいという人ばかり来た。
私は文学部卒だが、在学中は友達と
いろいろな討論をした。
本当にあのころが懐かしい。
昔アンデス山中に飛行機が遭難して、
生き残った人々が生きる為に
死者の肉を食べたという事件があった。
人肉を食べるという行為をどう思うか
と言うテ−マで 
倫理かなんかの授業で
レポ−トを書かされたことがあった。
表だけでは足りず、用紙の裏まで埋め尽くしたのを
覚えている。
2006.02.03. (00:12) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) /
 日向ボッコ
20060202083609

  −ご連絡−

ブログ内に書いた(ママの店)を
HP上にUPしました。
そちらの方が読みやすいと思いますので読まれる方は
オンライン短編集へどうぞ。


リビングは南向きなので、お天気さえ良ければ常夏です。
猫達は ブチ兄妹四匹、シュウ兄妹五匹、フク ナナ夫婦 
とブロックに分かれてケ−ジに住んでいます。
カスガはその日の気分で、
あっちこっちを渡り歩いているようです。
我が家はマンションの15F、しかもテッペンで、
南向きのリビングとなれば
かなりの明るさと暖かさがあります。
まさに猫にとっては楽園で、
手足を伸ばしての日向ぼっこです。
ベランダに出してあげれないのが
ちょっと可哀相ですが、
落ちたら大変、危ないですからね。
2006.02.02. (08:36) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(0) /
 カスガ
20060201091806

一番年下のカスガは五歳です。
チャ−、シュウ、カリン、トウ、シマジロウが
生まれた年、夏の終わりを告げる盆踊りの夜
草むらの中で鳴いていた子猫を拾いました。
目がやっと開いたくらいで捨てられたようで、
首に付いていた赤いリボンは
捨てた人の、
せめてもの気持ちだったのかもしれません。
我が家にはすでに十二匹の猫がいたのですが、
シュウ達とさほど年の違わない子猫が哀れで
一匹くらい増えても大差ないわい という甘い
考えで飼うことにしました。でも、
せっかく家に連れて帰ってあげようとしているのに
この子は家に帰るまでの間、ずうっと私の指を
噛んでいました。
小さい歯です、さほど痛くもないのですが
何と気の強いヤツだと感心しました。
ナナの後に来たから、ハチにしようかと
思ったのですが、それはあんまりなので
カスガ(大奥の春日の局から取った)にしました。
去年の夏、卵巣膿腫になり、大手術をしました。
大病を経験すると太るみたいで、
小食で細い可憐な乙女は、おおメシ食らいのデブに
なりつつあり、他の猫達に恐れられています。
2006.02.01. (09:18) 小説 文学 / TRACKBACK(0) / COMMENT(1) /
ハレルヤ

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