筆者  活動状況  オンライン小説  新刊+出版本  更新情報 ブログ
メルマガ Link HOME MAIL


fc2-BlogRanking   Blog Entry
管理人

樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

    モバイル版を開設しました!


    毎日の「ママの店」の更新情報を、お届けするメルマガを始めました!
月別ログ
カテゴリ
最新記事
コメント
トラックバック
リンク




2006.05

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&晩御飯&ママの店


ナナはいつもポツンと孤独だが、時々びっくりするくらい猫らしくなる。まるでマタタビの粉を嗅いだみたいに、床でゴロゴロと転がる。そういう時のナナはまるで子猫のように可愛いのだ。



里芋と糸こんにゃく玉葱の煮込みに、卵だけで練ったつくねとサヤエンドウを添えた。(作りかたは下記)

      「ママの店」

昭日町の自宅から外へ出る気がしなかった。
たかが夢だと割り切ってしまえばなんでもないのだが、
今いるこの町も家も、全部夢の中のものだ。
私はある日たまたま見た夢の中でママの店に行き、
そのままこちらの世界に住み着いてしまっている。

昭日町には現実の世界と同じような生活がある。
ただ少し風景がすべてカラフルで、
あり得ないことが当たり前のように起こるのと、
人も動物ももう生きてはいないということが現実の世界との違いだ。

何故私がこちらの世界におりっぱなしなのかがわからない。
ママがいるから離れられないのだと、
冗談とも本気ともつかぬことを言ってはいるが、
本当はいつも気になっているのだ。
私はどこの誰なんだろう。
自分が男なのか女なのか、子供なのか大人なのか、
それすらもうわからないのだ。
今日も暗澹たる気持ちで一日が暮れた。

父と母はまだ仕事中だろう・・・
そう思ったとき、父と母の顔が思い出せないことに
気がついた。
この家の二階に両親の部屋がある。
しかし一緒に食事をした覚えがないし、
顔を合わせて話した覚えもないのだ。
洋服はちゃんと洗濯してくれてあり、
私が買い物に行かない日は冷蔵庫に食品を入れてくれる。
でも、その姿を見たことがないのだ。

二階へ行ってみようと思った。
部屋を出て右突き当たりに階段がある。
私は自分でも不思議なくらい暗い気持ちで
階段を一段づつ上がった。
二階には二室あり、上がって正面が父の部屋で
隣が母の部屋になっている。
私は最初に父の部屋を開けた。
下と同じく茶色の広いドアだ。
中は6帖で私の部屋と同じ造り。
大体この家の部屋は
フロアーとキッチンを除いてすべて6帖なのだ。
他の部屋との違いは、父の部屋だけが和室で、
畳の上に机と座椅子がある。
あとはテレビと洋箪笥と和箪笥、
朝いつも読む新聞が畳んで机の上に置いてあり、
ブルーのクリスタルで出来た六角形の灰皿と、
煙草の缶が置いてある。
灰皿の中にはもみ消された煙草が三本折れたように
入っている。
写真でもないかとあちこち探したが、
それらしきものは見当たらない。
押入れの中には布団と、とりあえず今必要の無い衣類が
衣装ケースにいれられてある。
探索しているうちに、
親と言えど人のプライバシーを除き見るようで気が引け、
もう探すのが嫌になった。

父の部屋を出て隣の母の部屋を開けると、
正面に見慣れぬ大きなベッドがあり、
白い掛け布団を両手で掴み、胸まで引き上げた姿の
白髪の老婆が丸い目をして私を見つめていた。

「えっ・・・」と言ったまま体が凍りつく。

「誰・・・? 」と聞くのがやっとだった。

老婆は口元を震わせ、何かを言っているのだが、
私にはまったく聞こえない。
何かを必死に訴えているような目だ。
ベッドの横にある小さな足の長いテーブルの上に
オレンジ色の笠を被ったスタンドが置かれ、
そのスタンドのせいか、
オレンジ色の光に部屋全体が包まれて、
壁の色やカーテンの色もオレンジ色に見えている。
ベッドの左横には大きい窓があり、
たぶん本当は白いレースのカーテンがかけられている。
老婆はまだ口をパクパク開けている。
恐怖映画を見ているようで、
とうとう私の背中に冷たいものが走った。
老婆は今に首を一回転させ、所々抜け落ちた歯を見せて
ゲラゲラと笑い出すにちがいない。
そして、私が怯えるようなことを口走り、
口から緑色の気持ちの悪いドロドロとした液体を垂れ流すのだ。
とんでもない恐怖場面ばかり思いつく。
私は一刻も早くこの部屋から出たくなった。

〜つづく

ママの店11

その他の作品紹介
続きを読む
2006.05.31. (00:45) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 相互リンク企画
このブログでは相互リンクを募集しています。

「相互リンク依頼」(必ずこれを書いてください)
サイト名:〜
URL:〜

↑このようにコメント欄に書き込んでくれたら
すぐリンクに追加させていただきます。

※アダルト系・おこづかい・アフィリエイト系のブログは
お断りさせていただきます。

このブログは相互リンク企画に参加しています。
2006.05.30. (23:06) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(7) /
 オムツからシッポフリフリ&ママの店


シマジロウは結構オムツが大好きで、いつもお尻を高く上げて待ちかまえている。シマジロウのシッポは本当は普通の細さなのだが、毛が長いからビーバーか狸のようなシッポに見える。いつも自慢げにシッポフリフリで歩いているが、怒られた ! と感じたらベタッと床にしゃもじのようにくっつけてヨタヨタと走り出す。これがまた可愛いのだ。そういうのを見ると、本気では絶対怒れないなあ・・・


フライパンのまま食卓へ。
油抜きした厚揚げと、本シメジピーマンを米油で炒め、塩とカレー粉で味付け。別にトマトの入った炒り卵を作り上に乗せる。
大変乱暴な料理だが、とても美味しい。カレーの香りが食欲をそそる。

    「ママの店」
こんな夢を見た。

目の前に黄色と黒のビニールテープを交互に巻いた
直径5センチくらいの丸い棒があった。
何なのだろうとじっと見ていると、棒の向こう側に線路が見える。
あぁ、遮断機だ・・・じゃあここは踏み切り・・・
そう気がついたら次第にあたりが明るくなってきた。

思い出した・・・
ここは小学校の頃住んでいた町だ。

踏み切りの向こう側の左には駅と、
私の両親が経営しているレストランがある。
そして今私が立っている側の
右にある細い道は自宅へ行く近道で、
途中に大きいスーパーがある。
後方に伸びる広い道路の両側には、
8階建ての白い団地が並んでいる。
右側の団地入り口付近には派出所がある。

そうそう・・・この広い道路の左側を真っ直ぐ歩き、
川の方まで行くと左に曲がる道がある。
そこまでずっと団地は続いていて、
その角にはパン屋があるのだ。
パン屋と言っても、
今あるような手作りのパンを売っているのではなく、
袋に入った菓子パンや駄菓子、アイスクリーム、
インスタントラメーンなどを売っている
小さなパン屋だった。
左へ曲がる道を行くと自宅に着くのだが、
だいぶ遠回りになってしまう。
でも、私はこのパン屋に寄り道したいから
よくこの道を歩いて帰った。

あぁ・・・川沿いの道は柳がたくさん植えてあり、
風に揺れる柳の風景を今でも時々夢に見る。

パン屋の主人はピノキオに出て来る
ゼベット爺さんのような人だったと思い出していた時、
右側の道から買い物客にまぎれて、
クリーム色のワンピースに赤いサンダルを履いた少女が
父親と一緒に歩いてくるのが目に留まった。
足元に小さな柴犬がまとわりついている。

あれは、父と私だ・・・そしてあの犬はチビ・・・

そう気がついた時
カーンカーンカーンという音が聞こえ出し、
遮断機がゆっくりと下りてきた。
チビが走ってきて、線路の中で座り込み、
電車が来ようとしているのがわからないのか、
後ろ足で首を掻き始める。
慌てて抱き上げようとしたが、私の手は何もつかめなかった。
少女である過去の私が慌てて遮断機をくぐろうとしたが、
父に抱き止められてジタバタしている。

思い出した、チビは今から電車に跳ねられるのだ。

私はなんとかチビを救おうと頑張ったが、
触ることすら出来なかった。
ガッタンゴットンと枕木を揺らして電車が近づき、
私の体を素通りしてチビを空中に跳ね飛ばした。

過去の私が泣き叫んでいる。

チビは跳ね飛ばされたが
落ちた場所が良かったので轢かれはしなかった。
どこを見ているのかわからない
真っ黒い瞳を開けて、荒く息をしている。
瀕死の重傷には違いないがとりあえず生きていた。
過去の私が父の手を振り解きチビに駆け寄った。

その時私はとても嫌なことを思い出したのだ。

遮断機が上がってから
チビを助けに行こうとした私の耳に、
父は「知らないふりをしなさい」と囁いたのだ。
目の前でチビが死に掛けているのに
知らない振りをしろなんて妙なことを言う。
どういうことだろうと一瞬考えたが、
それは死にかけた犬の始末が面倒だから、
知らん振りを決め込もうとする父の
卑怯な気持ちから出た言葉だと、
小さいながらも私はその時気がついた。

父が許せなかった・・・

チビは私の犬だ ! と大声で叫んだら
回りにいる人達がジロジロ見ていた。
もちろんあの時の私には、そんな人の視線など
目にはいってはいなかったが、
客観的に見ている今の私には回りの状況がよくわかる。

父は人の目があるから
渋々チビを抱いた私をつれて店に行き、単車を出してきた。
単車には買出しの為の荷箱が付けられてあったので、
その箱の中にチビを入れて父が走り去る。

あの時父はチビを病院に連れて行くと言った。
しかし、それは嘘だ。
父はどこかにチビを捨てに行ったのだ。

帰ってきたのは父だけで、

チビはもうダメだったから
病院の先生に安楽死させてもらったと聞かされた。

嘘だ・・・・嘘だ・・・・
胸が一気に熱くなり膨れ上がった悲しみが
すべて目の中に流れ込んだように涙が溢れて止まらない。

・・・・・・・

昭日町の自宅のベットの上で目が覚めた。
目が覚めてもしばらく涙が止まらない。

それにしてもリアルな夢だった。
まるで私の本当の記憶のように思えてくる。

夢が勝手に記憶を作っていく・・・

今や悲しみの余韻は消え去り、
その代わりに言い知れぬ不安が押し寄せてきた。

〜つづく

ママの店11

その他の作品紹介
2006.05.30. (00:21) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ブチ&パンのグラタン&ママの店


ブチはダッコされるとき、いつも自分の前足をチュバチュバ吸う。
知らない間に随分軽くなった。冬の湯たんぽのせいで後ろ足の毛が薄くなっているのを見ると、思わずダッコする手に力が入ってしまう。
老いは生きているものすべてに訪れるのだと、わかっていても切なくなる今日この頃・・・・


食パンなどが残ってしまったら、サイの目切りにして塩コショーで味をつけた牛乳に漬し、グラタン皿に並べてチーズをふりかける。プチトマトと細切りピーマンを上に乗せ、電子レンジでチーズがとろけるまでチンするだけ。焦げ目はつかないが結構美味しい。
もちろんオーブンでもOKだが、
そんな面倒なことをしなくてもチンでじゅうぶん美味しかった。
ただしチンのときは、漬す牛乳はあまり多くないほうがいいようだ。
ビシャビシャでは不味い。
ダイエットというよりは節約一品だな、こりゃ。

   「ママの店」

犬山さん達が死刑について議論しているのに、
ママはリリーさんや良太君の話を聞いていて、
話の中に入って来ようとしない。
いつもならこんなことはないのにおかしいなと思い、
ママの横顔を見つめていると、
チラッとママが私の顔を見た。
そして突然私の頭の中にママの声が聞こえてくる。

「生きている者は必ず死ぬのよ。
 そしてまた生まれてくる。
 悪い因子を持った者は、何度生まれてきても
 また悪いことをする。
 犯罪を犯した人が罪を償うということは、
 被害者の感情を考えてのことと、 
 犯罪が起きないようにする防止策として
 生きてる人間が考えたルールにすぎないの。
 死んだ者にとっては何の意味もないわ。
 だから、私は全然興味がないのよ」

どうやらママはテレパシーを送ってきたようだ。
でも、私はママの本心を知っている。
ママは理想論を言っているだけで、
本当は誰よりも犯罪を憎み、
犠牲になってしまった人達の為にいつも泣いている。
ママが死刑の話題に、参加しようとしないのは、
人の死を軽々しく話題にしたくないだけなのだ。
私は急にママが愛おしくなった。

ママは私の顔を見て片方の眉を吊り上げ、
フンッといったような顔をしてまた横を向いた。

ママは照れているのだ。

ママがいきなりカツカツとハイヒールの音をさせて
私の方に寄ってきた。

「何をさっきからニヤニヤ笑って人の顔見てるのよ、
 いやらしいったらありゃしないわね」

私の眉は八の字に下がり、突然だらしない顔に成り果てた。

「そんなあ・・・今私にテレパシー送ってくれたでしょう ? 」

ママは冷たい目をして、

「何寝ぼけたこと言ってんのよ、
 そんなこと出来るわけないでしょうが」と薄笑いを浮かべる。

中田先生達も何事かと、話をやめてこちらを向いた。

「まあまあママさん怒らないで、
 若い者にはありがちのことなんだから、
 ママさんがあんまり美しいから、
 青年もポーッとなって白昼夢でも見たんでしょう」

美しいと言われてママは顔を薄っすらと赤らめ、

「そう・・・そうなのよね、馬鹿ねえ私ったら・・・
 あんた何もしてないのに怒ったりしてごめんなさいね」

急に機嫌が良くなった。

あれが白昼夢 ? そんなわけがない。

絶対ママは私にテレパシーを送ってきた。
反論しようと思ったが、それでは間に入ってくれた
中田先生の好意が無駄になる。
まあ、ママに楯突いたところで勝てるわけもなし、
ここは機嫌が良ければ良しとしなくてはと
私はあきらめることにした。

〜つづく

ママの店11

その他の作品紹介
 
2006.05.29. (00:55) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 チャー&今日の晩御飯&ママの店


チャーは物静かで、ダッコされるのがとても好き。ダッコが嫌な時は
ご飯を食べている時と、トイレに入っている時だけだ。でも用事がすめばすぐに寄ってくる。シュウとよく似ているが、性格はだいぶ違う。
目立たずひっそりと私を見つめ、ダッコしてもらえるのをひたすら待っているのだ。

本日の晩御飯、厚揚げをすり潰してミンチと玉葱卵で作ったハンバーグの目玉焼き添え。ポテトサラダ。ワカメ納豆、ご飯一膳。ハンバーグを焼いたフライパンは一度きれいに洗い、新しい米油を使って目玉焼きを作ること。


  「ママの店」
ママが入れてくれたコーヒーを飲みながら、
私はたくさんあるパンの中からザラメのついた
三つ編みパンを取り出す。
中田先生の焼くパンはどれも美味しいが、
私はとくにこの三つ編みパンが好きだ。
しっとりとしたパンの食感とザラメの甘さが
たまらない。

良太君はパンよりも
ソーダの上に乗ったアイスクリームを
長いスプンを使って食べるのに必死になっていて、
ワンコはテーブルの上にパンのかけらを置いてもらい、
テーブルの表面に歯をカチカチと当てながら
必死に食べている。
犬山さんはリリーさんにアーンと口を開けさせられ、
ちぎったパンを入れてもらって喜んでいる。
中田先生は皆の様子を満足そうに見ながら、
コーヒーを飲んでいたが、いきなり私の方を見て、

「ママから聞いたけど、
 君は何か妙な夢を見たらしいね」と聞いてきた。

ママは本当におしゃべりだ。
でも、私も中田先生にはいつか
聞いてもらいたいなと思っていたので、
あのデジャブな夢の話を
始めから終わりまで一部始終話した。
犬山さんもリリーさんも
最後まで一緒に聞いてくれたのだが、
犬山さんが首を傾げ、
死刑執行を本人に告げる場面がおかしいと言い出した。
私が、どうおかしいの ? と聞くと、

「私が話に聞いて知っている話と、
 ちょっと違うみたいなので」とすまなそうに言う。

私が、どこがどう違うのかと聞くと、
犬山さんは頭を掻きながら、
いやあ・・・どれも噂で、
本当のところはわからんのでしょうが、と付け加え
どこが違うのかを話し始めた。

「私が聞いたところによると、
 死刑囚ばかり収監してある場所があって
 死刑の執行は本人には直前にしか知らされず、
 夜明け前に刑務官達の足音が聞こえてきたら
 誰かが執行されるということで、
 皆その足音が自分の部屋の前で止まりませんようにと
 祈るらしいです。
 それで、運の悪い人の部屋の前で足音が止まると、
 執行官数人と検察官、
 お坊様か神父様が一緒に部屋に入ってきて、
 法務大臣から執行命令があったことを本人に告げたあと、
 両手錠をかけて刑場に連れて行きます。
 覚悟を決めておとなしくしている人もいれば、
 錯乱して暴れる人もいるそうです。
 そういう時は無理やり
 引きずって行くのでしようね、きっと。
 刑場に向かう階段は俗に言われている13階段ではなく
 17段あるのだと言う説もありますし、
 階段なんぞ無いと言う説もあります。
 でもそれは全国にある刑務所や拘置所によって
 違います。
 それで部屋の中に入ると
 天井から太いロープが吊り下げられており、 
 それを見ただけで、死刑囚は怖気づいて
 失禁までするらしいです。
 そりゃ恐いでしょうね、
 首吊りのロープなんか見せられたら。
 だから刑務官が無理やり首にロープをかけて締めるんです。
 それで急いで合図するんですよ、ボタンを押す係りの者にね。
 5〜6人いるらしいですよ、押す人が。
 もちろん囚人の足元の板がパカッと開くボタンなんですが、
 もちろん開くボタンは一つしかありません。
 誰が押したかわからないように、
 5〜6個のボタンを用意してあるそうです。
 嫌ですものね、
 自分が押したボタンで人が死ぬんですから。
 それで死刑囚が下に落ちてぶら下がるんですが、
 下で待機していた刑務官が
 クルクル回りながら死に掛けている
 囚人の体をおさえて完全に死ぬまで体を引っ張るんです。
 それが何分間なのかは知りませんが、
 医官が心停止を確認して初めて遺体を
 ストレッチャーの上に寝かせます。
 その後死体安置所に運ぶのですが、
 あなたがごらんになったように
 前日に死刑囚が
 自分の執行日を聞かされることはないのではないかと」

犬山さんは、私の顔色を伺いながら話終えた。
そんなことを言われても、あれは夢の中のことだし、
もちろん私は死刑になったことなどないのだから、
わかるわけがないと、犬山さんの意見にムカツキ、
だいぶ険悪な顔になっていることを
自分でも感じていた。

「いや、青年の見た通りだったと思う」といきなり中田先生が言った。

「1970年代の中頃までは彼の見たとおり1〜2日前に
 法務大臣から執行命令が下りたことを
 死刑囚とその家族に知らせて
 最後のお別れを血縁者だけでさせていたんだ。
 それが、どこかの拘置所で自殺者を出してしまい、
 それからは事前に死刑囚に知らせることを
 取りやめにしたんだ。
 犬山さんが言っているのは、その後の
 執行方法だと思うよ。
 しかし、それで良かったかどうかは疑問だと思う。
 いきなりだからね、心の準備も出来ていないのに、
 殺されるんだ。
 そりゃ泣き叫び暴れることもあるだろうよ。
 残酷極まりないやりかただ。
 だから、死刑反対を唱える人達もいるんだが、
 果たして、死刑無くして犯罪を防ぐ手立てが
 あるのかどうかだね。
 でもまあそのことは別として、君の見た場面は
 決してまちがっていないと言うことだ」

〜つづく

ママの店11

その他の作品紹介
2006.05.28. (00:36) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 我が家の猫達&晩御飯&ママの店


我が家の猫達の中で一番小さいトウ。でも気の強さだけは一番だ。
皆が嫌う掃除機に果敢にも戦いを挑んでくる。
そしてどこかで喧嘩が勃発したときは、ピュンとすっとんで行って強いものの味方をする。
おいトウそういうときは弱いものの味方をするもんだ。

今日の晩御飯はカレーだ。久し振りだからとても美味しかった。

 
「ママの店」

ママの店に行った。

今日はカウンタの止まり木が異様に賑やかだ。

「いよっ、青年久し振り」

一番入り口に近い席に座っていた中田先生が
最初に私を見つけ右手を軽くあげた。
濃いブルーのカッターシャツに
細い黒のネクタイがビシッと決まっている。
私も片手を挙げて挨拶し返したとき、

「こんにちわ ! 」先生の横から良太君が顔を出した。

スカイブルーのポロシヤツの胸には、
今こちらのテレビで
子供達に絶大な人気を誇っている勇者キャラが、
ガッツポーズをとりながら貼り付いている。
この前見た時はサッカー少年のような
横縞の服だったし、やっぱり子供だ、
こういう服がとてもよく似合う。

「今日はワンコはどうしたんだい」と私。

言った途端どこからかワンコが現れて、
ハッハッハッとせわしく息を吐き出しながら、
私のスニーカーの臭いを嗅ぎ回りだした。

「あっ、こらワンコ」と良太君が怒ろうとしたが、

私は、かまわないよと言いながら
しゃがんでワンコの頭を撫でてやった。
でもワンコはよっぽど嬉しかったらしく
長い舌をベロンと出して私の顔をひと舐めしたので、
私は慌てて立ち上がった。
このタイミングを逃すと、私の顔はワンコに舐め尽され、
よだれでベタベタにされてしまうのだ。
ワンコは良太君に捕まえられ、
膝の上に抱き上げられた。

「あのう・・・ずいぶんとご無沙汰しちゃいました」

その声は犬山さん、本当に久し振りだ。
しかし、私は犬山さんを見て、
挨拶より先にまず着ている服のことを聞いてしまった。

「犬山さん、その服は・・・」

犬山さんは薄いブルーのジャケットから
たっぷりとある真っ白なレースを溢れさせ、
結婚式の若い新郎さながらの格好をしていた。
しかし犬山さんには悪いが、背もさほど高くはないし、
色白だが眉も目も薄い。
たとえて言うなら生焼けのたこ焼きのような
ツルンとした犬山さんの顔に全然似合っていない。
いや、犬山さんじゃなくても、
こんな舞台衣装のように派手な服、
普段着にするには非常に無理がある。

「ね、綺麗でしょう ? 私が選んでさしあげましたの」

今初めて気がついたが犬山さんの隣に、
袖口をふっくらと膨らませたピンクのドレスを着た
フランス人形のような女の子が座っている。

思い出した・・・

「君はあのときの」と私。

「はい。いつぞやはリンゴを拾ってくださって
 ありがとうございました」

この前リンゴが入った籠を抱えて店に入ってきた女の子だ。
メロンソーダを注文した後、
手を滑らせてリンゴを床にぶちまけた。
いつの間に犬山さんと、と考えている時
犬山さんがほんのりと赤く顔を染めて話だした。

「彼女リリーちゃんて言うんです。
 あれからずっと仲良くして頂いて、
 買い物などにも一緒に行ってもらってるんですよ
 男一人では、何にもわかりませんからね」

犬山さんがちょっと照れの入った流し目でリリーさんを見る。
私は背中がゾクッとしたが、
リリーさんは犬山さんを見てニコニコ笑っている。
蓼食う虫も好き好きってか ? これは二人の問題だ。

「ママ、今日は超満員だね」と私は気分を変え、
カウンターの中にいるママに声をかけた。
きょうもママは黒のドレスに、いつものネックレスだ。
私はチラッと石が赤に変わっていないかを確かめる。

「あんたも早く、ここに座んなさいな」

ママがニコニコ笑いながら、リリーさんの隣の椅子を指差した。

テーブルの上には、いろいろな形の美味しそうなパンが
大皿に盛り上げられている。

「うわっ、中田先生のパンだ」

私が嬉しそうな声をあげると、中田先生も嬉しそうな顔をした。

「さて、全員揃ったことだしコーヒーでもいれましょうか。
 良太君は何にする ? 」とママが言うと、良太君は迷わず

「クリームソーダ」と大きな声で答えた。

〜つづく

ママの店11

その他の作品紹介
2006.05.27. (00:04) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(0) /
 我が家の猫達&ママの店


大きなチンパンジーの縫いぐるみを買った。
小学校の低学年の子供くらいの大きさだ。部屋の中で袋から出した途端
我が家の猫達の毛が逆立った。得体の知れない動物を連れてきたと勘違いしたようだ。傀儡師(人形使い)のようにチンパン君を抱きかかえ、手足を動かすと猫達がシャーと威嚇する。それがおもしろくて何回もやってやったが、そのうち縫いぐるみとバレて、もう見向きもしてもらえなくなった。
今度オシッコされるわ・・・娘がボソッとつぶやいた。


「ママの店」

昭日町の自宅にいた。
今何時頃なのだろうか、窓を見ると外が真っ暗になっている。
机の上にある白いペンギンの置時計を見るとまだ三時になったところだ。
あれ ? まだこんな時間なのにおかしいなと思っていたら、
いきなり雷が遠くで鳴った。
こりゃ雨かな、でもそれにしても暗すぎる。
これじゃまるで夜中の三時だ。
二時間前に昼ご飯を食べた。それからずっと本を読んでいた。

「メビウスの切れ目」という本で、前に予約してあったのが
今朝やっと届いたのだ。
メビウスの輪を道に例えると果てしの無い無限だが、
その輪を切ってしまえばどうなるかという話。
メビウスの輪はネジってつなげてある為に、
辿って行っても終点が無い。
それならその輪を断ち切ってしまえばどうなるか、

ただの真っ直ぐな道になり、当然終点が来る。

そう考えるのが普通だが、その切断面がとんでもない世界に
つながるのだという話。

また雷が鳴った。
一回目は遠くに聞こえたゴロゴロがだんだん近づいてくる。
こりゃ嵐になるなと思っていたら、
いきなりザーッという激しい雨音。
窓の下辺りで丸くなっていたゴンがムクッと起き上がり、
私の足元から机の下に入り込んだ。
なんだ、ゴン恐いのか ? と覗き込むと、
ゴンは大きな目を開け、私を見あげてニャーと鳴いた。
カーテンを閉めようと立ち上がり窓に行くと、
外に何やら大きな灰色の物体が見える。
ギョッとして恐々だがしっかり窓に顔を近づけると、
外はもう雨など降っておらず、いつの間にか音も止んでいる。
トンガリコーンにしぼり出された
ソフトクリームのような形をした灰色の物体が、
プカプカと浮いている。
しかも、それは一つではなく、空一面を覆い隠すくらいの数だ。
二昔ほど前に流行ったUFOかも知れないと一瞬思ったが、
もしそうなら今こっちの世界が宇宙人に、
襲撃を受けようとしているのではないかと、
とんでもない想像をして恐くなった。
その時いきなりドンッという大きな音がしたので、
目を凝らすと、閃光が広がった一帯が白く煌々と輝いている。

宇宙戦争が始まった・・・

まだ店で仕事をしている両親のことが心配になり、
外へ出てみようとドアをそろりそろりと開ける。

・・・えっ ?

なんと外は上天気で青空が広がっている。
もう一度中に入り、窓から外を見てみると
やはりあの物体が依然そこにある。
もう一度ドアを開けて外を見る。
素晴らしい上天気だ。
灰色のソフトクリームなど一つも無い。

やっぱりこっちの世界は考えられないことが普通に
起こる世界なんだ。
わかっているけど、また驚かされた。


ママの店11

その他の作品紹介
2006.05.26. (00:04) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 我が家の猫達&ダイエットな食材


チャオは一昨年ゴンが逝ってから、急にイライラするようになった。
チャオに限らず、クロだってゴンがいなくなってから何か様子がおかしくなった。皆同じくらいの年齢でゴンの死が初めての経験だったからだろうか、動かなくなったゴンの側に行き最後のお別れが出来たのはナナだけだ。そのときばかりは日頃あばれてうるさい連中が、嘘のように静かだったのを覚えている。


エリンギと筍の焼き物と蒟蒻とピーマンのチリソースあえ。ワカメ納豆。ご飯一膳。他にエビフライを作ったが、私はそこまで到達出来なかった。今日も美味、娘よサンキュー。


我が家はマンションで、年に二回ほど設備点検がある。明日がその日だ。エライコッチャ掃除をしなくては・・・と各自の部屋の大掃除。
ついでに夏物を出したれと思ったから「ママの店」がまた休業になってしまった。まっ、ハリーポッターも読みたかったし休業日も必要だ。
明日からはがんばりまっせ。

・・・お知らせ・・・・

ママの店のお話が一区切りしましたので、HP上に移動しました。
ブログに書いたものを読みやすく校正しております。

ママの店11

本日の「ママの店」は休業いたします。
またのお越しをお待ちしております。
                     店主敬白

その他の作品紹介
2006.05.25. (00:10) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 いびきをかく猫達&ダイエットな食事


我が家の猫達は皆けっこう年だからなのか、よく寝る。
それにいびきがもの凄い。子猫の時はスースーと寝息も可愛いもんだったが、今やグオーッーとかクカーッとかまるで猛獣が吠えているように聞こえる。写真に写っているのはフクだが、どうしてこんなにブサイク
に写ってる・・・私の撮り方が悪いんだとしか思えない。本当はもっと
とても可愛いフクちゃんなのだ。ホント


昨日に続いて今日も豆腐を使ったダイエットメニュー。
長女作だ。豆腐だと言うのでてっきり普通の奴豆腐だと思ったが、
昨日のハンバークも今日のギョウザも厚揚げを使用しているらしい。
豆腐は水切りが大変なので、水分の少ない厚揚げを使う。
揚げの回りにある茶色い部分をこそげ取り、白い部分はつぶして茶色の部分は細かく刻む。それとミンチ肉適量(好み)玉葱、卵をよく練り、
塩コショウで味付けして餃子の皮に包む。焼くのはもちろん米油。
もう一品はレタスとブロッコリのサラダ。レタスは少なめ。
ご飯一膳とワカメ納豆。ダイエットの時はご飯とワカメ納豆を主に食べて、他のおかずは食べられるだけで良い。体調良好、髪の毛生き生き。

・・・お知らせ・・・・

ママの店のお話が一区切りしましたので、HP上に移動しました。
ブログに書いたものを読みやすく校正しております。

ママの店11

本日の「ママの店」は休業いたします。
またのお越しをお待ちしております。
                     店主敬白

その他の作品紹介
2006.05.24. (00:38) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 「ママの店 11」をHP上にUPしました。


我が家は15階建てのテッペンに住んでいる。最上階に住んでいるのは我が家と隣だけ。隣の住人は何故かほとんど住んでおらず、
厳密に言えば15階には我が家しかないのだ。ウチと隣のベランダには
薄い壁がある。ある日ナナがベランダに出て隣に行ってしまった。さあ大変だ、隣は留守。へたに呼んでベランダの手すりに乗られたらエライコッチャ、落ちれば必ず死ぬ高さだ。
壁を乗り越えたものの、戻ってこれなくなったようで、ナナはか細い声で私を呼ぶ。壁の下側に隙間があって、なんとかそこから戻れぬものかとナナは頑張ったが、鼻先くらいしか突き出せない。そこで一か八かナナの私に対する信頼に賭けて見た。移動用のプラスチックの籠にロープをくくりつけ、壁の向こうに垂らしたのだ。もちろん籠の蓋は開けてある。「ナナ、お前なら出来る。中に入れ、そして動くな」そう言うと
何とナナは籠に入りじっとしてくれているではないか。私は慎重にロープをスルリスルリと引き上げ、無事ナナを救出することが出来たのだ。


今日の晩御飯はまた姉娘が作ってくれた。
お豆腐たっぷりのハンバーグだ。お豆腐の水切りをしっかりして、トリミンチと卵、玉葱、パン粉少しを良く練り混ぜる。味付けは薄く塩コショウで、米油でパリット両面焼いてある。好みで食べる時醤油をかけてもよい。長女は私より料理が上手い。ご馳走様、美味しかった。

・・・お知らせ・・・・

ママの店のお話が一区切りしましたので、HP上に移動しました。
画像はまだですが、一応UP出来ましたのでまたそちらもご覧ください。
ブログに書いたものを読みやすく校正しております。

ママの店11

本日の「ママの店」は休業いたします。
またのお越しをお待ちしております。
                     店主敬白

その他の作品紹介
2006.05.23. (00:17) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ブチ&ママの店&簡単一品(追記の中)


ブチは昔一度大変なめにあった。ドライフードが原因で尿道が詰まり、
膀胱に血尿が溜まった。結局それがきっかけで
我が家の猫達の食事はすべて手作りになったのだ。
ブチの性格は本当に温和だ。ブチが喧嘩をしているところを見たことが無い。いつも静かに自分の前足をチュバチュバと吸っている。
 
         10 11 12 13 14 15 「ママの店」

「もう一つ聞きたいことがあるんだけど・・・」

私は濡れた瞼を指で擦りながらママの顔を見る。

ママは、何 ? とと言うように首を傾げた。

「あのさ、初めてアキラの部屋に入った時、
 アキラの記憶が私の中に入ってきたんだけど、
 父さんと母さんの遺体の第一発見者は私で、
 私が中学の修学旅行から帰った時に
 二人が殺されているのを
 発見したってことを思い出したんだ。
 でも、ママの話だとアキラは17歳で両親を殺している。
 あの記憶は誰の記憶なんだろうか」

ママは親指の爪を噛みながら考えていたが、
やがてフンフンと鼻を鳴らし頷づき始めた。
そして、

「わかったわよ、その記憶はあんたの記憶。
 あんたは中学の時に修学旅行から帰ってから、
 何か心に残るような出来事があったのよ。
 今は忘れているけれど、
 あんたの記憶の奥深くに封じ込まれている何かがね。
 それをダブらせてしまったのよ。
 何回も言ってるように、そこはもともと
 あんたの夢の中なんだからね、
 あんたの記憶が絡みこんできても何ら不思議なことは
 ないはずよ」

私の記憶・・・私もアキラのように両親に何かしたのだろうか。
私は慌てて自分の記憶を辿ってみたが、
思い出されるのは昭日町での生活ばかりだ。
私が難しい顔をして首を捻りたおしている前で、
ママがまた遠い目になっている。

またどこかにトリップさせられる・・・

そう思った時、強烈なめまいに襲われた。
手で瞼を押さえながら頑張って立っていたのだが、
目を開けると、そこはママの店ではなく、
見知らぬ部屋の中だった。
辺りを見回すと私の後ろがドア、
目の前の壁には鉄格子のはまった小さな窓が一つ、
窓の下にある床は板張りになっており、左側に洗面台、
右に蓋のついた大きめの箱がある。
丸いトイレットペーパーが小さな籠に入って
その箱の横に置いてあるから、それは多分トイレだろう。
私の足元には畳が二枚。
右側の畳には布団が一組たたんで置いてあり、
左側にある小さな机には一冊の本とノートが広げられ、
無心に男が鉛筆で何かを書いている。
カタンという音がしたので思わず後ろを振り返ると、
ドアの上部に覗き窓のようなものがあり、
そこから誰かが覗いている。

「山村、また写経をしているのか。
 毎日よく頑張るなあ」

座っている男はヤマムラと言うらしい。
山村は恥ずかしそうに笑みを浮かべ、

「はい、少しでも亡くなった方々へお詫びの気持ちが
 届くようにと思いまして」と言った。

小さな声だったが、落ち着いたしっかりとした言葉だ。

カチャカチャと音がして、入るぞと言う声とともに
中に入ってきたのは、山村よりも十は若く見える副看守長で
独居舎某を受け持つ処遇主任だった。
主任は畳の上に腰を下ろし、胡坐をかいた。
山村は書き物をやめて主任の方を向く。
主任は組んだ足の間に置いた拳を手の平で包みこみ、
とまどったような顔で山村を見ている。

山村はニッコリと笑い、

「来たんですね」と言った。

主任は頷く。

「いつなんですか」と山村。

「明日の朝四時・・・」

主任は心配そうに山村の様子を窺っている。
しかし山村は満足そうな微笑みを浮かべたまま、

「これで、やっとみなさんにお詫びが出来ます」
と言って頭を下げた。

「皆お前を助けようと努力したんだが、
 結局それがお前を苦しめることになってしまったな。
 二十年前、
 最高裁の時のお前の演技は最高だったよ・・・・
 お前の本当の姿を知っている我々ですら、
 あれがお前の本性なんじゃないかと疑ったくらいだ」

主任は泣き笑いのような顔になり、こめかみを爪で掻いた。

「主任さんには大変お世話になりました」

山村は正座のまま畳に両手をつき、深々と頭を下げた。

その時いきなり視界がグニャリと曲がり、私はまた別の
場面に移動していた。

目の前にコンクリートで出来た長い階段がある。
その階段を主任と他数人の刑務官に付き添われた
山村が上って行く。
上りきったところには鉄のドアがあり、
主任が鍵束を出し、鍵穴にその中の一つを差し込んだ。
ドアを開け、山村を連れて中に入る。
部屋の真中あたりに、
先が丸い輪になった太いロープが一本ぶらさがっており、
それを見た山村は、一瞬ビクッと体を痙攣させた。

拘置所所長が山村の前に立ち、

「1250番、山村明良君。残念だが法務大臣から刑の執行命令が来た。お別れです」

と告げると、山村はお世話になりましたと頭を下げた。


「大丈夫か」主任がやさしく山村の背中に手を置く。

「はい・・・」

山村は静かに頷き、
深く息をしてからロープの側まで行った。

「目隠しをさせてもらうよ」

主任が声をかけると山村は静かに頷く。

黒っぽい布の目隠しを施された山村の両手に手錠が掛けられると、
首にロープの輪が被せられた。

山村は背筋をピンと張った。
そしてその瞬間足元の板がパカッと開き、
ガラガラガラという滑車の大音が部屋中に響き渡り、
山村は暗い穴の中に落ちていった。
主任達は慌てて階段を駆け下り、
さっきは気づかなかったが
ちょうど部屋の真下にあたる部屋のドアを開け、
その中に飛び込んだ。

天井にポッカリあいた四角い穴から
燦々と白い光が降り注いでおり、
その中に山村がいた。

すぐに医官が駆け寄り、
山村の心音が無いことをを確かめると、
全員で山村を抱きかかえ、首からロープをはずし、
台の上に寝かせた。
医官は検視を終えると、山村の手を胸の上で組ませてやり、
後ろに下がった。

全員が手を合わせ山村の冥福を祈っている。
主任が
「ご両親に会いに行けよ・・・」と言うと同時に、

すすり泣きが聞こえてきた。

胸に突き上げてくる感動に耐え切れず、
私は拳を目に当て、おんおんと泣いた。

そしてもう一度目を開けた時、

ママの店に戻っていた。

私の目の前にママがいる。

「アキラ君があんたの体から抜けた時はね、
 彼の死刑が執行された瞬間だったのよ。
 死んでから後アキラ君の魂が、
 自分達の所に来る可能性は薄いだろうと、
 彼の両親は思っていた。
 何故なら彼は、とてもじゃないけど
 二人に合わす顔などないと思っているはずだもの。
 だから、あんたにアキラ君を連れて来てもらったのよ。
 両親は彼の死刑が近々執行されることを
 知っていたにちがいないわ。
 だからあんたの夢に入り込んできて
 助けを求めたの。
 でもねえ・・・頼られるっていうことは、
 あんたも何か
 あの人達に縁が深いってことなのよねえ・・・」

ママは心配そうな顔で私を見つめている。
実は私も、初めてアキラの両親の顔を見た時
他人のような気がしなかったのだ。

「そうかあ・・・あの時アキラはやっと楽になったんだ」

私はアキラの死刑が執行された瞬間を思い出していた。

〜つづく
作品紹介
続きを読む
2006.05.22. (00:10) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 カスガ&ママの店&簡単一品


カスガは最近妙に貫禄が出てきた。以前は他の猫達の機嫌を伺い、
仲間に入れてもらおうと努力している姿が痛々しかった。
今では仲間のご飯は横取りするし、機嫌が悪い時は側にいる猫を
無差別に殴っている。あの可憐なカスガはどこへ行ってしまったのだろう・・・


牛蒡天(おでんに入れる練り物)を斜め切りして米油で焼く。さっと湯にくぐらせたシシ唐を加え、強火にして醤油を回しかける。絶品。

         10 11 12 13 14 「ママの店」

「ママ、私はあの時犯人に体当たりをしたんだ。
 それに親を目の前で殺されたショックで
 犯人の顔をボコボコに殴った。
 アキラが犯人なら、
 私が殴ったのはいったい誰だったの ?
 私の中にアキラが入っていたんでしょ、
 私が私を殴れるわけないよね」
 
ママは口元に笑みを浮かべた。
それはとてもやさしい微笑みだった。

「あの時あんたは、隣の主人の中に入っちゃったのかも。
 ほら、隣の主人が奥さんを殺された怒りで
 アキラに掴みかかっていったじゃない。
 だからその一瞬、隣の主人の中にあんたが
 入ったのかもね」

「何かものすごく複雑なことになっていたんだねえ」

私の口から溜息が出る。
そして、また妙なことを思い出した。

「あのね、もう一つおかしなことがあったんだ。
 あんなに楽しく食べたり飲んだりしていたのに、
 玄関のベルが鳴り出したとたん、
 親達は私に知られたくないような顔をして
 固まっちゃったんだ。
 二人ともなかなか出ようとしないから、
 私が、出ようかって聞くと母さんが、
 あんたは隠れていなさいって、私を台所の隅に連れて行った」

私はそれも疑問の一つだった。
アキラが犯人なら、私に隠れていなさい
はないだろう。

ママは小首を傾げ、それはね・・・と説明し始めた。

「ベルを鳴らしたのは、隣の夫婦。
 アキラのお母さんの悲鳴と物音を不審に思った
 隣の夫婦がベルを鳴らしたのよね。
 アキラの両親は我が子を殺人者にしたくなかった。
 だから隣の夫婦からアキラを隠そうとしたの」

「えっ、だってもう二人とも死んじゃってるじゃない。
 今更隠したって無駄じゃないか。
 それに、アキラのせいで隣の夫婦も死んだんだし、
 そんなのおかしいよ」

私は素直に疑問を口にしたつもりだったが、
ママの眉間に少し皺が出来た。
怒らせたかなと思いドキドキしたが、ママは
怒らず話を続けてくれそうなのでホッとした。
 
「親心なのよ。アキラの両親はアキラのことを
 可哀相だと思っていたのよ。自分達がもっと
 息子の心を思いやっていたら、息子は親殺しの
 大罪を犯さずにすんだんだってね、だから
 あんたの体の中に入っているアキラに伝えたかったの。
 私達はお前を恨んでないんだよってね」

何となくわかるような気がしていた。
死んでもなお、息子を隠してやりたかったんだ・・・
私は思わず目頭が熱くなり、グッと息を詰まらせた。

〜つづく 
作品紹介
2006.05.21. (00:50) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ナナ&ママの店&ヘルシー晩御飯


私がお風呂場を洗っていると、ナナも一緒について来る。
お風呂に非常に興味があるようで、風呂桶の中まで覗き込む。
ナナは可愛い。
外出先から帰って来ると、迎えに出てくれるのはナナだけだ。
こんなに可愛い猫なのに、どうして猫の中では浮いているのだろう。


今日は娘がスモークサーモンを買ってきた。
カニのマヨネーズあえと一緒に食べた。とっても美味だった。

         10 11 12 13 「ママの店」

ママの話が続く。

「少年の両親は、息子が好きで勉強をしているんだと
 思い込んでいたの。だから、いつも励ますつもりで、
 頑張れ頑張れと言い続けてきたんだけど、
 彼にはそれが重荷だった。
 結局彼は勉強以外に何も楽しみを持てなかった。
 ちょっとテレビに夢中になっていたら母親が側に来て、
 『あらっ勉強はもうすんだの ? 』って聞いてくる。
 もちろん悪気はないんだけれどね。
 彼はそこで、
 『今はテレビを見てるんだよ』って
 言えれば問題なかったんだけど、言えなかったのよ。
 母親だけじゃない、彼の周りの者は皆、
 彼はくだらない遊びなんてしない、
 勉強が趣味なんだって思っていたの。
 だから、誰も彼を誘わなかった。
 友達も出来ないで、毎日家と学校の往復だけ。
 これがどれほど寂しいことかわかる ? 
 皆べつに苛めているつもりじゃないの。
 彼は特殊な才能の持ち主だから、
 そっとしておいてあげようなんて
 勝手に決めていたのよ。
 それがどんなに彼を孤独に追いやり苦しめていたか、
 誰も気づこうとはしなかった。
 彼は自由になりたかったの。
 でも、親は愛情という鎖で
 彼をがんじがらめにしていたから、
 家を出て一人になることも出来なかった。
 だから、殺してしまうしかなかったのよ」

私はママの話を黙って聞いていたが、
だんだん腹がたってきた。

「そんな自分勝手なことで、あの父さんと母さんを
 殺したなんて、信じられないよ。
 それで、何で隣の夫婦まで殺したの ? 」 

私が聞くとママは目を閉じ、
まるで今その映像を見ているように話し出す。
 
「彼が両親をバットで殴るとき、悲鳴とか物音が
 すごかったわ。
 それを聞きつけた隣の夫婦が、何事かと思って
 やって来たのよ。
 玄関ベルが鳴った時、彼は慌てて遺体を近くの部屋に
 引きずっていったんだけど、
 玄関の鍵があいていたものだから、
 隣の夫婦が入ってきてしまった。
 まず奥さんの方が悲鳴をあげたの。
 それを聞いて彼はパニックを起こしバットを
 振り回した。殺すつもりはなかったんだけど、
 バットが奥さんの頭を直撃したの。
 金属バットだから、当たれば即死よ。
 それで主人が逆上して彼に掴みかかって行った。
 それでもみ合いになったんだけど、
 運が悪かったとしかいいようがなかったわね、
 下駄箱の角で頭を打ち付けて死んじゃったのよ」

「えっ、それじゃ隣の夫婦に関しては過失じゃない」

と私が言うと、ママはまた寂しく首を横に振った。

「そうなんだけど、彼がそう言わなかったの。
 僕が殴り殺しましたって言ったのよ。
 遊ぶ金欲しさで親を殺したのを目撃されたから、
 殺したんだって言い張ったのよ」

ママはそう言うと目を両手で覆いながら
とうとう泣き出してしまった。
私はママが泣くのを見ながら、どうすることも出来ず、
ただカウンターの上にあったタオルを渡すのが
精一杯だった。

「ママ、ほらタオル・・・」

ママはありがとうと言ってタオルで目を押さえた。
それからタオルをじっと見て、

「これ・・・雑巾・・・」と言い、私を見た。

ゲッと思ったが、ママはまだ少年への思いで
心がいっぱいになっていたから、それ以上何も言わなかった。

「で、何でアキラは殺意を否認しなかったの ?
 ノイローゼだと言えば、少年だから刑も軽く
 すんだのではないのかな・・・」

私が言うと、ママは

「アキラ君はね・・・
 死刑になりたかったのよ。
 自分の犯した罪を償いたかったの。
 もちろん死んで償えるものではないと
 わかっていたんだけど、
 大事な親を殺して、他人の夫婦まで死なせた以上
 絶対死刑になろうと心に決めていたの。
 弁護なんて何もしてほしくなかった。
 出来れば一刻も早く殺してほしかったの。
 だから死刑になるように、
 悪い態度ばかり取り続けていたのよ。
 弁護士達は彼が嘘を言っていると見抜いていたの。
 だから、何とか減刑になるように頑張った。
 結局それがあだになっちゃって、
 40年という長い年月
 彼を苦しめることになってしまったのね。
 彼は裁判の時は悪魔を装い、
 独房で一人になった時には
 壁に向かって手を合わせて泣きながら詫びていたの。
 40年もの間ずっと自分の親と、隣の家の夫婦にね」

私は頭をサンドバックに強烈にぶつけたような
ショックを覚えていた。

〜つづく 
作品紹介
2006.05.20. (00:08) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 オムツは嫌だ!チャー&ママの店&晩御飯 


チャーはいまだに尻癖悪く、オムツを穿かされている。
相棒のシマジロウがオムツ無しのときはいっそう機嫌が悪くなる。
しかし、なあ・・・紙オムツも結構高いのだ。
出来れば早くはずれてほしいと私も思っているよ。
チャーのこの顔はどう見ても、あきらかに不満バリバリの顔だ。



今日の献立。
玉葱とミンチのオムレツ茄子のソテー添え。ホーレンソウのおひたし。冷奴。ワカメ納豆。ご飯一膳。
気のせいか、顔の小じわが減った。体重も少しづつ減少。ワーイ!

         10 11 12 「ママの店」

私はあの家で起こった殺人事件のことを
一部始終ママに話した。
もちろん私が後味の悪い思いをしていることもだ。

ママは最後まで黙って話を聞いてくれたあと、
私の目を見つめて、静かに口を開いた。

「つまりあんたは、たとえ親子三人巡りあえても、
 殺人犯がどうなったかわからないから
 気分がすっきりしないんでしょ」

私はまったくその通りだと言わんばかりに頷く。

「犯人があの後どうなったか知りたい ? 」

もちろん聞きたいよと、私はまた頷いた。

「犯人はあの後、つまり夫婦を殺してから、
 悲鳴を聞いて駆けつけた隣の夫婦まで殺しちゃったのよ」

えっ、隣の夫婦まで・・・・?
私はますます犯人が許せなくなった。

ママの話が続く。 

「犯行時少年は17歳の未成年だったけど、
 事件があまりにも凶悪だった為、成人してから
 もう一度裁判にかけられて何年も審議を繰り返した末に、
 死刑が確定したのが事件から20年後、
 それから20年間死刑は執行されなかったんだけれど、
 とうとう昨日の朝早くに執行された。
 少年はもう57歳、随分長い年月だったわね」 

ママの声が震えているのがわかる。

あの野郎が隣の住人まで殺していたなんて
知らなかった。

「あいつは本当に殺人鬼だったんだね。
 死刑になって当然だけど、
 なんで40年も生かしておいたんだろう。
 まあ、多分弁護士が
 精神鑑定に持ち込んだんだと思うけどさ」
 
ママはもう今にも泣きそうな顔になっている。
きっと殺された人達のことを
可哀相だと思っているんだ・・・

「犯人の目的は何だったのかなあ。
 遊ぶ金目当てかな、
 それとも恨み・・・ってことは
 ないよね。あの親子は本当に仲良しで
 いい人達だったんだもの」

私がしみじみと思い出すように言うと、
ママはたまらず大粒の涙をこぼしながら
ゆっくりと話始めた。

「少年は自分の親を殺したのよ。
 親が一人息子に期待をかけすぎたの。
 息子は小学校の頃から成績優秀で、
 一生懸命親の期待を裏切らないように
 頑張ってきたんだけど、
 勉強のやりすぎでとうとう
 ノイローゼになってしまったのよ」

自分の親 ? 息子が犯人 ? 

私は思わず耳を疑った。

〜つづく 
作品紹介
2006.05.19. (00:34) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 箱入り息子のシュウ&ママの店&晩御飯 


amazonで予約していたハリーポッターが今日届いた。
空き箱大好きの我が家の猫が、さっそくかわりばんこに中に入った。
始めは仲良く入っていたのだが、最後にはとうとう争奪戦に発展して、
どうやらシュウが入る権利を獲得したようだ。



本日の晩御飯。
サンマの塩焼き。里芋、厚揚げ、豆腐の煮物。ほうれん草おひたし。
ワカメ納豆。ご飯一膳。
体調すこぶる良好。
ワカメなんぞで髪の毛は生えないと言われているが
そうでもなさそう・・・
完全に毛が無い頭皮に、いきなり生やすのは無理かもしれないが、
抜け毛が少なくなり、艶が良くなるのはホント。

         10 11 「ママの店」

しばらくママの店に行っていない。
ママの店どころか、デジャブにかかりきりになって、
家の外すら出ていなかった。
当然買い物にも行ってないから、
冷蔵庫には何も無いだろうと思い覗いてみたら、
牛乳や卵、ハム野菜などいろいろ入っている。
きっと父か母が入れといてくれたんだろう。

牛乳を開けてパックごとグビグビと飲む。
冷たい感触が喉に心地よい。
1リットルのパックの半分以上を一気飲みした後、
ジーパンを穿いたまま寝ていたことに気がついた。
上は下着代わりの白いTシャツを着ている。
でもまあ、子供じゃあるまいし、
寝る前にいちいちパジャマなんか着なくてもいいだろう。

私はゴンにも牛乳をやろうと思った。

ゴンを呼ぶと、今までどこにいたのか、
ニャーと鳴きながら走って来る。
ゴン用にしているパンダの絵が描いてある
お椀に牛乳を入れてやると、
ビチャビチャと激しい音を立てて飲みだした。
どうも、ゴンは昔からこういう飲み方をする。

お前はちっとも変わらないなあ・・・

ゴンの体を撫でてやると嬉しそうな顔をして
一瞬だけ私を見たが、
すぐにまた必死に牛乳を飲み始めた。

私はTシャツの上に
クリーム色の厚地のトレーナーを重ね着した。
胸に大きな数字のワッペンが貼り付いている。
13という数字は何の数字だろう・・・
玄関横にある姿見に全身を写して
一瞬そんなことを考えたが、
すぐにどうでも良くなった。
まあ、無地では愛想がないから
適当な数字をくっつけただけなのだろう。


外は上天気で、久し振りのそよ風が気持ち良かった。
今日の海の色は、美しいエメラルド色だ。
波が穏やかなのを確かめてから、
私はママの店に向かった。

海が荒れている時はママの機嫌が悪い。
そんな時にうっかり行くと、
とんでもないめにあわされる。
普通でもちょっぴり意地悪なのに、
機嫌が悪かったら、
確実に私はママの鬱憤晴らしのターゲットになる。
うへぇ・・・想像しただけでも
恐ろしい。
そんなことを考えているうちに、
いつの間にかママの店に着いていた。

「あらっ、だいぶお疲れの顔ね」

ママがニコニコ笑って迎えてくれた。

「えらいめに遭っちゃったよ」と私は言い、
いつものソファーに座る。

今から、あのデジャブの夢の話を
ママに聞いてもらうのだ。

〜つづく 
作品紹介
2006.05.18. (00:01) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 シュウ&ママの店&晩御飯


猫の後姿はおもしろい。
丸い背中にシッポ・・・まるで
エジプトのスフィンクスのように、
どっしりと固まって動かない。
でも、こうやって高い場所で固まるのは良いが、
台所で食事を作っている時に、
足元でうずくまるのだけはやめてほしい。
スリッパを履いた足で踏んでしまいそうになるからだ。



今晩のおかず。
薄切り蒟蒻の焼肉風(モヤシのソテーとネギ添え)。
ワカメ納豆。ほうれん草のおひたし。ご飯一膳。
蒟蒻は薄く切ればなお美味しい。茹でたものに片栗粉をまぶし、
米油で焼く。カリカリに焼いて、チリソースであえてもいいし、
辛いのが嫌なら砂糖醤油で甘辛い味をつけても美味。


         10「ママの店」

昭日町の自宅にあるベッドの中で、
目覚めた私は溜息ばかりついていた。
デジャブな夢のせいで、眠っていたのに
眠った気がしない。
それどころか長い旅から、
帰って来たような疲労感がある。

「本当に夢なんだよな・・・」

思わず口にしてしまい、
夢の中で夢を見ていて、
夢なんだよな、はないだろうと
苦笑した。

それにしても後味が悪い夢だった。

そうだ、いつまでもダラダラと寝ているから
ダメなんだ。
私はベッドから出て、洗面所に顔を洗いに行った。
洗面所は私の部屋の向かい側にある。

この家の造りは、
あっちの世界の家の造りと似ている。
初めてこっちに来た時も、
いきなりこの家の中だった。

今日はよく、あっちの世界を思い出す。
やはり、デジャブのせいだろうか・・・

風呂場の脱衣場兼洗面所の隣はトイレ。
私の部屋の両隣にも部屋があるが、
その日によって中身が変わるので要注意だ。
この間なんか、
保育園らしき所に繋がっていて、
子供がいっぱい遊んでいた。
でも、そこはやはり異次元らしく、
空の色が異常に蒼かったのを覚えている。
保育園の先生達は
スカイブルーのワンピースの上に
真っ白いエプロンをつけていた。
先生達は園庭で遊んでいる子供らを
見守っていたのだろうが、
ドアを開けたとたん、
私の顔を見て露骨に嫌な顔をした。

そんな顔は無いだろうと私は言いたかった。
こっちも気分が悪いわい。
だってここは私の家だろうが。

まあ・・・
とにかくこっちの世界では、
自分の家と言えども、やたらドアは
開けないほうがいいみたいだ。

両親は二階にいる。
現実ではもちろん
もう会うことの出来ない両親だ。

家の中はとんでもなく広く、
どこがどうなっていて、
どんな場所に繋がっているかわからない。
ドアも数箇所あって、私がママの店に行ったり、
昭日町商店街に出かけたりするドアは、
私の部屋を出て左にあるドアだけだ。

〜つづく 
作品紹介
2006.05.17. (00:56) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 カリン悪い子&ママの店


我が家の猫達にご飯をあげるのは、朝と晩の二回だ。
朝は人間が私だけしかいないので、
猫どもが私を馬鹿にして、したい放題する。
特にお盆にお椀を12個並べ、ご飯を盛っている時は
絶対そこから離れられないことを猫どもは知っている。
そんな時にナナを一緒にしておくと
確実に苛めのターゲットになるので、
いつも襖一枚隔てた別の部屋にかくまっている。
その襖にはガムテープまで貼っていたのに
今日は最悪なことが起こった。
カリンがガムテープを巧みに剥がし、
部屋に特攻を仕掛けたのだ。
私が手を離せないのを知った上での凶行だ。
カリンはナナの左目を怪我させた。
もう少しで失明するところだ。
ナナは母親なのにと私は悲しくなる。
でも、いくらカリンを怒っても仕方ないのだ。
猫の世界に手出しは出来ない。いくら飼い主であってもだ。

         「ママの店」

みごとに手ごたえがあり、
ふいをつかれた男は、グッと息を吐き出し
体をくの字に曲げ、
私の頭を腹にめり込ませたまま、
どおっと床にひっくり返る。
同時に男の手から金属バットが吹っ飛び、
下駄箱の上にある金魚鉢を叩き壊し、
玄関ドアにぶち当たった後、
地面に落ちて転がった。

私は男の体に馬乗りになり、拳骨を堅め何度も顔を殴った。
鼻骨が砕けて、顔が血膨れして化け物のように変わっても、
私は殴るのをやめなかった。

やがて男が動かなくなったのを知ると、
私は母の側に、ペタリと座り込んだ。

母が焦点の合わなくなった目で、私の顔を見ている。
私は膝の上に母の頭を乗せ、震える手で母の瞼を閉じた。

私の体の中で、
心が粉々に壊れていくのがわかる。
泣くまいと堪えれば顔中の血管が膨れ上がり、
眼球を取り巻くどこかの血管が切れたのだろう、

正に血の涙を流しながら、
私は奈落の底に落ちていた。

普通なら背後に忍び寄る男の気配を
察知することが出来ただろう。
しかしその時の私には、
母のことしか見えていなかったのだ。

意識を取り戻した男が、
バットを拾いに行ったことすら知らなかった。

・・・・・

目が覚めると、頭がズキズキ痛んだ。

どうやらあの男が生きていて、
油断した私は殴られたようだ。
これが現実なら、

私は多分もう生きてはいまい。

そんなことを考えているうちに、
意識がまた遠くなっていった。

気がつくと暗い一本道を歩いている。

まただ・・・・

これで三回目のデジャブだ。
畑と畑の間にある道の前方に
小さな明かりが見えて来た。

虫の声がして来る。

明かりの中にポツンと家が見えている。

家に行くとベルが鳴り、母が出て来る。
今度もテーブルの上に、
焼き鳥と卵焼きとビールが用意されているのだ。

どうする・・・・

今回で決着をつけたい。
それにはまず、誰が何の目的で私を
デジャブさせているかを考えねばならない。

私に何かして欲しいのか、さもなくば、
私を通して何かを訴えたいかだ。

グズグズしていると
家が自分のほうからやって来る。
私は今までの経過の中で、
何か変わったことが無かったかを考えた。

父と母に殺人鬼が来ることを説明しても、
きっとまた声が出ないだろう。
父と母が死ぬという運命は、
変えることが出来ないのだ。

その時、はっと気づいたことがあった。

一回目に、両親が殺された後、
自分の部屋の机の上にあった写真には
私の顔だけが無かった。
それは何を意味しているのだろう。
両親の死が事実だとしたら、
息子である私だけが、
まだ生きているということか ?
ひょっとしたら犯人を捜してくれという・・・
いや、そんなことではないように思える。

それじゃ・・・あっ、もしかしたら・・・

「ここは死んだ者達が、
 必ずしも一緒に来られる場所ではないの。
 でも、もしお互いが会いたいと心から願ったら、
 会うことが出来るのよ」

私はママの言った言葉を思い出していた。
中田先生は良太君と会えた。
私もゴンに会えて今一緒に暮らしている。

「そうだ・・・ボクは死んだんだ。
ボク一人生き残ったのではなかった。
あの時、父さんと母さんが殺された後で、
ボクも同じように
殴り殺されていたんだ・・・」

私の心の中で、別の誰かがつぶやいた。

いつの間にか家が私の側に移動してきている。

私は迷わずドアを開けた。
中に入ると、廊下に血の跡があり、
それが自分の部屋まで続いている。
私は迷わずその部屋に入った。

目の前に父と母が立っていて、
ニコニコ笑いながら私を見ている。

その時私の体から、スウッと何かが出て行く気がして、
いきなり目の前に学生服を来た少年の背中が現れた。
少年が私の方を振り返り、
恥ずかしそうな顔をして頭をペコリと下げた。
そして両親の側に行き、今度は三人揃って
私に向かって頭を下げた。

「ありがとうございました。
 お陰様で、家族三人揃いました」

口は動いてないのに、
父さんの声がはっきりと私の耳に聞こえて来る。

そして三人の姿は少しづつ私の前から消えていった。

誰もいなくなった部屋の中、
私はもう一度机の上にあるあの写真を見に行った。

するとその写真の中で、
さっき恥ずかしそうに私に頭を下げた少年が、
両親の間に挟まれて、
嬉しそうな笑顔を浮かべて写っていた。

〜つづく 
作品紹介
続きを読む
2006.05.16. (00:06) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 ブチ&美味なるモノ発見 !


ブチ達兄妹は皆大型猫で、
昔全員体重が八キロを超えていた。
その時猫達のご飯は市販のドライフードと缶詰だったが、
ブチが尿結石になってから手作りすることに決めた。
一日二回、鰹節を混ぜたご飯に魚の身、
それと寝る前の牛乳タイム。
嘘のようにスマートになり、今ではカスガが一番重い。



今日は長女がおもしろい物を作った。
本当はおでんを作る予定だったが、私はおでんが
いまひとつ好きではない。
そこで、おでんの材料を使ってチリソースあえを作ってくれた。
練り物類も美味しかったが、何よりもびっくりしたのは
コンニャクだ。言わなかったら何かわからない。
極上のお肉の脂身を料理したのかなとも思えるほど、
コンニャクの食感と味が素晴らしかった。
練り天の方は、油抜きをしてから一口大に切る。
コンニャクは味がしみるように切り込みを入れ、
やはり一口大に切る。それを熱湯で一度茹で、
ザルに上げキッチンペーパーで水気を取る。
それから片栗粉をまぶし、米油で炒める。
後は全部の材料を一緒にして、チリソースであえるだけ。
もともとこういう料理があるのかも知れないが、
片栗粉をまぶして炒めたコンニャクとチリソースとの出合いが
こんなに美味しいものだとは知らなかった。


・・・・お知らせ・・・・・

本日「ママの店」お休みさせて頂きます。
またのお越しをお待ちしております。

                店主敬白

作品紹介
2006.05.15. (00:25) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 シュウ&ママの店&晩の食事


何するんだよ ! 飛び上がってこようとする
クロに向かって、シュウが抗議の悲鳴をあげた。
シュウは一人で、いや一匹でカウンターの上を占領したかったのだ。



今日の晩御飯は、ハンバーグ(しめじソテー、サンチュの葉添え)、
冷奴、ワカメ粥、納豆。サンチュの葉はプリーツレタスに似ている。

        「ママの店」

私が玄関に靴を脱ぐと、
母が揃えてくれた。
廊下には香ばしい匂いが立ち込めている。
多分焼き鳥が用意されているのだ。
確かめて見たいという気持ちが先に立ち、
私は足早に廊下を進み、正面のドアを開けた。

思った通りテーブルの上には
大皿に盛り上げられた焼き鳥と、
ビールの大瓶が二本にグラスが二つ、
玉子焼きが並べられていた。

「お腹すいたでしょう、もうちょっと待ってね、
 もうすぐお父さん下りてくるから」

すべての話がさっき見た夢の通りに進んでいく。

母がドアを開け、大きな声で父を呼ぶ。

「お父さん、早く下りてきて」

急いで階段を走り下りてくる音が聞こえてくる。

「アキラか、遅かったな」

ドアを勢い良く開けて入ってきた父は、
嬉しそうな顔をして私の前に座った。

「アキラ、ほらビールを飲め」

父がビール瓶を持ち上げる。
私は慌ててグラスを出す。
なみなみとつがれたビールを
じっと見つめていると、父が首を傾げる。

「おかしいな、お前具合でも悪いのか」

私は無理に笑顔を作り、一気にグラスを空けたが、
何の味もしなかった。

「ほおう、いける口じゃないか」と父が笑う。

「お前は焼き鳥が大好物だったから、
 いっぱい焼いたのよ。たくさん食べてね」

母が焼き鳥を何本か私の皿に入れてくれる。

何で同じことを繰り返しているのだろう・・・
焼き鳥を見つめて私はまた考え込んでしまう。

父がニコニコ笑いながら、

「さっきから何ボーッとしてるんだ、
 もっとくつろげよ」と言う。

「お前少し痩せたねえ・・・」と言いながら
母が横に座り、私の頭を撫で始めた。

「ほらほらアキラ、飲め」

父が私のグラスにまたビールをつぐ。

「キュウリの浅漬けあるけど、食べるかい ? 」

母が笑いながら聞いてくる。

「いや、もう・・・」と私は涙声になる。
殺されたときの母の顔を思い出したのだ。

「なんだ、なんだ、元気がないな。
 母さん、キュウリでもナスでもいいから
 何でもこいつの 好物持ってきてやれ」

父が大きな声を出して愉快そうに笑った。

何もかもがさっきと同じだ。

じゃあ、あの忌まわしい出来事も・・・
そう思った時、いきなり玄関ベルの大きな音が
部屋の中に鳴り響いた。

父と母が黙り込む。

ベルがもう一度鳴った。

誰も動こうとしない。

ベルを鳴らす間隔が短くなってきた。

どうすればいいんだ !

私は頭を抱えてうずくまった。

母が私の腕を掴んでくる。

「お前は隠れていなさい」

そう言いながら母は私を台所に連れて行こうとした。

「嫌だ ! 母さん行かないで、父さんも行っちゃだめだ 。
行けば○○○○・・・? 」

行けば殺されると言おうとしたが、どういうわけか
殺されるという言葉が出て来ない。
父と母は私の存在を忘れたかのように
夢遊病者のように廊下に出て行った。

「行っちゃいけない ! 」

叫びながら二人の後を追い、
私が部屋のドアを開けるのと同時に、
外から男が飛び込んで来た。

男は両手に金属バットを握り締めている。

男がバットを頭上に振りかざす。

「危ない ! 」と私は叫び飛び掛ったが、
状況はさっきと同じで、
目の前にいる私の体を通り抜けて、
バットは父の頭に振り下ろされた。

父が頭から血を吹き上げて床に倒れていく。
次に男は、悲鳴をあげる母の額めがけて
バットを振り下ろす。
瞬時に私は男にタックルをかけたが、
またもや男に触ることも出来なかった。

母は目を開けたまま、
先に倒れている父の足元に崩れるように横たわった。
父と母の頭から吹き出した血が、
驚くような速さで床を這っていく。

また同じことが起こってしまった・・・
この男は二度も私の両親を殺した。

「この野郎 、殺してやる ! 」 

私は叫びながら男に飛び掛ったが、
男の体を素通りして床に叩きつけられた。

私は床に這いつくばったまま男を見ていた。
噛み締めた口唇からは血が垂れて来る。
涙と鼻水で顔中をドロドロにして、
男が父をひきずって行くのを
狂ったような目で追っていた。
そしてついに、男が母の足を持とうとした時、

「母さんに触るな ! 」

腹の底からこみ上げてくる憎しみの叫びをあげながら、
私は男の腹めがけて突っ込んで行った。

〜つづく
作品紹介

2006.05.14. (13:02) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(0) /
 シマジロウ&ダイエット&ママの店


本日の晩御飯。
生サンマ塩焼き。焼き筍、焼きガンモの二種盛り合わせ。
ワカメ納豆。白菜浅漬け。ご飯一膳。
筍とガンモは米油で焼き、塩コショウをした。
上質の油は太らない。でもどんなに良い油でも、
焦がすと悪い油に変わってしまう。
目玉焼きを米油で焼くと、とても美味しい。
卵の焼けた香りと油のいい香りがたまらない。
油本来の香りを知っておけば、
焦げて悪臭を放つ油料理など絶対食べられなくなるはずだ。
油だけはいいものを買い、そして正しく使おう。
よく天麩羅などに使った油を溜めておいて、
炒め物に使ったりするが、ダイエットの時は贅沢をして
新しい油を使うことだ。ダイエットの為に特殊な食品や
サプリを買うくらいなら、そのお金で良い油を買うべし。
今日もとても美味しかった、感謝。



最近シマジロウまでもカメラを意識するようになってきた。
我が家で生まれ人間しか知らないから、我が家の猫達は
なんとなく猫じゃない・・・

       「ママの店」

夢の中でまた夢を見る。
こんなことってあるのだろうかと
考えているうちに、
私はまた眠ってしまったようだ。

気がつくと暗い一本道を歩いていた。
道は舗装されていない地道で周りは畑だ。
暗くてよく見えないが、
ここがさっきも歩いた場所であることは確かだ。

足もとに、淡くぼんやりとした
明かりのスポットがずっとつきまとう。
私の履いているスニーカーの色が黒だと、
かろうじてわかるくらいの明かりだ。
でも、やっぱり辺りを見回しても
明かりになるような物は何もない。
空を見ても月も出ていないし星もない。
何もかもがさっきの夢の通りだ。
どこまでも続く畑と畑の間にある道を進んで行くと、
前方に小さな明かりが見えて来た。

私はまたあの家に行くのか・・・

ジジジジジ・・・・

また虫達が鳴き始めた。

ふと前方を見れば、

明かりの中にもう家がくっきりと見えている。
その家には行きたくない。
あそこで両親が殺されたんだ。
引き返そうと思い後ろを見た。
しかし歩いて来た道はもう消えていて、
深い闇だけが広がっている。

まただ・・・

溜息をついて前を向くと、
いきなり目の前に家が立ちはだかった。
ビックリした・・・心臓が止まるかと思った。

私が行かないから、
家の方からやって来たのだ。

目の前にある家は藍瓦の二階建てで、
白いセメントで固めた塀に囲まれている。
塀と建物の間は人が一人通れるくらいの幅、
門柱に白木の表札が掛けてあるが、
何故か何も書かれていない。

何もかもがさっきの夢の通りだ。

私は入りたくなかったのに、
またもや足が勝手に中に入ってしまう。
玄関の右横にある部屋が私の部屋、
父と母は殺され、そこに放り込まれた。

ふとベルに目が行く。
父も母も死んでしまったのだから、
ベルを押しても誰も出るはずがないと考えていたら、
明かりのついた部屋の中を横切る人影が見えた。

誰だ・・・?
もしやあの殺人鬼がまだ中に・・・
全身に恐怖が走る。

その時いきなり、
ビィーンと大きな音が鳴り響いた。
もちろん私はベルなど押してはいない。
勝手に鳴ったのだ。

殺人鬼が出て来るぞ !

私は思わず身構えた。

するとドアの向こうに人の気配がして、
はい・・・・と言う小さな声。

・・・ ?

ドアが軋みながら開けられ、

「おかえり・・・遅かったね」

そこには母が、
最初に私を迎えてくれた姿のまま立っていた。

「お母さん・・・」驚きと懐かしさで後の言葉が続かない。

「どうしたのよ、早く入りなさい」

母はやさしく私の腕を持ち、

「お父さん、アキラが帰って来たわよ」
と奥に向かって声を掛けた。

〜つづく
作品紹介
2006.05.13. (13:17) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 贅沢ダイエット&ママの店


我が家の猫達の中で一番立派なシッポをもっているクロだ。
別名「コン棒のクロちゃん」



本日の晩御飯、マーボーナス(豆腐、春雨、鳥ミンチ、茄子)。
海老と玉葱のマヨネーズあえ、スモークサーモン、レタス一枚。
ワカメと納豆の出し醤油あえ。ご飯一膳。
絶対ご飯とワカメ納豆だけは完食する。
私は、ご飯が無くなったら、その時点でゴチソウサマだ。
オカズはご飯の友的存在だと思っている。
ご飯を食べ終わっているのに、
まだ物足りないからと言ってオカズに手をのばすのは良くない。
私は足が浮腫んだなと感じたら、即刻ダイエット食にする。
食べて二日くらいすると、オシッコが沢山出るようになる。

      「ママの店」

私は部屋の中を見回した。
六畳くらいの部屋の壁紙は
白地にごく薄い茶色のストライプが入っている。
部屋もきちんと整頓されていて、
とても落ち着いた感じだ。
ドアから見て右にある窓には
薄いがしっかりとした生地の
色無地のカテーンが掛かっており、
色はクリーム色。
玄関ドアの右横にあった部屋だ。
窓枠にくっつけるように、
小学校の時から使っている勉強机があり、
机の上には緑色のマットが敷いてある。
右端には地球儀と筆箱。
正面の本立ての部分には、
学校で使う教科書とか参考書の類が
きちんと整理して並べてある。
左側には家族で熱海の温泉に行った時、
通りすがりの人に撮ってもらった
親子三人の写真が飾られてある。
あんなにやさしい両親を殺した犯人が憎かった。
思い出すと、すぐに目に涙が溢れ出す。
写真立てを持ち、父と母の顔を見た。
私を真中にはさんで三人仲良く写っている。

・・・?

その時私は妙なことに気がついた。
両親の顔ははっきりと写っているのに、
私の顔がノッペラポウになっている。
まるで顔の部分だけきれいに切り取ったようだ。

何故だ・・・・何で私の顔が無い。


私は昭日町の自宅にある
自分の部屋のベッドで目が覚めた。
考えてみれば私は最近目が覚めて、
現実の世界に戻ったことがあるのだろうか。
もう久しくあっちの世界に
戻ったことがないような気がする。
目覚めるのはいつも、昭日町の自宅だ。

昭日町と言う町は現実には存在しない。
私はこの世界ではまだビジターだと
ママが言っていたから、
死んではいないらしいが、
ひょっとしたら事故か病気で今、
仮死状態にあるのではないか。

ベッドの中でいろいろ考えていた。
何の為にこんな状態に自分は置かれているのか。
そもそも私はいったい誰なんだろう。
現実の自分は男  ?  それとも女 ?
だいたい何で私は自分をワタシと言う・・・
もちろん男でも自分をワタシと言うことがある。
ワタシは本当に男なんだろうか。
こちらの世界での私は大学生だ。
じゃあ、あちらの世界では何なのだろうか。
さっきまで見ていた夢のせいもあるのだろうが、
今日はいろいろ疑問ばかり出て来る。

〜つづく
作品紹介
2006.05.12. (00:21) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /