
クロは飛びつくのが大好きだ。とくに台所で飛びつくのが好きな為
火や包丁を使う調理中は大変恐い。目を合わさなければ飛びつかないだろうと考えたが、そんなものお構いなしだ。危ないのできつく叱ったら、腹がたったのかドアめがけてジャンプを繰り返す。ジャンプして後ろ足でドアを蹴るのだ。まるでオリンピックの選手みたいに技が決まっているではないか。

山芋と鳥ミンチのつくね、サヤインゲン添え。山芋の皮を剥き、細かく叩く。ミンチ、葱、片栗粉、醤油を混ぜてよく練り、米油でこんがりと焼く。さっと塩ゆでしてサヤインゲンを添える。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 「ママの店」
昭日町の自宅のベッドの上にいた。
膝の上ではゴンがゴロゴロと喉を鳴らしながら
気持ち良さそうに寝ている。
私はさっきママの店で、
中田先生から聞かされたことを考えていた。
『君は偶然にこちらの世界に来たんじゃない。
つまり、何かの意志によって引き寄せられたんだ・・・』
何かの意志って何だろう・・・
確かにいろいろな事件に巻き込まれて、その度に何かを
勉強させられているような気がする。
そうだ・・・忘れてた・・・
私は母の部屋で見知らぬ老婆を見て気絶した。
それから、いつの間にか自分の部屋に運ばれていて、
ママ達が来て見つけてくれたんだった。
父さんと母さんが運んでくれたんだと思うけど、
ベッドじゃなく床だったのが気になる。
今何時だ・・・
鳩時計を見ると今まだ六時少し前。
よし、今から店に行って父や母に聞いてみよう。
私はゴンをベッドの上に下ろし、店に向かった。
こちらの世界で夕方六時頃といえば、
海は黒く静かになり海蛍が光り始める。
ポツポツと黄色い光りが点在し始め、
陽が完全に落ちた頃には海の色が金色に変わる。
今はまだ薄暮で、辺り一面薄紫の光に包まれて、
街灯の白い光りが点々と灯り、
一種独特の幻想的な世界を創りあげている。
プアーンといきなり大きなクラクションを鳴らし、
ショッキングピンクの丸みを帯びた乗用車が
テールランプの光りの尾を長く引いて走り抜けて行った。
景色を楽しみながら歩いているとママの店の前に来た。
中でママが客の相手をしているのが、
ドアについた飾りガラスごしに見える。
カウンターにいる赤いワンピースを着た女性は
私の知っている人だろうか、
体をよじって背中を向けているからよくわからない。
でも私はママの店に来たんじゃなくて、
もうちょっと先の商店街の中にある、
両親の店に行くのが目的なのだ。
私は少しだけ心を残してママの店を通り過ぎた。
〜つづく
ママの店11 その他の作品紹介
2006.06.07. (00:23)
小説 文学 /
TRACKBACK(-) /
COMMENT(-) /
▲