筆者  活動状況  オンライン小説  新刊+出版本  更新情報 ブログ
メルマガ Link HOME MAIL


fc2-BlogRanking   Blog Entry
管理人

樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

    モバイル版を開設しました!
月別ログ
カテゴリ
最新記事
コメント
トラックバック
リンク




2006.06

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30

オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達の食事&ママの店&


ブチはいつも何かを考えているような顔をしているが、案外何も
さほど考えてもいない気がする。温和でめったに喧嘩もしないし、
引っかいたりもない。ただ、ダッコしている時いきなり喉を噛まれた
ことがあり、それ以来出来るだけ顔を近づけないようにしている。
頚動脈でも食いちぎられたら、それこそスプラッターホラーだ。
悪気がないのはわかっている。でも何故噛むのかがわからない。
ちなみに兄弟であるクロも噛み付くくせがある。
噛まれた瞬間引くと傷が深くなると言われるが、
噛まれてじっとしておれなんて無理な話だ。


我が家の猫達の食事だ。十二皿のご飯に鰹節をまぶし、
魚の缶詰を添えるのだが、一日二回毎日だから
これがまた大変な作業だ。まるで給食だなと思う。
この後人間の食事の用意があるのだが、
力が尽きて作る気がなくなる。主人と子供だけ食べさせておけば
私なんかどうせ家にじっといるだけなんだからべつに何でも
かまわないじゃないかと思ってしまうのだ。
そしてだんだん食欲がなくなり、恐怖の夏バテが始まる。

 「ママの店」

ママの店を出てから、まずどこへ行こうか迷ったが、
とりあえず浜辺に行ってそれからということにした。
店を出て右に行くと広い車道がある。
それを向こう側に渡るともう浜辺なのだ。

歩きながらもずっと考えていた。
昭日町に来てからもうだいぶ長いが、
私の行動範囲は限られていて、一番遠いところで
電車に乗っていく大学。
それも、授業が終われば寄り道せずに
すぐにまた同じ電車に乗って帰ってしまう。
学校の周りにも昭日町と同じように公園もあれば商店街もあり、
映画館などの遊戯施設、公共施設があるに違いない。
人によっては自分の住んでいる町の隅々まで知っていたりするが、
また一方では会社や学校と、自宅の往復だけで
日々終わっている人もいる。私はたぶん後のほうだろう。

浜辺に腰をおろし目を閉じる。
ザーッという波の音に心の隅々まで洗われて、
涙が頬を伝い落ちていくのがわかる。
その涙の理由を考える間もなく、
いきなり心臓をわし掴みされるような苦しさに襲われ、
私は砂の上に両手をつき、激しく咳き込んだ。

砂を握り締める拳に涙がとめどなく滴り落ちて、
慟哭が、これでもかこれでもかと胸の奥底から突き上げてくる。
苦しみに耐えようと、必死にもがいていると、
頭の中にママの声が聞こえてきた。

「何を我慢しているの、心ゆくまで泣けばいいのよ。
 苦しむことは何もないの、
 ここでは誰もあんたを咎めないし笑いもしないわ」

ママの声を聞いて安心したのか、
私の苦しみは潮が引くように消えてゆき、代わりに
どっと疲労感が押し寄せてきた。

「ママ、もう疲れちゃって泣く力もないよ・・・」

砂の上に大の字になり、空を見上げてつぶやいた。
白い羽をキラキラと銀色に光らせた鳥の群れが、
紺碧の空をゆっくりと進んで行く。
ぼんやりと眺めているうちに
やがて私は深い眠りに落ちていった。

〜つづく

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

その他の作品紹介
2006.06.29. (00:49) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
ハレルヤ

Copyright © 2004 Powered by FC2 All Rights Reserved.
Photo by Wisteria Field  Template by lovehelm