
このシュウの顔がたまらなく好きだ。もう八歳にもなろうというのに
シュウは子供の頃から少しも変わらない。親バカちゃんりんでそう思う
だけなのかもしれないが、私にとってはどの猫も皆まだ子猫だ。

いつもなら、このスペースには晩御飯の写真を載せることにしている。
しかし夏になると私の食欲は激減し、写真に撮ったところでそれを
食べるとは限らないのだ。今日も家族はオムレツとサラダ。
ヒジキの煮物とちゃんと食べたが、私は冷やしうどんですませた。
昔はこんなことはなかった。何でも好き嫌いなく夏でも冬でも
モリモリ食べることが出来た。
いつからこんなふうになってしまったのだろうな・・・
1 2 「ママの店」
どれくらいの間私は眠っていたのだろう・・・
しかし何の夢も見た覚えがないし、
ただ、ポッカリと目が開いて、周りの景色が見えたと
いうだけの感覚しかないのだ。
眠るというより意識を失くしていたといったほうが
適当なのかもしれない。
しかも今回は何処かにトリップしたわけでもなさそうだ。
私はまださっきと同じ場所にいる。
違っているのは空の色が紺碧から薄い青になり、
エメラルドグリーンだった海が紫に変わっていることだけだ。
今何時頃なんだろう・・・
ここに来た時はまだお昼にもなっていなかった。
いつもなら腕にはめている時計も
今日は学校に行かないからしてきていない。
とはいっても過ぎた時間を計るのだけが目的であれば、
こちらの世界の時計はまったくもって役にたたないのだが。
あちらの世界では右回りにしか進まない針が、
こちらでは左回りにも進んでいく。
つまり、あちらの世界では未来に向けてしか時を刻まない針が、
こちらでは過去に向かって時を刻みだすことがあるということなのだ。
時間があって無い世界に私は存在している。
ただ考えられることは、三時間は寝ていた。
空と海の色がそう物語っている。
青い空はやがてピンクになり、海は黒に変わっていく。
それがこの世界での夕暮れなのだ。
しまった・・・ママとの約束を破った。
待ってるからね、と言ったママの顔を思い出す。
それじゃ、ひょっとして
海が黒ずんでいるのはママの怒りのせい・・・
思ったとたんに身震いをしてしまった。
しかし、何であんなに悲しかったのだろう、
いや、あれは悲しみというよりも苦しみだった。
ママが声をかけてくれたから良かったものの・・・アレ ?
あっそうか・・・
私が苦しんでいるときママが声を掛けてくれたんだ。
それなら私が店に戻れなくても、怒っているはずがない。
海の色が変わっているのはもう夕方に近づいているからだ。
ママのことは解決できたが、あの苦しみだけは思い当たることがない。
考えても考えてもわからないのだ。
記憶のかわりにしこたま溜息を吐き出し、
背中の砂をはらい落としながら、私はようよう腰をあげた。
今から両親の店に行こう・・・・
何故か急に親の顔が見たくなっていた。
〜つづく
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