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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&夏の一品


チャコとナナの仲が悪いのには、ほとほと閉口する。
ナナは出来るだけ目を合わさないでおこうとするのだが、
チャコがわざわざ忍び寄り喧嘩をふっかける。
そりゃナナは育児を放棄したかもしれない。でも何も苛めなくても
いいのではないかと思うのだ。お互い年をとってきたし、
家族なんだから仲良くしてほしいもんだ。


天神祭りが近づいてくると食卓にハモが並ぶ。
ハモは身も皮も美味しい。今日は湯引きハモの梅肉あえ。
皮は刻んでキュウリの輪切りと土佐酢であえれば美味しい。
      「ママの店」

彼女の顔を確かめようと前に回りこんだとき、

「それじゃあ、そろそろ行こうか」

男が腰をあげ、
女は横に転がっていたパンプスを拾って履いた。

「夜明けまでに行かなくちゃいけないからね、
 もう少しの辛抱だ」

男が女を気遣うように言うと、女は黙って頷いた。
でも休んで少し元気になったのか、
二人の足取りはさっきより軽くなっている。
どこに行こうとしているのだろうと考えながら、
彼らの後について歩いていると、
微かにザーッという波の音が聞こえてきた。
近くに海があるらしい。
上り坂ということは二人の向かう先は崖・・・・
そうか、身投げしようとしているのだ。
さっき休んで蓄えたエネルギーでは足りなかったのか、
二人の息がまた荒くなりだした。
無言のまま女を抱くようにして男が歩く。
おそらくその先には二人の終焉の場があるにちがいない。
この世で幸せになれなかった分あの世で絶対幸せにと
見詰め合う目と目が囁きあう。
ザーッ・・・という波の音が
何度も耳の中に飛び込んでくるようになった頃、
どうやらやっと目的の場所に辿り着いたらしい。
抱き合った二人は足を止め、黙って前方を見ている。
この先に何がある・・・?
二人の前に出た途端私の背筋が凍りつく。
道が私の足先三十センチほどから無くなっており、
もう一歩進めば危うく落ちるところだった。
下を覗き込んでも真っ暗な闇しか見えないが、
波の音が下からあがってくるので、
今いるところは切り立った崖の上ということだ。
遥か下にはゴツゴツとした岩があるのだろう、
岩に波がぶち当たる激しい音がしている。
落ちたら岩の上にグシャッか・・・痛いだろうな・・・
でも、うまくいって海の中に落ちたとしても死は免れない。
だからこの場所を選んだんだろう。
暗澹たる思いで二人を見ると、二人とも
今からやろうとしていることがどれほど恐ろしいことか
まるきり解っていないみたいに平気な顔をしており、
女の方は微笑みすら浮かべている。
死を覚悟をするということはこういうことなんだと、
私は初めて知った。

「しずえ・・・」男が女の名前を呼んだ。

しずえって言うのかと思い、女の顔を見ると、
そこにはまぎれもなくママがいた。

やっぱりママだったんだ・・・
私は今ママの過去の世界に来ている。

「しずえ、たとえ今のこの身は死んで無くなっても、
 僕は未来永劫君を愛し続けるからね」

男の目はとてもやさしかった。

「えいじさん、私もよ。何度生まれ変わっても
 あなたの側にいたい・・・」

感極まった二人は両の目から涙を溢れさせ、
激しく抱き合う。

ママがしずえで、夫がえいじ・・・
二人は命を掛けて愛しあっている。

私の胸の中に猛烈な嫉妬心がムクムクと湧き上がったが、
次元が違うので二人を引き裂く術も無い。

〜つづく

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.05. (00:45) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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