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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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2006.07

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


朝昼は何かと忙しく猫達の写真を撮るのはどうしても
夜になってしまう。
たまに昼ご飯の後写真を撮ろうとしても
猫達は夜のようにじっとしていてくれない。
我が家の猫は人間と同じような生活リズムで、
朝昼はいろいろと用事(探索とか悪戯)があるみたいだ。
夜はご飯を食べてテレビでも見たらもう寝る準備を始める。



       「ママの店」

「じゃあ、そろそろ行こうか」

えいじはしずえを抱きしめていた腕を緩めた。
お互いを見つめ合い、頷いて二人は前を向く。
死の淵を前にして、恐れがまったく無いはずがない。
二人の足が微かに震えているのがわかる。

「やっぱり紐を持ってくれば良かったわね。
 飛び降りた後で離れ離れになっちゃうわ、きっと」

しずえが不安そうにえいじの顔を見る。
えいじはゆっくりと首を横に振り、やさしく微笑んだ。

「そんなものいらないさ、
 僕は君を抱きしめたまま飛び降りるからね。
 落ちてから体が離れ離れになったとしても、魂は一つさ」

そんなえいじの言葉に、しずえはとても嬉しそうな顔になった。
死を目前にしているからこその会話だとわかっていても、
私の胸の中で嫉妬が強烈に燃え狂う。

くそ・・・

「死んですべてを終わりにするなんて卑怯者のすることだ。
 本当にお互いを愛しているなら、生きる術を考えるべきだろう」

大声で喚きながら両手を広げ二人の前に立ちはだかったが、
二人には私の声も聞こえないし姿も見えていない。

えいじがしずえの手を握り、私の体を通り抜けて一歩前に進み出る。
しずえが目を閉じたその瞬間私は二人を引き戻そうとした。
そんなことをしても無駄だとわかっている。
でも、止めずにはいられなかったのだ。
やはり何の感触もない、もうダメだ !
あきらめかけたそのとき、えいじの体が後ろにのけぞった。
またもや奇跡が起こってくれたと喜びかけたとき、

「え・・い・・じ・・さ・・・ん ・・・ 」

長い言葉の尾を引いて、しずえは一人暗い奈落の底に落ちていった。
なんてこった、私はえいじだけ助けてしまったのか !?
肝心のしずえを死なせては何にもならない。
でも、すぐにえいじが後を追うだろう・・・と思ったが、
えいじは崖っ淵から下を覗き込み、そのままクルリと向きを変えた。

おいっ、お前飛び込まないのか !

私はえいじの胸倉を掴もうとしたが、
やはり今度も服に触れることすら出来なかった。
えいじが上着のポケットから煙草の箱を取り出し、
一本抜いて口に銜え火をつける。

「紐があっちゃ困るんだよ・・・」

煙を吐き出しながらえいじがつぶやく。

どういうことなんだ・・・
考える間もなく、何者かが草むらをかきわけて
こちらにやって来る気配がした。

追っ手だな・・・ さあ、えいじどうするんだ、
死に損なった為にお前は今から地獄を見るんだぞ !

たちまちえいじは五人の男に囲まれる。
派手なシャツを着た男どもは、どいつもこいつも
普通の職業ではありえない風体をしていた。
こいつらが今まで二人を追いかけ回していた連中なんだろう。
男どもの中でも一際目立つ、
頭をツルツルに剃った四十がらみのデブ男が、
ガムか何かをペッと吐き捨ててからえいじの前に出て、
崖の淵から下を見下ろした。

「うまくいったようですね」と男がつぶやくように言うと、
えいじは吸い終わった煙草を捨て、靴で踏みにじった。

「死体は無事見つかるでしょうな・・・」と男がえいじの顔を見る。

「下は岩場だ。ちゃんと確かめてある」

えいじは男の顔を見もせず、冷たく凍った能面のような顔で言った。

「えいじさんも酷いお人だ、あんな上玉もったいねえ・・・」

頭ツルツルのデブが上目遣いでえいじを見ると、
えいじは薄い唇を歪ませ、フンッと鼻をならした。

「女は俺の為に喜んで金に変身してくれるのさ。
 しずえは三千万の札束になってくれたんだ、俺の為にね」

黙って聞いていた私の怒りが頂点に達していた。
こいつはしずえに三千万の保険をかけていたんだ。
今までにも、結婚しては妻に多額の保険を掛けて殺していたのだろう。
言葉巧みにしずえに近寄り結婚して、
頃合を見はかり友達の借金の保証人になったと嘘を言う。
仲間のヤクザに芝居をさせて取立てに来させ、
逃げ回らざるをえないように追い込んでいく。
どこに逃げてもすぐ見つかるのは当たり前だ。
こいつが居所を教えていたんだ。
自分の美貌で女の心を奪い、命までも差し出させるなんて・・・

許せない、こいつは人間の皮を被った化け物だ !

〜つづく

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.06. (00:33) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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