
暑くなってきたから、そろそろ猫達をお風呂にいれてやらないと
いけない。クロ以外はとても入れやすいのだが、
クロはすぐに爪を出すし、噛み付くから恐ろしくて大変だ。
頭の良い子だから、自分は風呂に入れてもらっているとちゃんと理解してはいるようなのだが・・・
多分シャワーが嫌なんだと思う。しかし、かといって湯船に泳がすわけにもいかないじゃないか、犬とちがって猫はとてもやりにくいなあ。
1 2 3 4 5 6 7 8 「ママの店」
こいつを許すわけにはいかない。
チクショウ !
こいつに触れることが出来ればいいのだが・・・
今一度奇跡が起こらないものだろうか・・・
ママ、力を・・・と叫びかけて私は言葉を飲み込んだ。
しずえがママの過去だとすると、ママはりょうじを殺すのに
手を貸してくれるだろうか。
いや、それよりもママがまだ
りょうじを愛していたとしたらどうなるんだ。
りょうじをママのいる世界に送り込んだら、
またママとのラブロマンスが再開するのでは、
いやいや、そんなことはあるまい。あいつは悪人だ。
でも、今まで数知れぬ女を騙してきた男だから、
今度もまたママを騙すかもしれない・・・
ママはこんな男のことなんか忘れるべきなんだ。
さまざまな思いを頭の中で駆け巡らせていたとき、
私の横にスッと誰かが立った気配がした。
誰だろうと思い気配がした方に目をやった瞬間、
ブワッと全身の毛が逆立った。
そこにはグジャグジャに潰れて果肉がとび出した
スイカのような頭をした女が立っていたのだ。
手も足も関節の部分から骨が見えていて、
白が真っ赤に変わったワンピースからは
血がポトポトと滴り落ちている。
これは、しずえ・・・?
赤黒い果肉の中に埋もれている白い眼球が二つ、
キョロキョロとせわしなく動いて辺りを見ている。
確かに岩場に転落すればこんな悲惨な状態になるだろう。
側にいるものの正体がわかると、
私の中から恐怖が少しづつ消えていった。
「し、しずえ・・・さん ? 」と私が声をかけると、
首がこちらを向き、その勢いで片方の眼球がポトリと下に落ちた。
アッ・・目が・・と思った時にはもう
腰をかがめてソレを拾ってしまっていた。
条件反射とは恐ろしいもので、私には他人が落としたものを
拾ってあげるという行為が身についてしまっているのだ。
でも不思議なことに気持ちが悪いとも思わない。
それどころか自分のしたことがおかしくてたまらなかった。
ひんやりとして弾力性のある眼球を手の平に乗せ、
彼女に差し出す。
「どうぞ・・・」と言ってしまい、また苦笑してしまった。
彼女はボロボロになってしまった痛々しい腕を伸ばし、
私の手のひらから目玉を受け取ると、
元あった辺りの肉の中にズブズブと埋め込んだ。
「ありがとう・・・」彼女は小さな声を出した。
私は彼女がえいじに復讐するつもりなら
協力しようと思っていた。
「・・・で、どうするの ?
えいじを崖から落とすんなら手伝うよ」
「ありがとう・・・お願い」彼女はそう言って、
えいじに向かって歩きだす。
そうこなくっちゃ !
私と彼女が進むほどに足元の草がサワサワと音をたてる。
その気配にえいじがこちらを向いた。
えいじは目を見張り、大きく口を開ける。
驚いた顔が恐怖に引きつるのは一瞬だった。
こいつにも彼女が見えているんだ・・・
ざまあ見ろ、今こそ自分のしてきたことへの罰を受けるんだ。
私はウォーと叫び声をあげながら、
恐しさのあまりに硬直しているえいじに向かって突進して行った。
私の手がえいじの腕を掴む、
もう片方の腕にはしずえさんが絡みつく。
崖っ淵を目指し、二人でえいじをズルズルと引きずりはじめると、
えいじは狂ったように暴れて抵抗したが、
私と彼女がガッチリ掴んで離さない。
その光景はおそらく、周りで見ている男どもにとっては
とても奇妙なものであったに違いない。
「たっ、助けてくれ ! 」
口をあけたまま呆然と突っ立っている男達に向かって
えいじが必死に助けを求める。
はっとして我に返った男達がえいじの体に飛び掛ったが、
一瞬ギョッとした驚きの表情を見せてから、
ギャッと叫んで飛びのいた。
どうやらこいつらにも恐ろしい彼女の姿が見えたらしい。
「邪魔をするとお前達も殺すよ・・・」
男達に向かって彼女はゾッとするような冷たい声を出したが、
その拍子に外れた顎が、
血のこびりついたホッペタの皮一枚でブラリとぶら下がった。
彼女が動くたびに顎が左右に揺れて、
黒く変色した長い舌がベロンと剥き出しになる。
そんなものを見せられたら
誰でも恐いなんてもんじゃないだろう。
案の定男どもは、もはやえいじを助けることなど
頭からブッ飛んでしまい、さまざまな奇声をあげながら、
蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
今や私は、しずえとママが同一人物であることに
確信を持っていたので、
ママが連中を驚かせる為に
わざと顎をはずしてブラブラさせたんだと思うと、
なんだかとてもおかしくて、笑いを噛み殺すのに苦労した。
でも、ここで笑うと発狂したかと思われそうなので、
誤魔化す為に一発えいじの足を蹴飛ばした。
うぅっ・・・とえいじが唸る。
ほえっ、感覚があるんだ ! そう思うとますます愉快になり、
続けさまに何発も足といい、腰や股間やらを思う存分蹴りまくる。
えいじはもう口から泡を吹いて悶絶寸前だ。
「ちょっと、あんたやりすぎじゃない ? 」彼女がボソッと口にした。
〜つづく
(ママの店12前編) (ママの店12後編)その他の作品紹介
2006.07.07. (00:38)
小説 文学 /
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