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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


チャオは子猫のときから一番の美形で、末が楽しみだと思っていた。
性格も温和で、おっとりとして
食の方もガツガツしたところがなかった。
それがいつからかは忘れたが、ちょっとしたことで
ヒステリックに叫ぶようになり、機嫌が悪いときは手当たり次第
仲間を殴ったり噛んだりするようになった。
でも皆知らん振りで、また始まったかというような態度で
相手にしないようにしているから、
チャオは大抵一匹孤独に佇んでいる。どうしてこんなことに
なってしまったんだろう・・・チャオに限らない、カスガだって
クロだって皆どこかおかしくなった。
どう考えてもゴンの死が原因としか考えられないのだが・・・
ペットに死なれた飼い主がペットレスになることはよく聞くが、
仲間の死が猫達に陰を落とすことがあるのだろうか。

          「ママの店」

崖っ淵に引きずってきたえいじを突き落とそうとした時、

「ちょっと待ってくれ、
 最期に一言だけ君に言っておきたいことがある」

てっきり気絶しているかと思っていたえいじが、
ヨロヨロとしずえに向かって手を延ばした。
どうせ命乞いだと思った私は、

「この期に及んで見苦しいぞ、お前は今まで何人の女を
 こうやって殺してきたか思い出してみろ。
 お前に騙され、殺された彼女達の悔しさがわかるか」

私が諭すようにえいじに言うと、
何とえいじは油断していた私の隙を突き、
死に物狂いで手を振り解き、
いきなり地面に両手を突いて土下座した。

「しずえ、許してくれとは言わない・・・ただひたすら
 君に謝るしかないと思っている。すまなかった。
 僕は今まで何人もの女を殺してきた。
 死んだ彼女達には申し訳ないが、一人とて心から愛した人は
 いなかったんだ。
 だから後悔は無かった・・・君に出会うまでは」

えいじは涙に濡れた目でしずえを見た。
しずえの姿はまだ血まみれの恐ろしい姿のままだったが、
えいじの言葉に動揺しているのが感じられて
私はとても不愉快になった。
この男はしずえがまだ心の隅で自分を愛していると知っている。
このままえいじに喋らせておくのは絶対に良くない。

「だ・ま・れ・え、え、え・・・」

私は渾身の力を振り絞り、いきなりえいじの体を持ち上げて
崖から放り投げた。
笛を吹くような悲鳴をあげてえいじが落ちて行く。

「あの世で皆に謝るのが筋だろうが、アバヨゥ ! エロ男」

私のいきなりの暴挙を止める間もなく、
しずえはまるで空気が抜けた風船のようにしゃがみ込んだ。

「しゃ・・・喋らせてあげても、良かったんじゃない ? 」

恨めしげに私を見上げるしずえに、
私は怒りを込めて言った。

「君はまたあいつに騙されるところだったんだよ、
 いいかげんに目を覚ましなよ。あいつの性根は腐っているんだ
 それよりも早くあいつのところに行って死んだかどうか確かめる
 のが先じゃないのか」

「そうね、あなたの言う通りよ・・・」

我に返ったのかすぐさましずえはえいじの後を追い、
暗黒の深淵の中に吸い込まれて行った。
私もしずえに続いて飛びかけたが、
グジャグジャに潰れたしずえの頭を思い出し、
恐怖で足がすくんで飛ぶことが出来ない。
小心者の根性無し、私は両手の爪で頭をボリボリ掻きむしり、
飛ぶことも出来ない自分を責めた。
その時いきなりどこからか突風が吹いてきて、
私の体はすくい上げられるようにして地面から離れ、
やがてゆっくりと下に落ち始めた。
不思議と私の心から恐怖が消えていた。
それは落下速度が緩やかだったこともあるが、
私はママの存在を全身で感じていたのだ。
ママが私を下に降ろしてくれている・・・

〜つづく

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.08. (00:18) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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