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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


梅雨時は人間にとってはジメジメして部屋の中がとても不快だ。
しかし猫達は雨だろうがカンカン照りだろうが何か遊びを見つけてはそれに没頭している。昼間書き物をしていたらいつの間にか私の周りから猫どもが姿を消した。もちろん居心地のよい場所がそれぞれ皆違うから、姿を消すことはあるのだが全員いなくなることはまあ無い。
猫どもが台所を遊び場にするのが恐い。
包丁をいれてある引き出しをあけていたりするのだ。
本当は書き物に集中したかったが、気になって仕方がないので
猫探しの為に部屋を出た。あちこちの部屋を覗くがヤツラはいない・・・あっ、と思い風呂場に行くと、洗剤などを収納している開き戸の中に探検部隊が入り込み、外で見張りがちゃんといる。
どうやら今日の遊びは風呂場の探検だったみたいだ。

          10「ママの店」

ゴツゴツとした黒い岩肌と、轟音を響かせて岩にぶち当たる
白い波が見えてくると、私はゆっくりと岩の上に着地した。

しずえさんはどこに行った、いや・・・えいじの死体はどこ ?
暗い闇の中目を凝らし辺りを見回すと、
私が着地した地点から数メートル離れた岩の上に
横たわる二つの体が見えた。

岩から滑り落ちないように気をつけながら、
這いつくばってその場所に近寄ると、
白いワンピースを着た方がしずえさん、
その真横にうつ伏せになって妙な方向に手足を曲げて
横たわっているのがえいじに違いない。

落ちる角度とか場所とかが少し違っただけで、
全然別の場所に着地するものなのに、
しずえさんがえいじを引き寄せたのか二人並んで倒れている。

たとえ騙されて殺されたとしても消えない愛を、
愚かだと言ってしまうのにはあまりにも哀しい現場だった。

しずえさんはどこに行ったんだろうと思い辺りを見回す。
しかし、しずえさんの姿はどこにもない。

再びえいじと一緒になれたことで安心して、
行くべき所へ行ってしまったんだろうかと思うと、
私の胸の中にまた嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。

あのズルイえいじのことだから、
今までしてきた悪事を都合よくチャラにして
しずえさんとまた仲良く一緒にいるのかも・・・

いや、いや、いや、私は嫌な想像に突き当たり一人首を振る。
えいじはしずえさんを酷いめにあわすかも知れない。

生きている時は幽霊を恐がるが、
同じ幽霊になってしまえばこっちのもの。
私がえいじを蹴飛ばしたりした恨みまで
しずえさんに晴らそうとするかも知れないのだ。

そう考えると居ても立ってもおられなくなり、
しずえさんの死体を揺さぶり、何度も名前を呼んだ。

しかし、死体は動きもしないし何も語らない。
あたりまえのことなんだけれど、じわりと
悲しみが胸の奥底からこみ上げてくる。

涙が溢れてとまらなくなり、私はおんおんと声を上げて泣いた。

どれほどの時間そうしていたかわからない。
もともと時間なんてあって無い世界に存在しているのだから、
あれからどれだけの時が過ぎたなんてわかるわけがない。

ただ、この苦しみはここに来る前に浜辺で味わったものに似ている。
あのとき、わけもなく胸の奥底から突き上げてきた慟哭の苦しみは
今のこの状況を予知していたのだろうか。

「ママ ! 僕はどうすればいいんだ・・・」

怒涛逆巻く海に向かい、私は泣きながら叫びつづけていた。

〜つづく

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.09. (00:13) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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