
晩ご飯はまだかいなあ・・・クロの顔がそう言っているみたいだ。
調理している時は台所に入ると怒られるから、少し遠いところから
さりげなくチラチラと見ている。しかし今日はご飯の前にイロイロ
つまみ食いをしていたぞ〜。メロンパンをちょっとカジリ、牛乳も
飲んでたなあ・・・それでしっかりご飯も食べた。
人間と同じで、おやつは別腹かいなあ・・・
別荘1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 「ママの店」
「あの・・・どうかなさったの ? 」
悲嘆にくれる私の耳にいきなり女性の声がした。
ギョッとして声がした方を見ると、
しずえさんとえいじの死体の横に蜃気楼のような
二つの影が揺れている。
よく見ると片方はまぎれもなくしずえさんで、
もう一方はえいじだ。
ぼんやりと透けているのを別にすれば、
しずえさんは生きていたときの美しい姿に戻っている。
「しずえさん・・・もう会えないかと思った」
私が手で涙を拭いながらそう言うと、
しずえさんはニッコリと笑った。
「助けてもらって、
お礼も言わずにどっかに行っちゃうなんて、
そんなことするわけないでしょ。
ありがとう・・・本当に感謝しています」
しずえさんは膝の所で両手を揃え、頭を下げる。
「そんなこと・・・どうでもいい」
私の言葉にしずえさんは
えっ ? というような顔をして首を傾げる。
私はべつにお礼を言ってもらいたくて探していたんじゃない。
私はしずえさんにもう一度絶対会わなくてはいけなかった。
その理由の一つはえいじをどうするかだ。
「その男をどうするつもりなの、まさか一緒にずっと
いるつもりじゃないだろうね・・・」
私は目を細め、えいじを睨みながら言った。
えいじは自分が死んだということがまだよくわかっていないのか、
キョロキョロと辺りを見回したあと、
自分の手の平を裏や表に返しながら見つめて首を傾げている。
「この人の心には大切なものが欠けているの。
だから何度生まれ変わっても同じことを繰り返すわ。
だから、もう生まれ変わらないほうがいいのよ」
月の光りでも反射したのか、しずえさんの目がキラリと光る。
何でこんな男の為に泣く・・・私の怒りにまた火がついた。
「生まれ変わらせない方法なんかあるもんか、
君はこの男をまだ愛しているから
手元から離したくないだけなんだ !
女ってバカだね、
騙されても殺されても目が覚めないんだから」
私が吐き捨てるように言うと、
しずえさんはとても悲しい目をした。
しかし私の言葉がさらに彼女を責めたてる。
「何度生まれ変わっても同じだって ?
そんなことなら知ってるよ、ママに聞いたからね。
それならせめて、
こいつの為に殺された人達のもとに送り込んで、
その人達に裁いてもらうのが一番いいんじゃないか、
まさか君みたいにまだこいつを愛しているなんて
思っちゃいないと・・思う・・・」
そう言いながらも私の心に不安が過ぎる。
果たしてそうだろうか、殺された女達はこの男を
まだ憎んでいるだろうか・・・まさかと思うけれど
彼女達の心がしずえさんと同じだとしたら、
責めるどころか逆にこの男に群がって、
愛してるだの会いたかっただのと大喜びするかもしれない。
それじゃまるでこいつのために、
ハーレムを創ってやるようなものじやないか。
ムカツク・・・クソッどうすりゃいいんだ !
私が苦渋に満ちた顔で考え込んでいると、
しずえさんがクスッと笑った。
「笑い事じゃないよ、君の為に考えているんだ」
私が怒ったのを見て、しずえさんは申し訳なさそうな顔になった。
「ごめんなさい。
あなたがあんまり一人で勝手に想像しているのが
おかしくってつい・・・
あ、私、霊だからあなたの心がわかるのよ」
〜つづく
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2006.07.10. (00:06)
小説 文学 /
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