
いったん明けたかと思われた梅雨がまた戻ってきたかのような豪雨。
各地では土砂崩れとかの被害が相次いで、死者まで出ている。
もう七月も終わりに近づいているのにこの涼しさは何だ。
夏大嫌いの我が家の猫と私にはとても快適な涼しさだが、
天候異変という言葉を聞くたびに不安になる。
もし何か災害があったとき、
我が家の猫はどこに避難させればいいのだろう。
別荘1 2 「ママの店」
しかし、まあ、
いつまでもこんなことはしていられない、
さっさと買い物を済ませて家に帰りたい。
昨日ママの店の帰りに商店街の中にあるビデオショップで
恐怖物のDVDを三枚買ったから早く帰って見たいのだ。
サラダに使えそうな野菜をカゴに入れて、
卵売り場に移動しているとき場内アナウンスが聞こえてきた。
『お客様に迷子のお知らせをいたします。
白い半袖ブラウスに赤いスカートをお召しになった
けいこちゃんとおっしゃる二歳くらいの
女のお子様をお預かりしておりますので、
お連れの方は至急インフォメーションまで
お越しくださいますようお願いいたします。
繰り返しお知らせします、白いブラウスに・・・』
あの子、けいこちゃんて言うのか・・・
オカッパ頭の可愛い少女だった。
私のズボンを引っ張ったときに見せた不安気な顔を思い出す。
早くお母さんがみつかればいいのになと思いながら、
買い物を続けていると、
またさっきと同じアナウンスが聞こえてきた。
お母さんは気がついていないのだろうか、
買い物に夢中になっていたとしても、
あの大きなアナウンスが聞こえないわけがない。
いやいや、心配してもしょうがない。
もしお母さんが現れなかったとしても、
スーパー側が何とかするに違いない。
私には関係ないことなんだと忘れようとしたとき、
クイクイッとまた誰かが私のズボンの
お尻の部分を引っ張っているのに気がついた。
ギョッとして振り返ると、さっきの女の子が真後ろにいて、
小さな手でしっかりとズボンの生地を握り締め、
目をウルウルさせて口をへの字に曲げている。
泣くまいと我慢しているようだ。
あれぇ、何であの子がここにいる・・・
あのガードマンはどこに行ったんだと辺りを見回すと、
薄いブルーの制服を着た彼が
買い物客の間をぬって走ってくるのが見え、
やっと私の側までくると、
肩で息をしながら申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません、目を離した隙にいなくなってしまって。
けいこちゃん、ダメでしょ・・・どこかに行っちゃったら
お母さんが来たときに会えなくなっちゃうよ」
彼は少女と向かい合える高さまでしゃがみこんで、
メッというような顔をした。するとけいこちゃんは
いきなりしゃくるように泣き出し、
「お、お母さんどこにもいないんだもの・・・け、けいこ
ずっと、ずうっと毎日待っているのに見つからない・・・」
ずうっと毎日・・・? そりゃおかしい。
私が疑問に思った言葉にガードマン君も反応した。
「えぇ ? じゃあ今日ここで一緒に買い物していたんじゃ
なかったの」
「どういうことですかね、ただの迷子じゃなさそうですねえ」
と私が言うと、ガードマン君も
「そうみたいですねえ」と言って首を傾げて考え込んだ。
〜つづく
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「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
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