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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


仕事中であろうがなんであろうが出来るだけ、
ナナが甘えたような妙な鳴き声をしたときは
すぐに見に行くことにしている。ナナが、
「おいで、こんなのがあるよ」と言っているように聞こえるからだ。
ナナは時々キャンデーとかティッシュとか消しゴムなどをどこからか
拾ってきて、私に見せてくれるのだ。その時の鳴き声は一種独特で、
今だかつて他の猫どもが出したことのない声だ。
しかし何年か前えらいものを見てしまった。
我が家がまだ庭のある家に住んでいたときのこと、
外からよくゴキブリが進入してきた。それが大人の小指くらいの長さのゴキチャンだったからとっても恐くて、私ら人間どもはキャアキャアと言って逃げ惑うたものだ。ある日ナナが例のあの鳴き声をだした。
それとばかりに見に行った私と二人の娘が目撃したものは、ナナの口の
真中からゴキチャンのお尻の部分が覗いているのだ。ナナは今にも
私らの目の前にソレを解き放とうとしている。
つぶらな瞳をウルウルさせて嬉しそうにゴキチャンを私らに
見せてあげようとしているのだ。私らの喜ぶ顔が見たいのだ。
私が小さい子供だったころ、父はセミとかカブトムシとかを持ってきて
「いいもの持ってきたよ、みてごらん」といって私の手の上に乗せて
くれた。ナナを見ていると、亡き父を思い出す。
ナナはやはりママなんだ。本当は自分の子供達にあげたいんだけど、
皆に嫌われているから、私のところに戦利品を持ってきてくれるのだ。
そう思うとナナが不憫でならない。

別荘

    「ママの店」

たちまち買い物客の視線が私に集中する。
うぉっ ! 頼むからやめてくれ。
ガードマン君に助けを求めようとしたが、
彼はもうそこにはいない。

くそっ・・・消えやがった・・・

「ご、ごめん、お兄ちゃんが悪かったよ。
 お母さん一緒に探してあげるから泣かないで」

私が慌ててそう言うと、けいこちゃんはすぐに泣きやみ、
ニコッと笑って頷いた。

しかし、これからどうしよう・・・
そうだ、とりあえずママの店に連れて行こう。
私は買い物をやめてけいこちゃんの手を引き店を出た。
入り口のところにガードマン君が立っていたが、
仕事が無くなったからか、いつもの無表情に戻っている。

「おじちゃん、バイバイ ! 」

けいこちゃんがガードマン君に手を振ると、
彼の顔に血の色が蘇り、

「パパが見つかってよかったね」と白い歯をみせた。

「パパじゃないって言ってんだろが・・・」

私が言おうとしたときにはもう、
彼の顔から血の気が引いている。

どうやら都合が悪くなったらゾンビにお戻りになるようだ。

ケッ ! もういいや、ママに解決してもらうからね。
私はけいこちゃんの手を引っ張るようにして
早足で歩きだした。

アウッ ! いきなりけいこちゃんの足が止まり、
私の体がは後にのけぞった。
まだこんなに小さいのにえらい力だ。

どうしたのと顔を覗き込むと、
けいこちゃんは不安な顔をして、

「お兄ちゃん、さっきは嘘ついてごめんね」

としおらしくあやまった。

「そんなこと、もうどうだってかまわないよ。
 今からお兄ちゃんの知り合いの
 女の人のところに行くからね、
 きっとその人だったら
 けいこちゃんのママを見つけてくれるよ」

私がしゃがんで、けいこちゃんの目を見ながらそう言うと、
けいこちゃんは真っ黒い瞳をウルウルさせて
ニコッと笑い頷いた。

可愛い子じゃないか、あんな嘘をついたのは、
よっぽど切羽詰っていたからにちがいない。
可哀相に・・・私の胸が熱くなる。

「さっ、早く行こう」

「うんっ」

けいこちゃんが嬉しそうに大きく頷くと、
今度は二人で足取りも軽く、また歩き始める。

ママの店に到着。

「いらっしゃ・・・あれっ、
 今日はまた可愛らしい彼女を連れてきたわね」

ドアを開けるなりママがけいこちゃんを見て微笑んだ。

「迷子なんだよ。
 さっきまでいつものスーパーにいたんだけど・・・
 この子けいこちゃんて言うんだ。
 どうやらお母さんとはぐれたらしい」

私の説明もほとんど上の空で、、
ママはいそいそとけいこちゃんの世話をやきだした。

「何か食べる ? 何でもあるから言ってごらん」

ママがけいこちゃんの両手を持って、
首を傾げてやさしく聞いた。
けいこちゃんは恥ずかしそうにもじもじしながら、

「けいこ、お腹がとってもすいているの・・・
 オムライス食べたい」と言った。

それを聞いたママの張り切りようと言ったらなかった、
ママはけいこちゃんを私と一緒に
奥のいつもの場所に座らせ、
オムライスを作りにカウンターの中に入って行った。
すぐにトントントンと玉葱を刻む音が聞こえてきて、
ジャーッというフライパンで炒める音とともに
香ばしい匂いが店中に漂い始めた。

「美味しそうな匂い・・・」

けいこちゃんは目を閉じて匂いを楽しんでいる。

「ママは料理がとっても上手だからね」

私がそういうと、けいこちゃんは嬉しそうに頷き、

「私のママもよくオムライス作ってくれたの」
と目を輝かせた。

〜つづく

ホームページ上に今までの分を「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。

(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.24. (00:27) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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