
クロどんの左目が完全に塞がっていた為、とうとう失明したかと大騒ぎ
になった。というのも、涙が止まらなくてだいぶになるからだ。
病院に連れて行く前に一応いつもの目薬をと、
クロどんの目に自分の目を近づけたとき気がついた。
アレ ? 悪いほうの目はたしか右・・・
そう思い出した瞬間クロどんが両目をパッチリと明けた。
たぶんゴミか何かが入ったんだろうが、大事がなくて本当に良かった。

今日の晩御飯は冷やし素麺と精進揚げ。しし唐、竹の子、茄子、豆腐
のテンプラ。揚げたてはとても美味しい。
別荘1 2 3 4 5 「ママの店」
けいこちゃんのママを探すにあたって、
いろいろ聞きたいことがあったが、
まずはゆっくり食べさせてあげようと思った。
それにママのあの張り切りようだったら、
オムライスはもうすぐ出来上がるに違いない。
そんなことを考えていると、案の定ママが
お盆の上に出来立てホヤホヤのオムライスの皿を載せて
お尻を振り振りイソイソとやって来た。
「お待たせ、出来たわよ」
さあ召し上がれと言ってママは特製の
オムライスをけいこちゃんの前に置いた。
黄金色に光る卵の表面に、赤いケチャップが
帯のようにたっぷりかかっている。
けいこちゃんはそれを見て目を輝かせた。
「うわー美味しそう・・・」
いただきまーすと言ってけいこちゃんは
スプンを上手に使い美味しそうに食べ始める。
ママと私は目と目を合わせて微笑み、
その微笑みのまま視線をけいこちゃんに移す。
誰だって、子供が美味しそうに
食事をしている姿を見たら、自然と顔がほころぶものだ。
やがてお皿をからっぽにしたけいこちゃんが
口の周りにケチャップをくっつけて、
小さなゲップを一つ出した。
可愛い・・・思わずママと私の目じりが下がる。
「ごちそうさまでした」
「いえいえ、どういたしまして、お腹一杯になったかな ? 」
ママはニッコリ笑いながらそう言って、
空っぽになったお皿を盆の上に載せて
またカウンターに入っていった。
お皿やコップを洗う水の音を聞きながら、
とりあえず私はけいこちゃんとお母さんが
はぐれたときの状況から聞いてみようと思っていた。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな」と私が聞くと、
けいこちゃんがニッコリと笑い、頷いた。
両側の頬っぺたに笑窪が出来ている。
「ママとはぐれたのはあのスーパーでなの ? 」
「う・・・ん、そうかも、でも・・・」
けいこちゃんは何となく自信がなさそうだ。
「でも ? でもってどういうこと、
スーパーじゃないかも知れないのかな」
私がそう言ったとき、ママがやっと席に戻ってきて
けいこちゃんの隣に座ったが、
私とけいこちゃんの会話を聞こうとしているだけのようで、
黙ってただ、けいこちゃんを見つめている。
「あのね、気がついたときにはもうけいこは
あのスーパーの中にいたの。
でもママは一緒じゃなかったわ」
「あのさ、けいこちゃんはあのスーパーに
ママと買い物に来たことがあるの ? 」
「ううん、ないわ、ぜんぜん知らないお店よ」
けいこちゃんは眉をひそめ首を横に振る。
多分この子の母親はまだ生きていて、
この子だけが死んでしまった・・・
いやまてよ・・・
ひょっとしたらこの子はまだ生きていて、
私と同じビジター ?
希望の光が閃いて思わずママを見ると、
ママは私の思ったことがわかったのか、
暗い目をしてゆっくり首を横に振った。
ウゥ・・・やっぱり死んでいるということか・・・
わずかな期待が消え、私は思わず唇を噛む。
それじゃどんな状況で死んだのか知らねばなるまい。
「けいこちゃん、
最後にママと一緒だったときのことを覚えている ? 」
けいこちゃんは目を閉じ、頭を下げてじっと思い出そうと
頑張っているようだったが、突然
「思い出したわ、私ママと踏み切りに立っていたの」
踏み切り ? 私はたちまち嫌な気分に襲われた。
子犬が踏み切りで跳ね飛ばされるシーンが
いきなりフラッシュバックしたのだ。
もうこれ以上
聞いてはいけないのじゃないだろうかと思ったとき、
けいこちゃんは記憶の糸をたぐりはじめていた。
〜つづく
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「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
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