
カスガが右前足を怪我した。誰かに爪でやられたらしい。
シュウが私を避けている。絶対目を合わそうとしないのだ。
ハハーンお前だなと思い、シュウをとっ捕まえて爪を確かめたら、
案の定爪を切り忘れていた。我が家のように猫の数が多いと、
爪切りは絶対やらねばならないのだが、
つい切り忘れが出てしまうのだ。

桃が美味しそうだったので買ってきた。
写真のセンスのなさに自分でもガックリくるが、実際は大きくて
香りが良くて、皮が指先でスルスル剥けて最高の味だった。
今年の桃は例年より美味しい気がする。
別荘1 2 3 4 5 6 「ママの店」
「それでね、ママはとっても機嫌が悪くって
黙ったまんまで何にも話してくれなかったわ」
けいこちゃんは首を傾げ、思い出そうと努力している。
彼女の言葉が途切れるわずかな間に、
私の頭の中でいろいろな想像が繰り広げられ、
知らない間に握り締めていた手のひらは
じっとり汗をかいていた。
機嫌が悪い・・・
けいこちゃんにはそう見えただけで、
母親は何か考えごとをしていたから
まともに返事が出来なかったのではないだろうか。
人は皆、時々自分の思考の世界に閉じこもる。
何か考えごとをしているときは、
話しかけても聞こえない。
そして、その考えていることが、
良くないことであればあるほど表情は暗くなり、
怒っているように見えてしまうのだ。
けいこちゃんが、機嫌が悪いと感じたのは、
母親が何か良からぬことを考えていたからに違いない。
「夜だったわ、そうそうお母さんとラーメン食べたの。
お家で食べないで外で晩御飯食べたの。
ラーメン嫌いじゃないんだけど・・・
何か美味しくなかったわ」
けいこちゃんの顔が少し寂しくなった。
「お父さんとか、兄弟とかはいなかったの ? 」
話題を変えるために私がそう聞くと、
けいこちゃんは「うーん」と言いながら
首を一段と傾けた。
「お父さんは・・・いなかったけど、
おじちゃんがいた。けいこは一人っ子よ」
「おじちゃんって、けいこちゃんとどんな関係 ?
親戚のおじちゃんかな」
だいたいの想像は出来上がっていたが、
もしやと思いあえて聞いてみた。
「ううん・・・けいこはよく知らないけど、
お家によく来るの」
けいこちゃんは首を横に振った。
やっぱりそうか・・・
「そのおじちゃんが来たときは、
けいこちゃんはどこにいるの 、
お外に行きなさいって言われなかった ? 」
私にはある憶測があった。
でも、けいこちゃんは首を横に振る。
「言われなかったよ」
おかしい・・・母親の愛人じゃなかったのか。
じゃ、おじちゃんというのは誰だ・・・
「何しにそのおじちゃんはお家に来ていたのかな」
じっと考えているけいこちゃんの顔が
次第に暗くなるのが私にもわかった。
この子は今、
何かとても嫌なことを思い出そうとしている。
聞くべきか、聞くのをやめるべきかと迷っていたら、
けいこちゃんが目に手の甲を当てながら
シクシクと泣き出した。
突然泣かれてしまい、
焦った私はママに助けを求めようとしたが、
ママはまたボーッとした顔で
今あきらかにどこかにトリップしている。
こういうときには何を言っても無駄なのだ。
しょうがない、私が慰めるしかない・・・
「けいこちゃん、嫌なことは思い出さなくていいよ」
さあ、泣かないで、と言って頭を撫でてあげると
落ち着いてきたのか、けいこちゃんは泣くのをやめた。
〜つづく
ホームページ上に今までの分を
「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)その他の作品紹介