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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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2006.07

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


最近のカスガは本当に可愛くなってきた。今までは人間にはあまり
懐かず、猫の中でうまくやっていくことにだけ一生懸命だった。
カスガには親兄弟がないから
本当に可哀想だと私も思っていたのだが、
今では私ら人間の膝に乗ってきたり、擦り寄ってきたりする。
他の猫達とも仲良く暮らし、一番太って元気になった。
去年大病をしたから、気持ちの中で何かが吹っ切れて
おおらかになったからかもしれないな。

別荘

        「ママの店」

群集のざわめきが遠くに聞こえる・・・
悲しみと苦しみの慟哭の渦中に私は飲み込まれ、
どこまでも深く沈んでいく。
今まで数多くの死を目撃してきたが、
これほどまで激しいショックは受けなかった。
体がだるい。熱が出てきたようだ。
胸がむかついて、
吐きたいのに吐けない・・・苦しい、
どうか胃の中のものを吐かせてくれ・・・
私は次元と次元とを繋ぐトンネルの中を、
回転しながらゆっくりと潜り抜けていく。

ようやく前方に丸い光が見え、
私の体はその穴から外に飛び出した。

気がついたら目の前に
けいこちゃんの可愛い寝顔があった。
ぐふっという音とともに
肺の中に溜まっていた空気が鼻腔から押し出され、
そのとたん涙腺の蓋が全開になり、
私の両目に涙が溢れ出す。

けいこちゃん・・・君はこんなに小さい体で、
母親をを助けようと一生懸命頑張ったんだね。

私はけいこちゃんの頭をやさしく撫でた。
眠っている彼女を起こさないように、
そうっと、そうっと撫でてあげた。

「この子の母親は所謂シングルマザーだったみたいね」

いきなり耳もとで声がしたので、おどろいてふりむくと
ママの顔とぶつかりそうになった。

ギョッとして思わず顔を引いたが、

「危ないわね ! いきなり振り向かないでよ」

怒声とともに、ママの眉が吊り上がった。

「ご、ごめん・・・」

とっさに私は謝ったが、
いきなり耳元で声を出したママの方が悪い。
しかし、そんなことを言ったらママが本気でブチ切れる。
気を取り直し、ママに、

「この子のこと調べてきたの ? 」と聞くと、

ママは唇をギュッと引き結び、頷いた。

「母親は中学を出てからすぐに家出をして、
 遠い都会で水商売していたの。
 もちろん本当の年を隠してね。
 そこで知り合った男と恋愛したんだけど、
 子供が出来たとわかった途端捨てられたの」

家出娘の哀れな末路か・・・

「でもね、その男っていうのが
 大金持ちの長男だったみたいで、
 ちゃんと妻がいたのだけど
 妻は子供が出来ない体質だと後でわかったの。
 男は二人兄弟で、弟も結婚していて
 こっちにはちゃんと男の子がいるわ。
 だから、子供がなかったら将来家督を
 次男の息子が継ぐことになっちゃうのよ。
 だから男は焦って、彼女の子供、
 つまりけいこちゃんを引き取りたいって
 弁護士を通じて言ってきたの」

くそっ、汚い奴め !
財産のために一度捨てた子供を・・・
私の目尻が怒りのために吊り上がる。

「だけど、この子の母親はいくらお金を積まれても、
 けいこは渡せませんって突っぱねたのよ」

ほーっ、偉いじゃないか、と私は母親を少し見直した。

「でも、その日から
 別の男が毎日のように家にやって来るようになった。
 多分けいこちゃんが言っていたおじちゃんね。
 彼は相手を口説き落とすベテラン、
 こういうやっかいな交渉の為に雇われているのよ。
 夜の世界にいたとはいえ、
 大人の世界のからくりを知るのには、
 まだ母親は若すぎた。
 娘の将来を本当に大事に考えるなら、悪いけど
 あなたのような仕事をしている母親の傍で育つより、
 お嬢様としての人生を歩ませてあげるのが
 本当の愛情じゃないですか、なんて
 そんなことを言われたら、母親の心も揺れるわよねえ」

「それで、けいこちゃんのママは落ちたってこと ? 」

私の言葉にママは頷いた。

〜つづく

ホームページ上に今までの分を「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.07.31. (00:43) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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