
夜だと真っ黒な猫達は写真の写りが悪いので昼に撮って見た。
しかし光線が入ってこんな写りになってしまった。
本当に写真がへただと自分でも思う。トウは写真が嫌いなのに今日は私の為にせっかく可愛い顔をしてくれた、それなのに・・・
私はトウを「小さいヒト」と呼んでいるが、呼べばトウは必ずこんな
顔をして返事してくれるのだ。
トウももう八歳、生まれたばかりのことを思い出す。
月日の経つのは早いものだなあ・・・
電子出版「短編集 闇の中の住人」別荘1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 「ママの店」
でも・・・ここはいったいどこ ? 辺りを見回しても
私とこの女性の二人しかいない。
彼女は今床に這いつくばっているのだが、
視界のすべてが白い靄に覆われており、
果たしてこの世界がどのくらいの広さで、
私達以外に存在しているものが
あるのどうかもわからない。
どこかの部屋の中、なんかじゃないだろう。
むしろ、どこかの空間に存在していると
考えるほうが当たっている。
ここはどこ ? もう一度考えた。
「あんたがいるところは彼女の記憶の中よ」
私の頭の中でママの声がする。
そうか、ここは彼女が作り出した世界なんだ。
私はそっと彼女に近寄った。傍にしゃがみ込むと、
彼女は顔をあげ、空ろな目をして私を見た。
首を傾げ、ただぼんやりと私の顔を眺めている。
目の周りと鼻の頭がは赤く爛れており、
彼女がどれほど長く泣いていたかを物語っている。
「あの、僕はけいこちゃんに頼まれて
あなたを探しに・・・」
私がけいこちゃんと言った瞬間
彼女の目の色が変わった。
「あんた、けいこをどこにやったの ?
あの人の所なのね」
いきなりガバッと立ち上がった彼女は
指先に物凄い力を込めて私の肩にしがみついてきた。
爪が肩の肉に食い込んで、
あまりの痛さに悲鳴をあげる。
「うわっ、ちょっ、やめてださい !
痛いじゃないですか」
私は彼女を振りほどくようにして立ち上がった。
彼女は私の声に驚き、
ストンと一度は腰を落としたが
その形相はみるみるうちに
怒りと悲しみの入り混じる恐ろしい顔に変わっていった。
乱れ髪が頬に張り付き、見開かれた目は
私の目に焦点が合わされ、
その瞳孔は極限にまで絞られている。
眉間に彫りこまれた深い縦皺、
耳まで裂けるかと思われる大口を開けて、
再び彼女は立ち上がり私に襲いかかる。
「ちょっと、ちがうんだってば !
僕はけいこちゃんに頼まれたんだよ、
勘違いしないでくれる ! 」
首をグイグイ絞めてくる彼女を
何とかなだめて止めようとしたが、
私の眼球が今まさに飛び出ようとしている。
「も、もう・・・ダメ、ぐっぐるじい」
うおぉっ ! と渾身の力を込めて彼女を突き飛ばすと、
勢いあまって地面に吹っ飛んだ彼女は、
後頭部と肩を強打したようだ。
苦しそうな唸り声に驚き、駆け寄ると、
彼女は両の目から
大粒の涙の玉をいくつも溢れ出させている。
「大丈夫ですか・・・すみません突き飛ばしたりして」
私が覗き込むと彼女は目に一杯涙を溜めて私を見上げた。
どうやら頭を打ったショックで正気に戻ったらしい。
さっきはどうなることかと思った。
私はまだヒリヒリする喉を摩りながら、
彼女が冷静に聞いてくれることを期待して、
話しかけることにした。
「じつは、けいこちゃんがお母さんを探しておりまして、
僕があなたを連れてくる約束をしてしまったんですよ」
私は彼女の反応を窺いながら
ここにくるまでのいきさつを話して聞かせた。
彼女はじっと黙って聞いてくれていたが、
疑うような目をして、
「けいこは死んだのよ、私の目の前で・・・
だから、私を探してくれだなんて言うわけがないわ」
そう言ってから、何か思い当たることがあったのか、
いきなり目を輝かせた。
「もしかして・・・あなた、死神さん ? 」
死神・・・私は死神なのか・・・?
とんでもない、なんてことを言うか。
「違いますよ。私はただ、
けいこちゃんとあなたを
引き合わせてあげたかっただけですよ。
あなたは今夢の中にいます。
だから、これは夢なんです」
「夢・・・そう、夢なのね・・・」
彼女は夢という言葉にすべてをあきらめ、
激しく肩を落とした。
この人は死にたがっているんだ。
自分の手で可愛い我が子を死なせたんだ、
死にたいと思って当然だ。
この先生きていても苦しみはずっとつきまとう。
けいこちゃんと同じ世界に連れて行ってあげたい。
私はまた泣き始めた彼女を見つめ、そう思っていた。
〜つづく
ホームページ上に今までの分を
「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)その他の作品紹介
2006.08.07. (00:59)
小説 文学 /
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