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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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2006.08

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


チャーは兄妹の中でも異色な顔だが、性格もちょっと変わっている。
顔を見ていると気が強いのかなと思うが、実際はすこぶる小心者。
ちょっとしたことでビックリして飛び上がり、
胸板に爪でブスッと穴をあけられたことが何度もあった。
今は慣れたみたいだが昔は掃除機の音をとくに怖がって、
抱いている時に誰かが掃除機を近づけたとたんビクッ、ブスッで
逃げて行く。猫の爪はこまめに切るべし。これだけは絶対だ。


今はもうない店だが、以前よく行っていた焼肉屋さんの冷麺は
美味しかった。麺がとても固くてちょっと食べにくいが、
あっさりとしたスープがまた冷んやりとしてとても美味しい。
今日買い物に出たときその冷麺が目につき、
急に食べたくなって買って帰った。
袋の裏に書いてある通りに麺を茹でたが、
あの時食べたような固さではなかった。だいぶ軟らかいのだ。
普通の中華麺より少しだけ固いだけ。がっかりした。
やっぱり見よう見まねで作ったものはダメだなあ・・・

別荘

電子出版「短編集 闇の中の住人」

         10 11 12 13  14 15 16 「ママの店」

いきなり背後に気配を感じ、ギョッとして振り返ると
中田先生が私の真後ろに出没していた。
白いカッターシャツに白いセーターを着ているから
ハレーションを起こして体全体が不気味に光っている。

「まったあ・・・いきなりは嫌だって
 いつも言ってるでしょうが。
 心臓が止まるかと思いましたよ」

私が非難するように言うと、
先生は意地悪な顔をして

「そりゃあ好都合じゃないか、
 君はこっちにずっといたいんだろ。
 じゃあ、そんなもんいっそ
 止まっちまったほうがいいじゃないか」

うへっ、酷いことを言う・・・
なんとまあ、今日の先生は機嫌が悪い。
こういうときは相手しないのに限る。
私が腰を引いたからか、
先生の不機嫌の矛先は
今度はママに向けられたようだ。
ママもそれを感じたのか、
目をパチパチして笑う口元が引きつっている。

「ママさん」「はい。何でしょうか」

「失礼とは思いましたが、
 あなたと豊の話を聞いてしまいました。
 彼女らのこともです」

先生はチラッとけいこちゃん達に目をやる。
声が大きかったからか、
けいこちゃん母子もびっくりしたような顔で
こちらを見ている。

「初めは黙っておこうと思っていたんですが、
 薬の治験と聞いて黙っておられなくなりました」

それは・・・とママが口を挟もうとしたのを
先生は止め、
自分の話を先に聞けとばかりに喋り出した。

「まあ、ママさん私の話を聞いてください。
 生命体は、生と死を繰り返して
 生態系のバランスを保っているのです。
 一つの種が多すぎても少なすぎてもいけません。
 人間以外のものはすべて自然にまかせて
 生と死を繰り返しています。
 本来人間もそうあるべきなんです。
 そりゃ、風邪をひいたくらいで死んでいたら、
 人間の平均寿命が極端に短くなってしまう。
 だからそこで風邪薬が必要になってくる。
 でも、やりすぎはいけません。
 ある程度は自然にまかせるべきです。
 ママさん、私はいつも良太を思い出すんです。
 あの子は内臓移植の犠牲者です。
 いくらあがいたところで、死は必ず訪れるのに、
 少し寿命を延ばしたいが為に研究を繰り返し、
 新しい薬を作っては
 動物実験をしてから人間に使用する。
 そんなものの実験台になる
 動物達こそえらい迷惑だ。
 動物達の中には
 もちろん人間も含まれている。
 弱い立場の人間は
 一般動物と同じレベルに置かれるですよ。
 それが学者のあいだでは常識なことなんです。
 人体実験はどこの国でも、
 秘密裏だが絶対行われています。
 必要不可欠なことですからね。
 良太とそこの女性は、人格を無視された
 あわれな犠牲者にすぎません。
 我々は今こそ断固として
 そういう愚かな試みを阻止せねば
 ならないと思うのです」

中田先生は、良太君のことで
心に深い傷を負っている為、感情に走りすぎている。
先生が言うことはおおむね間違ってはいないと思うが、
先生が今説明したことだけで、
医学の進歩をすべて無駄なことと切り捨てるのは
だいぶ無理がある。
先生が医療の研究に疑問を抱くのは、
根底に良太君がいるからこそであり、
良太君を死に至らしめたのが
移植にあると決めつけていることに問題がある。
要するに冷静ではないから、
客観的に物事を考えられなくなっているのだ。
ママはどう答えるだろう、私はママの顔を見た。

〜つづく

 ホームページ上に今までの分を「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)

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2006.08.11. (00:15) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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