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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


シュウは名前を呼ぶとヒョイと振り向く。
機嫌のいいときはゴロンと寝っ転がり、
じつに可愛い顔をしてくれる。
気が向かなければまあ、お愛想的に応えるだけのものだが、
返事をしてくれるだけでもいいとしなければならない。

別荘

電子出版「短編集 闇の中の住人」

         10 11 12 13  14 15 16 17 18 「ママの店」

けいこ・・・母親はけいこちゃんを引き寄せた。
出来るものならもう別れなくてもすむように、
その思いはその場にいる誰しもの心だった。
私と中田先生の視線がママに向けられる。

「ちょっと、何で私を見ているの ? 
 それじゃまるで私の一存で
 すべてが決まるみたいじゃない」

ママが困った顔になる。

「そうではないのですか ? 」

中田先生がニヤニヤ笑っている。
ママは少し不機嫌な顔をして首を横に振った。

「それが出来れば私だってそうしているわよ」

ママの言葉は嘘を言っているようには思えなかった。
やっぱりママにも出来ないことがあるのだ。
私が溜息をつくと、母親が、
やさしい目をしてけいこちゃんに語りかけた。

「あのね、ママはまだ死ぬときがきていないの。
 生きれるだけ生きて
 人の役に立つことをしていれば、
 必ず一緒に暮らせるときがくるわ。
 だから・・・」

後の言葉が震えながら消えてゆき、
深い嗚咽の声に変わっていく。
けいこちゃんをかき抱き、泣いている彼女を見て、
何もしてあげられない自分にイライラし始めていたとき、
ふと、目の前に座っている
けいこちゃんの様子がおかしいのに気がついた。
子供らしいふっくらとした可愛い顔が、
青白い炎につつまれている。
その炎は決して熱をおびてはいない。
むしろ氷のような冷たさを湛えている。

いやよ・・・

けいこちゃんがボソッとつぶやいた。
母親は驚き、
抱いていた腕を緩め、けいこちゃんの顔を見る。

「どうしたの、何か言った ? 
 よく聞こえなかったけど」

けいこちゃんは冷たい微笑みを口元に浮かべ、

「いやって言ったのよ。ママがチネばいいのよ。
 けいこはもう一人はいやよ。 ねえ、チンでよ」

まるで機械が喋っているかのような淡々とした言葉だ。

「だからね、それは・・・」

母親の口をけいこちゃんはちいさな手のひらで覆った。

「けいこちゃん、ママの言う通りなのよ。
 人は誰しも決められた命を生きなきゃならないの」

ママが間に割って入り、けいこちゃんを諭すように言ったが、
けいこちゃんはゾッとするような憎しみの目をママに向けた。

け・い・こ・ちやん ?

何か良くないことが起こりそう・・・
私の今までの経験が警告を発している。
しかし、今から見ようとしているものが
どんなに恐ろしいものであるか、
その瞬間はまだ予想すら出来なかった。

不思議なことに
けいこちゃんの体は母親から離れ、
後退しながら斜めに
天井へと向かってせり上がっていく。
フロア中央、床からの高さ
三メートルくらいの位置で止まった
けいこちゃんの顔色は、青から赤に変わり、
破裂しそうなほど頬っぺたが膨れ上がり、
その圧力で眼球が前に飛び出しかけている。
頭頂部にテラテラと光る亀裂が走りはじめたとき、

「やめなさい ! 」

ママの鋭い声が私の鼓膜を貫通した。

中田先生が口を半開きにした
驚愕の表情でけいこちゃんを見上げ、
ソファーから腰を浮かし、
後ろ手で自分の体を必死に支えている。
私は抵抗出来ない強い力に引き寄せられて、
血だらけのモンスターと化しつつある
けいこちゃんの真下に突っ立っていた。

「豊、逃げるのよ ! 」

ママの大声で我に返った私はかろうじて一歩後ずさる。
けいこちゃんの頭は今や完全に真ん中から割れ、
噴出した血で顔面を真っ赤に染めている。
もぎ取られたようにブラブラしている両腕は、
数本の血管と神経とで、
肩から離れてしまうのを食い止めている状態だ。

〜つづく

 ホームページ上に今までの分を「ママの店13」としてアップしましたので、ご覧ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)

その他の作品紹介
2006.08.15. (00:08) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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