ちりめんじゃこの袋は怖い!昼食後、机の上にじゃこの袋を置っぱなしで
食器の後片付けをしていたら、ナナが袋を頭にスッポリかぶり、
フラフラの状態で部屋から出てきた。びっくりして即袋を取ったが、
呼吸困難になったのかそのままひっくり返った。
すぐに元に戻ったから良かったけれど知らずにいたら
大変なことになっていたところだ。
いったい何が起こったのかわからない。
袋をかぶっても、息は出来る状態なのに
何故フラフラになったんだろう。
脱酸素剤(品質保護の薬品)ひょっとしてこれが原因か?
いずれにしても袋を置きっぱなしは危険だ。
別荘「ママの店」1 2 34「お、お母さん、大丈夫ですか」
私が声をかけると母親の体がピクリと動いた。
なんとか正気に戻さなければと気持ちは焦るが、
私に出来ることは言葉を掛け続けることだけだ。
「あなたは夢を見ているんです。
思い出してください、けいこちゃんと約束したことを。
あなたは死んだら必ず
けいこちゃんと一緒に暮らすと約束したんですよ。
今こそその約束を果たすときが来たんです。
お願いですから思い出してください、
そんな恐ろしい姿で
けいこちゃんに会うつもりですか ? 」
私は必死に説得しようとしたが、どう言えば
彼女の心を動かせるかわからない。
こんなとき、中田先生だったら
きっとうまく言えるだろうにと思ったが、
今は私一人で頑張るしかしょうがない。
何かいい言葉は無いのかと目を閉じた。
それはほんの一瞬の間のことだった。
目を開けたときには部屋が無くなっていた。
足首のところまで満ちていた血液が
一滴残らず消えて、
辺り一面真っ白な世界が広がっている。
目の前に倒れているのは白い患者服を着た彼女。
ここは見覚えのある白い世界だ。
鼻腔に清々しい冷たい空気が流れ込み、
汚れた肺の中が綺麗に洗われるような快感を覚える。
やった ! 彼女は元の姿に戻ってくれた。
私は小躍りしたくなるほど嬉しかった。
「お母さん、さあ起きてください。
僕と一緒にけいこちゃんを迎えに行きましょう」
私は彼女に駆け寄り声を掛けて体をゆすった。
彼女の顔は
何事も無かったかのような安らぎに満ちており、
スヤスヤと眠ってしまっている。
「ママ !
このままそっちに運ぶことは出来ないのかな、
彼女寝ちゃってんだよ」
私が空中に向かって叫ぶと、
「やってみるから、その人を抱いててくれる ?
絶対離しちゃダメよ 」
上の方からママの声が聞こえた。
「離したらどうなるのさ」
「別の次元に行っちゃうのよ」
私は慌てて彼女の体に覆いかぶさった。
彼女を抱いたままの移動が始まる。
不思議なことに彼女の体には、
まったく重量感がない。
まるで空気を抱いているみたいだ。
こりゃ本当に気をしっかり持っていないと
彼女を抱いていることを忘れて
手を離してしまいかねない。
反転上昇を繰り返しながら次元の空間を通り抜ける間、
何度も意識が無くなりかけたが、
私は必死に彼女を抱きしめていた。
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」