うへえ・・・また
クロ が飛び掛ってこようとしている。
クロは抱っこすると喜んで
噛み付く のだ。
もちろん
爪もブシュッと突き刺してくれちゃったりで
もう傷だらけ。可愛いんだけど、
痛い のよね、だから飛び掛るのだけは
やめろ!お前のおかげでTシャツ
穴 だらけなんだよ、
鼻 は噛むな、無くなったら困る。
口 もやめてくれ、
顎・・・もう何回も
噛み付かれたなあ。
別荘「ママの店」1 2 34 5 6 7 8 9 10 11風を切り砂を蹴り頭上に剣を振りかざし、
のっぺりとした化け物足に向かって行くと、
その気配に反応したのか、足も動き始めた。
二人一組になり攻撃をかける。
私はヤツの親指にブスリと切っ先を突き立てた。
たちまちピシュウと血が吹き出て顔にかかった。
ママがエイッという掛け声とともに足首を払う。
なまっちろい肌に横一文字の赤い切り口が開き、
そこからも大量出血だ。
向こうでは中田先生とけいこママが
ブンブンと剣を振り回し、
化け物足に無数の傷を負わせている。
足はドシドシという音をたて、
砂塵を巻き上げ逃げ回っていたが、
やがて両足を揃え、
縄跳びをするかのように跳び始める。
そのとき私の頭に浮かんだのは、
幼児の足・・・
たしかにデカイが
良く見ると柔らかくてポッチャリとしている。
刃物で傷つけられたのが痛いので
跳びあがっているらしい。
そんなことを思ってしまうと、
だんだん可哀相になってくる。
ふと、手を休めたとき、
「豊、何ボーッとしてるの後ろよ ! 」
ママに言われて振り返ると
今度は空中に巨大な手が出現しており、
中田先生が握り締められていて、
高いところで呻き声をあげている。
先生っ、と叫んだとたん
視界が暗くなり、
慌てて飛びのいた私の体すれすれに、
間髪入れず足が落ちて来た。
ドスドスドスと激しい振動が巻き起こり、
たちまち辺り一面巨大な手と足だらけだ。
何人分の手足だろう・・・
私やママ、けいこママの表情が凍りつく。
「た、助けてくれっ」
中田先生が叫んだ。先生はまだ手の中だ。
かろうじて剣を振り回し攻撃をかけているが、
握り潰されるのは時間の問題だ。
先生は意識を失いかけているのか、
動きがだんだん鈍くなってきている。
先生 ! 一声叫んで私は疾走し、
めぼしい足の上に飛び乗り
その甲に深々と剣を突き立てた。
足は痛いっとばかりに私を高く放り投げる。
計算通りだ、
目の前に先生を握り締めた手がある。
渾身の力を込めて切りつけると、
指はバラバラと千切れ血を噴出しながら、
先生と一緒に落ちてきた。
「ありがとう、もう大丈夫だ」
先生は腰を摩りながらも
しっかりとした声で私に礼を言ってくれた。
それじゃ頑張ってね、と声を掛けて
私はママ達に加勢するため
また怪物手足の乱立する中を剣を振り回し、
返り血を浴びながら走り抜けて行く。
しかし私の加勢など必要ないくらい
背中合わせになったママ達は最強だった。
移動しながら、次々と襲い来る手足を倒している。
これなら安心とばかりに私は剣を持って飛び回り、
思う存分敵を切り倒し始めた。
もう頭から足の先まで返り血でずるずるだ。
向こうで中田先生が頑張っているのが見える。
でも化け物とはいえ、
意外と柔らかい肌をしている。
我々が強いんじゃない、相手が弱すぎるんだ・・・
そう思うと、ブスリと突き刺す度に
激しい吐き気がするようになった。
やがて最後に残った一本の足が、
中田先生の一撃で倒れたときにすべてが終わった。
無数に散らばる肉片の上を、
ヒューッと風が通り過ぎていく。
勝った喜びなど一つもない。
ただ暴れまくって殺戮をしただけのような、
嫌な思いが胸の辺りに渦巻いていた。
ひょっとしたら皆も同じ気持ちなんだろうか、
誰も喋らず、苦い顔で立ちすくんでいる。
「け、けいこ・・・」
いきなりけいこママが空を見上げてつぶやいた。
見ると上空に巨大な頭が出現しており、
おかっぱ頭に黒い瞳を潤ませたその顔は、
何とけいこちゃんだ。
けいこママは、愛しくてたまらないような
声で呼びかける。
「けいこ、一緒に行こう。
ママはあんたを迎えに来たんだよ」
しかし、
けいこママがどんなにやさしい声をかけても、
けいこちゃんの目は空ろだ。
「けいこっ」「けいこちゃん ! 」
我々が口々に叫んだとき、
けいこちゃんは柳眉を逆立て、
鼻梁にびっしりと皺を寄せ、
目を血走らせ口を開けて牙を剥いた。
「みんな、きらいだあぁぁぁぁぁっー」
叫び声をあげ、
けいこちゃんの頭が襲い掛かってきた。
これはもうけいこちゃんではないと思わなくては
殺されてしまう。
私達は四方に飛び散り、
剣を握り締める手に力を込めた。
けいこちゃんは空中でギリギリと歯軋りしながら、
次はどこを目掛けて飛び掛ろうかと考えているようだ。
しかし、いくら化け物でも我が子は我が子、
戦えるだろうか・・・
私は心配になって思わずけいこママを見た。
けいこママは
涙をボロボロこぼして歯を食いしばり、
ブルブル震えながら剣を握り締めている。
「戦うのよ、
それが結局はあの子を助けることになるの ! 」
ママの声が私の迷いを切った。
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.13. (00:43)
小説 文学 /
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