カリン は寂しがりやで、いつも抱っこしてもらおうとウロウロしている。
我が家には黒猫が
クロ、フク、カリン、トウの四匹いるが、どうしてもクロ、フクが目だってしまい、
小さなカリントウは見過ごされてしまう。
だからカリンはいつもこんな寂しい顔で
じっと抱っこしてもらえるのを待っているのだ。
そのことをちゃんとわかっているから、ほらいつだって
一番先に頭を撫でて、抱っこしてあげているじゃないか。
だからもう、そんな悲しい顔はしないでほしいんだけど・・・
別荘「ママの店」1 2 34 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14「ねえ、もしかしたらあの子元に戻ったんじゃ」
出会ったときのままの姿で
空中に浮かんでいるけいこちゃんを見ていると、
もう二度と
化け物にはならないような気がしてくる。
期待を込めてママの顔を見ると、
ママは鳶色の瞳に憂いを込めて
静かに首を横に振った。
「元に戻ったんなら、
あんなふうに空に浮かんじゃいないはずよ。
おそらく本人はどこか別の場所に隠れているわ」
どこか別の場所・・・私達は辺りを見回した。
「あれだ、あの家に違いない」
中田先生が遠くに見えている
小さな家らしきものを指差した。
そういえばこの世界にやってきて、
最初に目に入ったのはあの家だった。
けいこちゃんはきっとあの家に隠れていて、
見つかるのが怖さに怪物を出現させているんだ。
「ねえ、あの家に行こうよ。
会って話せばけいこちゃんだって、
きっとわかってくれると思うんだ」
私がそう言うと、中田先生が
「問題はどうやって、誰が家に向かうかだな」
忘れていた、今まだ我々の敵が上にいる。
「そうね、隠れ家を見つけられたと知ったら
あの子襲ってくるでしょうねえ・・・」
ママが上を見て眉を潜めた。
「とりあえず、今空中に浮かんでいるアレに
早く本性を現させるんだ。
それで我々が戦っているあいだに
豊がアッチに行く、そういう作戦で行こう」
中田先生が言うと、
「本当なら母親を
アッチに向かわすのがいいんだけど、
今上にいるアレは母親を
ターゲットと認識しているみたいだから、
豊に走ってもらうしかないわね」
ママも溜息をついて私の顔を見る。
「了解、じゃあ、まずアレを何とかしようよ。
けいこママが泣きそうな顔になってるよ。
早くしないと不味いことになる」
「大変、本当だ、あの人今にも崩れそうだわ」
ママが小さく叫んだのを合図に、
我々は母親めがけて走って行った。
案の定、けいこママは
空中に浮かんでいる我が子を見て
涙を流しながらブルブル震えている。
私達が来たのに気がつくと、
剣をポトンと落としてしまった。
「何をしているの、剣を拾うのよ !
よく見て、
あれはけいこちゃんじゃないのよ、
あなたを迷わせようと姿を変えただけよ」
ママが厳しい声を張り上げると、
空中に浮かんでいるけいこちゃんが
憎しみを込めた目でギロッとママを見た。
たちまちけいこちゃんの頭の天辺が割れ始め、
血が噴出してくる。腕が肩から離れ、
電気コードの束のようになった
血管類が剥き出しになり、
またもやあの恐ろしい
化け物の姿に変身し始めている。
それを見た母親はやっと我に返り、
慌てて剣を拾いあげた。
四人横に並んで戦う体勢に入ったとき、
「豊、いいわね、私達が引きつけている間に・・・」
ママが目配せをしたので、
私はわかっているとばかりに頷いた。
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.19. (00:21)
小説 文学 /
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