
近頃カウンターの上が一部の猫達の社交の場となっている。
猫同士の会話はやっぱりテレパシーなんだろうか。
人間の耳には聞こえない波長だと聞いたことがあるが。
でもまあ何となく、あぁ喋ってんだなあーと分かる。
二匹猫が並んでいて、いきなり片方が相手をペロペロ舐めることが
あるが、あれは大抵邪魔だからどっかへ行ってという意思表示のことが多いみたいだ。
でもそれは仲が良い猫の場合だけで、悪い相手にはいきなりパシュッと殴るのが「あっちへ行け」の合図だ。
別荘「ママの店」1 2 34 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15ウガーッ! 恐ろしい声を発しながら
化け物は両手を延ばして、まず
母親と中田先生の二人を狙ってきた。
私とママが援護の体勢に入る。
母親が化け物の指をエイッとばかりに剣で払うが
敵もさるもの、切られまいと指を握って隠す。
中田先生の方へはブンッと拳骨のまま飛んできたが、
ママと私の剣が手伝いそれを阻止した。
ウガッウガガガガーッ
つかむことも、殴り飛ばすことも出来ない化け物は
苛ついて叫び声をあげ、
体を前後左右にクルクル回転させながら、
両腕をブンブン振り回し始めた。
我々の頭の上すれすれに、大きな拳が飛んでくる。
少しでも当たれば致命傷を受けるのは確実だ。
屈伸運動を繰り返しながら、
四人暗黙のうちに化け物の真下に移動する。
化け物はいきなり獲物が消えたので、
動きを止め、辺りを見回している。
ウガー・・・・と唸りながら
考えているみたいだったが、
自分の真下にいる我々にやっと気づいた。
ウガガーッ !
怒りの雄叫びをあげて、いきなり頭から
飛び込むように落ちてきた化け物に
すくっと垂直に立てられた
四本の鋭い切っ先が待ち構えていた。
ブスリッと鈍い嫌な音をたて、
腕ごと剣が化け物の眉間あたりにめりこむ。
コノヤロウ、お仕置きだっ !
私は中で剣を捏ね回してやった。
ウケェーッ・・・・・
化け物は多量の血のシャワーを我々に浴びせながら、
急いで上空に戻って行く。
ヒューン・・・ヒューン・・・
化け物が物悲しい鳴き声をあげ始めると、
ママが「今よ」と囁いた。
それを合図に私は背をかがめ、
前方にある小さな家目掛けて全速力でダッシュした。
出来るだけ音を立てずに走ろうと努力したからか、
串刺しになったショックで周りが見えないのか、
一向に化け物が襲って来る気配はない。
やっと家まで辿りつくと
そっと後ろを振り返り、化け物がまだ上空に
浮かんだままなのを確かめてから、家を見た。
窓がない・・・
ひょっとしたら入り口もないのではと思ったが、
横板模様の壁に紛れて、
わからないようにしつらえた
小さなドアを見つけた。
そっと壁に耳をつけて中の音を聞くと、
微かに子供のすすり泣く声がする。
けいこちゃんだ・・・・
けいこちゃんが泣いている。
私は少しためらった後、静かにノックした。
コンコン・・・泣き声が止んだが、返事がない。
もう一度ノックしたとき、
「誰 ? 誰なの」
怯えた声はけいこちゃんに間違いなかった。
ここは一番、
じっくりやさしく説得するしかない。
すべてが私の言葉にかかってくる。
「あー、けいこちゃん ? 僕だよ豊兄ちゃんだ。
君とお話したいんだ。良かったらドアを開けて
くれないかなあ」
君を連れに来た、とは
まだ言わないほうが良いと判断した。
けいこちゃんが無言になっている。
きっとどうしようか迷っているのだ。
「お兄ちゃんはね、けいこちゃんと一緒に話が
したいだけなんだ。だから、ね、
ドアを開けてくれないかな。
本当はね、お兄ちゃん
自分でドアを開けれるんだけど、
やっぱりけいこちゃんに開けてもらいたいんだ。
無理やりは嫌だからね」
さりげなく、拒否っても無駄なんだとわからせておく。
中の様子を窺いながら声をかけているわけだが、
けいこちゃんがどうしようかと迷い始めたのが
伝わってくる。
「じゃあ、開けるけど・・・
しょこにいるのはお兄ちゃんだけなの ? 」
しめたっ、その気になっている !
「そうだよ、僕だけだ・・・」
けいこちゃんの小さな足音が聞こえてきて、
ドアがパコッという音をたてて開いた。
おかっぱ頭を下に向けてモジモジしながら
戸口にけいこちゃんが立っている。
私の胸にいきなり熱いものがこみ上げてきて、
知らぬ間に膝をつき、
けいこちゃんを固く抱きしめていた。
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.20. (00:44)
小説 文学 /
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