
最近チャコが本当におかしい。やはりボケがはいってきたんだろうか
一日中発情期のように鳴いてばかりいる。
思えばチャコはナナの子供達の母親代わりになり、
大事に育ててくれた。
猫は十歳を超えるといろいろな病気にかかりやすいという。
ブチ、クロ、チャオ、チャコの兄妹はちょうど十歳だ。
どうかいつまでも元気で少しでも長生きしてほしいものだ。
別荘「ママの店」1 2 34 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16さぞや一人ぼっちで心細かっただろう、
「もう一人じゃないからね、お兄ちゃんが一緒だ」
けいこちゃんを抱きながら頭を撫でてやり、
そう言うと彼女は嬉しそうにコックリと頷いた。
「じゃあ、外にいる
あの悪い玩具はもういらないね」
化け物はこの子が造り出したものだ。
一刻も早く消してほしい。
こうしている間にも中田先生やママ達を
襲っているかも知れないのだ。
「しょとの化け物ってなあに・・・?」
けいこちゃんは首を傾げる。
この子は自分が化け物を造っていることを
知らないのだろうか。
「あのね、実はけいこちゃんに会いに来たのは
僕だけじゃなくて・・・」
私がママ達のことを言いかけるとけいこちゃんは
ビクッと体を痙攣させ、
私を突き飛ばすようにして離れた。
「うしょついたのね、
お兄いちゃん、一人だって言ったのに」
けいこちゃんは恨めしそうな目で私を睨んでいる。
しまった・・・ちょっと早かったか。
私は舌打ちして後悔した。
でも、遅かれ早かれ言わねばならないことだ。
私は笑顔を崩さないよう気をつけて、
ゆっくりと説得することに決めた。
まさか、けいこちゃんが怒って
ここで化け物に変身することもあるまい。
「嘘じゃないよ。この家に来たのは僕一人だ。
君のママと、おばちゃんとおじちゃんは
外で怖い怪物と戦っているんだ。
君を守るためにだよ。
この家には窓が無いから外が見えないけど、
外にはけいこちゃんにそっくりの
怖い化け物がいるんだ」
私がそう言うとけいこちゃんは怪訝な顔をしながら
「けいこしょっくりって・・・しょんなモン
けいこはちらないよ、ただ・・・」
「ただ・・・何 ? 」
首を傾げて何か思い出そうとしている
けいこちゃんに私は聞いた。
「けいこがね、ママのところに行きたいって
思ったとき、けいこに誰かが言ったの。
あれはママじゃない、ママはもういないんだ。
お前は一人ぼっちになったから、
皆でお前を守ってあげる。
だから、ここに隠れていなしゃい。
絶対しょとには出ちゃいけない、誰が来ても
中に入れちゃいけないし、誰の言うことも
ちんじちゃいけないよ、皆、
うしょつきだからねって。けいこを怖い所に
つれて行こうとしているんだって言ったの」
どういうことだ・・・
この子の他に誰かがいて、そいつが
この子そっくりの化け物になっているというのか。
いずれにしても一刻も早くけいこちゃんを
この世界から連れ出さないといけない。
「けいこちゃん、けいこちゃんは僕のことを
怖いお兄ちゃんだと思っているの ? 」
けいこちゃんはブンブンと首を横に振る。
「じゃあ、今からけいこちゃんは、
お兄ちゃんの言うことだけを信じるんだ。
お兄ちゃんは君を絶対ママに会わせてあげる。
今ママは、
君のために化け物と戦っているんだよ」
私がそう言うと、空ろだったけいこちゃんの目に
光が宿った。
「ママがけいこのために戦っているの ? 」
「そうだよ、
嘘だと思うなら外に出て確かめてごらん。
僕と同じ格好をしたのが三人いるから、
その中の一人が君のママだ。
君に嘘を言ったのは化け物なんだよ。
見てみればわかるだろうけど、
いい人があんな恐ろしい化け物になるはずがない。
化け物の言うことを信じていたら、
それこそ本当に、二度とけいこちゃんはママに
会えなくなっちゃうんだよ」
私はけいこちゃんの肩に両手を置き、
真剣な目でゆっくりと諭すように話した。
「わかったわ、けいこお兄いちゃんをちんじる」
私はけいこちゃんの手を握り、
そっとドアを開け外を窺った。
辺りを見回したが危険はないようだ。
遠く離れた所にママ達が立っており、
上空にはけいこちゃんそっくりの化け物が
貼りついたように浮かんでいる。
あれを見てごらんと私が指差すと、
けいこちゃんは
怯えたように全身をピクリと痙攣させた。
「あんなのけいこじゃないよう・・・」
「そうだ、あれはけいこちゃんじゃない。
下にいるのは君のママと
おじちゃんおばちゃんだよ」
「おばしゃんって、
けいこにオムライシュ作ってくれた
人なの ? 」
けいこちゃんは不安気な目をして私を見る。
「そうだ、あのおばちゃんだ。あのときおじちゃん
もいただろ、病院の先生なんだけど」
みるみるうちにけいこちゃんの瞳に涙が溢れ、
口がへの字になった。
今にも泣き出しそうなけいこちゃんを見て、
どうやって落ち着かせようかと慌てたとき、
けいこちゃんはクルリと向きを変え、
ママ達の方に駆け出した。
「ママーッ、ママーッ・・・・」
けいこちゃんが母親めがけて走りだす。
大変だ、化け物がまだ上にいる !
「待って、けいこちゃん」
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.21. (00:50)
小説 文学 /
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