
チャコは食事もまあまあよく食べれ、牛乳も飲めた。食事がちゃんと
食べられるようであれば大丈夫だ。
今日はちょっとした事件があった。何でそんなことになったのかわからないのだが、シマジロウの穿いているオムツに、シュウの足がスッポリ入ってしまい動けなくなった。なんとか取ってやろうとしたのだが間に合わず、元々あんまり仲の良い二匹ではなかった為そのまま団子になっての大喧嘩になってしまった。シマジロウはお尻の毛を毟られ、シュウは肩のあたりから血が出た。
別荘「ママの店」1 2 34 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17幼児の足とは思えないほど、
けいこちゃんは早かった。
私は砂に足元をすくわれ思うように走れないが、
けいこちゃんは上手く砂の上を
パタパタパタと走っていく。
やっと追いついたときはもう
ママ達の近くだ。
「けっ、けいこちゃん・・・上を見て」
私は彼女の肩をつかみ小さな声で言った。
ちょうどママ達の上あたりに、
けいこちゃんによく似た
巨大な化け物が浮いている。
うわっ、とけいこちゃんが
大声をあげかけたので、
私は思わず彼女の口を手で塞いだ。
「しっ ! 静かにして・・・気づかれる」
小声で彼女の耳元で囁くと、
彼女はコックリと頷いた。
けいこちゃんは最初怖がって
震えながら私にしがみついていたが、
母親の姿を見つけると
また走って行こうとした。
今度は寸でのところで引き止めたが、
彼女は、ママ、ママとつぶやき
目に大粒の涙を浮かべている。
どうすりゃいいんだ、
このままでは化け物に見つかってしまう。
それにしても、てっきりあの化け物は
けいこちゃんの心が
造り出したものだと思っていたが、
けいこちゃんがこうやってここにいても、
化け物は消えない。
そうか・・・
あの化け物は自分の意思で動いているのだ。
そのとき私は中田先生の言葉を思い出した。
先生はけいこちゃんと一緒に地獄の裂け目に
吸い込まれたとき、
無数の亡者にしがみつかれたと言っていた。
もしかしたらこの化け物はその亡者どもが
結集して出来たものではないだろうか・・・
もしそうなら我々が、
けいこちゃんを連れ戻しに来たと
あいつらが知ったら大変なことになる。
あの亡者どもは皆救いを求めている。
退治しようという気持ちで戦えば
到底我々に勝算は望めない。
奴等はもう実体がないのだから、
いくら切り刻んだとしても、すぐにまた甦る。
この世界から抜け出すには、
まずあの亡者どもを
救ってやらねばならないのではなかろうか。
でも、ママがそのことを知らないわけがない。
ひょっとしたら最初から知っていた・・・
まあ、そうだろうな、
だからけいこちゃんを助けに行けって
私に言ったんだ。
あっ、もしかしたら中田先生もそのことを
知っていたのでは・・・
ちぇっ、なんだい、
知らなかったのは私だけじゃないか。
私は自分一人が何も知らなかったことに気がつき
とても嫌な気持ちになった。
なんだい、皆して
私をのけ者にして笑い者にしていたんだ。
クソッ、むかつく・・・
私の心の中に
むらむらと憎しみの炎が燃え上がってくる。
はっと気がついたら、
私は両手でけいこちゃんの首を絞めていた。
「グッ、グルジイヨ、お兄いしゃんどうじだの」
けいこちゃんが私の手を振りほどこうと暴れている。
私は我に返り、慌てて手を離した。
「ご、ゴメン・・・」
私はいったい何をしようとしていたんだ、
けいこちゃんの首を絞めようとするなんて・・・
額から首筋にかけて冷たい汗が流れ落ちていく。
私は呆然として自分の両手のひらを
見つめていた。
〜つづく
「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13)その他の作品紹介 電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.22. (00:37)
小説 文学 /
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