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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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2006.09

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店


ナナは確かに他の猫達と違う。
猫というものは自分勝手なもので、犬と違い人間の言うことを聞いたりしないものだ。だから〇〇を持って来てといくら命令しても、
聞いてもいないし、ましてや持って来るなど絶対あり得ない。
それがナナの場合は話しかけるとじっと耳を傾けて聞いている。
アメを持って来るようになったのも、私らがふざけてアメを見せ
「これを持って来てね」と言ってからだ。
ティッシュもハンカチもよく考えてみれば外出するときには
絶対必要な物だ。
ナナはそれが分かっているから持って来てくれるのだ。
「こんなの持ってきたよ」と言わんばかりの甘ったるい独特の鳴き声が聞こえてくると、ナナが何かを持って来てくれたという合図なのだ。

別荘

「ママの店」  
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「この世界の本当の恐ろしさは、
 自分の心の中にある
 ちょっとした不満とか怒りを
 増長、増幅させて
 心を蝕んでいくところにあるのよ。
 早く脱出しないと
 出られなくなってしまうわ」

私の頭の中でママの声がした。
そうか、だから今ものすごく腹が立ち、
無意識にこの子の首を絞めようとしたんだ。
大変だ、本当に早く脱出しないと
えらいことになる。
何か中田先生の目つきも
怪しくなってきたような気がする。
私はけいこちゃんを抱くようにして
ソロリソロリとママ達の側に近寄った。

「ママ・・・」

けいこちゃんが嬉しそうに母親の側に行くと、
母親はギロリとけいこちゃんを睨みつけ、

「けいこ、そんなところにいたのね。
 何度もこんな化け物で大人をいたぶって、
 もう絶対許さないからね」

母親は今にもけいこちゃんを捕まえて
どうにかしてしまいかねない勢いだ。
私は慌てて怯えた目で震えている
けいこちゃんを背中に隠した。

この人の心も蝕みかかっている・・・

私は中田先生の存在を思い出し、
先生の様子を見ると、
先生は無言のまま空中に浮いている
けいこちゃんの姿にそっくりの化け物を
見上げたまま動かない。

「先生、中田先生、
 けいこちゃんを救い出しましたよ」

と私が言うと、
先生はぼーっとした顔をして私を見た。

「私に、救って欲しがっているんだよ、
 あの子達は皆大人たちの犠牲者なんだよ、
 だから・・・
 苦しい苦しいって泣いているんだ」

こりゃいけない先生も完全に逝っちゃってる。
ママどうしよう、と言いながら振り向くと、
ママまでが青い顔をして下を見つめ
ブツブツと訳の分からないことを
つぶやいている。

どうすりやいいのさ、
皆しておかしくなっちゃってるじゃないか。

「お兄ちゃん、だずげて・・・」

はっと我に返ると、いつの間に捕まったのか
けいこちゃんが母親に首を絞められて、
剣の切っ先が眉間に突きつけられている。

私は母親の隙を突き、
体当たりしてけいこちゃんを奪い返した。

「そいつを渡せ、お前らを皆殺しにしてやる」

母親は空ろな目で辺りを見回し、
剣をブンブンと振り回し始めた。
中田先生も、誰と戦うつもりなのか、
剣を握り直し、こちらに向かってくる。
ママ・・・ママまでが暗い顔で、
スーッと剣を胸の辺りで構えているではないか。
まったくもう・・・冗談じゃないよ、
仲間同士で殺し合いさせようという腹なんだ。
私はけいこちゃんを
背中に隠しながら逃げ回り、
何とかこの窮地から
逃れる方法はないかと考えていた。

ママだ、今頼りになるのはママしかいない。
テレパシイで交信をとるのだ。
私は必死に頭の中でママは話しかけた。

「ママ、聞こえる ? 
 皆おかしくなっちゃった、
 このままじゃとんでもないことになるよ。
 全員無事帰りたいんだ。
 ねえ、しっかりして」

「ゆ・た・か・・・」

頭の中でママの声がした。
通じたんだ。でも、何か様子がおかしい。
ママは自分の中で何かと戦いながら
必死に話しかけてくれているみたいだ。

「私を殴りなさい・・・」

ママの顔が青黒く変質しかかっている。
想像したくもないが、
きっと何か恐ろしいものに
姿を変えようとしているのだ。
食い止めねば。

ママ、ゴメン !
私は拳骨を握り締め、
冑ごとママの顔に拳を叩き込んだ。
グッと息を吐き出し、
どっとママが砂の上に倒れこんだ。
目が覚めるか・・・
私はママの動きを慎重に見守った。
モゾモゾとママが姿勢を立て直す。
私は思わず剣を構えた。

「ちょっと、痛いわね !
 何もグーで殴ることないでしょ」

ママの頬っぺたが
みるみるうちに紫色に腫れあがる。

「ご、ごめん・・・やりすぎた」

私は心から反省をしてうな垂れた。
冑があるから力一杯殴らないと
応えないと思ってしまったのだ。

うへえ・・・あんなに顔が腫れあがっている。
もう私はママに殺されたって文句を言えない。

しょんぼりとした私を見て可哀相に思ったのか、

「もういいわよ、
 殴れって言ったのは私なんだから」

ママがクスッと笑った。 

〜つづく

「ママの店14」 をHPにUPしました。
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

(ママの店12前編) (ママの店12後編)
(ママの店13)
その他の作品紹介
電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.09.25. (00:16) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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