オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
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 シュウは本当に賢くて、私達の手伝いをしてくれたり 他の猫達の世話までしてくれる。それでストレスが溜まって、 昨日みたいに突然カスガに殴りかかったりしてしまうのだ。 シュウは生まれた時、白血病のキャリアと診断されている。 今はまだ発症していないが、いつ発症するかわからない。 だからストレスを溜めずにおおらかに生活してほしいのだ。 明日は早くから法事の為に田舎に帰らねばならない。 暗くならないうちに帰ってやらないと、 ナナがまた飴を並べて待っているだろう。  今日の猫達のご飯は、野菜の卵とじとマグロの水煮缶、猫マンマ。 美味しいご飯頑張って作るからたくさん食べてね。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15和美さんはボーっとした顔をして 現れたが、どうやら私達のことを 忘れてしまっているようだ。 影は消え去り、 ドアの前に立った和美さんは 物珍しそうに 辺りをキョロキョロと見回している。 「あのう、ここはどこですか。 私前もここに来ませんでした ? 」 不安気な顔をする和美さんに、 ママはニッコリと笑い、 「ええ、いらっしゃいましたよ。 昨日あなたはここに来て、 まず最初に ココアをお飲みになりました。 お忘れですか」 ココア・・・和美さんは何か考えて いるようだったが、 ハッとした顔になり やっと昨日のことを 思い出したようだった。 「あぁ、思い出しました。 私、みなさんとお茶を飲んで お話したんですよね」 不安そうだった和美さんの顔が みるみるうちに明るくなった。 「あなたが残していった影のおかげで、 僕達は外に出れなかったんだよ」 と私が少し責めるように言うと、 和美さんは不思議そうに首を傾げ、 影・・・? とつぶやいた。 「豊、和美さんは影のことを 知らないんだ」 中田先生が和美さんをフォローする。 「あ、あのドアから覗いていた 女性のことを 話していたんですよね、 思い出しましたとも、 あれからどうなりました」 和美さんがあんまり 他人事のように言うので、 私は内心ムッときていた。 「だからさっきも言った通り、 我々は外に出れなかったんですよ。 あなたが消えた後、 妙な影がドアの横に現れましてね、 外に出ようとしたらニガサナイなんて 脅すから困ってしまいました」 まあまあ、続きは 座ってしましょうとママが言い、 和美さんを促しソファーに座らせた。 「ココアお持ちしましようか」 ママがニッコリ笑いながら言うと、 和美さんは嬉しそうに頷く。 ママが出したココアを飲むと 和美さんは落ち着き、 昨日の続きを話出す。 「一日中誰かに見張られている気が するんですがねえ、 私には全く心当たりがないんですよ」 と和美さんが言うと、 今まであまり質問しなかったママが、 口元に笑みを浮かべながら、 「最近身辺に何か変わったことが ありませんでしたか ? たとえば恋人が出来たとか」 といきなり聞いたのでびっくりしたが、 和美さんは恥ずかしそうに頷き、 実はそうなんですと小さく答えた。 「あっ、分かった。 それじゃ、その彼に 別に付き合っていた女の人がいて あなたを恨んで 付きまとっているんだ」 私が思いついたままそう言うと、 和美さんはびっくりしたような顔をして、 とんでもない、 あの人はそんな人ではありません。 と怒ったような口調で言った。 「ちょっと、豊。 思いつきを口に出すんじゃないの」 ママは私を叱るように言い、 「ごめんなさい、この子単純だから 何も考えないですぐ口にしちゃうのよ、 でもあなたのことずっと心配してたの、 だから許してあげて」 そう言うと和美さんは、私の顔を見て 笑いながら、 「あの人は多分そんないいかげんな人では ないと思っています」 と丁寧に言い直した。 そう言われると何か私が ものすごく悪者に思えてくる。 「でも、誰かがあなたに 恨みを持っているのは 事実なんですよ。 げんに、ここにいる良太君に そいつはのり移ったんですからね、 あのときはまだあなたはここにいた。 だから、のり移ったヤツが何を言ったか 覚えているはずだ」 私のどこが単純だ、 いくらママでもそりゃあんまりだ。 ここは彼女に事実を 知ってもらわねばならない。 男の中には二股も三股もかける 悪い奴がいるのだ。 そういう奴に限って口がうまく、 騙された女は、あの人は良い人です、 あの人に限ってそんなことはありません、 と思い込まされるのだ。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (夢)
2006.10.31. (00:39) 小説 文学 /
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 台所の蛇口には、シャワーと普通の水の出方を選択するスライド式の切り替えスイッチが付いている。 ブチがその突起の部分を 齧る 癖がついているのが シュウ には気にいらない。スイッチがブチの カジカジでぬるぬるして汚いから見つけたら私も怒るのだが、やはり見ていないときに ブチはやる。それをシュウが見逃さないのだ。ブチがカジカジを始めたとたん ブン と猫パンチをくらわす。ブチは顔を殴られ眩暈がするのか頭を振りながら齧るのを止める、いや、そのときは止めるのだが、シュウが見ていない時にまた齧る。シュウは見ていないふりをしているが実は見ていて、 ブン とまたパンチをくらわす。もうその繰り返しがおかしくてたまらない。 (おかしな形のトマト) 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14「どうしたのよ、大きな声あげちゃって」 ママが眉を潜める。 「すげえ声出すから おいらチビリそうになったよ、 何か怖い夢でも見たの ? 」 良太君が目を擦りながら 眠たそうな声を出す。 「精神的なもんじゃないかな、 私も時々ストレスが溜まって 叫びたくなることがありますからね」 犬山さんがそう言うと、りりーさんが えっ、とびっくりしたような顔で 犬山さんを見た。 犬山さんが、しまったと言うように、 一瞬首をすくめたのを 私は見逃さなかった。 やっぱり犬山さん、 リリーさんのとの付き合いで 無理していることがありそうだ。 「あっ、君がいてくれるから 今は全然そんなことないからね」 何故かとても焦っている。 ママはじっと私を見ていたが、 私の心の中が読めたのか、 やがて同情するような顔になり、 一人で納得して頷いている。 「豊、犬山さんが言うように、 君は精神的に疲れているんだ。 ちょっと休んだほうがいいよ。 和美さんのことは、 彼女がここにやって来たときに 考えることにしようや。 今我々がとやかく言っても、 本人がいなくては話にならんからね」 中田先生が私の肩に手を置き なぐさめるように言ってくれたので、 私の気分もだいぶ落ち着いてきた。 そうだ、こんなこと考えても 仕方が無いことだ。 もう少しで、 自分を見失うところだった。 「あ・・・驚かせてすみません。 僕、静かなのが苦手なもんで、 あんまり退屈だと 無意識に叫んでしまうんです」 皆に謝った後、 ごめんね、と 恵子ちゃんと良太君にも謝り、 私は照れ隠しに頭をボリボリ掻いた。 「いいってことよ、おいらだって 学校の授業中何回か 叫んだことがあったからな」 「そりゃ、いかんだろう」 中田先生が突っ込みを入れたので、 良太君が鼻の下を指で擦りながら エヘヘと笑った。 「だって、先生何言ってるか 分かんないし、誰も喋んなくて、 ノートばっか取ってるんだもん。 あれは精神に異常をきたして 当たり前の状況だ」 良太君があんまり大人びた口調で言うので 皆おかしくてドッと笑ってしまった。 おかげで私の気分も 完全に晴れたようだ。 「あっ、あれを見て・・・」 涼子さんがいきなり叫んだ。 皆一斉に 涼子さんの指差す方を見ると、 影が少し薄くなって 靄のようにゆらゆらと揺れている。 「おえっ、消えかかっているじゃん」 良太君の言う通り、 影は少しずつ薄くなってきている。 そしてその中に ぼんやりとした人影が現れ、 やがてはっきりと見えてきたのは、 肩まで伸びた髪、今はグレイの ツーピースを着ているが、 それはまぎれもなく和美さんだった。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (夢)
2006.10.30. (00:04) 小説 文学 /
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 昼ご飯を食べたあと、シュウがいきなりカスガに殴りかかった。 こういうことはよくあるのだが、原因はシュウのヒステリィ。 時々溜まりに溜まったカスガへの不満が一気に爆発するらしい。 思えばカスガは最近ブクブク太ってきて、 シュウのお気に入りのクッションまで侵食してきている。 シュウが気持ち良さそうに抱いていたクッションを いつの間にかカスガに取られていても、その時は怒らない。 先にご飯を食べたカスガがシュウのご飯までうっかり食べてしまってもシュウは知らんぷりをしている。 だけど、多分相当我慢しているはずだ。 だから、いきなり殴りかかっていくのだ。 そういうことを全部知っているのだけど、何と言ってもカスガは女の子、手を出すことは許されない。 シュウは言葉が分かる子で、大きな声で叱るとシュンとしてしまう。 可哀相だとは思うけどしっかり怒らせてもらった。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13和美さんは自分で 会社の社長秘書をしていると言っていた。 でも、それは夢の中で発した言葉だから あてにはならない。 夢の中で人は願望の赴くままいろいろな 立場の人間に変身するからだ。 いや、人間とは限らない、 好きな動物に 変身することだってあるはずだ。 そして、性別も定かではない、 和美さんが女性である可能性は 五分五分だ。 さまざまな憶測で頭が一杯になり、 どれだけの時間が過ぎたのか 分からなくなっていた。 はっと気がつくと、 恵子ちゃんと良太君は ソファーの上でスヤスヤと眠っていて、 ワンコも良太君のお腹の上に頭を乗せて 目を閉じている。 ママは涼子さんと二人で カウンター内で何か作っており、 リリーさんは犬山さんと小声で 話しをしている。 中田先生は私のちょうど目の前で 新聞で顔を蓋してお昼寝中なのか、 気持ちよさそうなイビキが聞こえてくる。 なんだい、和美さんのことを 考えていたのは私だけ。 まったくもう、 あの影のおかげで 外にも出られないというのに、 皆何も思わないんだろうか・・・ 私はだんだん妙な気持ちになっていった。 そうだ、ここは 夢と直結している世界なんだ。 夢の中ではいろいろな出来事が起こる。 私の大学で殺人事件が起こったときも、 ママはさほど驚きもしなかった。 それどころか、宮下刑事の空想が 恐ろしい展開をしないように ママがシナリオを書き換えた。 そして犯人の海原先生だが、 そもそも海原先生という人物が 大学にいたかどうかも怪しい。 あれは多分、宮下刑事が想像して 作り上げた事件なのだ。 そう考えると、今回の和美さんのことは どうなるんだろう。 もう何が何だか分からなくなってしまい、 突然無意識に、 それこそ周りの状況も考えず 私は思い切り大声を出して 叫んでしまっていた。 台所ではお皿が床に落ちて割れ、 ママと涼子さんが 引きつった顔で私を見ている。 目を覚ました恵子ちゃんが ヒクヒクと痙攣しながら泣き初め、 良太君も怯えてワンコを抱きしめている。 「豊、どうしたんだ」 中田先生が心配そうに私の顔を覗き込む。 犬山さん、リリーさん、ママ、涼子さん、 良太君、恵子ちゃんまでが 私の側に集まって来た。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (夢)
2006.10.29. (00:37) 小説 文学 /
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 今日の晩御飯は 鮭を焼いた。我が家の猫達は 鮭が苦手で、一応食べる子もいるがあまり喜ばない。猫は魚だったら何でも喜んで食べそうだが、人間と同じように好き嫌いがちゃんとある。だから鮭の時、猫達は他の物を食べてもらう。今日はこの前焼いて冷凍しておいたシシャモだ。 シシャモをチンすると香ばしい香りが漂ってくる。目を細めて匂いを嗅ぐ カリンの顔が可愛い。 鮭が何故好きじゃないかは分からないが、子猫のとき喉に皮を詰まらせて吐きまくったことがある子は、それがきっとトラウマになっているのだと思う。鮭の皮は結構弾力性があり食い切れないから怖い。 人間の場合でも、年がいって飲み込む力が衰えているときは要注意だ。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12しばらくドアを塞いだ影と 睨み合いをしていたが、 いつの間にかワンコが唸らなくなっている。 良太君がワンコの顔を覗き込むと、 ワンコは嬉しそうにクウンと鳴き、 良太君の腕に鼻先を擦りつけ始めた。 「うふっ、くすぐったい」 良太君が思わず声を出したが、 影には何の反応もない。 私達はそろそろと また中田先生達の側に戻って行った。 全員ソファーに座り直し、 影の様子を見ていたが、 影はまたなりを潜めて動かなくなっている。 「誰も外には出さないってことか・・・」 私がそう言うと、 ママがそう言うことね、と言って頷いた。 犬山さんは、大丈夫だよと言うように しっかりとリリーさんの手を握り締める。 中田先生はテーブルに肘をつき、 組んだ手の親指同士をくっつけたり 離したりして影を見ながら何か 考えている様子だ。 恵子ちゃんは 良太君にぴったりとくっつくように座り、 黙ってワンコの頭を撫でている。 二人とも口をへの字に 曲げているところを見ると、 怖いのを我慢しているのだろう。 クソッ、子供をこんなに怖がらせて どういうつもりなんだと、 だんだん腹が立ってくる。 「私達が店の中で食事したり 話しをしたりするのは 平気みたいですね」 涼子さんが飲み終わったコーヒーのカップや 空になったお皿を片付けながら言った。 「まあ、待つしかないってことだわね」 ママもそう言いながら テーブルの上を片付け始める。 ゴンの食事のことや、 両親のことが気になるが、 あの影と格闘してまで 外に出る自信がない。 この世界は夢の中の世界。 いわば形が無くて、 想念だけで成り立っている。 理性もなければ秩序もない。 あの影が どんな恐ろしい物に姿を変えるか、 想像することすら出来ないのだ。 ママが言うように、今夜和美さんが ここに来るのを待つしかない。 しかし和美さんには、 本当に影の正体が 分かっていないのだろうか、 我々が影に気づいたときにはもう 和美さんは目覚めてしまい、 姿を消していた。 恵子ちゃんが見たという、 黒っぽい服に緑の帽子を被った女は誰だ。 その女が姿を変えて あの影になっているのだろうか、 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.28. (00:02) 小説 文学 /
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 我が家のリビングには 二階建ての小屋 が二つと、 平屋の小屋 が二つある。 人間と寝る子達もいれば、兄弟妹で寝るのを好む子達もいるからだ。 毎年冬になるとそうしているように、 夜中の温度がかなり下がってきたので、 小屋でかたまって寝ている猫達に今日からデッカイ布を掛けてあげた。 もう少し寒くなったら 湯たんぽ合戦が始まる。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11どのくらいの時間が経ったのか、 結局ドアの近くにいるそいつの為に 誰も外に出られないでいた。 アレを残して行ったからと言って、 和美さんが必ずしも 今夜この店に戻って来るとは限らない。 アレと和美さんの関係も 今はまだ分からないから、 そのことに関する会話も いつしか種が尽きてしまっていた。 ママと涼子さんが作ってくれた エビピラフを昼食に食べた後、 私達の間にはこれと言った話題もなく、 退屈きわまりない 時間ばかりが過ぎて行く。 このまま夜になるのを待って、 和美さんがまた来るのを 待つしかないのだろうか。 怪しげな物があれば、 ワンコがすぐに嗅ぎ回るはずだが、 ワンコは全然その影に反応しない。 側に行こうともしないし、 それどころか良太君の足元で チャッカリ昼寝を決め込んでいる。 この分だとドアから出入りするくらい、 どうってこと無いのじゃないかと 思えてきた。 「ねえ、僕一度家に戻るよ。 ゴンにご飯食べさせないといけないし、 その前に親に 今日は帰れないって言っときたいんだ」 私はドアとカウンターの間にうずくまる 影を見ながら言った。 「あっ、それじゃおいらも一緒に行くよ。 ワンコにシッコをさせてやりたいんだ。 こいつまだシッコの習慣があるんだ」 良太君が鼻の下を 人差し指で擦りながら笑った。 大丈夫かなあ・・・と犬山さんが 影に目をやりながらつぶやくように言うと、 ママは首を傾け、少し不安そうだ。 「まあ、出る時が問題なだけで、 出ちまったら安全だ。 良太は豊の家に居させてもらうほうが いいかも知れないな。そうだ、 恵子ちゃんと涼子さんも一緒がいい。 豊、頼めるか」 中田先生がそう言うと、 犬山さんがリリーさんに、 君も家に帰ったほうがいいよと やさしく言った。 リリーさんは首を横に振り、 「やあよ、私は猛さんと一緒がいいの」 その言葉を聞いた 犬山さんの顔ったらなかった。 とろけたように 目尻が下ってしまっている。 こりゃ当分この気色悪い顔が、 私の脳裏に張り付いて 離れてくれないだろう。 ゴホンと中田先生が咳きをして、 ママと涼子さんが顔を見合わせて クスクス笑っている。 「じゃあ、涼子さんと恵子ちゃん、 良太君ボチボチ行こうか」 私が三人を促し、 ソロソロとドアに近づいたとたん、 良太君に抱かれていたワンコが グルグルグルと低く唸り始めた。 影が小刻みに震えている。 「豊 ! 」 中田先生の声に、 私は素早く三人を背中に隠し、 後退りしながら身構えた。 ニゲルナ・・・ しわがれた不気味な声とともに、 影がザーッと移動してドアを塞いだ。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.27. (00:13) 小説 文学 /
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 隣の部屋に ナナママ がいる。 チャーは時々むしょうにママに会いたくなるらしく、 恐る恐る側に近寄って行ってはシャーッと吹かれて殴られる。 殴られたらいくらママでも許さないとばかりに チャーも殴り返すから大喧嘩になってしまう。 親子なのに何を馬鹿なことをと私は見ていて悲しくなるが、 こればっかりは何もしてあげられない。 ナナは何故子供達に冷たいんだろう、 早く自立させたいから小育てを放棄したのだろうか、 チャー達兄妹が生まれたとき、フクパパとナナが子供達を抱き、 とても可愛がっていたことを覚えているだけにとても悲しい。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11・・・お知らせ・・・ 本日のママの店はお休みさせて頂きます。 店主敬白 特別番組 「おしろい花」 毎年夏の終わりが近づくと 道端のあちこちにおしろい花が、 ローズピンクの美しい花を咲かせ始める。 私は昔からこの花が大好きで、 黒く丸い種を取ってきては 自分の家のプランターに蒔く。 でも、何故かいつもうまく育ったためしがない。 おしろい花といったら、雑草のように あちこちで咲いているから、 種さえ蒔けば、勝手に育ってくれる ものだとばかり思っていた。 ところが、芽が出て 葉っぱが出る頃になってから おかしくなってくるのだ。 まず葉が少しずつ枯れ始め、 かろうじてついた蕾も枯れてしぼんでしまう。 何か原因があるはずだ、 その原因さえ分かれば 花を咲かせることが出来るはずだと思い、 今年もめげずに挑戦してみた。 種を蒔く時期を微妙に変え、 肥料も入れて、葉っぱが出るのを待っていた。 そして、やっと 芽が出て葉が開いたのだが・・・ 葉っぱに白く透けた部分を 発見したときはすでに遅く、 あちこちの葉に伝染してまたもや 枯れて全滅した。 そして今度はおしろい花だけではなく、 近くに植えてある ベゴニアの葉までがボロボロだ。 せっかく綺麗な花が咲いていたのにと 悲しくなった。 もうベランダ園芸止めようかなと 半分あきらめながらも、 根はまだ生きていると思い、 せっせと水だけはあげていた。 ある夕方、いつものように水をやっていて、 おしろい花のあった辺りに水をかけたとたん、 ワラワラワラと物凄い数の 薄茶色の蛾が一斉に飛び立った。 それで原因が判明。 おしろい花に蛾が卵を産んだらしい。 幼虫がおしろい花とペゴニアの葉を 食べてしまったというわけだ。 まあ、それから水をやる度に 無数の蛾が飛びかうといった状態で、 これじゃいくら新しい葉が出たとしても無駄。 そこで殺虫剤を撒こうと スプレー缶を持ってきたものの、 飛んでいる蛾達に向けて 噴射することが出来なかった。 一生懸命育てた植物を食い荒らして、 蛾が育って飛んでいる。 まだこの場所から離れないということは、 次も卵を産み付けるべしなのだ。 今殺しておかないと、また同じことの繰り返し。 頭では分っているのだが、 蛾を殺すということが出来なかった。 虫一匹殺せないと言う言葉があるが、 まさにその通りで、 私は生きているものを殺すことが出来ないのだ。 まあ、いいわい、 お前達の食事になったんだから 花よりも生きているお前達を見れて嬉しいよ。 と蛾に語りかけて私は殺虫剤を撒かなかった。 そして、半月が経った頃、 まずペゴニアにポチポチと 黄緑色の芽が出てきたのに気がついた。 そしておしろい花の葉がまた土から顔を出した。 抜かないでおいたタンポポまで とんでもなく太い茎を伸ばし、 今ベランダは今までかつてない 花の楽園になっている。 楽園とは大袈裟かもしれないが、 とにかく枯れたすべての葉が 見事に生まれ変わり、 よく肥えて瑞々しく育っているのだ。 ペゴニアの可憐なピンクの花に タンポポの黄色い花、 そして大きな花弁をつけたおしろい花。 蛾に食べられた後のあの状態からは、 およそ想像も出来ない美しさだ。 あの時蛾を殺さないで良かったと思う。 殺さなくても、今こうして 美しい花が咲いてくれた。 これはひょっとして蛾達が、 葉っぱを食べさせてくれたお礼に、 美しい花を咲かせてくれたんじゃないかと、 人様が聞いたら アホじゃないかと思われそうだけど、 私にはそう思えてならないのだ。 (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.26. (00:45) 小説 文学 /
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 もうパソコンばっかり触ってないで 早くダッコ! いつも一緒に寝る フクがとうとう実力行使してきた。布団の横に小机を置いてノートパソコン開いて頑張っている私に ボエ〜ン と何度もキックを食らわせてくるのだ。 猫の後足キックはかなり効く。キーボードがまるきり打てない。 今日の晩御飯のおかずは トンカツ。人間はカツカレーで猫達は猫マンマにトンカツを一切れづつ添えた。トンカツを揚げているとき、 「何だ魚じゃないやん」という残念そうな溜息が聞こえてくるようだった。我が家の猫達は肉より魚を好む。 文句言うな、美味しかっただろ?皆きれいに食べたじゃないか。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10ふと店の中に、 和美さんがいないことに気がついた。 「ねえ、あの人いなくなってるよ」 私が誰ともなしに言うと、 皆キョロキョロとあちこちを見回す。 本当だ、いない・・・と涼子さんが言った。 「どうやら目が覚めて戻ったみたいね」 ママが溜息と一緒につぶやく。 「何か中途半端になっちゃいましたが、 本人がいなくなったってことは、 この件は これで終わりってことなんでしょうかね」 犬山さんがボソッと言う。 「あの人夢を見ていただけですから、 そういうことでしょうねえ」 リリーさんがそう言って 眉を潜めて涼子さんの顔を見た。 涼子さんも同感と見えて頷いている。 「また来るわよ」 ママの声が店の中に響いた。 そんなに大きな声でもないのに 声がビリビリと振動して、 カウンターの後ろにある 棚に並んだ食器類がカタカタと音をたてた。 皆が驚いた顔でママを見ている。 恵子ちゃんは怖がって 涼子さんにまたしがみついてしまった。 良太君は子供とはいえやはり男の子、 実際の心の中までは分からないが 怯えた様子もなく、 真剣な顔でママを見ている。 「ママさん、どうして分かるんですか 彼女がまたやって来ると」 中田先生がママに聞くと、 「あの人は残していったじゃない。 アレを」 ママが指差す方向を見ると、 カウンターとドアの間にある隅に、 ぼんやりと黒い影が出来ている。 ウッありゃ何だ、 私を含めママ以外の全員が腰を引いた。 どうやらそれは、 さっき良太君に取り憑いた物らしい。 じっと様子を見ていたが、 そいつが動く気配はない。 誰か側に行って確かめるかと思ったが、 誰もその場を動こうとしない。 それどころか、何となく 皆チラチラと私の方を見ているではないか。 「はいはい、僕に行けってことですね」 まったくこの連中ときたら、 こういう時は絶対私を使うんだから・・・ ブツブツと心の中で愚痴りながら、 私は渋々その影に近づいて行った。 「豊、気をつけて」ママが小さく言う。 影は煤のように透けていて、 向こう側の壁が薄く見えている。 子供くらい、 そう良太君くらいの大きさの物が うずくまっているといった感じだ。 ちっとも動かないし、 これが生きているという気も全然しない。 ただの煤としか思えないのだ。 触ってみようとしたら、 「触っちゃだめ ! 」 ママの鋭い声が飛んできたので 慌てて手を引っ込めた。 「取り込まれる恐れがあるわ、 さっきの良太君みたいにね」 ママがそう言うと、 「うえっ、おいらにあんなのが取り憑いたのか」 良太君が顔をしかめた。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.25. (00:53) 小説 文学 /
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 今日の晩御飯は シシャモ がおかずだった。 シシャモは頭から尻尾まで食べれて猫達の大好物だ。 期待して勢ぞろいして待っている猫達の嬉しそうな顔を見ながら、 グリルを使わず網で焼いた。沢山焼いて冷凍しておこうと思ったから、人間の分と猫達の分とで 七十尾、焼くのに一時間かかってしまった。 シシャモはわりとすぐに火が通るから楽だが、 こう数が多いとやはり大変だ。 大きなシシャモを一匹づつ食べたら、牛乳は飲めないかなと思ったが、 別腹だったようで牛乳も沢山飲んだ。すごい! 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9良太君は中田先生に肩を掴まれたとたん グラッと体のバランスを崩してしまい、 前のめりに、ガツンと テーブルの表面に頭を打ちつけてしまった。 キャッ!と恵子ちゃんが びっくりして声をあげ、 良太、大丈夫かと叫んだ中田先生の声で、 ママ達が急いで戻って来た。 どうしたの、と心配そうにママが聞く。 恵子ちゃんは涼子さんに飛びつき、 テーブルに額をついたまま動かない 良太君を恐々見つめている。 リリーさんと涼子さんは不安気に 顔を見合わせ、 蒼然とした雰囲気になった。 「もしかしたら、さっきドアを開けたとき 何かが中に入って、 良太君に取り憑いたのかも知れないわね」 ママは良太君の様子を見てすぐに 事情を察したらしく、 目を凝らして辺りを見回している。 私の責任だ、 私が慌ててドアを開けたりしたから こんなことになったんだ。 私がしょんぼりとしたのを見てママは、 あんたのせいじゃないわと 慰めるように言ってくれた。 「いったい何が憑いたんだろう、 まだ良太君の体の中にいるんだろうか」 犬山さんが心配そうにボソッと言うと、 中田先生は首を傾げ、 良太君の背中を擦るのを止めた。 まだ憑いているとしたら、 次の動きがあるはずだ。 一同が固唾を呑んで 良太君の様子を見守っていると、 「痛ってえ・・・」 良太君はモゾモゾと頭を持ち上げ、 額を痛そうに擦りながら、 不思議な面持ちで皆の顔を見回している。 「なんだい、皆どうかした ?」 良太君が聞く。 お前何にも覚えていないのかと 先生が言うと、 良太君は首を傾げてしばらく 考えていたが、 「そう言えばおいらの頭の中に 誰かが無理やり 入って来たような気がする。 それから訳が分かんなくなって、 気がついたらデコが猛烈痛い」 良太君の言葉がおかしかったのか、 リリーさんが笑い出し、 それにつられて全員が笑った。 笑い事じゃないよう、と 良太君が不機嫌そうに唇を突き出す。 どうやら憑き物は良太君から離れたようで、 一同ホッとして胸を撫で下ろした。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.24. (00:50) 小説 文学 /
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 去年から今年にかけての冬に湯たんぽで低温火傷をして、ブチの太ももの毛が薄くなってしまっている。本当ならこの夏で新しい毛が生えてきて禿た部分は元通りになるはずなのに、未だ生えてこない。 それはブチがもう、トシだからだ。 ブチと同じ年のチャコの腰もゴツゴツ骨が当たるようになってきたし、嫌でも老いを感じさせられる。 おかあさんと呼んでくれるクロ、指を吸いに来るチャオ、ブチ、チャコ、この子達が今一番年上だ。去年ゴンを亡くしたときはショックだった。これから先、この子たちにもしものことがあったら耐えられるだろうか・・・自信が無い。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8「きっと私が怖い話をしたからなんだわ。 恵子ちゃんごめんなさい」 和美さんが謝ると、恵子ちゃんは イヤイヤするように首を振る。 「ちがうの、本当にのじょいていたの」 気のせいよと言いかけた涼子さんを止めて、 ママが恵子ちゃんに話しかける。 「どんな人が覗いていたの ? 」 恵子ちゃんはヒクヒクとしゃくりながら、 ゴクリと唾を飲み込み、 「あのね、怖い顔した女のしとが中を のじょいていたの」 「どんな女の人だった ? 」 ママは恵子ちゃんに食い下がる。 涼子さんは恵子ちゃんを抱きしめ、 これ以上喋らせたくないと言うような すがるような顔でママを見ている。 「緑のお帽子に黒っぽいお洋服」 恵子ちゃんは 涼子さんの胸に顔を埋めたまま つぶやいた。 「ありがとう、よく話してくれたわね。 涼子さん、ごめんなさいね、 でもこれは和美さんに 関係していることだと思うの」 申し訳なさそうにママが言うと、 涼子さんはニッコリ笑って頷き、 恵子ちゃんの頭を撫でてやっていた。 とりあえず座って話をしようと 中田先生が言ったので、 皆またぞろぞろとソファーに戻り、 元いた位置に座った。 コーヒー入れ直すわねとママが立ち、 涼子さんと一緒に テーブルの上にあるカップの回収を始めた。 リリーさんも手伝って、 結局和美さんを除いて女性陣が皆 カウンターの方に行ってしまった。 良太君は一生懸命恵子ちゃんの気分を 直そうと話しかけている。 恵子ちゃんの見間違いじゃないとしたら、 覗いていた女はいったい誰なのか、 果たしてその女は 和美さんとどんな関係があるのだろうか、 我々はそのことを まず考えてみようとしていた。 「さっき恵子ちゃんが見たという、 そういう服装の女性に心当たりがある ?」 私が聞くと、和美さんは首を傾げ、 じっと考えているようだったが、 いえ、思いあたりませんと答えた。 「おまえはそのおとなしい顔で、 男をたらしこんだんだよ」 ソファーに座っていた我々全員の目が 一斉に良太君を見た。 良太君は口元に冷たい笑いを浮かべ、 じっと我々の方を見ている。 側で恵子ちゃんがポカンとした顔で 良太君を見ていたが、 そろそろと移動して私の膝に乗ってきた。 「良太・・・お前、今何て言った」 中田先生がびっくりしたように聞く。 「今に化けの皮が剥がれるよ・・・」 それはもういつもの 明るい良太君ではなかった。 声はしゃがれて低く、 顔も、子供らしさを失い 鼠色がかった死人の色になっている。 「良太、しっかりしろ何を言ってるんだ」 中田先生が良太君の肩を掴んだ。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11)
2006.10.23. (00:32) 小説 文学 /
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 今日は昼から4時間ほど外出してしまい帰宅したのはもう夕方。 こんなに遅くなるとは思っていなかったので、 部屋の明りをつけずに行った。 ドアを開ければ家の中は薄暗く、ナナが玄関に座っていた。 案の定廊下には点々と飴が並んでいる。 廊下とリビングの境目のドアを閉め、他の猫達と不仲のナナを 別の部屋に入れておいたのだ。何時間も帰って来ない私達を、 心配して探し回ったナナの姿が目に浮かんだ。 飴を持って来れば帰って来ると信じて、 廊下に飴を並べて待っていたナナ。玄関でひたすら待ち続け、 私達の顔を見たとたん嬉しそうな目をしてニャアーと鳴いた。 待ちくたびれたのだろう、それはとても弱々しい声だった。 これからも外出しないわけにはいかないし、 かと言ってナナをひとりぽっちには出来ないし、 途方に暮れて泣けてきた。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 ・・・お知らせ・・・ 本日食料買出しの為ママの店お休みさせて頂きます。 店主敬白 (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.22. (00:36) 小説 文学 /
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クロ は性格がとてもやさしく、がっしりとした体躯で尻尾が太い。 ちょっと困るのは、おっちょこちょいのおせっかい焼き、悪戯っ子、いやしんぼ。そして寂しがりやの小心者。 フクが自分を嫌って無視するのが癪に障るらしく、 いつもフクの側に行ってはシャーシャーと吹き合いになる。 それでクロだけを捕まえて叱ると、 何で俺ばかり怒られるのかとじっと私の目を見つめ、鳴いて抗議する。 クロは私をお母さんと呼ぶ。最初は オワーワン としか聞こえなかった言葉が最近はっきりと オカアサン と言うようになった。 それだけにクロとは通じ合うものがあるようで、 私にはクロの考えていることがほぼ分かるのだ。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8・・・お知らせ・・・ 本日のママの店はお休みさせて頂きます。 店主敬白 特別番組 奇談  (一万円のメロン) 数年前のことですが、いつものように 朝刊に挟まれている広告類を チェックしていました。 スーパーの広告は 後でじっくり見たいので取って置いて、 あとは捨ててしまいます。 その捨てる広告の中で、 以前からちょくちょく気になっていたのが、 『高〇易〇。鑑定料千五百円』 高〇易〇といったら毎年 運勢付きの暦を出していて、 どこからもらうのかわからないけれど、 必ず毎年家にあるアレ。 一白水星とか四緑木星の運勢は・・・ とかいうやつです。 だから、ここなら 怪しい宗教じゃないだろうという 妙な安心感があったんです。 それが、その日の広告には 何と家の近所のビルで鑑定をやるって 書いてあったんですよ。 是非行ってみたいと思いましてね、 でも一人じゃ不安だったんで 娘について行ってもらったんです。 そこは家から十五分くらいのところにある 小さなビルでした。 何階かは忘れましたが、 高〇易〇受付と書いた紙が 貼り付けてある部屋に入ると、 区役所か市役所の窓口によくいる 六十前後の眼鏡をかけた男性が 座っていましてね、 鑑定希望の方ですかって 聞いてきたんで、はいと答えたんです。 そしたら、 「ただいま先生は 他の方の鑑定をされておりますので、 少々お待ちください。 いやあ、あなたはラッキーだ、 さっきまで長蛇の列で 今やっと空いたところです。 待ち時間が 二時間の方もいらっしゃいましたからね」 えっ、このビルの入り口は一つだけ、 来るときも誰にも合わなかった。 それでなくても 人通りの少ないビルの周辺を 知っているだけに 何か変な気持ちになりました。 受付の人が出ていって 十分ほどしてから呼ばれたので、 娘に待っていてもらって、 私一人が先生の部屋に向かいました。 あ、二人で入ると二人分料金を取られますし、 娘は興味ないと言いましたのでね。 部屋は隣にあって、中に入ると お坊さんが着るような着物を着た 四十歳くらいの太った男の先生が 筮竹やいろいろなものを並べた 机を前にして座っていました。 それで私が 先生の前に行って椅子に座ると、 辛かったなあ・・・苦労したなあって いきなり 哀れみを込めた声で言い出したんです。 そりゃもうびっくりしましたよ。 何のことか分からないので、 はぁあ?・・・と言ったまま ポカッと口をあいてしまいました。 さぞかし間の抜けた顔だったでしょうねえ。 それでね、その先生は ちょっとあきれたような顔になって 「だから、辛かっただろう ? 顔に出てるぞ。 隠すことはないんだ、私にはすべて お見通しなんだからな」 そんなこと言われても、 心当たりは何にもありゃしません。 私は眉間に皺がよるのが 自分でも分かりましたよ。 口も尖がってきましたし、 いえ、怒ったんじゃないんです。 そういう顔になるのは私の癖なんです。 どうしようって、 頭の中がフル回転してたんですよ。 何のこっちゃまったく分からないというのが そのときの気持ちでした。 ええ、だいぶ沈黙が続きました。 そしたら先生が、ゴホッと咳きをして、 いったい何の相談がしたくて ここに来たの ?って聞いてきたんです。 私も料金払っていますから、 鑑定してもらわなきゃ帰れませんからね、 今小説書いているんですが、 このままずっと頑張っていても 無駄じゃないかどうか 知りたいんですって聞いたんです。 そしたら、いきなり怒り出して 「あんた、今それどころじゃないんだよ! 長男が大変なことになっておる。 あんたの後ろには 亡くなった母上が憑いていて、 今警告を発しておられる。 長男の災難を回避しないと、 あんたの家は離散しますぞ!」 私の母は確かに十年前に亡くなっていました。 何で知ってるんだろうと不思議に思いましたが、 それよりも、もっとびっくりしたことが。 「あの、私の子は娘だけで 男の子はおりませんです」 ボソッと言うと、先生は目を丸くして 「おかしいなあ、 母上が長男とおっしゃっているぞ。 水子がおるだろう ?」 これには私もカチッときてしまい、 「いいえっ、おりません。 私は、む・す・め・しか おりませんしっ、 流した子供もおりません」 と言ってやりました。 先生はおかしいおかしいって言いながら 今度は私の名前を紙に書いて 姓名判断をやりだしたんですが、 あんたの名前は最強だから、 ペンネームはやめて 本名で行きなさいと言ってくれました。 それでまあ、 さっきの気分の悪さは 吹っ飛んでしまったんですが、 その後・・・ 井戸があるだろう ?と またおかしなことを聞いてきたんです。 いいえ、ずっとマンションですからと言うと、 そうか、他に何か相談することはあるか、 と聞くので、じっと考えてから 「あの、実は・・・」 先生は身を乗り出してきました。 「実は、私の家には」 「家には?」 「猫が・・・」 「うん、猫が?」 「はい、子供を生んでとうとう 十三匹になってしまいまして、 何でこんなに増えてしまったのか・・・」 それを聞いたとたん先生は、 全身から力が抜けたみたいに いきなり椅子にドガッともたれてしまい、 ものすごい大きな溜息をつきました。 そして目を閉じて、 「家庭を守ってもらうにはな、 神様に毎日 お願いしなくてはならない。 メロンなんかをお供えしたら、 そりゃもうお喜びになる。 一個一万円のメロンを 三百六十五日お供えするとしたら、 いくらの祈祷料になるか、わかるね。 それをお供えすれば 悩み因縁すべて取り払われる。 ヨイカ、メロンじゃ」 一個一万円を毎日供えたら、 三百六十五万円・・・ 猫の悩みが三百六十五万円・・・ 何か馬鹿にされた気がして腹が立ちましてね、 それに 本当にお供えするのかどうかも 怪しいもんです。 心の中で思いましたよ、 「どうせお前らが食べるに決まってる。 お前らに食わすんやったら ジャスコで一個三百円の 特売メロンで十分じゃ、 自分で買え、何が因縁じゃいアホらしい」 それでもう帰るつもりで席を立とうとしたら、 「五千円のメロンもある」 「ありがとうございました」 私は頭を下げて部屋を出て行きました。 隣で待っていた娘が どうやった ?って聞くので、 話そうとしたら さっきの部屋のドアを少し開けて、 先生が覗いてるんです。 ビルを飛び出してから娘に 一部始終話してもう大笑い。 家でもその話で大爆笑になったんですが、 「詐欺や、今度からそんな所に行ったらあかん」 って主人にちょっと叱られました。 でも、千五百円で姓名判断してもらえて、 名前が最強だとまで言ってもらえたんだから まあ良かったんではと思いましたよ。 それに何より嬉しかったのは、 私の後ろに亡くなった母が憑いている と言われたことです。 母が守ってくれているんだと思うと 心強いですものねえ。 (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.21. (00:17) 小説 文学 /
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シュウ が今抱いて確保しているのは カスガ のクッションだ。 シュウのはピンクの柄なし、でもシュウはこの赤いハートの模様が気に入っていていつも横取りする。カスガはクッションなんて何でもいいみたいだが、安心してシュウのクッションにもたれて寝ていると、 急にソレが返してほしくなった シュウに殴られる。結局は、カスガの所にまた赤いハートのクッションが戻ってくることになるのだ。シュウは我がまま、カスガもシュウなんかと寝なきゃいいのになあ。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7「最近何かストレスになるようなことが ありませんでしたか、仕事のこととか プライベートのこととかで」 何か中田先生、 病院で診察してるみたいだ。 メモまでしてるし・・・ 和美さんは人差し指を顎に当て、 じっと考えている仕草をしていたが、 やがて首を振り、 べつに・・・と言った後に はっと思い出したように付け加えた。 「でも、強いて言えば最近誰かに 見張られているような気がするんです。 これも神経が過敏になっているからかも 知れませんが」 「ほぉ・・・誰かに見張られている」 中田先生はちょっと困ったような顔をして メモをテーブルの上に置く。 どうやら内科の分野ではないと 感じたらしい。 「で、あなたには全然見張られるような 心当たりは無いと言う訳ですな」 中田先生の言葉に和美さんは、 はいと言って頷いた。 これは中田先生よりも、 ママに見てもらったほうがいいように思う。 和美さんを悩ませているのは、 ひょっとしたら霊の仕業かも。 霊の仕業、今じゃ私も そんなことを平気で思いつくけれど、 最初の頃は霊なんて信じてもいなかったし、 霊だなんて気軽に口にすること自体が 恥ずかしかった。 でも、今は霊の存在を認めている。 だって私と和美さんを除いた他の人達は 皆霊なんだもの。 キャーッといきなり恵子ちゃんが叫び、 怯えた様子で、 涼子さんに飛びついて泣き出した。 恵子ちゃんの背中を擦りながら、 どうしたのよと涼子さんが聞くと、 恵子ちゃんは震える指でドアを指した。 「あ・・・あしょこに誰か・・いる」 私はドアに向かって疾走していた。 背後で誰かが アッという声を出したみたいだが、 そんなことはおかまいなしだ。 ドアの取っ手に手を掛け、一気に開ける。 外に出て辺りを見回したが、 どこにも人の気配はなかった。 ただ、一面 夜の闇が広がっているだけ・・・・ えっ、と私はその時気がついた。 何で夜なんだ? 今はまだお昼にもなっていないはず。 いつの間にやってきたのか、 私の後ろにママ達が立っていた。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.20. (00:32) 小説 文学 /
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 このところ朝夕の寒暖の差が大きすぎる。南向きの我が家のリビングは うだるように暑い。廊下に出て他の部屋に行けばとても涼しいのに、 暑いほうが好きなのか、全員リビングに集まってくる。 そしてあまりの暑さに伸びてしまい、 シュウなんかはこういう格好になる。15Fの高さで南向きは、天気さえ良ければ真冬でも暖房がいらない。夜になっても昼間の温もりが残っていて暖かいのだ。 でもそれは真冬の話、今頃の季節は暑すぎてとても不快だ。 別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6「ところで和美さんは、 あっ西山さんとお呼びしたほうが 良かったでしようか」 中田先生が 慌てたような顔で和美さんを見る。 和美さんはニッコリ笑い、 いえ、和美でかまいませんと頷いた。 中田先生は少し照れたような笑みを浮かべ、 「それでは、和美さんは最初この店に 入って来られたとき、 随分イライラなさっていましたが、 何かあったんですか ? あっ、こんなこと お聞きしては迷惑かも知れませんね。 もし迷惑だったら話さなくて結構ですが」 和美さんは、 何か苦いものを噛んだように 口元をぎゅっと引き締めながら、 ゆっくりと首を横に振った。 「いえ、是非聞いてください。 私の方こそご迷惑かもしれませんが」 「迷惑だ何てトンデモナイ」 中田先生から私まで、 良太君と恵子ちゃんを除いた 六人の大人全員が声を揃えて合唱してしまい、 私の全身をぶわぁっと恥が駆け抜けていった。 他の皆も同じ気持ちだったんだろう、 犬山さんと中田先生の顔は真っ赤で、 ママ達女組は口を両手で押さえている。 「うえっ、馬鹿みてえ・・・じゃん」 と良太君がつぶやくと、恵子ちゃんも 顔をしかめて頷いた。 堪りかねた和美さんがぷっと吹き出したので、 私を含め、その場の全員が 大声をあげて笑い転げてしまった。 「お、おもしろい方達ですね・・・」 はあぁっと口から溜息を吐き出し、 和美さんが言った。 「すみません、何せ皆あなたに興味が あるんですよ。 我々が話しをしている最中に、 いきなりあなたのような 美人が入ってきて、 ここは何処 ? みたいな感じでしたから」 中田先生の言葉に和美さんは 恥ずかしそうな顔で、 「美人はよけい、ですが・・・ まあ、とにかく聞いてください。 最近、寝たら なかなか目が覚めないんです。 目を覚まそうと いくら努力してもダメなんです。 困りました、 目覚ましの音で 無理やり覚醒させられても、 頭がボーッとしてしまって 会社に行っても仕事になりません」 「そりゃあいけませんね、 病院に行かれましたか」 と中田先生が言うと和美さんは頷いて、 「はい、行きました。 仕事の疲れが出て、 神経が過敏になっているせいだと言われまして、 お薬を頂いたんですが、 どれも安定剤、入眠剤ばかりで・・・ 確かに寝つきは良くなったんですが、 その代わり、はっきりとした夢を 見るようになってしまって、 何処までが夢で、どれが現実なのか だんだん分からなくなって きているんです。 病院の先生にも相談したんですが、 今は神経を休めるのが一番いいとおっしゃって、 私が眠たくならない薬はないのかと申しますと、 そういうのは覚せい剤といって習慣性があり、 精神をボロボロに傷つけてしまうんだと おっしゃるんです」 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.19. (00:24) 小説 文学 /
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トウ は体が小さくて、 「お前、いたの?」と言われるくらい存在感が薄い。 でも、しっかりご飯も食べるし大きな猫達にも決して負けていない。 カリンとは姉妹で、小さい頃は仲が良くていつも一緒だった。 それなのに今では二匹顔を合わすと喧嘩する。 カリンは女の子らしく、 トウは男みたいな性格をしているから合わないのかな・・・。 今日も彼女らのパパ猫のフクは、トウに追い掛け回されていた。 フクパパは娘に甘く、何をされても手出しをしない。 偉いじゃないかと褒めてあげたい。 そうだそうだ、女の子は大事にしてあげないとダメだ。 「ママの店15」 1 2 3 4 5 6西山と名乗った彼女は、 最後に残ったママを見て、 ママが自己紹介をしてくれるのを 待っている。 犬山さんや中田先生達も、 ママの本当の名前を知らないようで、 興味深げにママを見ているが、 ママは一向に喋る気配がない。 ママの顔はいたって冷静だが、 その心の中の焦りが私には見えていた。 ママの視線が私に向いた。 私の頭の中でママの声がする。 「豊、助けて。 私静江って名乗りたくない」 はっとした思いでママを見ると、 ママの目に悲しみが満ちている。 英二と一緒に静江の名前を捨てたんだ。 でも、これといった名前も考えていなくて、 今まで「ママ」で通して来た。 ママが英二を まだ愛しているのかどうかなんて 私には分からない。 でも、ママは自分の名前を英二と一緒に あの石に封印してしまったんだ。 「あ・・・僕から紹介させて頂きます。 この人は、 僕達にとっては神的な存在でして」 何を言い出すのかというギョッとした顔で ママが私を見た。 和美さんはニコニコ笑いながら、 「じゃあ、この方が この町で一番偉い方と言うことね」 ママは口をパクパクさせて何か言いかけたが、 「いえ、それは分かりません。 でも、我々が辿り着いたのは、 このママの店なんです。 昭日町も広くて、 住んでいる人がどれだけいるのか 僕には分からないけれど、 とにかくここにいる我々は、 皆何らかの形でママに助けられています。 ママは我々が来るずっと以前から この世界にいるので、 自分の俗名なんて もう覚えてはいないんです。 だから、自己紹介に困ったんですよ」 へたくそで、説明にもなっていない説明だったが、 とりあえず和美さんは納得してくれたようだ。 「わかりました。それじゃ私も この方のことをママと呼ばせて頂きます」 ママは満面に笑みを浮かべ、 お願いしますと言って軽く頭を下げた。 中田先生も目を閉じて、 何かを思い出しているかのように 何度も頷いている。 犬山さん達もニコニコして、 まったくその通りだ、 豊、よく言ってくれたと 言わんばかりだ。 「豊・・・ありがとう」 ママの声が頭の中に聞こえて来る。 「これは皆ママの人徳なんだ。 僕の言ったことはすべて真実なんだよ」 私が心の中でつぶやくと、 ママは照れたような笑みを浮かべ、 そっとウインクして見せた。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.18. (00:10) 小説 文学 /
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 皆同じ時に生まれたはずなのに、 何故かシマジロウだけいつまでも子供っぽい。 遊んでーと言うように兄妹達の側に飛んで行っては嫌がられ、 鬱陶しがられてしょんぼりしている。 皆もう子供じゃないんだから、ご飯をいっぱい食べたら ゆっくり毛づくろいをしたり、顔を拭いたりしたいんだよ。 それでぜーんぶ終わったら寝るの。 でも、皆もう子供じゃないからって、 そんなことシマジロウには通じない。 遊んで遊んでってまた追い掛け回したりして、 ホラ・・・嫌っていう顔をしたカリンに殴られた。 「ママの店15」 1 2 3 4 5おかげで彼女の顔から ピリピリとした緊張感がなくなり、 和やかな笑みを浮かべた彼女は 最初見たとき感じた通りの、 涼しい目元をした美人だった。 話がしやすいようにと 皆でソファーとテーブルを移動して、 ママと涼子さんリリーさん、 良太君、恵子ちゃんも手伝って、 飲み物とケーキ、クッキーなどを テーブルに並べ終わると、 彼女の歓迎会の席の出来上がり。 「え・・・と、じゃあ 自己紹介といきますか」 中田先生が言った。 「それじゃ、まずは私から。 私は中田弘之と申しまして、 この近所にあります 総合病院の小児科医です。 パンを焼くのが趣味でして、あっ」 よけいなことを言ったか、 というような顔になった。 「・・・まあ、 子供達に配ったりしております。 そういうことで、よろしく」 中田先生は相手が美人の女の人だと すぐに赤くなる。 次は犬山さんだな。 「犬山猛と申します。今は無職です。 私もあなたと同じように いきなりこちらの世界に来てしまい、 どうしようかと思っていたとき、 こちらのママさんに拾われました」 犬山さんの言葉に ママは照れ笑いしながら、 そんな、拾っただなんてとんでもない と言って顔の前で手を振った。 「リリーです。 今は犬山さんと暮らしております」 リリーさんがウフッと笑い、 チラッと犬山さんを見ると、 犬山さんが 恥ずかしそうに頭を掻きながら、 そう言うことで、と笑った。 うわぁ、リリーさんと犬山さん、 やっぱりそうだったんだ・・・ 「一応画家なので、毎日絵を描いています。 こちらの世界、楽しいですよ。 きっとお気に召すと思います」 リリーさんはとっても嬉しそうだ。 次は・・・涼子さんだな。 「香川涼子と申します。 私もごく最近こちらにまいりました。 これは娘の恵子です。 私と娘がこうやって一緒にいられるのは 皆この方達のおかげなんです」 涼子さんが 感謝を込めた目で私達を見回している。 中田先生がまたゴホンと咳きをして、 良太君の肩に手を置いた。 「あ・・・この子は良太と言いまして、 今は私の息子のようなものです。 あ、でも私はまだ独身で」 中田先生は何でこんなに焦っているのだろう。 「良太でーす。 こいつはおいらの犬で名前はワンコ」 良太君は 恵子ちゃんの抱いているワンコを指さした。 彼女は目を細めて良太君を見て微笑んでいる。 あ、次は私の番だな、 「えぇっと・・・僕は豊って名前なんですけど、 実はビジターでして、 もともと名無しだったんですが この中田先生に豊ってつけてもらったんです。 一応大学生です」 「ビジター?」 私がビジターと言ったのが引っかかったらしく、 彼女は首を傾げた。 「ビジターって何ですか?」 彼女の問いに、私が答えようとしたら 中田先生が先に口をはさんだ。 もう、先生ったら 彼女と喋りたいもんだから・・・ 「あ・・・ゴホンッ、 ビジターと申しますのはつまり、 まだ完全には こちらの住人になっていないってことで、 まあ、あなたと同じように 夢の中からやって来たってことです」 「そうなんですか、じゃあ私もビジターなんだ」 彼女はそう言って笑った。 気のせいかどことなく影がある。 「では、私も自己紹介を。 私は山中商会の社長秘書をしております 西山和美と申します。 年は・・・三十歳で、独身です」 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10)
2006.10.17. (00:50) 小説 文学 /
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 シュウが私に何かを話しかけてきたが、 何を言っているのかさっぱり分からない。 突然顔を見つめてフャオーンと妙な声を何度も出す。 魚を料理していた訳でもなく、ただコーヒーを入れているだけだから、 食べ物をくれと言っているのではないのだろう。 猫達がこんなふうに、突然話しかけてくることがあるが 何を言っているのかが分からないので悲しくなる。 「ママの店15」 1 2 3 4「あの・・・ちょっと聞きたいんですが」 いきなり彼女が声を掛けて来た。 でも、誰に話しかけたのか分からない。 ママも洗い物の手を止めた。 物凄い速さで中田先生、ママ、私との間で 目だけの協議が行われ、中田先生が頷いた。 ここは一番先生に任せようということだ。 「どうしたんですか、何か ? 」 と先生が何でもないような顔で聞く。 ソファーの彼女は 真っ直ぐな視線をこちらに向け、 「ここはいったい何処なんでしょうか、 いえ、夢を見ていることは 分かっているんですが」 そこまで言ってから彼女は下を向き、 ククッと笑った。 「変ですよね、 私変なことを聞いてますよね。 夢と分かっていたら、 ここは夢の世界なんだ・・・」 彼女は何がおかしいのか、 手のひらを 顔の前でひらひらと振りながら 笑うのを止めなかった。 夢だと知りつつも、 ここが何処か知りたい・・・ それは自分の不安から出た思いなのに、 矛盾を感じて笑っているのだ。 「別に変なんかじゃないですよ。 ここにだって ちゃんとした地名があります」 中田先生の言葉に、私も思わず そうだそうだと頷いていた。 「えっ、地名があるんですか。 じゃあ、教えてださい、 ここは何処ですか」 彼女は笑うのを止めて真剣な顔をした。 「昭日町といいます。でも、確かに あなたが思っていらっしゃるように、 ここは異世界です」 異世界・・・そうなんだ、ここは異世界。 理解しているけれど改めて聞かされると何か とても変な気持ちになってくる。 「そうですか、ここはアケビマチなんですか」 そう言ってから彼女はまた沈黙した。 「そちらに行ってもいいですか、 少し一緒に話をしませんか」 中田先生もなかなか積極的だ。 少しのチャンスをガッチリつかむタイプらしい。 彼女は一瞬間を置いてから、どうぞと言った。 それを聞いたとたん、 犬山さんリリーさん、涼子さん、 ママ、良太君に 恵子ちゃんまでがワンコを抱いたまま 彼女の座っている側に集まった。 もちろん私もだ。 何か全員集合してしまったのが 恥ずかしくなり、私は照れ隠しのつもりで 口の中で舌を転がし、目を宙に彷徨わす。 先生はわざとカラ咳きをゴホンと出し、 ママの眉は左右のバランスが崩れている。 涼子さんとリリーさんは 顔を見合わせてクスッと笑い、 それにつられて犬山さんもニヤッとした。 「私ってそんなに珍しかったのかしら」 彼女が呆れたように言うと、 「そういうことですね」 中田先生が答えるのと同時に全員が声に出して 笑っていた。 〜つづく (ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 幽霊の話」 (1) |