
我が家のリビングには
二階建ての小屋 が二つと、
平屋の小屋 が二つある。
人間と寝る子達もいれば、兄弟妹で寝るのを好む子達もいるからだ。
毎年冬になるとそうしているように、
夜中の温度がかなり下がってきたので、
小屋でかたまって寝ている猫達に今日からデッカイ布を掛けてあげた。
もう少し寒くなったら
湯たんぽ合戦が始まる。
別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11どのくらいの時間が経ったのか、
結局ドアの近くにいるそいつの為に
誰も外に出られないでいた。
アレを残して行ったからと言って、
和美さんが必ずしも
今夜この店に戻って来るとは限らない。
アレと和美さんの関係も
今はまだ分からないから、
そのことに関する会話も
いつしか種が尽きてしまっていた。
ママと涼子さんが作ってくれた
エビピラフを昼食に食べた後、
私達の間にはこれと言った話題もなく、
退屈きわまりない
時間ばかりが過ぎて行く。
このまま夜になるのを待って、
和美さんがまた来るのを
待つしかないのだろうか。
怪しげな物があれば、
ワンコがすぐに嗅ぎ回るはずだが、
ワンコは全然その影に反応しない。
側に行こうともしないし、
それどころか良太君の足元で
チャッカリ昼寝を決め込んでいる。
この分だとドアから出入りするくらい、
どうってこと無いのじゃないかと
思えてきた。
「ねえ、僕一度家に戻るよ。
ゴンにご飯食べさせないといけないし、
その前に親に
今日は帰れないって言っときたいんだ」
私はドアとカウンターの間にうずくまる
影を見ながら言った。
「あっ、それじゃおいらも一緒に行くよ。
ワンコにシッコをさせてやりたいんだ。
こいつまだシッコの習慣があるんだ」
良太君が鼻の下を
人差し指で擦りながら笑った。
大丈夫かなあ・・・と犬山さんが
影に目をやりながらつぶやくように言うと、
ママは首を傾け、少し不安そうだ。
「まあ、出る時が問題なだけで、
出ちまったら安全だ。
良太は豊の家に居させてもらうほうが
いいかも知れないな。そうだ、
恵子ちゃんと涼子さんも一緒がいい。
豊、頼めるか」
中田先生がそう言うと、
犬山さんがリリーさんに、
君も家に帰ったほうがいいよと
やさしく言った。
リリーさんは首を横に振り、
「やあよ、私は猛さんと一緒がいいの」
その言葉を聞いた
犬山さんの顔ったらなかった。
とろけたように
目尻が下ってしまっている。
こりゃ当分この気色悪い顔が、
私の脳裏に張り付いて
離れてくれないだろう。
ゴホンと中田先生が咳きをして、
ママと涼子さんが顔を見合わせて
クスクス笑っている。
「じゃあ、涼子さんと恵子ちゃん、
良太君ボチボチ行こうか」
私が三人を促し、
ソロソロとドアに近づいたとたん、
良太君に抱かれていたワンコが
グルグルグルと低く唸り始めた。
影が小刻みに震えている。
「豊 ! 」
中田先生の声に、
私は素早く三人を背中に隠し、
後退りしながら身構えた。
ニゲルナ・・・
しわがれた不気味な声とともに、
影がザーッと移動してドアを塞いだ。
〜つづく
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」
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2006.10.27. (00:13)
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