
昼ご飯を食べたあと、シュウがいきなりカスガに殴りかかった。
こういうことはよくあるのだが、原因はシュウのヒステリィ。
時々溜まりに溜まったカスガへの不満が一気に爆発するらしい。
思えばカスガは最近ブクブク太ってきて、
シュウのお気に入りのクッションまで侵食してきている。
シュウが気持ち良さそうに抱いていたクッションを
いつの間にかカスガに取られていても、その時は怒らない。
先にご飯を食べたカスガがシュウのご飯までうっかり食べてしまってもシュウは知らんぷりをしている。
だけど、多分相当我慢しているはずだ。
だから、いきなり殴りかかっていくのだ。
そういうことを全部知っているのだけど、何と言ってもカスガは女の子、手を出すことは許されない。
シュウは言葉が分かる子で、大きな声で叱るとシュンとしてしまう。
可哀相だとは思うけどしっかり怒らせてもらった。
別荘「ママの店15」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13和美さんは自分で
会社の社長秘書をしていると言っていた。
でも、それは夢の中で発した言葉だから
あてにはならない。
夢の中で人は願望の赴くままいろいろな
立場の人間に変身するからだ。
いや、人間とは限らない、
好きな動物に
変身することだってあるはずだ。
そして、性別も定かではない、
和美さんが女性である可能性は
五分五分だ。
さまざまな憶測で頭が一杯になり、
どれだけの時間が過ぎたのか
分からなくなっていた。
はっと気がつくと、
恵子ちゃんと良太君は
ソファーの上でスヤスヤと眠っていて、
ワンコも良太君のお腹の上に頭を乗せて
目を閉じている。
ママは涼子さんと二人で
カウンター内で何か作っており、
リリーさんは犬山さんと小声で
話しをしている。
中田先生は私のちょうど目の前で
新聞で顔を蓋してお昼寝中なのか、
気持ちよさそうなイビキが聞こえてくる。
なんだい、和美さんのことを
考えていたのは私だけ。
まったくもう、
あの影のおかげで
外にも出られないというのに、
皆何も思わないんだろうか・・・
私はだんだん妙な気持ちになっていった。
そうだ、ここは
夢と直結している世界なんだ。
夢の中ではいろいろな出来事が起こる。
私の大学で殺人事件が起こったときも、
ママはさほど驚きもしなかった。
それどころか、宮下刑事の空想が
恐ろしい展開をしないように
ママがシナリオを書き換えた。
そして犯人の海原先生だが、
そもそも海原先生という人物が
大学にいたかどうかも怪しい。
あれは多分、宮下刑事が想像して
作り上げた事件なのだ。
そう考えると、今回の和美さんのことは
どうなるんだろう。
もう何が何だか分からなくなってしまい、
突然無意識に、
それこそ周りの状況も考えず
私は思い切り大声を出して
叫んでしまっていた。
台所ではお皿が床に落ちて割れ、
ママと涼子さんが
引きつった顔で私を見ている。
目を覚ました恵子ちゃんが
ヒクヒクと痙攣しながら泣き初め、
良太君も怯えてワンコを抱きしめている。
「豊、どうしたんだ」
中田先生が心配そうに私の顔を覗き込む。
犬山さん、リリーさん、ママ、涼子さん、
良太君、恵子ちゃんまでが
私の側に集まって来た。
〜つづく
(ママの店12前編) (ママの店12後編)(ママの店13) (ママの店14) ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
電子出版「短編集 闇の中の住人」「特別番組 怪談奇談」
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