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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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2006.11

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
ナナの飴

私ら一家は久しぶりに今日カラオケに出かけた。
昼も外で食べたので五時間は家を留守にしてしまった。
猫達、とくにナナには申し訳ないと思いながらも、やっぱり
たまには私らも遊びに行かないとストレスが溜まる。
照明もちゃんと付けて行ったし、ご飯もバッチリ食べさせた。
後ろ髪を引かれる思いは家を出るときだけで、時間とともに正直忘れていた。それで日が暮れた頃戻って来て恐々ドアを開けたのだが・・・・
やっぱりそこにナナがおり、も置いてあった。


今日から湯たんぽだ〜

別荘
「ママの店15」           10 11 12 13 14 15 16 17 18  19  20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34

一瞬目の前が
サーッと暗くなり、私達は
ドアの向こう側に出た・・・
はずだった。

「ねえ、何か変だよ」

私の言葉に涼子さんも鼻元を手で覆い、

「何か、臭くありません ? 」

「あぁ、確かに臭うな。とても悪い
 予感がするよ・・・」

中田先生が沈んだ声を出した。

出る所を間違えたんじゃない ? と
私が言うと、ママは首を振り、

「いいえ、間違ってなんかないわ。
 私達は確かにドアの向こう側に
 出たのよ」

「えっ、それじゃここが店だというの ?
それにしちゃ随分薄暗いし、
 ジメジメしていて
 気持ち悪いくらい生暖かいんだけど。
 床もほら、ぬめぬめしているよ、
 気をつけないと滑りそうだ」

私は足で床を探って見せた。

「内臓、の中だ・・・・」

中田先生がポツリとつぶやき、
ママが黙って頷いた。

ゲッ、だからこんなに臭いんだ。

「それじゃ、あの心臓が
 巨大になったってことなのね」

涼子さんの声が震えている。

「まさかこんなに早く
 大きくなるなんて思わなかったわね。
 きっと店一杯に膨れ上がってるのよ」
ママが唸った。

アイツの体内に
入っちゃったってことか・・・

私達が喋る声が
回りの肉壁に反響している。
この感じは以前経験したことがある。
そうだ、焼き飯を
たらふく食べて寝た為に、
悪夢を見て
胃の中に閉じ込められたことがあった。
まるきりあの時の状態、
生臭い臭いも同じだ。

薄暗さに目が慣れてくると、
周りがよく見えてくる。
赤い肉壁には無数に、
黒く太いコードのような血管が
うねりながら張り付いており、
規則正しい収縮を繰り返している。

「この心臓は悪霊が
 造り上げているんだよね、
 いったい何の為に
 心臓なんて造ったんだろう。
 べつに手とか足でも
 良かったんじゃないか ? 」

私は恵子ちゃん救出の時のことを
思い出していた。
攻撃して来るつもりなら、
内臓なんかより手とか足の方が
よく使える。もっとも、
どうしても内臓って言うのなら
心臓よりは
胃とか腸の消化器管のほうが
殺傷能力がある。
私は胃の中で溶かされかけたことを
思い出した。

「人間を造り上げようとしているのよ」

えっ ! ママの言葉に全員が
息を飲む。

いったい何の為にわざわざ・・・

「皆憧れているのよ、明るい世界で
 今度こそ幸せになりたいって」

「幸せになりたいなんて変だよ。
 あいつ等は悪霊でしょ、
 神を滅ぼし悪魔を降臨させて
 世界を支配させると言うのなら
 分かるけど」

「あんたは映画か小説の読みすぎ。
 何度も言ってるけど、
 神も仏も無いの。
 悪霊になった原因は、
 妬み恨み悲しみ、歪んだ快楽、
 共通点は自己中心な心。
 だから、どうすれば幸せになれるか
 分からない。
 霊ほど弱いものはないの、
 実体が無いんだからね。
 だから人間になりたいのよ」

ママの言葉に中田先生が、

「人間に生まれ変われないのなら、
 自力で人間になろうと
 言うことなんだね」と言うと、

「そういうことです」とママは頷いた。

「私達はこれから
 どうすればいいんでしょうか」

涼子さんが不安そうにママを見る。

「そうね、まず和美さんを
 見つけましょう」

私達の目の前には不気味な肉の壁と、
開いたり閉じたりしている
穴があるだけだった。

「ねえ、心臓ってどんな構造に
 なっていたっけ」

道が分からなければ、和美さんを
捜すことは難しい。
ここは一番、専門家の中田先生の出番だ。

「じゃあ、簡単に説明しよう」

「そうですね、すみませんが
 簡単にお願いします。
 あまり時間がありませんので」

ママが頭を下げた。

中田先生はコホンと一つ咳きをして、

「ヒトの心臓は二対の心房・心室、
 つまり右心房、左心房、
 右心室、左心室から成る。
 心臓は血液の逆流を防止する為に
 4つの弁を持っていて、
  弁は右心房と右心室、
 右心室と肺動脈、左心房と左心室、
 左心室と大動脈の間に存在し、それぞれ、
 三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、
 大動脈弁と呼ばれる。であるからして」

先生の口から、あまりにも専門的な言葉が
スラスラと出てきた為に、
ママも涼子さんもポカンと口を開けたままだ。
これはいけない止めなくちゃ。

「あ、先生もういいよ。
 何かよく分かんないけど、
 つまり、ここは何処 ?
 あと何個こういう場所があるのさ」
 
先生には悪いが医学の講義を
受けている暇はない。
先生はちょっと
機嫌が悪くなったみたいだったが、
ママがまた、お願いしますと言ったので
気を取り直し、

「ここは、四つある
 心房か心室の何処かだと言うことだ」
とつぶやくように言った。

〜つづく            

(ママの店12前編) (ママの店12後編)
(ママの店13) (ママの店14)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

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2006.11.24. (00:56)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(8) /
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