筆者  活動状況  オンライン小説  新刊+出版本  更新情報 ブログ
メルマガ Link HOME MAIL


fc2-BlogRanking   Blog Entry
管理人

樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

    モバイル版を開設しました!
月別ログ
カテゴリ
最新記事
コメント
トラックバック
リンク




2006.12

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
あったか〜い

まさに大の字で寝ているカリン。日向ポカポカ湯たんぽホカホカ・・・もう暖かくて気持ちいい〜・・お母さんもこんなふうに寝てみたいよ。



    

「私はやめようと思ったんだ! 」
見開いた男の目は血走り、絶望の色を
漂わせていた。

「脱会しようとして
 命でも狙われているの?」

私の問いに返事をする代わりに
男は鋭い眼光でサッと辺りを見回した。
中田先生も、そういう事情なら
話は別だと思ったのか、
一度は消えかけていた姿が
また元通りになっている。

「警察に相談しに行かれましたか」
先生が聞くと男は急に泣きそうな顔になり、
そういうレベルの問題ではないのだと
つぶやきながら首を振った。

「ねえ、ママこの人ビジターなの?
 それとももう・・・」
死んでしまっているのなら、
殺されるという恐怖は只の想念でしかない。
しかしママは鳶色の瞳に悲しみを湛え、
ビジターよ、と言った。

私は今夢を見ているのかと男が聞いたので、
ママは、そうですと言って頷いた。

「くっ、こうして眠っている間に
 発見されたら、私は・・・
 でも、いっそこのまま眠っている間に
 殺されたほうが幸せかもしれないなあ」
握り締めた両手の拳をが震わせながら
男は泣き笑いのような顔で天井を見ている。

「訳を話してくれませんか、
 ひょっとしたら
 何かお役に立てることがあるかも
 知れませんよ」

中田先生が慰めるように男に話しかけた。
男は目の下に深い隈を作り、
疲れきった顔で話そうか話すまいか
考えているようだったが、
瞬き一つしないまま先生の顔を見つめ、
話し始めた。

「私達は事あるごとに『神なる書』を
 読むことにしているんです」

『神なる書』・・・
いったいどんな本なんだろうと思い
中田先生の顔を見ると、
先生は真剣な目で男を見つめていた。

「その『神なる書』を読んでいた時、
 突然私はとんでもないことに
 気がついたのです」

とんでもないことって何だろう、
どうせ無宗教だし、聞いたところで
支障はない。
ママは男の言葉になんか、
全く興味が無いというような顔をしている。
中田先生は、難しい顔で男を食い入るように
見つめていたが、

「どうぞ話してみてください」と言った。

男の目にはまだ迷いがあったが、
話そうという決心が見えていた。

「『神なる書』は楽園に導く書ではありません。
 滅亡に導く書なのです」

それを聞いた中田先生は深い溜息をついた。

「そんなことを言えば、信者の方達から
 反感を食らうのは当たり前でしょう。
 何でそう思われたんですか? 
 私はあなたとは全然違うものを信仰していますが、
 お前の宗教は滅びの宗教だと言われれば
 私だって腹が立ちますよ。
 いや、泣けてきますね。
 あなた、どういう根拠でそんなことを
 思われたんですか、ただの思いつきで
 そういうことを口にしたのであれば、
 私だってあなたを許せませんよ」

中田先生は厳しい顔で男を睨みつけている。
男も先生を睨みつけ、

「神は『私だけを信じよ』
 とおっしゃっているんですよ。
 神があっての人間です。神がおっしゃる言葉は
 導きではなく、命令です。
 神はいろいろな奇跡を
 我々愚かな民にお見せになった。
 それによって絶対服従の心を植え付けられたんだ。
 真の楽園に指導者はいらない。
 幸せとは誰にも拘束されない自由です。
 お互いを犯さず傷つけず、
 互いの命を尊重しあう。
 絶対服従の指導者がいる世界に楽園はない」

「あなたは考えすぎだ。
 そんな愚にもつかないことを捏造して、
 神のみならず信仰している善良な人々をも
 傷つけていることに気がつかないのか」

中田先生は本気で怒っているようだ。
先生が、こんなに信仰心が厚かったなんて
知らなかった。
しかし男も引き下がらない。

「人類を救ってくださるはずの神は
 実は人類を生かしたり滅ぼしたりしながら
 調節を計っているだけなんだ。
 善と悪は常に隣り合わせに存在しており、
 喜びには悲しみ、苦しみには快楽がある。
 神は人を試す。
 神を信じてさえおれば
 死は恐怖にあらずとの教えは、
 本当は恐怖以外の何物でもないんだ。
 死は重いよ、大切な者の命であれば
 神よりも重いはず。
 命が神の手の中にあるという考えは、
 間違っていると思いませんか」

あぁ・・・嫌だなあ、
この人何を言ってるんだろう。
私の頭ではこういう話は理解不能なのだ。

「あなたには私の言っていることが
 分かっているはずだ、
 中田先生」

何と男は先生の名前を口にした。
初めて会ったはずなのに、
何故この男は先生の名前を知っているのだ。

「な、何んだと・・・」
先生が思わず腰を浮かせたその時、

「気をつけて、この人から何か嫌な臭いがする」
いきなりママが叫んだ。

〜つづく

="#CC0000">「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.12.19. (00:16)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
ハレルヤ

Copyright © 2004 Powered by FC2 All Rights Reserved.
Photo by Wisteria Field  Template by lovehelm