いい匂い・・・
もうすぐ晩御飯。魚を焼く匂いが部屋中に漂ってくる。今夜のお魚は何かな? チャコのこんないい顔は珍しいのだ。沢山食べてもっともっと元気になってね。
1 2 3 4 5 6すぐさま私はカウンターから飛びのいたが、
中田先生は身じろぎもせず
男を睨みつけている。
「お前は誰だ、何故私を知っている」
男は先生の問いには答えず、
丸い目のおどけたような顔つきで、
カウンターの上を指先で弾きながら
鼻歌を歌い始めた。
この男、まるきり私達をバカにしている。
私の怒りが頂点に達しかけた時、
「そ、その曲は・・・」
中田先生が顔を強張らせてつぶやいた。
どうやら男の鼻歌は、
先生にとって何か意味があるらしい。
「先生、先生はよくこの歌を子供達に
聞かせてあげていましたねえ。
フン、フン、フン、フン・・・・」
「やめろ、やめてくれ。何でお前が
それを知っているんだ」
中田先生は哀願するように首を振り、
男の肩を両手でつかみ揺さぶった。
男は先生の手を邪険にはずすと、
汚物でも付けられたかのように
さも迷惑そうに顔をしかめ、
手で両肩を払った。
男は背広の襟を正した後、
「あなたはこの歌を歌いながら、
子供達にパンを配っていた・・・
当時あのアニメは
子供達に人気があったからねえ、
そのヒーローの顔をパンにするなんて、
あなたは医者よりパン屋の方が
向いていたんではないですか」
皮肉を込めた笑いを口元に浮かべている。
中田先生は肩を震わせ、
下を向いたままだ。
何とかして先生を助けたい。
何がどうなっているのか
さっぱり分からないが、
少なくてもこの男のターゲットは先生だ。
どうすればいい・・・
私が唇を噛んで、男をどうすればいいか
考えていたとき、
「この店から出て行きなさい、
ここはお前の来る所ではないわ」
ママが鋭く叫び呪文を唱え始めると、
男は顔を醜く歪ませて苦痛に身をよじらせ、
足元から徐々に
細かな砂と化して消えてゆく。
「何度でも来るからな、
もう道が出来ているんだよ。
中田先生、あなたは我々の同志だ」
男は、耳の鼓膜が破れるかと思うような
太く大きな笑い声を残して、
頭の天辺まで砂になって消滅した。
〜つづく
="#CC0000">「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」 「怪談奇談」に
(幽霊屋敷)ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
別荘出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2006.12.20. (00:31)
猫 /
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