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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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2006.12

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
お話し中


クロとカリンが何やら深刻な話をしている。カリンは顔をしかめ、どうやらクロに誰かの悪口を言っている様子。チラチラと見ているカリンの視線の先を辿れば、台所奉行のシュウがいた。牧羊犬のように猫達を仕切るシュウのことが鬱陶しいのだ。「まあ、したいようにさせといてやれや」クロはきっとそう答えたと思う。


       

昭日町スーパーで夕食の材料を買い、
自宅に戻った。
食材を冷蔵庫にしまいながら、
今日ママの店で起こったことを
考えていた。

あの後中田先生はママに
熱いコーヒーを飲ませてもらい、
気分も良くなったからと言って
自宅に帰って行った。
中田先生の家・・・そう言えば、
中田先生の家にはまだ一度も
行っていない。いや、犬山さんと
リリーさんの家も知らない。
考えてみれば、いつもママの店で
顔を合わせているだけで、
先生達の私生活は何一つ知らないのだ。
今度先生の家に行ってみたい。

足元でゴンが
何かくれと言わんばかりに
ウロウロとしている。
今日は丸ごと一本のロースハムを買った。
冷蔵庫に入れる前に早速切って味を見る。
ヘタの部分をちょっと厚めに切って、
半分をゴンにあげて、残りを私が食べる。
このヘタの部分が私は好きなのだ。
ゴンはハグハグと音を立てて食べている。
食べながら空気を一緒に飲んでいるから
こんな音が出るのだ。

「ゴン君、落ち着いて食べたまえ。
 そんなに急がなくても
 ハムは消えやしないよ」
私の言葉は自己満足、
必死に食べているゴンに
そんなモン聞こえる訳が無い。
それにしてもこりゃ美味しい、
もう一切れと思って
ペティナイフをハムに当てた時、
いきなりゴンが低く唸り声をあげだした。
私がハムを全部食べると思ったのだろうか。

「ゴンよ、お前ね・・・アレ ?」
何とゴンはハムを半分食べただけで、
全身の毛を逆立て、尻尾もハタキのように
太くさせている。
真っ直ぐ前方を睨んで唸るゴンの姿に、
私は身の危険を感じ、振り向いた。

「お前は・・・・」
台所の入り口にアノ男が立っていた。

「何しに来たんだ、
 ここはお前の来るところではないぞ」
私はゴンを抱こうと身をかがめたが、
ゴンは脱兎の勢いで台所の窓から外へ
逃げて行った。

私は男と対峙しながら、男の出方を待った。
少しでも変な動きを見せたら、
私は男に飛びつき、
首の骨を腕でへし折るつもりだった。

「丸ごと一本のロースハムは
 美味しいですよね、
 私にも少し頂けませんか。
 あ、どうせならご一緒に食事しましょう」
男はニッコリと笑い
右手の指をパチンと鳴らす。
瞬く間にテーブルの上に
白いカバーが掛けられ、
ケーキ、果物、肉、野菜の料理が並べられた。
ワインの瓶を手に、
いつの間に腰掛けたのか、
男がテーブルの上に置かれたグラスに
真紅のワインを注いでいる。
注ぎ終わって男は私に手を差し出し、
椅子に腰掛けるように
目で合図しながら頷いた。
私は用心深く、男から目を離さず
椅子に腰を下ろす。

「何を企んでいるんだ。
 まさか僕と一緒に食事したいから
 ここに来た訳でもあるまい」
私がそう言って男を睨みつけると、

「まあ・・・そんなに警戒しなくても、
 私ゃ何にもしやしませんよ。
 ただ、こうしてあなたと食事をしながら
 お話しをしたかっただけです」
男はケロッとした顔で言った。

「言っとくけど、僕は無宗教だからね。
 あんたがいくら神がどうとか言っても、
 僕には通用しないからね。
 信じていない者には
 悪魔だって手出しは出来ないさ」
本当だろうか、
本当に手出しが出来ないんだろうか、
一抹の不安が頭を過ぎったが、
まあ、威嚇しといて損はない。

「おもしろい人だ。
 私はあなたがとても気に入りましたよ。
 まあ、一杯飲んでください」
男は笑いながらまたワインを勧め、
自分もグラスを口に持っていく。

「こりゃあ美味しい、
 実にフルーティで甘い香りだ」
男は首を少し傾け、
おどけたような顔で私を見た。
そうか美味しいのか、
だったら飲んでやろうじゃないか。
私はグラスを手に取りワインを口に含んだ。
美味しい・・・確かに男が言うように、
そのワインはとても素晴らしい味だった。

〜つづく


「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」 
2006.12.22. (00:51)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(12) /
ハレルヤ

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