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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
全部飲まれた


シマジロウ今まで何してた、早く来ないからモウナイヨ。空っぽのトレーをペロペロ舐めている。可哀相だから今牛乳温めてきてあげる。今度はちゃんと飲むんだよ。



         1011 

「私は主治医に電話を掛けました」
恩他さんの話が続く。

「内臓破裂だとおっしゃったが、
 私は雅羽が車に当てられる瞬間を
 見ていました。
 轢かれた訳でもないのに
 何故内臓破裂なのか、
 そして、内臓を全部抜き取った理由を
 説明してくれと言いました。
 そうしたら、主治医は
 しどろもどろになりましてね、
 とにかく明日院長と一緒に
 ご説明をしに伺いますと言って
 電話を切ったんです。
 それで、翌日の昼頃
 院長と一緒にやって来たんですが、
 雅羽は見た目には元気だったが、
 実際は内臓がかなり損傷を受けていて、
 検査する前にすでに意識が
 無くなっていたと言い張るんです。
 内臓を取ったのは、
 実は緊急の移植を要する患者がいて、
 ドナー登録している人と雅羽を間違えたと
 言うのです。示談金として
 多額のお金を持って来ていましたよ」
恩他さんはテーブルに肘を突き、
両手の平で顔を何度も擦り続けた。

「お金はどうなさったんですか」
もちろん恩他さんは
金など受け取っちゃいないだろう。

「一度は付き返してやろうと思いました。
 でも、結局は受け取ることにしたんです。
 私には雅羽が殺されたんだという
 確信がありました。
 家内に何で金を受け取ったのかと
 詰(なじ)られましたが、
 事を起こすには金が要ります」
恩他さんの目が血走っている。

「どういう理由があるにせよ、
 息子の死を金で解決したんだと、
 家内は泣き喚きました。
 私が、雅羽の為に必要な金なんだと
 いくら説明しても分かってくれません。
 雅羽を荼毘に伏した日の夜中に、
 家内は包丁で
 首を欠き切って死にました」
何と言うことだ・・・
私は恩他さんが気の毒で、
同時に患者を物としか考えていない
医者達に怒りを覚えていた。
 
「私と妻はある宗教の信者でした。
 どんなことも神が私達にくだされた
 試練だと思って受け入れれば、
 必ず救いの手を差し伸べてくださると
 信じていたんです。
 でも、神は私達の息子を
 助けてはくださらなかった」
恩他さんはテーブルの上で
握った拳を震わせている。 
私は恩他さんがママの店で、
中田先生と言い争いになったことを
思い出した。恩他さんは何故
中田先生を知っていたんだろう。

「あなたと中田先生はどういう
 ご関係なんですか」
私の質問に恩他さんは、急に顔を引きつらせ、
意地の悪い笑いを口元に浮かべた。

「中田先生がその主治医なんですよ」
えっ・・・・
私は驚きのあまり椅子から
ずり落ちそうになった。

「ちょっと待って、あなたの息子さんは
 事故で運ばれたんでしょ、だったら
 主治医は外科のはずだ。
 中田先生は小児内科の先生ですよ。
 そりゃ、あなた完全に人間違いしてる」
冗談じゃない。中田先生を恨むなんて、
絶対勘違いもいいとこだ。

「雅羽は喘息持ちでね、
 ずっと通院していたんですよ。
 その主治医が中田です。
 雅羽はまだ軽い喘息だったから、
 入院はしなかったんですが、
 中田は手作りのパンを食べさせたりして
 入院中の子供達を手懐けていたんだ。
 親も子供を
 大事にしてくれる医師だと信じて、
 中田先生にまかせておけば
 大丈夫だと思い込んでいた。
 でも、あいつはそれをいいことにして、
 言葉巧みに子供達全員に
 ドナー登録をさせていたんだ。
 適合した子が殺されると知らずに、
 親達は善意の気持ちで印鑑を押したよ。 
 面会に行った時元気だったのに、
 容態が急変したのは変だと思っても、
 信頼している中田先生から聞かされる
 説明なら、親は納得してしまうんだ。
 あいつは人殺しの手先を勤めていた男だ」
そんな・・・じゃあ、先生は良太君が
死んだことだけを悲観して
自殺したんではなかったと言うことなのか。

〜つづく


「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」 
2006.12.26. (00:19)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(10) /
ハレルヤ

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