筆者  活動状況  オンライン小説  新刊+出版本  更新情報 ブログ
メルマガ Link HOME MAIL


fc2-BlogRanking   Blog Entry
管理人

樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

    モバイル版を開設しました!


    毎日の「ママの店」の更新情報を、お届けするメルマガを始めました!
月別ログ
カテゴリ
最新記事
コメント
トラックバック
リンク




2007.01

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
スポッ


コタツを片付けている時、天板を取ったらフクが飛んで来てスッポリと掛け布団とコタツのスノコの間にはまりこんだ。四角い窪みの中でごきげんのフク。早くお布団敷いて欲しかったらあっちへ行って、邪魔をするといつまでも寝られないんだよ。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39

「豊・・・・」
誰かが私を呼んでいる。

そうだこれは夢なんだ。
この灰色のズルズル人間も夢なんだ。
それならちっとも恐くなんかないや。

夢だと思うと、
さっきまでは見るのも嫌だった
この奇怪なモノを、今度はじっくりと
観察しようと言う気になった。

そいつの側に近づくと、
プンと生臭い嫌な臭いが鼻をつく。
立てた膝の間に埋めるように
顔を隠しているが、目だけはしっかり
私の様子を窺っている。

「ねえ君、そんな所で何をしているのさ」
と私は聞いた。
お節介な性分は直らない。
男か女かまでは分からないが、
人間であることは確かだ。
返事をしてくれそうにもないので、
私はそいつの顔をよく見ようと
しゃがみ込んだのだが、
足元が傾斜しているので
バランスが悪く
後ろにひっくり返りそうになる。
仕方がないので四つんばいになり、
顔を近づけると、真正面から
そいつの目と合った。
ギョロギョロと上目遣いの
眼球だけが動いている。
無数に浮き出た血管の一本一本が、
はっきりと確認出来るほど
近づいたことを私はすぐに後悔した。

そいつは怯えてなんかいない。
むしろ私を憎んでいる。

別に言葉があった訳でもないが、
私を見るそいつの目の中に、
憎しみが見えた。
私はこいつに憎まれているんだ、
すぐにここから離れなくちゃと思い、
立ち上がろうとした時、
そいつの手が伸びて、
いきなり私の腕をつかみ
信じられないような強い力で
私は引き寄せられた。
振りほどこうともがいていると、

「お前はまた・・・」
とそいつはいきなり言葉を発した。
永久に開けられることなど
ないのではないかと思えるほど、
固く閉じられていた口が開き、
長く口の中で溜まっていた
毒ガスと共に、
私の顔めがけてその言葉を吐き出した。

「僕が何だって言うのさ」
あまりの臭さに顔を背けながら、
つかんでいるそいつの手を
剥がそうと必死になったが、
まるで接着剤でくっつけたかのように
剥がれない。

「くそっ、離せ!」そう言った瞬間、

「お前はまた逃げるのか、
 あの時みたいに
 また私を見捨てて逃げるのか」

あの時だって?
こいつは何を言っているんだ、
お前に会ったのは今が初めてのはず。
私は思わずそいつの顔を凝視した。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.31. (00:00)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(11) /
 我が家の猫達&ママの店
ここに座ってもいい?


湯たんぽの用意を始めるとナナが側にやって来た。熱いお湯を入れるから降りなさいと言ったら、寂しそうな顔をしてテーブルから降りた。随分聞き分けがいいなと思っていたら、何と飴をくわえて持って来た。「飴を持って来たから、ココに居させて」と言わんばかりの甘い鳴き声。でもナナ、ここには熱湯があるんだよ。火傷をしたら大変だ。せっかく飴を持って来てくれたけどダメなんだ。もう少し我慢してね、湯たんぽが出来たら温かいお布団の中に入って一緒に寝よう。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38

やがて目の前の白い視界の中に
黒い穴のようなものが
出来ていることに気がついた。

何の穴?不思議な気持ちで見つめていると、
最初丸かった穴はしだいに形を崩し、
アメーバーのように広がりながら
肥大化し、白い景色を食い始めて行った。

薄れ行く視界の中に
懐かしい面々の顔が見えた。
みんな口をパクパク開けて
私を覗き込み何か言っている。

「だ・・・ぶか、ゆた・・・」
声が少しずつ聞こえて来た。
中田先生が私の額に手のひらを当てている。

「豊、気がついたか」
先生の声が今度ははっきりと聞こえた。

「あぁ、先生・・・大丈夫だよ」
そう言って体を起こそうとしたら、
頭が痛み、猛烈気分が悪い。
別に恩他と一騎打ちした訳でもないのに、
どうしてこんなにだるいんだろうと
考えているうちに、酷い睡魔に襲われて
私は深い眠りの中に落ちて行った。

そこは息が詰まりそうになるほど
重い空気が立ち込めている廊下だった。
廊下の幅は一メートルほどで、
見覚えのある黄色い絨毯が
敷き詰められており、
その上を茶色い染みが
点々と続いている。
その染みを辿り歩いて行くと、
褐色のドアの前に来た。
何も考えず取っ手を握り、
回すとドアがギギーと軋みながら開いた。
部屋の中は驚くほど狭い。
薄いブルーのタイルが
敷き詰められているのを見て、
てっきり風呂場なのかと思ったが
あるはずのバスタブが無い。
奥からこちら側に向けて緩い勾配があり、
高くなった左の隅に
何かが居るのに気がついた。
目を凝らしてよく見ると、
それは異様な姿をしているが
確かに人間で、素っ裸で膝を抱え込み、
壁にペタリと背中をくっつけて
蹲(うずくま)っている。
男なのか女なのか分からないほどの
損傷を全身に受けており、
腐敗が進んでいるのか髪はすべて抜け落ち、
皮膚が溶けてヌルヌルとした
灰色に変色してしまっている。
血管が浮き出た目だけが新鮮で、
それがいっそう不気味さを醸し出していた。

〜つづく


「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.30. (00:40)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(16) /
 我が家の猫達&ママの店
カスガ


カスガが何かを聞こうとしている時に見せるこの耳の格好が好きだ。写真ではちょっと分かり難いが、カスガの目は黄色がかった緑色。南国の果物のように瑞々しい大きな目をパチッと開けて、耳を後ろにグッと引いているのが可愛い。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37

私自身は無宗教で別に神様なんて
信じてはいないけれど、
恩他の行為は絶対許せないと思った。
人が神様を心の支えにして何が悪い。

「お前に、人の信仰心を踏みにじる
 権利など無いぞ。
 神様を信じて何が悪いんだ、
 信仰のある人達の心は美しい。
 死んでもきっと光の満ち溢れた
 世界に行くさ。
 お前は羨ましいんだろ、
 その光の世界に行ける人達が。
 でも、お前みたいな悪い心の者には
 暗い闇の世界の方が似合っているんだよ」
 
吐き捨てるように言った私の言葉を
恩他はどう受け止めたのだろうか、
ズボンのポケットに両手をつっこんで、
目をパチパチとさせて私を見ている。
別に怒っている顔でもないし、
当たり前だが喜んでいる顔でもない。
相手の心が読めないと言う事ほど、
不安になるものはないのだ。
私は口を閉ざし、しばらくの間
恩他と睨み合いのような格好になった。

「君は神を信じないって言ったね」
恩他が真面目な顔で聞いてきた。
返事しようかすまいか一瞬迷ったが、
別に答えたところで何も無いだろうと思い、

「あぁ、でも信じないというよりも
 そんなものは無いと思うね。
 神は人間が造ったものだ。
 もちろん悪魔もね」
神の存在を信じる者は悪魔の存在も信じる。
神を無いと言い切るのだから、
お前の存在も無いと言いたかったのだ。
恩他は右手だけポケットから出して
人差し指を一本立て、

「つまり、神が無いから・・・
 悪魔も無い。
 そう言いたいんだね」
念を押すような恩他の言い方に、
私の胸に一抹の不安が過ぎる。
安易に口を利くのはやめよう、
ここは黙って恩他の出方を見るべきだ。
私は返事をするのをやめた。
黙っている私を見て恩他はフンフンと
何やら納得したように首を振り、

「でも君は善と悪を分けている。
 信仰心の厚い者がいく世界と、
 私が行く世界を分けている。
 と・・・言うことは?」
恩他はそこで言葉を切り、
私の顔を意味ありげに見た。

あっ・・・

私は恩他の言わんとしている事が分かった。
くそっ、そういうことなのか。 
私は恩他を悪だと認めている。
だから恩他は私に付きまとっているのだ。
善があるから悪があるのよと
ママが言っていたっけ。
でも、こいつは自分の名前をアナグラム
にするほど魔王サタンに憧れている。
ただの悪霊と言われることが、
こいつにとってどれほど嫌なことかは、
もう実証済みだ。

「お前自分の事を魔王サタンだなんて
 言ってるけど、そりゃただの
 憧れなんではないの?
 思い出しなよ、お前はただの悪霊だ。
 単体では何にも出来ないから、
 仲間を集めようと
 しているだけなんだよ」
思った通りに私の言葉は、
恩他の自尊心を深く傷つけたようだ。
たちまち顔色が変わり、
カッと見開いた眼球に、怒りのあまりか
多量の毛細血管が浮き出ている。
何と単純な、分かりやすい男なんだと
私は噴出しそうになった。

「お前って、可哀相な奴だなあ」
とどめを刺してやるつもりでそう言うと、
恩他はとうとう脳の神経が
プチンと切れたのか、
唇をグニャリと曲げて
笑っているような顔になった。

「フヒヒ、正体がバレて頭に来たな」
私も負けじと意地悪く笑ってやる。

「お前だけは何があっても
 許さないからな。覚悟しておけ、
 今から地獄の苦しみを味わわせてやる」
どす黒く変色した顔を不気味に歪ませ、
恩他はそう言い残してサッと消えてしまった。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.29. (00:43)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(12) /
 我が家の猫達&ママの店
ふぁあぁぁぁ〜

チャオの気持ちよさそうな欠伸と伸び。チャオは神経質でいつもイライラしているのに、こんなふうにのんびり欠伸するときもあるんだねえ・・・



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36

恩他を呼んだが返事は無い。
辺りを見回しても
ただ真っ白な世界が
広がっているだけだ。

いつの間にか和美さんと英二が
消えている・・・

耳を澄ませて何か聞こえないかと、
じっとしていたが、何の音も聞こえなかった。
ここは恩他が造った世界なんだろうか、
それとも空間の中に自然に存在する
一つの世界なんだろうか。
普通ならママが私の居場所を
キャッチしてくれるはずなのに、
ママの声が聞こえて来ないということは、
おそらくここにはバリアーが
張り巡らされているに違いない。
と言うことは、ここは恩他が用意した
世界なのだ。

私に何をさせようと言うのだ、
犬山さんの死ぬ瞬間を見せたかったのは、
リリーさんにではなく、
私にだったのだ。
でも、何故だ・・・
私がビジターだからか、
そう言えば、私が犬山さんと
リリーさんを心配していた時でも、
ママも中田先生も涼子さんも、
さほど心配しているようには
思えなかった。
そして何よりも、恩他がいくら
死ななくても良かったことに
運命を変えてやると言っても、
みんな、そんな必要は無いと
答えていた。
要するにママ達にとっては、
恩他の交換条件など興味がないのだ。

そこでビジターの私に
狙いを定めて来たと言う訳か・・・
でも、私も父や母が亡くなったのは
自然のことだと思っているし、
とりあえずは今、昭日町で一緒に
暮らせているのだから、
何ら不足は無いのだ。

「じゃあ、昭日町から君を
 追い出すってのはどうかね・・・」
いきなり恩他の声がした。
ギョッとして周りを見ると、
少し離れた所に恩他が立っている。

昭日町から追い出すだって?
冗談じゃない。

「おい恩他、そんなことをしていったい
 お前に何の利益がある。
 いったい僕にどうしろってんだよ」
私は自分の幸せを脅かそうとしている
恩他に無性に腹が立っていた。
恩他は何も答えず、
ただニヤニヤと笑っている。

「お前は初めてママの店に来た時、
 誰かに追われていると言っていたな。
 ある宗教の信者だったお前が、
 その宗教が実は人を救うものではなく、
 滅ぼすものであると知った為、
 命を狙われていると言っていた。
 そんなお前が何でいきなり、
 魔王サタンなんかになるんだ。
 訳が分からないよ、
 説明してくれないかな」

こうなりゃ、時間稼ぎをして
どうやって恩他の野郎を撃退出来るか
考えないといけない。
絶対助かる道はあるはずだ。
こんな野郎の言いなりになんてなるものか。

「あぁ・・・そう言えばそんな話を
 したっけなあ。
 私が仕留めたこの男は、
 熱心な宗教家でね、
 本当に反吐が出るほど熱心に
 神なんぞを信仰していたんだよ」
恩他は声を殺しながら
クックと笑い始めた。

「でね、私は忠告してやったんだ。
 いろんな映像を見せてやってね。
 神はこんなに無慈悲なんだようって
 耳もとでちょっと囁いてやっただけで、
 奴は簡単に自分の愛する神を疑い始めた。
 それでね、私がチョチョイノチョイッて
 ほんのすこーし手を貸してあげただけで、
 私の言ったことが
 真実だと分かったんだよ。
 あ、言っとくけど私は
 嘘なんてついてないからね」

恩他は曲げた両手の平を上に向け、
肩をすぼめてニヤッと笑った。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.28. (00:54)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(14) /
 我が家の猫達&ママの店
戯れるブチ

ブチが兄弟でじゃれあっている姿はとても可愛い。ブチとクロの兄弟はいわゆる大型猫で、クロは筋肉ブチは脂肪だ。両方とも体が非常にデカイ。しかし二匹とも体に似合わず心はとても優しい。クロは若い時、フクと凄まじい喧嘩を一回だけやったことがあるが、両方とも傷口を縫うほどの大怪我を負った後、開眼したのか二度と喧嘩はやらなくなった。ブチは生まれてから一度も喧嘩をしたことが無い。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35

男の顔色が紫色に鬱血し始め、
眼球が今にもこぼれ落ちんばかりに
突出してきている。
男は口を大きく開けて、
凄まじい拷問でも受けているような
叫び声をあげ出した。
男の身に今何が起こっているのかは
分からないが、
とにかく想像を絶する酷い苦痛を
味わっているらしい。
顎から頬にかけて
新鮮な生肉のような赤みを帯び、
額からこめかみにかけて
青黒い血管が浮き出ている。
両手をだらりと下に下げたまま、
上体がエビのように逆反りし始めた。

このままでは背骨が折れる・・・

「おい、あんたどうしたんだっ」
私が声を掛けたと同時に、
ギャアッ! と和美さんが大声を上げた。

「か、和美さん!」
私は思わず駆け寄ろうとしたが、
何故か足が地面に
くっついてしまったかのように
全く動かない。
和美さんも男と同じように体が
エビ反りになっている。
バキバキという嫌な音が聞こえ始め、
男と和美さんの体は、私の目の前で
真っ二つに折れてしまった。
背骨が折れる瞬間に二人が発した
断末魔の声に耐えられず、
恐ろしさのあまりに私は目を閉じ、
両手で耳を固く塞いでいた。

しばらくの間残響音が耳の中にこびりつき、
目を開けることすら出来なかったが、
ようやく気持ちが落ち着いて来たので
目を開け、両手を耳から離した。
右足をゆっくりとずらせて見ると、
さっきまで接着剤でくっついたように
びくともしなかった足が、
ようやく動かせるようになっていた。

足は自然と男の方に向き、
側に行ったとたん絶句した。

何て酷いことを・・・
変わり果てた姿になってはいるが、
男はやはり英二だった。
自分のふくらはぎを背に敷いて、
英二は仰向けに倒れている。
眼球は飛び出してはいなかったが、
カッと見開いている様子が、
彼の味わった苦痛を物語っていた。
どこかの血管が切れたのだろう、
半開きになった口の両端から、
耳にかけて真っ赤な血の筋が出来ている。
和美さんもきっと同じ状態に違いない。
女性だからかもしれないが、
私は正直和美さんのこんな姿は
見たくないと思った。

悪人とは言え、これは惨すぎる。
人間の体ををダンボールか何かのように
折りたたんで見せ、人間なんて
死ねばしょせんモノなんだと言う
魂の尊厳を無視した恩他の行為に、
私の腹の底からムラムラと怒りが
こみ上げて来た。

「恩他、出て来い!」
私は真っ白な上空に向かって
吼えていた。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.27. (00:38)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(12) /
 我が家の猫達&ママの店


我が家の猫達には牛乳タイムなるものがある。温めた牛乳をお腹いっぱい飲んで、湯たんぽでホカホカの寝床でグッスリ朝まで寝るのだ。
チャコも皆と一緒に飲めるようになって良かったね。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34

実の兄と知らずに好きになり、
無理心中を企てた和美さんは、
自分のしでかした罪の重さから、
一人孤独の世界に旅立った。
和美さんのいる世界は慟哭の世界。
その中で和美さんは犯した罪への後悔と
失ったものへの執着に、
苦しみ悶えていたに違いない。
恩他はその和美さんを利用したのだ。

和美さんは男に罵倒され、
全身の力を失ったかのように、
ペタリと座り込んでいる。
今あらためて見ると、
和美さんの着ている服は、
掃除婦をしていた時の
あの薄っぺらいブルーのワンピースだ。
和美さんはリリーさんと服の好みが
全然違っていて、
唯一リリーさんの服に近いのが、
このワンピースだったのだろう。
リリーさんの好みはロリータで、
およそ和美さんの趣味にほど遠い。
緑の服に緑の帽子、どことなく
野暮ったい姿の和美さんを思い出す。

この人が和美さんなら、
あの犬山さんに化けているのは
恩他の野郎か・・・
私は男の顔を凝視した。
男はまだ、和美さんの失敗を
許せなくて睨み続けている。

おかしい・・・
恩他にとって和美さんは、
ただの捨て駒だ。
失敗したらそれまでで、
平気で次の行動に出るはずだ。
それなのにこの男は、
一つの計画がダメになっただけで、
酷く動揺している。
自分を魔王サタンと名乗るような恩他だ、
こんな小さな男ではないだろう。

しかし、恩他ではないとしたら、
この男はいったい誰だ。

まてよ、あの時・・・

私はこの前ママ達と、巨大な心臓の上で
戦ったことを思い出していた。
あの時私達の剣でボロボロになった心臓は
英二や和美さんの姿と共に
しだいに形を無くし、
一塊の黒い影となって消えた。

英二・・・?

そうだ、和美さんは英二と一緒だったんだ。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.26. (00:22)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(13) /
 我が家の猫達&ママの店
ダッコ


ダッコされてご機嫌のクロ。今から目薬だよ〜、暴れたらダメだからね。クロの涙目はなかなか治らない。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33

「あんたが本当にリリーさんなら、
 犬山さんの運命を変えたいなんて、
 絶対言わないね。
 あの人はどんな時でも犬山さんと
 一緒にいたいんだ。
 犬山さんと一緒にいられない世界なんて
 考えられない人なんだ。
 それに、あんた自分の姿を見たのかい?
 もう中年もいいとこだ。
 リリーさんはこの世界では
 まだ十代の女の子なんだよ。
 それにその服は何?
 リリーさんなら絶対着ないだろうな。
 あんた、リリーさんのことを
 ろくに調べもせずに化けたんだ。
 いいかげんに本性を見せなよ、
 もうバレバレなんだよ」
私はそう言ってニヤリと笑ってやった。
目を白黒させるとはよく言ったもので、
今の女は正にその状態だ。
何かを言わねばという
気持ちは伝わってくるが、
完全に言葉を失っているようだ。

「愚かな女だ」
背後でいきなり男の声がした。
ハッとして振り向くと犬山さんが
恐い顔をして立っている。
ギョッとした私が思わず身を引いたので、
女と犬山さんが向かい合わせになり、
私を頂点として丁度三角形の
線上に三人が並んだ。

「こんなに簡単な事が
 何故ちゃんと出来ないんだ」
犬山さんは尚も女を詰(なじ)る。

「だからお前はたった一人の男の心も
 自由に出来なかったんだ。
 お前はもう終わったよ、
 とっとと闇の中に帰りな」

犬山さんは黒っぽい背広を着ていて、
雰囲気がいつもの犬山さんではない。

こいつも偽者か・・・

「そんな、私はこれでも
 一生懸命頑張ったつもりです」
女は泣きそうな声を出し、
男に向かって両手を握り締め、
懇願した。
そして、私の方に向き直り、
焦りをモロ顔に出しながら
早口でまくし立てた。

「ねえ、あんた、女なんていつでも
 コロコロ気分が変わるものよ。
 洋服だって、今日はこれが
 着たかっただけよ。
 あんなレースだらけの
 ピラピラした服もう飽きたの。
 年だって、
 もともと私は中年なの、
 若作りしていただけなのよ。
 そのことはあんたも
 よく知っているはずだわ」

中年だって?

私はすかさずその言葉に突っ込んだ。

「リリーさん、
 あなたいったい幾つだっけ」
疑いの目をサッと消し、
私は優しく微笑んだ。

「五十よ・・・アッ!」
言ってから女ははっとした顔をして
両手で口を覆った。

「馬鹿者めが・・・」
男が顔を歪ませて
吐き捨てるように言った。

「バレちゃったね。
 いったいあんたは誰なんだい」
私は出来るだけ穏やかな声で聞いた。
女は悔しそうな顔をして、
目には涙すら浮かべている。
その顔をじっと見ていると、
女の顔がだんだん変わって行った。

何か見覚えのある顔・・・あっ、

「あんたは和美さんじゃないか」

私は思わず大声を出してしまっていた。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.25. (00:34)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(14) /
 我が家の猫達&ママの店
「小さいヒト」


我が家で一番小さなトウは座ると何かおかしい。
頭ばかり目だって体がとても小さく、顔も何か猫以外の動物みたいだ。
トウは仲間と一緒に行動することを嫌がる。寝る時も一人(匹)、食事も一人だ。でもダッコだけは別で、私が「小さいヒト」と呼ぶと嬉しそうに走って来る。前にも書いたが、私はトウを「小さいヒト」と呼んでいる。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31 32

最近のリリーさんは
髪の色を変えるのが趣味になり、
ピンクにしたり金色にしたり
グリーンにしたりで忙しく、
こりゃまるでカメレオンみたいだなと、
中田先生が悪口を言うので、
私はシッと口に
人差し指を当てたことがある。

今目の前にいる彼女は
落ち着いた栗色の髪。

いつもなら前髪だけが真っ直ぐで、
後ろの髪はソバージュになっている。
何でそうなの、と聞いたら、
こだわりがあるのよと言って笑った。

「前髪だけは
 真っ直ぐに下ろしておきたいの。
 だって、前髪まで
 クルクルにしちゃったら
 頭の中までクルクルに
 なっちゃいそうで私嫌なの」
そんなリリーさんの言葉に、
ママや私、涼子さん中田先生、
犬山さんまでもが
大笑いしたことを思い出す。
だのに、今のリリーさんは前髪も
両サイドと同じように
しっかりウエーブが掛かっているのだ。
私の知っているリリーさんなら、
今の自分の髪型を見て、
ありえない!と絶叫するに違いない。
そして着ているワンピース。
リリーさんの好みは
レースをふんだんに使った
ロリータワンピースなのだ。
そしてワンピースの上には必ず、
レースで縁取った
白いエプロンをつけている。
目の前にいる彼女は
エプロンもつけていないし、
色だけは一応ブルーだが、
ごく普通の地味な形のワンピースで、
中年くらいの女性が着そうな代物だ。

中年?ありえない・・・
もちろんリリーさんの実年齢は
七十を超えている。
だけど今の世界での彼女は
十代の中頃なのだ。

目の前にいるのはどう見ても、
四、五十歳代の女。

「あんたは誰だ・・・」
私は彼女を睨みつけた。
彼女の目には狼狽が浮かび、

「あなた何を言ってるの?
 私はリリーに決まっているじゃない」
声が震えているのを私は見逃さなかった。

〜つづく 

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.24. (00:38)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(13) /
 我が家の猫達&ママの店
なに?


チャコが抜糸して無事ご帰還。首の周りにあったカーラーも取ってもらえてすっきりした。もうこれで部屋の中を自由に歩きまわれるし顔を前足で綺麗にすることだって出来る。首の痒いのも我慢しなくていいんだ。良かったね、記念写真をいっぱい撮ろう。でもチャコは「眠たいから湯たんぽの上に乗ったのにまた写真なの?」って言う顔をした。


         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31

恩他も馬鹿じゃないんだから、
そんな条件を突きつけても、
リリーさんは納得するはずがない。
ただ、嫌な場面を何度も見せられて、
気分を悪くさせているだけ、
これじゃただの拷問だ。
あいつめ、か弱い女性を拷問に掛けて
喜ぶ糞野郎に成り下がったか。
そんなことを考えながら、
リリーさんの様子をぼんやりと見ていた。
リリーさんは唇を噛みしめ、
眉間には縦皺が出来ている。

「もううんざりだわ、あんな場面。
 これで三回も見せられているのよ。
 犬山さんがあのお婆さんを避けずに
 抱きとめていたら、
 あるいはお婆さんが近づいて来る前に
 ホームの端から離れておくとかしたら、
 あんなことは起こらなかった。
 だからあの人
 『そういうこと』にしてあげる
 って言うの。
 だから、私何度も
 豊さんを呼んだんだけど、
 あなた、なかなか
 来てくれなかったわ」
恨めしそうにリリーさんが私を見る。

あれっ、何で私なんだ・・・?

「悪いけど僕には君の声が
 一回しか聞こえなかったよ。
 それに何で僕なのかな、
 助けを求めるなら僕よりママの方が
 力になるのに決まっているじゃないか。
 どうしてママを呼ばなかったの?」
私がそう言うと、リリーさんは
眉を寄せ、

「あの人はあなたを仲間にしたいって
 思っているのよ。
 ママはもう、ほら、
 死んじゃってるじゃない。
 あの人にとっては生きている
 あなたが必要なのよ。
 はっきり言って死んだ者には、
 もう何も無いの、夢も希望もない
 つまらないただの幻影よ。
 そんな者に何を言っても無駄」

リリーさんは自分達の存在を
幻影だと言い切った。
おかしいな・・・
ママや涼子さん、中田先生や
犬山さんの口からは、
絶対そんな言葉を聞いたことがない。
もちろんリリーさんからもだ。
むしろ、自分達もこちらの世界で
一生懸命生きようとしているんだって
言っていたように思うけど。

「じゃあ、恩他は
 僕さえ言いなりになったら、
 犬山さんがあんな死に方をしなくても
 すむって言ってる訳?」

「そういうことよ。
 あなたがあの人の
 言う通りになってくれない限り、
 ずっとあのおぞましいシーンを
 見せられることになるのよ。
 そんなの私、もう耐えられないわ、
 豊さん、お願いだから
 あの人の言う通りにして」
リリーさんは胸のところで両手を握り締め、
祈るように私の目を見つめた。

「でもリリーさん。僕がもし
 恩他の言いなりになって、
 それで犬山さんの運命を
 変えてしまったら、
 リリーさんはもう犬山さんと一緒に
 暮らせなくなるかも知れないんだよ」
私がそう言うと、リリーさんはちょっと
口元を歪ませ、それは仕方がないことよ、
とつぶやいた。

何かおかしい・・・
どんな時でも猛さんと一緒にいたいと、
言っていたのに。
それほどあの場面を何度も見せられるのが
辛いというのか。
しかし、人間の死ぬ場面など
大なり小なりどれも悲惨なものだ。
私も母の死に顔を見せられた時、
もう二度とこんな姿を見たくないと思った。
でも、だからと言って運命を変えても
何にもならない。
たとえどのパラレルワールドに移動しても、
死は必ず訪れるのだから。
そんなことを考えている時、
私はふとリリーさんが
いつものリリーさんらしくないことに
気がついた。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.23. (00:20)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(16) /
 我が家の猫達&ママの店
なあに?


シュウちゃん、と呼んだらこんな顔をして私を見た。
シュウがウルウルと可愛い目をしている時は要注意、後ろから飛びつかれるかも知れないからね。台所でお湯などを沸かしている時は特に気をつけないといけないよ、火傷をしたら大変だ。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29 30 31

・・・・お知らせ・・・・

都合により本日のママの店はお休みさせて頂きます。(チャコ抜糸の為)

                    ハレルヤ
              

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.22. (00:50) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(6) /
 我が家の猫達&ママの店
寝顔は天使

シマジロウは悪い子だ。起きている間は、チャオを追い掛け回して苛めたり、オシッコひっかけたり油を撒き散らしたりする。
でも、ほら、寝ている顔はこんなに可愛いね。まるで天使みたいだよ。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29
30

いきなり辺りが真っ暗になり、
人々の声が消えた。
そしてまたいきなり明るくなり、
今度は眩しい白一色の世界になっている。
私の足元で
泣き崩れていたリリーさんが、
涙を手で拭い、
鼻をグスグスいわせながら
立ち上がった。

「ここは何処なの?」
リリーさんが私の顔を見て
不安そうに聞いた。

「ここは異世界だよ。
 多分何処かに恩他がいる」
私は注意深く辺りを見回した。
しかし、何処もかしこもただ真っ白なだけで、
人影どころか何一つ
存在しているようには思われなかった。

「リリーさん、恩他が現れたんだね」
私の問いにリリーさんは頷いた。

「犬山さんは連れて行かれたのかい」
そう言えば犬山さんの姿がないことに
気がついた。
リリーさんは、首を横に振り、
分からないと小さく答えた。

「恩他が現れた時の状態を
 説明してくれない?
 その時は犬山さんも一緒だったんだね」
私がそう聞くと、リリーさんは
またもや首を振り、

「犬山さんはまだ帰っていなかったわ。
 私は夕食の準備をしていたの。
 そうしたら、いきなりあいつが
 台所に入ってきて、犬山さんが
 大変なめに遭っているから
 一緒に助けに行こうって言ったのよ」
よほど興奮しているんだろう、
リリーさんは、いつもの物静かな
リリーさんではなく、
大げさに身振り手振りを交えている。
私はママから二人はラスコに
買い物に行ったと聞かされていたので、
一緒にラスコに行かなかったのと聞いた。
リリーさんは目をキョロッと動かせ、
ビックリしたような顔で
ラスコ?と聞き返した。

「あっ、あぁ・・・犬山さんだけが
 行ったのよ。何か欲しいものが
 あるとか言って」
リリーさんはそこの所の記憶が
曖昧になっているみたいだ。
きっと犬山さんの
最悪な場面を見せられて、
気持ちが動揺しているのだろう。

呼び方まで猛さんから犬山さんに
変わっている。

しばらくお互い黙ったままになり、
私は今起こっている状況を
考えていた。
恩他がリリーさんを
こんなめに遭わせているのは、
リリーさんが犬山さんを
思っていることを利用して、
犬山さんがホームから転落して
死なないようにしてあげるから、
自分の僕(しもべ)になれと
言うつもりなのだろう。
でも・・・
犬山さんの運命を変えてしまったら、
リリーさんはもう
犬山さんと会えなくなる可能性が出てくる。
もし死ななかったとしたら、
犬山さんは奥さんと二人の娘さんの元に帰る。
別の方法で死んだとしても、
リリーさんの側に来ると言う
保障はないのだ。
何せ犬山さんは元々アボガドで、
とんでもない心の歪んだ人間だった。
犬山さんは、ああいう最悪な
死に方をしたが為にママの店を訪れ、
ママのおかげで
優しい犬山さんになれたのだ。

〜つづく  

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.21. (00:59)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(12) /
 我が家の猫達&ママの店
心配だゾー


ゲージの中にポツンといるチャコを見に、猫達がやって来る。お互いにジイッと見ているだけなんだけど、何か話しているようにも思える。「だいじょうぶかー頑張れよ」「うん、頑張るよ」そんな会話が聞こえて来るようだ。普段喧嘩ばかりしている子達も、チャコの前では静かだ。それが何よりも嬉しいよ。お前達、思いやりの心を忘れてはいけないよ、みんな家族なんだからね。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28 29

ザワザワと人の話し声がする中で、
立っている私の横を何人かの人が
足早に通り過ぎてゆく。

ここは駅のホームか、
あれは・・・?

前方四、五メートルほど先に
茶系のブレザーを着ていて、
黒いセカンドバックを持った
見覚えのある
男性が立っていた。

あれは、犬山さんだ・・・

強烈な胸騒ぎを覚えながら見ていると、
犬山さんの向こう側から
一人のお婆さんがヨタヨタと
歩いて来るのが見えた。
お婆さんは青白い顔をしていて、
とても具合が悪そうだ。 

あっ・・・・
いきなり私の頭の中に
嫌な記憶が蘇った。

この後犬山さんはお婆さんを
避ける為に飛びのいて、
ホームから転落するんだ。

「嫌よ、もうたくさんだわ!」
私の横で女性の金切り声がした。
ギョッとして見ると、
それはリリーさんだった。
薄いブルーのワンピースを着て、
蒼ざめた顔で口元を両手で覆い、
ガタガタと震えながら
犬山さんとお婆さんの様子を見守っている。

「リリーさん、いったいこれは何?」
と聞くと、リリーさんは
やっと私に気がついたらしく、
ワッと叫んでしがみついて来た。
リリーさんの肩をつかみ、
正面から顔を見据え、
事情を説明してくれないかと言った時、
プァーッと警笛が鳴った。

「・・・線、電車が通過します。
 危険ですので白線内にお下がりください」
場内アナウンスが聞こえる。

電車がホームに入って来る!
ハッとして犬山さんを見ると、
犬山さんは近づいて来たお婆さんを、
露骨に顔をしかめて見つめていた。
この後お婆さんは
犬山さんに倒れ掛かって来て、
犬山さんはそれを払いのけてしまうのだ。
そして転落する・・・

犬山さん!
私は声を上げようとしたが、
何と声は喉の辺りで止まってしまい、
口からは何の音も出なかった。

ついに魔の瞬間が訪れた。
倒れて来るお婆さんを
犬山さんが払いのけ、
お婆さんはホームの上に転がった。
そして犬山さんの姿がふいに消え、
ゴーッという音を立てて
電車がフルスピードで
通過して行ったのだ。

人が轢かれたぞーっ!
誰かの叫び声が上がり、
あっという間にホームに黒だかりの
人垣が出来ている。
うっかり下を覗き込んでしまい、
その惨状を見て悲鳴を上げて
気絶する女性、人々の顔は皆蒼ざめていた。

大変だ!人身事故だぁー
たちまち辺りは蒼然となる。

泣き崩れるリリーさん。
私の頭は真っ白になり、
何が何だか分からなくなっていた。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.20. (00:33)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(13) /
 我が家の猫達&ママの店
気持ちエエなあ〜

ダッコされて首元ナデナデされたらもうたまらん。ファ〜と大きな口を開けて欠伸したクロ。さすが我が家で一番のマッチョ猫、この顔は凄みがある。牙がまるで黒豹みたいに鋭いではないか、お母さんは時々この牙で顎を齧られてるんだねえ・・・恐いですう・・・



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27 28

「皆口先だけの友情です。
 誰も本気で
 心配なんてしちゃいませんよ」
私の頭の中でいきなり声がした。

恩他の声だ・・・

ギョッとしたが、空耳だろうと
思い直そうとした時、
いきなり助けてぇーと言う
リリーさんの甲高い声が
鼓膜を切り裂いた。
私の顔は蒼ざめ、ジワッと
冷や汗が額から滲み出て来るのが分かる。

どうしょう・・・
リリーさんが助けを求めている。

握り締めた両手の拳が震え、
その震えはたちまち顔のあたりまで
這い上がって来た。

ママ、と声を掛けようとしたが、
ママは涼子さんと
楽しそうに話しながら、
ケチャップライスを薄焼き卵で
包んでいる。
中田先生は依然新聞を読みふけっており、
ソファーではワンコと遊んでいる
良太君と恵子ちゃんがいる。

何なんだ・・・この人達は・・・

私の心の中に小さな不信感が生まれ、
あっと言う間にムクムクと大きくなった。

「どうなさいますか、
 リリーさんと言う方が、
 今必死にあなたの助けを求めて
 いらっしゃいますよ。
 助けに行かれるんでしたら、
 私があなたを彼女の元に連れて行って
 さしあげますけど」
フフフと怪しげに恩他は笑った。

何を白々しい事を、
お前がリリーさん達を
苦しめているんだろうが・・・

しかし、出かかったその言葉を
私は飲み込まざるを得なかった。
今この男を怒らせたら、
犬山さん達の居る所へ
連れて行ってもらえなくなる。

「早く僕を彼らの所に連れて行ってくれ」
そう言ったとたん、私はいきなり
冷水を浴びせられたかのような
凍りつくような寒さに襲われ、
全身がブルブルと震え始めた。
頭の中で脳が徐々に消えて行くのが分かる。
薄れ行く視界の中に
皆の驚く様子が見えた。
口をパクパク開けて
何か言っているようだが、
声は全然聞こえない。
中田先生は新聞を捨てて立ち上がり、
涼子さんは手に持っていた白い皿を
床に落としてしまった。
ママは顔を歪め、何か叫んでいる。
泣きそうな顔の恵子ちゃんと良太君。
皆が一斉に私の側に走り寄って来た瞬間に、
目の前が真っ暗になった。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.19. (00:48)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(6) /
 我が家の猫達&ママの店
アンタ降りなさいよ


犬猿の仲のカリンとトウ。写真に写してしまうと私もどっちがどっちか分からなくなるんだけど、多分左がカリンだ。本当によく似た二匹で、びっくりするくらい仲良しだったのが、ある日突然びっくりするくらい仲が悪くなった。顔を合わせるのも嫌になるほど、二匹の間で何があったのだろう。人間の私には知るすべも無い。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26 27

どのくらいの時間が経ったのか、
分からないくらい待つのは長かった。 
ママが三杯目の
熱いコーヒーを入れてくれた時、
良太君が目を覚まし、
ついで恵子ちゃんも起きて来た。

「あれ、先生達何してるの、
 おいらも・・・アレェ?
 何でここに居るんだろ・・・」
良太君は寝ている所を起こされて
先生に連れて来られたらしく、
ここへ来た記憶が
飛んでしまっているらしい。
恵子ちゃんも大きな欠伸をしながら
何事かとジロジロ私達を見回した。
側でワンコが何かくれとばかりに
尻尾を振って長い舌を出している。
ママは良太君にソーセージを渡し、
ワンコにあげるように言った。
ワンコはソーセージにかぶりつき、
必死に食べている。

「ワンコめ、よっぽど
 お腹が空いていたんだな。
 そういやおいらも、
 何か腹が減った気が・・・」
良太君がお腹を擦ると、
クウーと音が鳴った。
恵子ちゃんがクスクスと笑い、
先生や涼子さんママや私の全員に笑われ、

「なんでい、腹が鳴ったくらいで
 笑うなんてさ」
良太君はちょっと怒った顔になった。

「ゴメンゴメン、お腹空いてるのね、
 何か作ってあげようか、
 恵子ちゃんもどう? 」
ママが優しく聞くと、良太君の機嫌は
いきなり直り、恵子ちゃんも
嬉しそうに頷いた。

「うーん・・・じゃあ、おいらは
 カレーライス!」
「恵子はオムライシュ」
二人が別々な物を言ったので、
涼子さんが同じ物にしなさいと注意した。
すると恵子ちゃんが下を向き、
小さな声で、
カレーライシュでいいでしゅと言った。

「あら、大丈夫よ。
 オムライスとカレーライス
 作ってあげるわ。
 ちょっと時間かかるけどいいかしら」
ママがニッコリ笑うと、恵子ちゃんの目が
パッと輝いた。

「時間かかるんなら、
 おいらもオムライスでいいよ」
良太君が慌てて言いなおした。
よっぽどお腹が空いていたんだろう。
涼子さんはゴメンネと良太君に謝ると、
良太君は
「別に何でも良かったんだ、おいら」
と言って照れ臭そうに笑い、
鼻の下を指で擦った。

恵子ちゃんはワンコを抱かせてもらい、
良太君とソファーで何やら楽しそうに
話を始めた。
中田先生は相変わらず
コーヒーを飲みながら新聞を読んでいる。
ママと涼子さんは野菜を刻んだり、
フライパンで肉を炒めたり忙しい。
私は皆の様子を見ながら、
ふと気持ちが空ろになった。
いつもと何ら変わらない風景・・・
でも、こうしている間にも、
犬山さんとリリーさんは、
恩他の野郎にとんでもない恐い
思いをさせられているかも知れないのだ。
ママも、中田先生も、涼子さんも、
皆決して犬山さん達のことを
大事に思っていない訳ではない。
でも、いつもと変わらない笑いが
ここにはある。
今犬山さんとリリーさんが
瀕死の重傷を負い、苦しみ
のた打ち回っているかも知れないのにだ。
私がそう思うと言う事は、
ここにいる皆、
良太君や恵子ちゃんを除いた
大人達には私と同じように、
犬山さん達の危機を感じることが
出来るはずなのだ。
それなのに何故皆平気な顔で
笑っていられるのだろう・・・・
私は不思議な感覚に襲われていた。

〜つづく

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(後編)」
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

別荘

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.18. (00:07)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(9) /
 我が家の猫達&ママの店
初ウロウロ


退院して初めての歩行。お湯で温めたタオルで顔などを綺麗にしてあげ、牛乳タイムまでの20分くらいの間だけウロウロさせてあげた。
でも、まだ傷口が完全にくっついてないので恐いったらない。首の周りのカーラーをカポカポ鳴らせて危なっかしい足取りで私について来る。
もうあと一週間の辛抱だからね、頑張ろう。



         10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 
23 24 25 26

こんなことをしている場合ではない。
こうしている間にも犬山さん達は
恩他の言いなりになっているかも
知れないのだ。
私も死にたくなんかなかったんですよ、
とつぶやいた犬山さんを思い出した。
バスタブにもたれ、
手首にカミソリを当てたお婆さんの
リリーさんが見える。
私は居ても立ってもおられなくなった。

「ねえ、こんなことしている
 場合じゃないよ。
 犬山さん達を助けに行かなきゃ」
私の切羽詰った声に、涼子さんが
はっとしてママの顔を見た。
ママは黙って目を閉じて何か探っている
みたいだったが、
首を傾げながら目を開けて、

「やっぱりダメだわ。何も感じない」
と残念そうに言った。

「恩他が側にいるってことだな」
中田先生が腕組みをして溜息をつく。

「焦らなくても大丈夫よ。
 犬山さんもリリーさんも
 そう易々と恩他の言いなりなんて
 ならないわ。
 先生や涼子さんも大丈夫だったでしょ、
 豊もホラ全然
 相手にしなかったじゃない。
 犬山さん達も同じよ」
ママには相当大丈夫だと言う確信が
あるのだろう。
目の色がとても落ち着いている。

「でもあの二人和美さんの時に、
 だいぶ悪霊の影響を受けていたよ。
 生きていたかったとか、
 生きている僕が羨ましいとか、
 あっ、それは涼子さんが言ったんだっけ」

涼子さんがたちまち
申し訳なさそうな顔になる。

「まあ、そんなことはいいよ。
 とにかく、リリーさんも犬山さんも
 もっと生きたかったと思っているのは
 事実なんだから、恩他が
 生き返らせてやると言ったら、
 心が動くかもしれないじゃないか」

ウ・・ン・・と
中田先生が唸って溜息をついた。
涼子さんも心配そうな顔をしている。
それなのにママは平気な顔をして、
冷めてしまったコーヒーを
飲んでいる。

「ねえ、ママどうすりゃいいのさ。
 ママなら何とか出来るんじゃないの」
私の言葉にどうしても棘が含まれる。
皆こうして心配しているのに、
何も言わず平気な顔をしている
ママの気持ちが分からない。
でもママは首を振り、

「さっきも言ったけど、
 何かが邪魔をしていて
 まあ、どうせ恩他だと思うけど、
 とにかく私にはどうすることも
 出来ないのよ」

どうすることも出来ないって
分かっていても、何とかして
助けてあげたいのが人情だ。

「ママ、本当に何か方法はないの?」
私があまりにも
しつこく食い下がるので、
ママは困った顔に
薄っすらと怒りを浮かべ、
私の顔を見た。

「豊、生前の人生なんて
 死んだ私達にとってはもう、
 どうでもいいことなの。
 犬山さんとリリーさんが
 恩他の言葉を信じて、
 もう一度分岐点に戻って
 人生をやり直そうと思っても、
 それは出来ないことよ。
 おそらく恩他は
 宇宙に散らばっている
 パラレルワールドを利用しようと
 思っているんだろうけど、
 一個の世界として
 成り立っている世界に、