ダッコの順番待ち
ブチとチャーはダッコしてもらいたくて、並んで私の用事が終わるのを待っている。素早いブチにいつも先を越されるのが気にいらず、チャーは卑怯にも後ろからブチを噛む。それも私の見ていない時にやるのだ。噛まれる度にブチが悲鳴をあげる。「そういうことをする子はダッコ無しだからね」と言ってチャーを下に降ろすと何故かブチまで降りてしまう。「バカだなあ、何でお前まで降りちゃうの」でも分からないのは当たり前だな、ブチはごく普通の猫だもの分かるはずがないのだ。私の言葉を理解するシュウやナナは本当に特殊な猫なのだ。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16「存在を認めない・・・」
そうつぶやいた恩他さんは、
さっきまでの恩他さんではなく、
口元を歪ませた、
嫌な顔の男になっていた。
神や悪魔なんて存在しない
と言っただけで、
こんなに怒るだなんて、
神に裏切られたとか言っていたけれど、
心の底でやっぱり恩他さんは、
神を信仰しているのだ。
何か悪いことを言ってしまった・・・
「恩他さん、すみません。
恩他さんは信仰の厚い方だ。
私が無信心なばかりに
気分を悪くさせてしまいましたね。
謝ります。許してください」
私が頭を下げると恩他さんは顔をしかめ、
首を横に振りたくった。
「違うと何度も言っているだろう。
私はもう神など
信仰しちゃいないんだ。
私は息子を返してもらう為に、
悪魔の僕(しもべ)になったんだ。
悪魔は悪いイメージがあるけれど、
神の仕打ちもそうとうなモンだよ。
少なくとも悪魔は約束を守るね。
絶対服従の支配の下に、
供物として我が子を差し出せという
無慈悲な神を、
これ以上信仰する気持ちはないね。
豊君、君も是非我々の仲間になりたまえ、
お母様を助けてくれなかった神に
復讐をするんだ。
長い間人類は神を崇め奉り、
その結果はどうだ、
戦争は無くなったかい?
疫病は撲滅したかい?
一つが無くなっても
また新しい死が蔓延する。
戦争だって未だにあっちこっちの国で、
ドンパチやっているじゃないか。
空爆でどれほどの罪のない子供達や
お年寄りの命が奪われたか
考えてみたまえ」
考えてみたまえと言われても、
私には戦争や疫病と、
神とを結びつける気は更々無い。
信仰は人々の心の中に生まれ、
人生の羅針盤的な役割を
果たしてはいるものの、
その実体は無い。
悪魔なんて、それこそ
人間の心の中にある闇から
生まれたものにすぎないんだ。
そんなものの仲間に入ろうと思う
恩他さんの気持ちが分からない。
「何回も言います、
神の存在すら信じていない僕に
悪魔の仲間になれと言うのは、
おかしな話です」
恩他さんは引きつった笑いを浮かべた。
「神を信じていないなら、
別に我々の仲間になっても何ら
支障はないのではないかな」
神の存在を信じないってことは、
悪魔の存在も信じちゃいないんだって、
さっきから何度も言っているんだけれど、
恩他さんには
どうも良く伝わっていないようだ。
〜つづく
「ママの店16(前編)」 「ママの店16(後編)」 「怪談奇談」に
(幽霊屋敷)ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
別荘出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.01.06. (00:05)
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