オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
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暖か〜いなあ・・・ 昨日も今日も大阪は四月並の暖かい気温に恵まれた。猫達はリビングの窓際に集まって、気持ち良さそうに寝転がっている。ここに居ない猫達はコタツの中だ。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)我々五人が横一列になっても まだ余りある広い入り口だった。 倒れている扉を踏まないように、 五人は音も無く中に進入する。 橋を渡る時に警戒したように、 金属で出来た物に誰も足を 乗せる気にはならない。 橋も不気味だったが、 この扉も、なかなかのモノだ。 吹き抜けの天井は高く、 我々はまず一階を見て回る事にした。 石造りの大階段を真ん中にして、 左の壁沿いに歩いて行くと、 黒っぽいドアが階段から見て左に三つ、 正面からでは階段に隠れていて 分かり難いが、 丁度階段の裏にあたる部分にもドアがあった。 ドアの中を確かめようと思ったが、 どのドアにも鍵が掛かっており、 ノブを回すことすら出来ない。 皆の視線が中央の階段に集中し、 五人は階段の所まで行って、 無言のまま上を見つめていた。 二階には左右に行く通路があり、 真正面に扉がある。 「どうする?この階段を上がって、 この建物の中全部を調べてみる?」 私が聞くと、みんなは顔を見合わせ、 「そうするしかないなあ」 と中田先生が言った。 恩他の陣地に乗り込んだまでは良かったが、 広い城の中で、これから 何をすればいいのか分からない。 階段を上がりかけたその時、 女性の甲高い叫び声が 四方の壁にぶち当たり、反響した。 何かされているような、 只ならぬ悲鳴に一同蒼然となり、 何処からその声が 聞こえてくるのか確かめようと みんな全身を耳にしながら固まっていた。 もう一回悲鳴が聞こえた。 リリーさん? 私が思ったという事は、 みんなもそう思ったと言う事で、 特に犬山さんの顔は真っ青だ。 また悲鳴が聞こえて来た。 何処だ、どの部屋から聞こえて来るんだ、 我々はその声が何処から聞こえて来るのか 必死に確かめようと焦っていた。 その時、ゴトッと何かが倒れる音がして、 「助けて」と哀願するか細い声が聞こえた。 みんなの視線が階段の裏にあるドアに集中する。 そこだ!と中田先生が指差すのと同時に 犬山さんがそのドアめがけて突進し、 我々も後に続いて走り出した。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.28. (00:22) 猫 /
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キャーッチ! 夕食時、私がうっかり落とした竹輪の天麩羅を、ゲットしようとしてナナが手を伸ばした瞬間娘がパチリ(写真)!ダメでしょ、と怒られても取った竹輪は絶対食べさせてもらえる。 こんな事でいいのだろうか・・・ 隣の部屋では他の猫達もお食事中なのに、ナナはニャンコ飯を嫌い私にへばりつく悪習慣が直らない。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)これから先、何が出て来るか分からない。 各々が全身を目に変えて、 用心深く足元に生い茂る雑草を 踏みしめ歩いて行った。 しかし、周りからの攻撃は無く、 我々は無事城の側までやって来れた。 城が鉛色に見えたのは、さっき渡って来た 橋と同じ金属で出来ているからだ。 窓もテラスも無い、のっぺりとした城は、 何者にも覗く事を許さない 頑(かたく)なな恩他の心を 表しているのだろう。 ツルンとした滑らかな壁の何処にも、 出入り口が見当たらない。 どうしたものかと考えている時、 目の前の壁の一部が いきなり液状になり始め、 やがて馬蹄形をした扉の形を作って行った。 出現したのは鋼鉄の扉。 その表面には分厚い鉄板が縦横に貼られ、 鉄で出来た丸い鋲が打ち込まれている。 「恩他、来たぞ!扉を開けろ」 私が怒鳴り声をあげたとたん、 扉がミシミシと音を立て始め、 上の部分から埃のような粉が噴出して来た。 「豊、危ない!倒れてくるぞっ」 中田先生にひっぱってもらわなかったら、 私は重い扉の下敷きになっていただろう。 扉は上部から開くようになっており、 バタンと鈍い音をたてて、 我々の前に倒れて来た。 「先生ありがとう、でもよく上が 開くって分かったね」 私はホッと胸を撫で下ろし、 先生に礼を言った。 「いや、じっと見ていたら上の部分から 埃のような物が落ちて来たから、 これはいけないと思ったんだよ」 先生もいささか興奮してるのが 伝わってくる。 「それじゃ、中に入りましょうか」 ママの言葉に中を覗き込むと、 そこは正面に石で出来た 大きな階段があるだけの、 殺風景な大広間だった。 「何かお墓に見えません?」 そう言ってすぐ、ブルッと涼子さんが 身震いをした。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.27. (00:09) 猫 /
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シビアなカスガ 我が家の猫達はみんなダッコが大好き、ダッコしてほしい時は所かまわず飛びついて来る。でも、カスガだけはダッコされるのをとても嫌がる。足元にスリスリして甘えてくるので抱き上げると、手足を突っ張って降ろせのポーズをする。七年前の秋祭りの夜、ニャアニャア泣いている子猫を救助した。それがカスガ。大勢の人に踏まれてしまうと思って抱き上げたんだけど、家に連れて帰るまで、ずうっと私の手を噛んでいたっけなあ〜 (バックナンバーは「続きを読む」の中)「一気に駆け抜けましょう」 ママはそう言って先頭に立った。 後に中田先生、涼子さん、私、 最後尾には犬山さんがついた。 いけ!ママの合図に、 我々は一斉に走り出した。 走りながらも、 今に足元が真っ赤に焼ける、 橋は途中で壊れるかも知れない。 それでも走るんだと、 私は心に念じ続けていた。 死に物狂いの全速力で走り抜け、 向こう側に辿り着いた瞬間、 勢い余って我々は土の上に転がった。 息が詰まって声が出ない、 心臓が限界を告げるように 早鐘を打ちたおし、 今にも口から飛び出しそうな勢いだ。 私だけではない、多分みんな同じだろう。 結局何も起こらなかった、 橋は焼けもしなかったし、 壊れもしなかった。 涼子さんが言ったように、 恩他は我々を城の中に 引き入れるのが目的だったのだ。 まだ胸が苦しいが、いつまでも 座り込んでいる訳にはいかない。 慣れているはずの甲冑の重さを 全身にヒシヒシと感じながら 私は立ち上がった。 見ればママも中田先生も 涼子さんも犬山さんも立っていて、 肩で息をしながらも、両足で しっかり地面を踏みしめている。 今我々の目の前に聳え立つは、 滑(ぬめ)るように光る鉛色した不気味な城。 この中に恩他が居る。 我々は無言のまま剣を握り締め、 城に向かって歩き出していた。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.26. (00:52) 猫 /
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シマジロウ 例のごとくチャオを殴ったシマジロウ。頭をピシャリと叩き、顔を見ながら説教した。でも、シマジロウは自分が怒られる理由が分からないらしく不服満面の面構えになっている。そんなふてぶてしい顔をしたら、折角の可愛い顔が台無しだよ。弱い者苛めは許さない、今度やったら小屋から出してやらないからね。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)辺りが暗いのでよく見えない。 私達は用心しながら橋を確かめに近づいた。 柔らかな土の上に五十センチほどの 厚さがある大きな板がめり込んでいる。 触って確かめてみると、 その感触は木でもなく石でもない。 ツルッとした滑らかな表面は、 ひんやりと冷たくとても硬そうで、 何かの金属のように思えた。 「橋というより只の鉄板だねえ、 手摺もないよ。ツルツルしているし 気をつけないと滑って落ちちゃうよ」 私がそう言うと、みんなが無言になった。 「我々が真ん中くらいに行った時、 この鉄板が焼けるんじゃないだろうな」 中田先生が暗い声で嫌な事を口にした。 「そうですね、その可能性があります。 木や石ではなく、 わざわざ鉄板ですからねえ・・・」 犬山さんがまるで他人事のように言う。 恩他の事だから、我々を鉄板焼にする 可能性は十分ある。そうだ・・・ この橋を使わずに向こう側に渡る方法が 一つだけある。私は思わずママを見た。 ママと私の視線が合う。 「ダメなのよ、ワープ出来ないの。 バリヤーが張られているわ」 ママがそう言って悔しそうに唇を噛んだ。 ママは私の考えている事が分かるから 話が早い。でも、そう言う事なら、 やはりこの橋を渡るしかないのか・・・ 「行くしかないでしょうね。 でも、恩他は目的があって私達を 呼び寄せたんですから、 鉄板を焼いて我々を奈落に落としたりは しないんじゃないかしら」 涼子さんがわざと明るい声で言う。 私は心の中で思う。 涼子さん、それは甘い。恩他にとって、 我々が焼けた鉄板の上で悲鳴をあげながら 飛び跳ねる姿を見るのは、 快楽以外の何物でも無いんだよ。 全くと言っていいほど説得力の無い 涼子さんの発言だが、 行くしかないと言うのだけは当たっている。 「考えていても時間の無駄よ、 行きましょう、行くしか無いのよ」 ママの決意のこもった言葉に、 私を含めた全員が頷いた。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.25. (00:08) 猫 /
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チョイト味見 お八つに生クリームをホイップしてカステラに添えた。カステラが甘いからクリームは砂糖無し。ナナがやって来たのでクリームを指につけてやったらペロッと舐めて「もっとくれ」という顔。結局私のクリームは全部ナナの口へ。他の猫達はボールに残ったクリームを取り合いしていた。これがいつもの風景、のどかだなあ〜 (バックナンバーは「続きを読む」の中)沈鬱な空気が我々四人の間に立ち込めた。 やめろと喚いたところで、 恩他は絶対やめないだろう。 むしろ我々の苦しんでいる姿を 想像させて喜ばせるだけだ。 どうしようかと考えている時、 私の横にすっと涼子さんが立った。 「ちょっと、あんた!声だけで私達を 恐がらせようと思っても無駄よっ。 やるなら私達を中に入れて、 目の前で正々堂々とやんなさいよ。 この意気地無しの卑怯者、サタンが聞いて あきれるわ」 そうだ、涼子さんの言う通りだ。 私も何か言ってやろうとした時、 犬山さんに先を越された。 「俺の彼女の声をちょっと間違えたな、 リリーはそんな声では無い! 恩他、お前は一人で 何人もの声を演じているのか? お前の惨めさにこそ泣けて来るよ」 犬山さんが大きな声で叫ぶように言った。 さすが元クレーマーの犬山さんだ。 声に物凄い威圧感がある。 「何、声色を使っているだと? どうりで良太の声と ちょっと違うと思ったよ。 恩他、お前はきっと病気なんだ、 私が診察してあげようじゃないか。 もちろん薬も出してやるよ、 バカに効く特効薬をね」 中田先生は恩他を病気にしてしまった。 犬山さんや中田先生の言う通り、 おそらく恩他の手元には、 良太君も恵子ちゃんも、 リリーさんもいないんだ。 言われてみれば、それぞれの声が 何か変だった。 でも、英二は・・・ 一瞬私はママの顔を見た。 ママは凛とした顔で城を見ている。 恩他が英二に一寸刻みのリンチを加えたのは 多分事実だろう。ママもきっとその事を 知っているに違いない。 ママが口を開いた。 「今すぐ我々を中に入れなさい、 あんたの話をとことん 聞いてあげようじゃないの。 あんたは神の真理を知ったんでしょ? すごいじゃない、是非聞かせて頂戴」 ママの言葉には私達と違って、 胸に響く温かさがあった。 これは、かたくなな人間を落とす時に使う、 アメとムチ戦法だ。 先に我々が罵倒し尽して怒らせておき、 その後で優しい言葉を掛けたら、 恩他の態度が変わるはず。と思ったその時、 ドーンと言う地響きと共に、 私達の目の前にいきなり 横幅が二メートルくらいある橋が出現した。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.24. (00:14) 猫 /
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フンッ何んだい僕ばっかり チャオを追いかけ回し、トウに噛み付いた揚句冷蔵庫と食器棚の間に挟まって出られなくなったシマジロウ。こんなおバカ、挟まったまま放っておきたいくらい腹が立ったがそう言う訳にもいかず、渋々救出。速攻小屋に放り込んで湯たんぽ抱かせて寝かせてやった。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)城を中心として約半径二百メートルの所に、 幅十メートルほどの溝が ぐるりと円を描いている。 最初は、てっきり溝の縁まで 真っ黒な墨汁が 満たされているのだと思ったが、 剣の先でかき回しても 何の手ごたえも無かった。 私達の行く手を阻む最初の難関、 それは底知れぬ深い漆黒の奈落。 どうすればいい・・・ 四人の口から溜息が漏れた。 「ようこそ我が城へ」 聞き覚えのある声が何処からか いきなり聞こえて来た。 恩他だ・・・ 四人は背中合わせになり一斉に剣を構える。 「何処だっ、出て来い!」私は叫んだ。 恩他は、ククククッと声を殺しながら笑い、 「せっかくそちらから来てくれたんだから、 私の家まで来てもらおうじゃないか。 ねえ、来てくれるだろう豊君。 お父さんとお母さんが首を長ーくして 君が助けに来てくれるのを待っているよ」 やはり恩他は父と母をさらったんだ。 私の頭に母が熱湯に溶かされ、全身ドロドロに 溶けている姿が蘇る。 「この卑怯者め、襲撃されるのが恐くて 一生懸命深い溝を掘ったんだろうが、 もしお前が本当にサタンなら、こんな 小細工をする必要はなかろう。 お前は我々が恐いんだ、この深い溝は お前の恐怖の心の現われだ」 中田先生が大声で恩他を罵ると、 同時に犬山さんと涼子さんが、 「そうだ、この卑怯者! 私達にそこに行かれるのが そんなに恐いのか」と喚いた。 「先生!おいら捕まっちゃったよおー」 いきなり良太君の声が聞こえた。 「ママー、たしゅけてっ」恵子ちゃんだ。 「猛さん、私もうダメ・・・」 くっ、リリーさんまで・・・・ たちまち涼子さんと犬山さん中田先生の 顔色が変わり、三人の間に 動揺が走り回った。 恵子ーっ!と涼子さんが城に向かって 叫び、 「恩他の馬鹿野郎、 恵子に指一本でも触れたら お前を八つ裂きにしてやるからな!」 涼子さんの顔は怒りの為に蒼ざめ、 般若の面のようになっている。 中田先生の握り締めた甲冑に覆われた手が ブルブルと震えているのが分かる。 犬山さんは無言のまま、 じっと城の方を見つめているが、 その心はリリーさんの為に 断腸の思いに苦しんでいるに違いない。 噛みしめた唇から血が滲んでいる。 「大きい態度が出来るのも今のうちさ、 お前達が早く来ないと、この哀れな 子羊達を一寸刻みの刑に処す。 まず最初は、英二君にこの苦痛を 味わって頂こう」 英二という名前にママがピクリと反応した。 次の瞬間到底人の物とは思えないような 恐ろしい悲鳴が聞こえ始めた。 おそらく英二は体の何処かの部分から 少しずつ切り取られているのだろう。 耳を覆いたくなるような断末魔の叫びに、 子供の泣き声と女性の悲鳴が混じり始めた。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.23. (00:10) 猫 /
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チャオ 携帯を触っていたら膝の上にチャオが来た。この子の安住の場所は私の膝の上だけだ。チャオは数年前から他の猫達に苛められている。何故苛められるのか分からないが、時々追いかけられて引っかかれたり噛まれたりするのだ。もちろん目の前でやったら怒りもするし止めもするが、目を離した隙にやれたらどうしてやることも出来ない。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)「ねえ、あれを見て」 私の言葉にみんなが一斉に遠くに聳え立っている 不気味な城を見た。 真っ暗な闇の中、天空の何処を探しても、 月もなく星も瞬いていない。 光るものが何も無いはずなのに、 その城の全景が鈍い鉛色に くっきりと浮き上がっている。 外部からの光を反射しているのではなく、 城が自ら光っているのだ。 「嫌な城だな、いや、城と言うより ありゃどう見ても牢獄だね、 窓やテラスが一つも無いよ。 のっぺりとした太い大小の煙突が、 くっついただけじゃないか。 恩他の趣味の悪さが現れているね」 私がそう言うと中田先生が、 、 「窓やテラスが無いのは、 誰にも覗かれたくないからだろうな。 あんな大きな城の中に恩他は一人で 住んでいるのか、 何て孤独な男なんだ・・・哀れに思うよ」 深い溜息をつきながら言った。 「あんな奴に同情してやる必要ないよ。 あれはあいつの趣味なんだ。 あの城の中で和美さんや英二を 散々拷問にかけて喜んでるんだ」 私は英二の名前を出した後、 そっとママの顔を窺った。 「そうね、恩他はきっと 自分の孤独を癒す為に、 哀れな亡者達を沢山集めて 奴隷にしてるでしょうよ」 ママは英二を亡者達と言い切った。 もう英二の事など、 何とも思っちゃいないんだと分かって、 私は内心ホッとした。 「誰にも相手にされないのは、 とても辛い事なんですよ。 私は恩他の寂しい心が分かるような 気がします」 犬山さんがつぶやくように言った。 どうやら恩他と生前の自分を重ねているようだ。 でも、犬山さんは間違っている。 恩他は絶対にそんな殊勝な心など 持ち合わせてはいない。あの城は、 自分がどんなに恐ろしい悪魔かと言う事を 我々に見せ付けるべしで造ったのだ。 「先生も犬山さんも、恩他を甘く見たら えらい目に遭うよ。 あいつは生きている人間には 違いないだろうけど、 自分を魔王だと名乗るだけあって、 残虐な事を平気でしでかす男だ」 犬山さんも中田先生も考えが甘すぎる。 思わず私の声が大きくなる。 涼子さんが私の腕を軽く叩いた。 「まあまあ、豊さん冷静になって。 恐い怖いと言っても恩他は所詮人間よ。 犬山さんや中田先生の仰る通りだと私も思う。 でもあいつの怒りは只の逆恨み、 自分を孤独に追いやった人間に、 復讐しようとしているだけなのよ」 でも・・・と言い掛けて私はやめた。 涼子さんの言う通りかも知れない、 恩他は只の人間だ、 もちろん魔王サタンなんかじゃない。 「とりあえず、あの城に向かいましょう。 恩他に会わない事には話しにならないわ。 でも、豊の言う通り覚悟が必要なのは確かよ。 何が出てくるか分からないわ、 注意するに越した事がないわね」 ママが声を潜め、静かに腕を振り出発を促した。 私達は一丸となって、城へと向かう。 遠くに見えてはいたが、 進む道を邪魔するものは無く、意外と早く 城の敷地内に進入する事が出来た。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.22. (00:17) 猫 /
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チャーの目がとろ〜ん 湯たんぽの上に顎を乗せて半分寝かかっているチャー。 チャーはサクランボ色のお鼻にキャラメル色の毛。温かい牛乳をたっぷり飲んでホカホカの湯たんぽ、今夜もぐっすりおやすみなさい。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)気がつくと私は深い闇の中にいた。 ヒューヒューと風が泣く音が聞こえる。 ここは何処だろうと思いながらも、 体を動かす気になれず、 私はただ闇の中に横たわっていた。 「豊・・・」 誰かが私を呼んでいる。 「豊、しっかりするのよ目を開けて」 ピシピシと頬を叩かれ、その痛みに だんだん意識がはっきりしてくる。 辺りが闇なのは、目を閉じているからだ。 目を開けたとたん甲冑を着けた ママの顔が飛び込んできた。 「気がついたのね」と優しくママが言う。 「ママ・・・ここは何処、 僕は何をしているの?」 「豊、しっかりしろ。我々は恩他に 呼び寄せられたんだ。ここは奴の巣だ」 中田先生だ・・・ 側に犬山さんと涼子さんがいる。 飛ばされたのは私だけじゃない、 みんなも一緒だと思うと力強く嬉しかった。 私は上体を起こし辺りを見回したが、 リリーさんと良太君、 恵子ちゃんがいない事に気がついた。 「ねえ、良太君達は一緒じゃないの?」 不安気な私の顔を見つめて、 ママはゆっくりと首を横に振る。 「ごめんなさい。 あの時は目がグルグル回っちゃって、 どうする事も出来なかったのよ。 でも・・・リリーさんが 良太君と恵子ちゃんを抱いて、 カウンターの奥へ逃げ込んだのを見たわ」 ママが申し訳無さそうに涼子さんを見ると、 涼子さんは首を横に振り、 「子供達はきっと無事です。 ここに来ていないと言う事は リリーさんが二人を連れて あの部屋に逃げ込んでくれたからですよ」 「あぁ、絶対大丈夫だ。 ママが見たのは確かだと思うよ、 ああ見えてもリリーさんはなかなか 責任感があってしっかりした人だ。 そうだろう?犬山さん」 中田先生に聞かれて犬山さんは、 「そうです、彼女は絶対子供達を守ります」 と言って大きく頷いた。 涼子さんはみんなの手前平気そうにしているが、 本当は恵子ちゃんの事が心配でならないはずだ。 でも、こうなった以上私達は、 恩他を倒す事のみ考えなくてはならない。 頼む、無事でいてくれ、と心に念じ、 私は立ち上がった。 背の低い雑草が生い茂る原野に 私達四人は立って居た。 吹く風に迫り来る大嵐を感じていた時、 中田先生の肩ごしに、 巨大な城が聳え立っているのが見えた。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.21. (00:26) 猫 /
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またまたフク登場 コタツの天板を取ったとたんにフクがジャンプしてスノコの穴にズボッ!プッ、たこ焼きみたい(笑)毎日これの繰り返し、よく飽きないもんだ。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)それじゃ私の場合はどうなんだろう・・・ 私の大切な者達はすべて昭日町に来ていて、 私だけがまだあっちの世界に居る。 私だってみんなの居るこっちの世界に来たい。 「ダメよ、豊のそういう気持ちが 恩他のような歪んだ魂を呼び寄せるのよ」 ママが私の心を読み厳しい声で言った。 私が恩他を呼んだ? 恩他が来たのは私のせいなのか・・・ たちまち胸の中に、 ムクムクと暗雲が頭をもたげ始める。 恩他が初めてママの店に来た時の事を思い出す。 本性を現した恩他が中田先生にしつこく絡み、 ママの呪文で消されたのだが、 その時恩他は、 「何度でも来るからな、 もう道が出来ているんだよ」 と確かにそう言った。 道が出来ている・・・ そうだったんだ、私が造った道を辿って 恩他はこの世界にやって来たんだ。 中田先生の名前や過去を知っていたのは、 私の記憶からデータを盗んだんだ。 ここに居るみんなのデータも あいつは私から盗んでいる。 くそっ、騒動の元はこの私なんだ・・・ 私の全身から力が抜けて行く。 私さえこっちの世界に固執しなければ、 みんな幸せだったんだ。 リリーさんの私を見る目が 冷たいのは当然だ。 私のせいで犬山さんが 危険に晒されるんだもの。 「豊自分を責めちゃダメよ、私達はあんたを 迷惑だなんて思った事が無いわ・・・」 ママの慰めの言葉が何だか遠くに聞こえる。 「迷惑だなんて・・・迷惑だって・・・」 えっ?何だって・・・よく聞こえないよ。 「迷惑なんだよ、お前がここに居るって事がさ。 この店から出て行きな、 ここはお前の来る所ではないわ」 ママ・・・?いや、ママじゃない。 このしわがれた声は、 恩他か! その時私を中心にして竜巻が起こり、 周りの景色と一緒に、ママや中田先生、 犬山さんリリーさん、 涼子さんに恵子ちゃん良太君が 物凄いスピードをあげて私の周りを グルグルと回り始めた。 豊ぁ、豊さん、にいしゃーん! ママ達が口々に私を呼ぶ声を最期に聞いて、 私の意識は完全に途絶えた。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.20. (00:09) 猫 /
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フク フクはいつも私と一緒に寝る。私は夜寝る前に必ずパソコンを開くので、フクは布団の上でジイ〜ッと恨めしそうに終わるのを待っている。 12時過ぎた頃パソコンを閉じ、布団に入るとフクが待ってましたとばかりにやって来て布団に潜り込む。そして私の左腕を手枕にして、安心したかのようにゴロゴロ喉を鳴らしながら眠るのだ。 (バックナンバーは「続きを読む」の中)何処の世界にも通じていない空っぽの 箱の前に立ち、正直私達は今からどう 動けば良いのか分からなかった。 「こっちから出向くのがいいのか、 それとも奴が来るのを待つか・・・」 フームと唸って中田先生が考え込む。 涼子さんは心配そうな声で、 「私達は戦う準備が出来ていますから、 今すぐ外に出るなり、 このまま恩他が来るのを 待つなりすればいいと思います。 だけど、子供達は・・・」 と言ってから恵子ちゃんをそっと引き寄せた。 そうだ、もう何処にも隠れる場所が無い。 いったいどうすればいいんだ。 窮地に立たされたような気持ちでママを見ると、 ママは首を少し傾げ、 「あのね、私達はもう死んでいるのよ。 こうして存在はしているけど、 恩他や豊とは別の次元で生きているの。 だから自分自身の気持ちさえしっかりしていたら、 恩他の言いなりになんかならない。 犬山さんもリリーさんも、 中田先生も涼子さんも、 恩他に、前の人生をやり直させてやろうかと 言われたけど、断ったでしょ。 それが自分の気持ちが しっかりしているって事なのよ。 だから、恵子ちゃんも良太君も、 そういう強い気持ちを持っていたら、 恩他に手出しは出来ないはずよ」 ママはそう言ってから 恵子ちゃんの前にしゃがみ込み、 「ねえ、恵子ちゃんは もういっぺん生き返りたいと思う? どこかのおじちゃんが、 お母さんと一緒に 生き返らせてあげるって言ったら、 そうしてくださいって頼むかな?」と聞いた。 恵子ちゃんは、目をパッチリと見開いて、 「良太君もいっちょなの?」と聞いた。 ママは静かに首を横に振り、 「いいえ、良太君と恵子ちゃんの 住んでいた世界が違うから、 一緒には行けないわね」とキッパリ言い切った。 たちまち恵子ちゃんは顔をしかめ、 首を振ってイヤイヤをする。 「恵子はもう今のままでいいでしゅ。 良太君とバイバイしゅるの絶対嫌よ」 そう言ってから恵子ちゃんは良太君の顔を見て 恥ずかしそうに下を向いた。 「おいらも恵子と一緒がいいな。だから そんな変なオッサンが何を言っても平気さ」 良太君は照れ臭そうに笑いながら人差し指で 鼻の下を擦っている。 そんな二人を見て、 ママは満足そうな笑みを浮かべ、 「そうだよね、恵子ちゃんも良太君も こっちの世界でずっと一緒にいたいよね、 その気持ちを忘れないで」と言った。 「そうか、私らはもう前の人生に 何の未練も無いから 恩他は手出しが出来ないんだ」 犬山さんがそう言うと、リリーさんが 嬉しい・・・とつぶやいて、 犬山さんの腕に手を回し頬ずりをした。 ゴホンッと中田先生が空咳をしたとたん、 犬山さんが照れて何故か頭をペコリと下げた。 犬山さんとリリーさん、良太君に恵子ちゃん、 みんなそれぞれに大切な人がこの世界にいるから、 恩他の悪の囁きなど聞く耳を持たない。 だから、逃げ隠れしなくても大丈夫なのだ。 涼子さんも安心したのか、もう何も言わないで 只黙って恵子ちゃんと良太君を見つめている。 〜つづく 別荘・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.19. (00:30) 猫 /
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眠たいよ〜 湯たんぽも出来上がり、牛乳タイムも終わった。さて、みなさん小屋に入って眠りましょうと言う時、フラフラとシュウが私の側にやって来た。お休み前のダッコをして欲しいのだ。でもシュウよ、半分寝ちゃってるじゃないの、ダッコされたまま寝たいってのはダメよ。とか何とか言いながら私の腕の中で完全にお眠りになったので小屋の中へ。みんなお休み・・・また明日・・・ね ・・・お知らせ・・・「ママの店16後編」 をHPにUPしました。 近日中に「ママの店17」をHPにUPする予定です。 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57中田先生と涼子さんが甲冑を装備しているので、 私やママも着替えることにした。 「豊、腰大丈夫?何ならリリーさん達と 一緒にいてくれてもいいのよ」 ママが心配そうに聞くので、 私は椅子からそおっと立ってみた。 多少痛みはあるものの、さっきよりは ずっと楽になっている。 このぶんだと完全に痛みが消えるのも 時間の問題だ。 「大丈夫みたいだよ、着替えているうちに 直りそうだ。それに僕がいないと 恩他は出て来ないと思うんだ」 恩他は私を仲間にしたい為に 親を人質に取った。 一刻も早く助け出したいのなら、 箱に入って姿眩まししている場合ではない。 それでも腰が立たない状態では、 ママ達の足手まといになってしまう。 「さあ、それじゃ犬山さんもこちらに来てもらって これからの事を相談しましょう」 着替え終わったママがそう言うと、 リリーさんがいそいそと 犬山さんを呼びに出て行った。 「ねえ、おいら達はもう箱ん中に入っていいかい?」 そうだ、良太君達のことを忘れていた。 「あぁ、そうだったわね忘れていたわ」 その時リリーさんと一緒に犬山さんが 戻って来たので、中田先生と犬山さんが、 例の古めかしい鉄の箱の側に行き、蓋を開けた。 中には赤いフカフカのビロードが敷き詰めてある。 わぉっ!良太君が叫んで最初に入り、 その後にリリーさんと恵子ちゃんが続いた。 箱の蓋を閉める前に恵子ちゃんが 「せんちょうが終わったら、あしょぼうね」 と涼子さんに言った。 「うん、遊ぼうね。終わったらそっちに行くから 待っていてね」 涼子さんは恵子ちゃんの手を握り、 「それじゃ、リリーさん良太君、 恵子をよろしくお願いします」と言った。 中田先生と犬山さんの手で箱の蓋は閉じられ、 私達は円陣を組んで地べたに座り、 作戦を練る事にした。 「さて、それじゃこれからどうするかだわね。 恩他をこっちへ呼び寄せるか、 我々が恩他のいる所へ行くかだ」 ママがそう言ったとたん、 箱を内側からドンドン叩いている音が聞こえ、 良太君が中で何か叫んでいる。 何事かと驚き、みんなで箱の側に行って 先生と私、犬山さんも一緒に 一気に蓋を開けると、中はまだ 赤いビロードが敷き詰めてあるだけで、 秘密の部屋には通じていなかった。 「この前は蓋が閉まってすぐに 部屋に入れたんですが、 今日はいくら待っても真っ暗なままで」 リリーさんが今にも泣きそうな顔の恵子ちゃんを 前に抱きながら怪訝な顔をしている。 「真っ暗になったもんだから、 もう恵子が怯えて大変だったよ。 どうなってんだ、この箱」 良太君がプンプン怒っている。 「つまり魔法の箱が 普通の箱になってしまったって事だな」 中田先生がうーむと唸って考え込んだ。 「いったいどういう事なんでしょう、 ひょっとしたら恩他が何かしたのでは」 涼子さんも心配そうにママを見た。 「とりあえず、あなた達早く箱から出て頂戴」 とママが言い、リリーさんは恵子ちゃんを 涼子さんに渡し、良太君の後から外に出て来た。 空っぽになった箱を眺めながら、 私はふと、さっき両親の店の前で ママと話した事を思い出した。 私達が今いる世界は恩他の造った世界と 入れ替わっている可能性がある。 恩他はここを元の世界とそっくりそのままの 世界に造ったはずなんだろうが、 この鉄の箱の秘密までは 気がつかなかったんじゃなかろうか。 〜つづく ・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.18. (00:04) 猫 /
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くたびれたニャン カスガは我が家の猫達の中で唯一肉親が無い。一昨年まではゴンという仲間がいたが、病気で亡くなった為本当に一人ぼっちになってしまった。仲があまり良くないとはいえ、そこはやはり親子兄妹何んぞ事があればすぐに結託する。カスガは年の近いカリンやトウに仲良くしてもらおうと必死だった。カリントウがナナ(母)を苛める時は何の関係もないのに一緒になって苛めていた。各々分量が決められている食事もカリントウに分け与え、自分は残ったご飯だけを食べていた。だからカスガは我が家で一番痩せていた。それが去年頃からいきなり自己主張をしだしたのだ。一昨年ゴンが亡くなった後、カスガは卵巣膿腫の手術をした。死線を彷徨い生還した後カスガの心の中で何かが変わったらしい。それからは食べたい物を好きなだけ食べ、カリントウにも媚を売らず、一人で行動出来るようになったのだ。七歳にしてようやく自分らしく生きれるようになったカスガ・・・良かったね、お母さんは嬉しいよ。 ・・・お知らせ・・・「ママの店16後編」 をHPにUPしました。 近日中に「ママの店17」をHPにUPする予定です。 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56カウンターの裏に回り、 古めかしい鉄のドアを開けると 中で中田先生、涼子さん、リリーさん、 良太君に恵子ちゃんが 椅子に座って待っており、 先生と涼子さんだけが甲冑を着けていた。 私がママに抱えられるようにして 入ってきたので、みんな驚いたようだ。 「豊、どうしたんだ」中田先生が 開口一番に声を掛けて来た。 私が何か言う前にママが、 転んだのよと言ってくれたので、 私も笑って頷いた。 涼子さんが椅子を持って来て、 ママと一緒に私の両脇を支えて、 その椅子に座らせてくれた。 腰を下ろした瞬間ピリッと痛みが走る。 「転んだだって?何でまた・・・」 先生が怪訝そうに聞いたが、 打った尻が痛いのもあって、 説明するのが正直面倒くさかった。 「ドアを開けたら犬山さんがいて、 私達を恩他だと思って威嚇したのよ。 それで豊がひっくり返ったって訳」 ママが私の代わりに説明してくれた。 「それで、猛さんに怪我は ありませんでしたか?」 リリーさんが心配そうに眉を潜める。 犬山さんに怪我だって? あり得ないよ、何言ってんだ。 リリーさんは犬山さんさえ無事だったら それでいいんだ。 たちまち気分が悪くなる。 「そんなの、ぜんぜん何ともないよ、 犬山さんは甲冑を着て 剣まで持ってるんだ。 ドアを開けた瞬間、 いきなりビュンッて剣が 目の前に振り下ろされたら、 誰だってビックリするよ。 飛びのいたとたん尻餅さ」 私がちょっと恨めしそうに言うと、 中田先生がプッと吹き出した。 「笑い事じゃないよ、痛いんだからね」 私が睨みつけると、先生は ごめんごめんと顔の前で手を振りながら まだ笑っている。 「ところで、その椅子よくあったわね」 私の怒りの為にその場の空気が 悪くなるのを感じて、 ママが話題を変えようと、 涼子さんに話しかけた。 「地べたに座るのも何ですから、 あちこち探し回ってやっと見つけました。 でも、この部屋は不思議ですね、 探せば何でも見つかるんですもの」 涼子さんは嬉しそうだ。 椅子は座る部分が、丸くふっくらとした 臙脂色の皮張りで、長い背もたれと足は 黒い色を塗った木で出来ている。 足が細く湾曲しているのを見て、 「ねえ、こういう足のこと 猫足って言うんだよね」とママに聞くと、 良く知ってるわね、と言って笑った。 〜つづく ・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.17. (00:25) 猫 /
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チャコ 携帯を新しいのに替えた。カメラ機能が前のよりいいと説明を受けたが、シャッタースピードがとても遅く、なかなかいい写真が撮れない。 チャコくらいしかじっとしてくれる猫がおらず、今日はチャコの写真ばかり撮りまくった。よく見ればチャコは美人だ・・・なんて、親バカかな? ・・・お知らせ・・・「ママの店16後編」 をHPにUPしました。 近日中に「ママの店17」をHPにUPする予定です。 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55ママの店に着いた。 ひょっとしたらこのドアが、 店の中ではなく、異世界に通じている 恐れがあるので、私は飾りガラスから 用心深く中を覗き込んだ。 「どう、何かおかしな所がある?」 ママが耳元で囁く。 カウンターにも周りのソファーにも人影が無い。 「中は別に変わった所は無さそうなんだけど、 誰も居ないみたいだねえ、 みんな奥の部屋で 僕達を待っているのかな」 私がそう言うと、ママは、 「とにかくこうしていてもしょうがないから 中に入りましょう」と言って、 ドアの取っ手に手を掛けた。 カラ〜ンコロ〜ンと、 鳴らなくてもいいのに チャイムが店内に鳴り響く。 中で何があるか分からない時に、 このチャイムの音は とても不安を醸し出す。 今から入りますよと 敵に知らせるようなものだ。 ふと嫌な予感がした。 先に入ろうとするママを手で制して、 私が足を一歩中に踏み入れたその瞬間、 ブンッと音がして鋭い閃光が走り、 目の前の空気が断ち切られた。 うわっ、と短い叫び声を上げ 後ろに飛び退いた私は、 勢いあまって尻餅をついてしまった。 「あっ、すんません豊さんでしたか」 頭の上から犬山さんの申し訳なさそうな 声が聞こえて来た。 見れば犬山さんは すでに甲冑の装備をしており、 青銅の剣を握り締めている。 犬山さんだと分かったとたんに、 私の尻に激痛が走った。 地面にしこたま 尻を打ち付けてしまったのだ。 うぅっ・・・と唸ったまま言葉が出ない。 慌てた犬山さんが、申し訳ありませんを 何度も繰り返しながら私を抱きかかえ、 店の中に連れて入り、 奥のソファーに横にならせてくれた。 「豊、大丈夫?」 ママが心配そうに私の顔を覗き込む。 「すみません、ドアの向こうで 人の気配がするものの、 なかなか入って来なかったので、 てっきり恩他だと思いました」 犬山さんが申し訳なさそうにしょんぼりと した顔で言い訳を始めた。 ここで怒っては男がすたる。 店には女性や子供達が残っていたのだから、 犬山さんがしたことは正しい事だ。 私は痛いのを我慢して、無理に笑顔を作り、 「大丈夫だよ、気にしなくていいからね」 と言ってあげた。 犬山さんは嬉しそうな顔をして、 もう一度すみませんと言って頭を下げる。 「ところで、みんなはもう着替えたの?」 とママが聞くと、犬山さんは、 「用意万端整えて、奥で待っております」 と言って頷いた。 豊、歩ける?とママが心配そうに聞いて来る。 そろそろとソファーから降りて、 足を床につけてみたら 多少痛みは残っているものの、 歩けないほどでは無かったので、 犬山さんにまた見張りをお願いして、 私はママに肩を貸してもらいながら 奥の部屋に入って行った。 〜つづく ・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.16. (00:42) 猫 /
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ちょうだい・・・ ブチ君が何か欲しい時はいつもこんな顔になる。 「それ何?僕にもちょうだい」そういう目だ。でも我が家では、台所では猫達に絶対食べ物をあげないことにしている。そういう癖をつけたら、調理している時に側に来て危ないからだ。もらえないのが分かっていても隅っこでじっと待っているブチ。 ・・・お知らせ・・・「ママの店16後編」 をHPにUPしました。 近日中に「ママの店17」をHPにUPする予定です。 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54夢を操る?怪訝そうな顔の私を見て、 ママが説明し始める。 「あのね、うまく説明出来ないんだけど、 夢を見ている自覚さえあれば、 何でも出来るって事分かるかな? もちろんこの昭日町は 実際に存在している世界なんだけど、 恩他がここにやって来るという事は 恩他の夢とここが繋がっているの。 だから、恩他は自分の夢の中で オリジナルの昭日町を造って、 そこに私達を閉じ込めたのかも知れない。 もしそうだったら大変な事になるわ。 この世界は恩他の思うがままよ」 そういう事か・・・だから 私や犬山さん達の居る場所が ママに分からなかったんだ。 ここは恩他の夢の中なんだ。 じゃあ、父さんと母さんは何処に・・・ 「ねえ、じゃあ僕の親達は 本当の昭日町に居て 無事って事なんじゃない?」 ママはちょっと首を傾げ、 ごめんなさい分からないわと言って 残念そうに首を振った。 そうか・・・とうなだれる私に、 ママは慰めるような口調で、 「でもね、ご両親が直接恩他と 係わっていなかったとしたら、 多分無事だと思う。 さっき豊が見たお母さんは、 恩他が見せた映像かも知れないからね」 あれは恩他が見せた映像・・・ 私は多分そうだろうと思った。 父も母もきっと無事だ。 私は恩他に両親の店を教えていない。 だからあいつは 私の両親に会う事が出来ないはずなのだ。 「とりあえず店に戻りましょう。 みんなとこれからどうすればいいか 考えなくちゃ」 ママに促され、私は工事中の看板が掛かった 白いカバーをもう一度見て、 絶対大丈夫だ、と心に念じて背を向けた。 来た時と同じ道を戻る。 風景はいつもと変わらないのだが、 立ち並ぶ店は何処も閉店しており、 明かりも消えていた。 いつもなら、 派手なクラクションを鳴らしながら、 カラフルな車が何台か シャボン玉を排気口から吐き出して 通り過ぎて行くのだが、 さっきから一台も通らない。 音の無い暗い道をママと二人、 無言のまま早足で店に向かった。 〜つづく ・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.15. (00:10) 猫 /
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もう春だね ポカポカと暖かいリビングでシュウがお昼寝している。南向きのリビングの温度は26度、とても二月の中頃とは思えない暖かさだ。私ら人間には暑すぎて気分が悪くなってしまう。 ・・・お知らせ・・・ 近日中に「ママの店16-3」「ママの店17」をHPにUPする予定です。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53「やられたわね・・・」 ママがつぶやいた。 「やられたって、どういう事、 僕の親達は何処に行ったの?」 私は必死だった。 何とかして父と母を助けたい。 ママを問い詰めても、 仕方が無いって事はよく分かっている。 でも、頼るのはママしかいない。 「落ち着いて、大丈夫よ。 恩他は必ず連絡してくるわ。 あんたが恩他の言う事を聞けば、 お父さんとお母さんを返すって事だわね。 だから交渉が成立するまでは、 ご両親は無事よ」 ママは慰めるような目で私を見た。 でも私は知っている。 恩他は冷酷な悪魔だ。 人が苦しむ姿を見るのが快感なんだ。 一刻も早く父と母を助け出さないと 大変な事になる。 「何処に連れて行かれたのか分かる?」 「ここと同じような世界が他にも 存在しているって事は前にも話したわね、 お父さんとお母さんはその中の 何処かに移らされたんだろうけど、 私には分からないのよ。多分何か 特殊なバリアーが張られているんだわ」 ママが残念そうに唇を噛んだ。 こうしている間にも恩他が 和美さん達にしたような酷い事を 父と母にしているのではないかと、 私は不安でたまらなかった。 「恩他は僕が絶対言いなりにならないと もう分かってるんだ、だからその腹いせに 僕の両親を連れ去ったんだ」 心配のあまりに心が乱れ、 私は大声で叫んでいた。 しかしママは唇をキュッと引き結び、 首を横に振る。 「恩他はあんたを絶対にあきらめない。 あんたがあいつを神様だと信じたら、 今の体を捨ててあんたの体に のり移る事が出来ると信じているのよ」 「そんなのおかしいよ、 どうして僕があいつを神様だと信じたら、 あいつが僕の体にのり移れるのさ。 それにあいつはもう誰かの体を 乗っ取ってるじゃないか、 ほらあの熱心な信者、あの人の体を今 恩他は使ってるんでしょ」 私がそう言うとママは、眉間に皺をよせ、 「乗っ取ってなんかいないわ、 あれがあいつの正体なの」 と吐き捨てるように言った。 「どういう事さ、じゃああいつが 元は熱心な信者だったって言う事?」 私の言葉にママは大きく頷き、 そういう事ね、と言った。 「あいつはビジターなんだと 確かママは言ったよね、じゃあ、 まだ生きているって事じゃない、 どうして生きている奴が 姿を現わせたり消えたり、 ママ達や僕の嫌な過去を 再現したりすることが出来るの?」 和美さんや英二を操り、 母をあんな酷い目に遭わせた恩他が、 私にはどうしても生きている人間には 思えなかった。 「生きているからこそ出来るの。 あいつは、恩他は夢を自在に 操つる術(すべ)を知ったのよ」 ママの声はとても落ち着いていたが、 凄まじい怒気を含んでいるのが分かった。。 〜つづく ・・・・お知らせ・・・・
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2007.02.14. (00:49) 猫 /
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チャコ ナナに見捨てられた子猫達を引き取って擬似ママになったチャコ。胸部広範囲の大手術をした傷も癒え、今日も怒涛のごとくの勢いでナナを追い掛け回していた。病気が心配で忘れていたけれど、チャコは元々気が強い。子供を捨てたナナへの仕打ちはエグイものがあるし、擬似ではあるが一応ママであるチャコに、逆らう猫には容赦なく牙と爪をお見舞いするのだ。 ・・・お知らせ・・・ 近日中に「ママの店16-3」「ママの店17」をHPにUPする予定です。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 |