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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

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2007.03

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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 我が家の猫達&ママの店
おやすみ〜


桜の開花は遅れているが、それでも昼間はだいぶ暖かくなってきた。でも、夜はまだ冷えるので湯たんぽをいれてあげる。湯たんぽを猫達の各小屋にセッティングするまでの間、テーブルの上に並べておいたらチャコが寝に来た。あたたか〜い・・・そんな声が聞こえて来るような顔だ。
もうすぐ近くに春がやって来ている。夜の湯たんぽもあと少しでいらなくなるだろう。



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そうか、あんなふうに
いつもなっていたのか・・・
私は自分がワープする瞬間を
今始めて目の当たりにして、
ちょっとした感動を覚えていた。

画面では我々五人が消えた場所に、
リリーさんがフラフラと
夢遊病者のように近づき、
床にペタリと座り込み、
両手で顔を覆ってしまっている。
ワンコがリリーさんの側に行き、
クウンと鳴いて鼻先を
リリーさんの耳辺りに擦り付けても、
リリーさんは動こうとしなかった。
良太君は恵子ちゃんの手をしっかり握り、
二人とも不安そうな顔で、
リリーさんを見つめている。
犬山さんも涼子さんも、断腸の思いで
この場面を見ているのだと思うと、
私は胸が痛み、たまらなかった。
ママを見ると、ママも悔しそうな顔で
唇を噛み、私をチラッと見返して来る。
ママもきっとこの状況に
たまらなくなっているに違いない。

「おっ、良太め。しっかり恵子ちゃんを
 守ってるじゃないか」
中田先生が嬉しそうに言った。
もう、先生ったら・・・
喜んでいる場合じゃないよと言おうとした時、
ワンコがいきなりけたたましく
鳴き始め、恩他が近づいて来るのが見えた。
そうだ、恩他の存在を忘れていた。
我々が箱の周りを取り囲み、
固唾を呑んで見守る中、
恩他は背後から良太君の両肩に手を置いた。
ワンコがグルグルグルと激しく唸り、
今にも飛び掛りそうだ。
はっとした顔で良太君が振り返り、
それが恩他だと分かると、
慌てて手を振りほどき、
恵子ちゃんを背中で隠すようにして
恩他に向き合う格好になった。
顔は見えないが、
おそらく良太君は恩他を
睨みつけているに違いない。
リリーさんが駆け寄り、
恵子ちゃんと良太君を包み込むように抱き、
三人一塊になってじりじりと後ずさりを
始めている。
ワンコの姿勢が極度に低くなった。
今まさに飛び掛らんとする寸前、
恩他は何やら口の中でブツブツと呟き、
ワンコを指差した。
するとワンコは唸るのを止め、
キュウンと一声鳴いてそのまま床に
伏せの形をとった。
「ワンコ!」と良太君が呼んでも、
ワンコは伸ばした前足の上に頭を乗せたまま、
じっとしている。
恩他は目尻を下げてニコニコ笑い、

「何も恐がる事はないよ。
 私は君達に何もしやしないからね」
と言った。

「おい、ワンコに何をした。
 おかしな事をしたら許さないからな」
良太君はグイッと身を乗り出した。

恩他は両手のひらを上に向け、
小首を傾げて肩をすぼめ、

「何もしやしないよ、犬は友達だ。
 ワンコは私に敬意を示しているんだよ。
 だから伏せの形を崩さないんだ」
そう言ってから恩他は胸の前で十字を切り、
両手を合わせた。

「君は神様を信じるかい?」

恩他の言葉に良太君はコクリと頷いた。

「しまった、良太は神を信じているんだ」
中田先生が箱の縁にしがみつくようにして
中を覗き込み、唸るように言った。

「そうか、君はいい子だな、
 実はね、私がその神なんだよ」
恩他の言葉にリリーさんが即座に反応した。

「何が神よ、あんたは只の悪霊じゃない」
犬山さんを連れて行かれたと思っているので
リリーさんの言葉は恐ろしく冷たい。
恩他がサッとリリーさんの前に行く。

「クソッ寄るな・・・」
犬山さんが両手の拳を震わせて唸る。

恩他はリリーさんの顎を摘んで持ち上げ、
「私を侮辱してはいけない」と静かに言った。

「姉ちゃんに触るな!」
良太君が両手を突き出し、恩他を押した。
恩他はべつに怒ったふうでも無さそうで、

「おぉ、君はとても優しい子だね。
 私は君のような子供達の為に、
 存在しているのだよ」
恩他はしゃがみ込み、
良太君の顔を見つめてそう言った。
その顔は、かつて私も騙された事のある、
あの温和で優しい慈愛に満ちた顔だった。

〜つづく

別荘

「ママの店16(前編)」
「ママの店16(中編)」
「ママの店16(後編)」
「ママの店17前」
「ママの店17(中編)」をHPにUPしました。
「怪談奇談」(幽霊屋敷)
連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」話目

ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。

出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」

電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.03.27. (00:02)  / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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