地震が恐いよ〜
最近ちょくちょく地震が起る。小さい揺れなら平気な猫達も、今日(15日)のはちょっとビビるくらい強かった。賢い子はすぐにコタツの中に飛び込んだが、シマジロウは逃げ遅れ、怯えて部屋の隅で固まっていた。私が見つけてダッコしてあげるまでさぞかし不安だったろうな。何せ我が家は15Fの天辺、下界の揺れが収まっていてもまだしばらく揺れ続けるのだ。
82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97気のせいか、恩他が別人に見える。
つい今さっきまではキザで憎たらしい
嫌な男だったのに、今の恩他は
素直で明るい好青年になっている。
いやいや、またこれは
こいつの演技に違いない。
私は今まで何度もこの野郎に
騙されて来た。
恩他、何をするつもりなんだと
言ってやろうとした時、
「豊、先生と良太君を連れて行って」
ママの言葉に中田先生と良太君が
まだそこにいた事に気がついた。
犬山さんも走って来てくれたので、
二人がかりで先生を、
リリーさん達の所まで運んで行く時、
先生にしがみついて不安そうな顔をして
ママと恩他を見ていた良太君が、
「おばちゃん大丈夫だよね」
と私の顔を見て聞いて来た。
「大丈夫さ、ママは強いからね」
と答えたものの、
実は私も不安でたまらない。
ママが一言、豊、助けてと言ったら、
私は何を置いてでも
ママの下に駆けつけるだろう。
「じゃあ、始めましょう。
手加減無しよ、覚悟しなさい」
恩他と対峙したママは
後ろに大きく片足を下げ、
両手を胸の前で合わし、
親指同士をくっつけて丸い型を作った。
するとその丸い穴から
一塊の閃光が生まれ、
恩他目掛けて鋭く飛び出した瞬間、
恩他もママと同じような姿で
手で丸を作り、
同じく閃光の塊を飛ばしていた。
向かい合わせになった二人の
丁度真ん中あたりで激突した光の玉は、
巨大なエネルギーの塊になり
激しく膨張しながら、
火花を弾け散らしている。
ママの後ろに下げた足が少し後退した。
恩他のエネルギーに押されているのだ。
クソッ私に力があれば、あんな野郎・・・
ギリギリと歯軋りをする私の横で、
「大丈夫です、ママさんは負けません」
犬山さんが呟き
両の拳を握り締めている。
「静江さん、頑張って」
涼子さんとリリーさんの祈る中、
恩他とママの息詰まる戦いが続く。
ママと恩他の顔は次第に強張りを増し、
大量のエネルギーを放出する為に
二人の全身は、激しく痙攣を始めている。
今ママは、強烈な恩他の攻撃を
あの細い腕で押し戻そうと
死力を尽くしている。そう思った時、
私の胸が張り裂けそうに膨れ上がり、
堪えても堪えても涙が流れて来る。
でもそれは多分、
ママが負けるかも知れないと言う
心配のあまりに泣いているのでは無くて、
気力の限界を超えた二人の
極限の戦いに感動しているのだ。
ジリジリと、またもやママの足が
後ろに下がる。
このままじゃ押し切られてしまう。
中田先生がクソォッと
絞るような声を上げた。
ふと、みんなの顔を見回すと、
犬山さんやリリーさん、涼子さんや
良太君恵子ちゃんが、
ママと恩他の決闘を
必死の形相で見守っている。
ママ、負けるなっ、
この念いエネルギーに変われ!
苦戦しているママを助けたい。
しかし、これは
ママと恩他にしか出来ない
精神波の戦いだから、
私達にはどうする事も出来ない。
ママの細い腕が
限界に来ているのが分かる。
一方恩他は笑みを浮かべ、
余裕たっぷりの様子だ。
その時、ママの胸の辺りから、
ママの出している光線とは別に、
青く美しい光線が一本
真っ直ぐ伸びて行き、
見る見るうちに中央の
エネルギーの塊の中に命中した。
たちまち恩他の出した精神波が
押し戻されて行く。
あれは何だと思った時、
ママを後ろから抱いている
男がいる事に気がついた。
その姿に見覚えがある、あれは
英二・・・?
私は思わず我が目を疑った。
何とあの英二がママを助けている。
ママも英二に気がついた。
一瞬驚いた顔をしたものの、その顔に
喜びが満ち溢れるのが分かった。
もはや私達の出る幕は無い。
中田先生も眉を八の字に下げてしまい、
口をポカンとだらしなく開けてしまっている。
「クソッ、英二が現れたか、
あの石は砕いておくべきだった」
苦しそうな恩他の顔がそう言っている。
恩他は必死の形相で頑張っていたが、
とうとう真ん中にあった大きな塊が、
鼓膜を破らんばかりの
凄まじい爆音とともに破裂した。
その瞬間辺りが眩しい光に包まれて、
真昼の明るさになり、
後ろに吹っ飛ばされた恩他は、
さっきの中田先生よりも
もっと酷く地面に叩きつけられ、
ピクリとも動かなくなっている。
リリーさんと犬山さん涼子さんは
とっさに子供達を庇って
うずくまっており、
私と中田先生だけが呆然と
その一部始終を見つめていた。
「勝った・・・」
私達は口々に呟き
安堵の胸を撫で下ろしたが、
英二にしっかりと抱かれているママを見て、
私は口の中に、
苦い物が広がるのを感じていた。
〜つづく
別荘「ママの店16(前編)」 「ママの店16(中編)」 「ママの店16(後編)」 「ママの店17前」 「ママの店17(中編)」をHPにUPしました。
「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」9話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.04.16. (00:00)
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