オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
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チャコとカリン カリン達兄妹の育ての母であるチャコの病状が悪化した。四五日前から風邪気味だったのだが、とうとう完全に寝込んでしまい、今日は朝から何も食べない。夜にささ身の焼いたのを二口食べれたので少し様子を見て、明日も元気が無いようなら病院で点滴をしてもらおうと思う。早く元気になってほしい願いはそれだけだ。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17「みんな一緒に一つの石に 入るって事でしょうか」 リリーさんの問いにママは首を横に振り、 「いいえ、一人に一つの石よ、 もちろんワンコもね」と言った。 そしてパンパンと軽く手を叩き、 「じゃあ、そうと決まれば 早く実行しましょう。 みんな三人から離れてちょうだい」 ママの合図で、 私達はリリーさん達から離れた。 「猛さん、私をお願いね」 リリーさんがニッコリ笑って 軽く手を振っている。 「もちろんだ、絶対離さないから 安心しておくれ」 犬山さんの顔が とても名残惜しそうに見える。 「それじゃリリーさんから 始めさせてもらうわね」と言って ママがリリーさんの前に立った。 両手を大きく広げ、いつものあの 何語か分からない呪文を唱え、 振り上げた両手を一気に下ろした時には リリーさんの姿はかき消え、 ママがしているのと同じような ネックレスが床の上に出現していた。 石が翡翠色をしている事を除けば、 ママが首からぶら下げている 英二のネックレスとほとんど同じだ。 「さあ、犬山さんリリーさんを 首に付けてあげて」 ママに促され、 犬山さんは転げるように側に行き、 身をかがめて慎重にネックレスを摘んで 手の上に乗せた。 そして首に巻こうとしたのだが、 甲冑を着ている為 留め金がうまく留められなかったので、 涼子さんに頼んで手伝って貰っている。 その間にママは、 ワンコをネックレスに変えて私に渡し、 やがて良太君のは中田先生、 恵子ちゃんのは涼子さんの首へと、 しっかりと納められた。 「あんたらさっきからごちゃごちゃと 何をしているんだ」 その声に驚き、振り返ると、 檻の中で嘆いていたあの男が、 いつの間にか後ろに立っていた。 檻から出てしまっている・・・ 「あっ、俺何で外に出てるんだ?」 男も気がついたようで、 あたりをキョロキョロ見回して 驚いているようだ。 大変だ、こいつは間もなく自分が 死んだと言う事に気づくだろう。 でも、案外我々の味方に付いてくれて 戦力になるかも知れない。 私は少し期待を抱いたのだが、 中田先生と犬山さんが、 腰にある剣に そっと手を当てるのが見えた。 涼子さんが片足を一歩下げた。 ママも強張った顔で男の行動を 見守っている。 やっぱり、敵に回るって事か・・・ 男は血だらけの包帯が巻かれた 自分の胸を見ながら、 首をしきりに傾けて何か考えている。 「どうしたんだい?」 と思わず私が聞くと、 「豊っ」とママが私に目配せをした。 「相手しちゃダメ、自分が死んだと 悟らせたらダメよ」 頭の中にママの声が飛び込んで来た。 「何だって、俺はもう死んでるのか?」 男がギロリとママを睨む。 えっ、こいつにも聞こえたんだ・・・ 私はとっさにママの前に出た。 「俺は死んだ、俺はもう死んだんだ」 男は自分が死んだ事がよっぽど 嬉しいと見え、ゲラゲラと笑い始めた。 そしていきなり 笑うのを止めたと思ったら、 今度は怒りで顔を引きつらせ、 「復讐してやる。 俺をこんなめに遭わせた奴らに 同じ苦しみを味わわせてやる」 グルルルルと喉の辺りから 不気味な音を立てながら、 とうとう男は狂気の牙を剥いた。 「おまえらも仲間だな、 仲間じゃなかったら、こんな所に いるはずが無い・・・・」 男は憎しみを篭めた鋭い眼光を 我々に向けた。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.31. (00:00) 猫 /
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わずかな温もり 急須にお茶を入れて十分くらいしたら、いつもカリンがやって来る。入れたては熱いと知っているかのようなタイミングだ。外は夏のように暑くても、家の中はちょっぴり冷えるから、こんな小さな温もりが気持ちいいんだろうな。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16犬山さんが走って行き、すぐに リリーさん達を連れて戻って来た。 ママ・・・と言って恵子ちゃんが、 涼子さんにしがみつく。 あなたの側におれさえすればと、 言わんばかりの笑顔で、 リリーさんが犬山さんに 寄り添っている。 そして、平気そうな顔をしてはいるが、 本当は不安なのだろう、 良太君はワンコを両手でしっかりと 抱きしめて黙ったままだ。 子供二人と子犬が一匹、 それに戦えない女性が一人・・・ この三人と一匹を連れて、 果たして何かあった時に 満足に戦えるのだろうか。 いや、戦うどころか 守りきる自信すらない。 私の頭の中に、今まで潜り抜けて来た 修羅場の数々が蘇る。 この世界も相当な地獄になりそうだ。 ママの店でトランプをして バツゲームをやらされ、 ゾンビの群れに襲われた事があった。 あれはママが創った映像だったが、 それでも十分恐ろしかった。 今から我々が出くわすのは 決して映像では無く、 鋭い歯で肉を食い千切り、 血をすすり内臓をむさぼり食らう 本物のゾンビなのだ。 この三人は、足手まといになる・・・ 私の思惑がママに伝わったのか、 ママはじっと私の顔を見つめている。 「いや、あの、僕は 恵子ちゃん達を連れて そのう・・・戦えるかどうか、 いや、足手まといだとは別に 言って無いんだけど」 私はしどろもどろになっていた。 左右から犬山さん涼子さん、 中田先生の冷たい視線が突き刺さる。 「豊の言う通りだわ」 えっ? ママの言葉でホッと救われた。 ママも私と同意見なんだ。 「しかし、ここに 置いて行くのは危険だと ママさんがさっき・・・」 犬山さんが慌てたように言うと、 ママは頷き、 「ええ、だから一緒に 連れて行くのよ。ただし、 私達の首から下げて行くの」 首から?私は犬山さんが リリーさんを布か何かで包み、 首からぶら下げて歩いている姿を 想像して吹きそうになった。 戦うどころか、 そりゃとても歩き難い・・・ 「そうじゃないわ、 誰がそんな格好で歩けなんて 言うもんですか」 うへっ、また心を読まれてしまった。 ママは白い目をして私を見ている。 じゃあ、どうするってんだよと 私が口を尖らすと、 「一時的に三人を 石に封じ込めるのよ」 ママは胸元にある 英二が入っている石を見せた。 「石に入れて首から下げる って事か・・・・」 中田先生が、うーん・・・と唸った。 「リリーさん、恵子ちゃん、 良太君、あなた達を連れては とてもじゃないけど この世界は危険すぎる。 だから、しばらく 眠っていてほしいの」 ママがそう言うと、リリーさんと 恵子ちゃんは素直に頷いたが、 良太君が唇を横に引き結び、 下を見て黙り込んでいる。 「どうした良太、不服か」 中田先生が良太君に聞くと、 良太君は上目遣いに先生を見て、 「いや、しょうがないって事は おいらも良く分かっている。 只、何にも出来ない自分が いや・・だ・・」 良太君は言葉を詰まらせ、 たちまち目から涙が溢れ出た。 抱きしめられたワンコも 不安そうに首を上げ、 良太君を見てクウンと鳴いた。 中田先生は良太君の両肩に手を置き、 「良太、みんなの為に 潔く身を引くのも男だぞ」と言った。 先生に励まされた良太君は、 心の中にあったモヤモヤが 吹っ切れたのか、 キッとした顔で先生を見上げ、 力強くうんと言って頷いた。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.30. (00:58) 小説 文学 /
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チャコ チャコが一日の大半を寝てばかりいる。時折クシャミをして呼吸も荒い。どうやら風邪を引いたらしいので、市場で鰹を買って来て食べさせた。元気の無い時には魚の血合いを食べさすといいそうだ。早く元気になってほしい。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15「先生、これは何の実験なの。 肝臓や腎臓の移植ならまだ分かるけど、 手や足や舌までもぎ取って、 いったい何をしようってんだよ」 私が疑問をそのまま中田先生に向けると、 先生は顔をしかめ、 「知らん・・・」と言って 横を向いてしまった。 「きっと頭がおかしい連中なんですよ。 それ以外に考えられません」 犬山さんがそう言うと、 涼子さんが青い顔をして、 恵子ちゃん達の方を見た。 「静江さん、そんな頭のおかしい人達が 恐ろしい実験をしている所に、 絶対行かないといけないんでしょうか、 子供達もいますし、 あんまり恐ろしいものを 見せたくないんです」 涼子さんの目は真剣だ。 私も涼子さんの言う事は、 もっともだと思う。 生きた人間の内臓を引きずり出している 阿鼻叫喚の現場を 子供に見せられる訳がないし、 ワンコだって血に反応して 暴れ出すかも知れないじゃないか。 「ママ、ここは避けて通れないのかな」 私もママに強く聞いた。 でもママは首を横に振る。 どうやら避けては通れないらしい。 「私達の姿は死んだ人には見えるのよ。 ここは、おそらく生きている人より、 死んだ人の数の方が多いでしょうよ。 吐き気がするわ、あまりにも大量の 血の臭いで」 ママは鼻を押さえ、眉を潜めた。 でも、それでは答えになっていない。 私は涼子さんや犬山さん中田先生と 顔を見合わせた。 みんな、私と同じように、 はっきりとしたママの意見を 知りたがっている。 「死んだ人達が多いのは、 僕も想像がつくよ。 だからさあ、 もうこんな世界出ちゃわない?」 私がそう言うと、ママは おかしな事を言うわねえ、 と言うような顔をして私を見た。 「どうやって出るのよ」 ママがポツリと言った。 「エッ?・・・」 たちまち私の頭が真っ白になる。 「私達は望んでここに来たんじゃないわ。 来さされたのよ、 だから出て行かされるまで、 ここにいなきゃ しょうがないんじゃない?」 ママは冷たくそう言い切った。 「そうですか・・・そうですよね。 私達は自分の意志で ここに来たんじゃない。 来さされたんだ」 犬山さんがそう言うと、 中田先生も涼子さんも暗い目をして 黙り込んでしまった。 あのドアを開けて出て行ったら、 そこに何があるのか 想像しただけでも恐ろしい。 大人の我々ですら、 こんなに恐いと言うのに、果たして 恵子ちゃんや良太君の幼い心は この恐怖に耐える事が出来るだろうか。 それなら、いっそ・・・ 「リリーさん達を ここに残して行くってのは どうかな」 私がそう提案すると、 ママは暗い目で私を見つめ、 「この部屋の中にいくつ檻がある?」 と聞いて来た。 私は全体を見て檻の数を目で数えた。 檻は左右に十個づつ並んでいる。 「二十個かな、それがどうしたの?」 と私は聞いた。 「今連れて行かれた人は一応 生きていたらしいけど、 きっと今頃もう死んでるわね。 この部屋の中には 死んだ人達の怨念が渦を巻いていて、 今にも破裂しそうだわ。 さっきの包帯グルグル巻きを見たでしょ、 あんな酷いめに遭わされて 死んでいった人達ばかりなのよ。 その怨念は強烈よ、 今は自分達が死んでいる事に 気がついていないかも知れないけど、 気がついたとたん復讐の鬼になって、 リリーさん達にその念をぶつけて来るわ。 八つ裂きにされるわよ」 ママはぐるりと我々を見回した。 「離れちゃいけないって事ですな」 中田先生が溜息と一緒に言葉を吐き出した。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.29. (00:30) 小説 文学 /
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シュウ 鶏肉が栄養があると聞いたので、ここのところ猫達のオカズは鶏の胸肉かささ身の焼いたものばかり。鶏肉を焼くといい匂いがするので猫達はワラワラと台所にやって来る。カウンターにはシュウが頑張っているので私の足元は猫だらけだ。カウンターより足元の方が危ない気がするんだけど・・・それにシュウったら他の猫を追い払って、自分だけ匂いを独り占めにしてない? 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14白衣の男達の年の頃は四十前後か、 医者のような姿をしてはいるが、 白衣の下には相当の筋肉が ありそうだ。 今まで気がつかなかったが、 ドアの近くの壁際に ストレッチャーが置いてあったらしく、 ガラガラとコマの音を響かせて 通路を真っ直ぐこちらに向かって来る。 こちらの姿は見えていないと 分かっていても、 ぶつかるのは嫌だから、 我々はすぐに通路を開けた。 「い、いやだぁっ!」 檻の中で男が悲鳴をあげたが、 ストレッチャーは男の檻を素通りして、 隣の檻の前で止まった。 カチャカチャと音立てて鍵が開けられ、 三人の男はストレッチャーを 檻の中に入れた。 「どうだ、薬無しでも行けそうか」 白衣の男が初めて喋った。 低いが、ごく普通の話し方だ。 ベッドの上にいる人間を 別の男が覗き込んでいる。 「何かもう息をしていないよ」 そう言いながらゴソゴソ手で 探っているようだったが、 「大丈夫だ、まだ少し脈がある。 急いで運ぼう」 いくぶん明るい声でそう言った。 「急いで運ぼうと言うからには、 何か治療でもしてやるのかな」 と私が小声で呟くと、 「多分、そんなんじゃないと思うわ」 ママが暗い声で答えた。 白衣の男達はよっこらせと 掛け声を掛けて、ベッドから人間を ストレッチャーの上に移動させて、 すぐに檻から出て来た。 「うわっ、何だこれは・・・」 中田先生がストレッチャーの上に 乗っている物を見るなり 唸るような声を上げた。 涼子さんは顔をしかめ、 口を押さえてしゃがみ込む。 「これは酷い・・・」 犬山さんが絶句した。 「酷い事をするわね」とママが呟く。 ストレッチャーの上には、 血の滲んだ包帯にぐるぐる巻きにされた、 巨大な芋虫が乗っていた。 手足が切断されている・・・ 「急ごう、内蔵がダメになる」 男達はガラガラと大きな音を立てて ストレッチャーを押しながら ドアから出て行った。 「あいつらは、俺達を 人間とは思っちゃいないんだ」 いつの間に側に来たのか、 檻の中の男が鉄柵にしがみ付いていた。 男はまだ二十代の後半くらいの年恰好で、 頭と胸に包帯を巻いているが、 白い部分が少しも残っていないほど 血で真っ赤に染まっている。 でも、手足があるだけ、さっきの 人間よりはまっしだ。 「今連れて行かれた人は、 手足も取られたのか?」 私がそう聞くと男は、 「そうだ、あいつは手足も取られ、 舌も無い。 それなのにまだ生きてやがるんだ。 今度は何を取られるのかなあ・・・」 男は檻の扉にしがみ付き、 声を震わせ、すすり泣きを始めた。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.28. (00:08) 猫 /
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チャコ 毎日栄養のあるものをせっせと食べさせているのにチャコが全然太って来ない。腰骨がゴツゴツして来たのを見る度に、一昨年亡くなったゴンを思い出す。チャコは胸部大手術をしたが今は傷も完全に癒え、食欲も出て元気にしている。それだけでも喜ばないといけないのだが・・・ 家中の物を壊しまくった子猫の頃が懐かしい。今や全員私の年を追い越してジッチャンバッチャンになってしまっている。どうか、ちょっとでも長生きしてくれろ。何も望まない、ただみんな元気で長生きしてくれろ。  ・・・お知らせ・・・ 本日のママの店お休みさせて頂きます。 店主敬白 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.27. (00:50) 小説 文学 /
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シマジロウ シマジロウは穴を開けるのが好きだ。ダンボールの箱を見つけると、一生懸命穴掘りのアクションを始める。前足がかろうじて通るくらいの穴 が開くと今度は牙を使って食い破り、自分が楽々通れるような大きさになるまで延々と穴を広げて行くのだ。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14・・・お知らせ・・・ 本日のママの店お休みさせて頂きます。 店主敬白 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.26. (00:13) 小説 文学 /
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陣取られてしまった・・・ クロブチコンビにちゃっかりパソコンの前を陣取られてしまった。こうなるとなかなかどいてくれないから、私がパソコンを移動するしかない。 ・・・こんな夢を見た・・・ 自室で書き物をしていると、何か眩しいものが目の前に立った。 はっとして顔をあげると、何とそこにはイエスキリスト様が立っていらした。イエス様の頭の少し上のところに金色に光る透明な輪があまりにも美しいので見とれていると、お声が聞こえた。 でも、イエス様のお口は少しも動いていない。どうやら私の頭の中に語りかけていらっしゃるようだ。しかし、何をおっしゃっているのかさっぱり分からない。そこで私は間抜けな事を口走ってしまった。 「すみません、私はクリスチャンではありませんので、申し訳ない事に何をおっしゃっているのか全然分かりません」 それでもイエス様はニコニコ笑って私を見ていらっしゃる。そのお顔を見ているうちにとても気分が良くなって来たので、口が軽くなり、またよけいな事を聞いてしまった。 「手と足の傷はもう痛くはありませんか?」何とだいそれた事を聞いてしまったものだと後悔したが、イエス様は私の前にご自分の両手を差し出された。傷などもう何処にも無い。足はどうかと思い、見るとまっ白で本当に美しい足をなさっていた。 そこで目が覚めたのだが、これは大吉夢だとばかりに娘らに言いまくったが、長女「何でイエスキリストやねん。おかん仏教やん」次女「きっといい事あるわ。良かったやん」の一言だけで片付けられた。 これは良い夢でしょうか、誰か夢判断に詳しい方がいらしたら教えてください。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13檻の中の男は頭を抱え込み、 うっうっ、と唸るように泣き始めた。 ここに収容されている人達は、 恐らく人体実験の為に飼われており、 内臓や皮膚、粘膜を 採取されているに違いない。 狂った学者の狂った実験か・・・ 暗い檻のベッドの上で、 泣いている男を見ていると、 あまりにも哀れで気の毒で、 私の胸もシクシク痛んで来る。 他の檻の中にいる人達は、 我々に気がついていない。 そりゃ、喋れる状態じゃ 無いだけなのかも知れないが、 多分まだ生きているから、 我々が見えないんだろうと私は思った。 我々が見えるこの男だけが、 絶命したと言う事か・・・ それじゃ、その事を言ってあげれば、 少しは楽になるのでは。 「あの、あんたはもう・・・」 死んでいると言い掛けた私の足を ママが蹴った。 ガツンと音がするくらい、 かなりの衝撃だ。 「何するんだよ」とママを睨んだが、 あまりにも真面目なママの顔を見て、 文句の言葉が引っ込んだ。 「まだ言わない方がいいと思う」 ママは唇を噛み、首を横に振った。 すると中田先生も小声で、 「そうだ、今それを言うとこの人の 理性が無くなる可能性がある。 見境の無い怒りを 我々に向けて来るかも知れないよ」 そうか、この人にとっては誰が悪で 誰が善なのか、 全く分かっていないはずだ。 自分が死んだと知ったら、 復讐の心が前に出て、 我々を襲って来る可能性が十分ある。 「でも、これではっきりしたわ。 この世界は豊のいる世界よ。 つまり、私達はここを 自由に探索出来るって事だわね」 ママがそう言って通路の奥を指差した。 ママの指差す方向に、 今まで気がつかなかったが 頑丈そうな金属で出来たドアがあった。 「あそこから出入りしているんだな」 私がそう言うと、 「そうだ、白衣を着た奴らが あのドアから入って来るんだ」 檻の中で男はそう言うと、 両手を頭からはずし、 獣のような叫び声をあげた。 「あぁ・・・今度は誰が 連れて行かれるんだろう・・・」 男の絶叫するような言葉が、 胸に突き刺さり、私はもう 何も言えなくなってしまっていた。 ガチャガチャとドアが鳴っている。 鍵を開けている音だ。 我々はとっさに身構えて息を呑んだ。 ギィーッと鈍い音を立て、 ドアが開くと男が三人入って来た。 頭に白い手術帽を被り、白衣を着ている。 無言のまま真っ直ぐ こちらに向かって来るが、 我々には全く気がついていない。 部屋の隅でうずくまっている リリーさん達のところから、 微かな泣き声が聞こえて来た。 「恵子、泣かないで、大丈夫よ、 これは恐いけど映画みたいなもの。 もうちょっとだけ我慢してね」 涼子さんが奥に向かって声を掛けると、 恵子ちゃんは安心出来たのか、 泣き声は聞こえなくなった。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.25. (00:23) 小説 文学 /
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トウ 寒いのかトウが私のエプロンの中に潜り込んで来た。トウはいつも一匹で行動するが、私だけは特別みたいで、この子もやっぱり淋しいらしい。12匹も仲間がいるのに、どうして我が家の猫達はみんな淋しいんだろう。夜のパソコンが長引くと、早く寝てとばかりにトウが頭突きをして来た。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12モゾモゾと蠢く黒い影に、 足を留め目を細めてじっと見ていると、 薄い掛け布団の下からブラリと白っぽい 手首らしき物が垂れ下がり、 ピクピクと二三度痙攣しただけで 動かなくなった。 「あの人かな・・・」 と私が言うと、先生も頷き、 「君か、さっき声を掛けてくれたのは」 と奥に向かって言ったが、 何の返事も返って来なかった。 「おい、大丈夫か!」 先生がもう一度声を掛けた時、 「違う、そいつじゃない。俺はここだ」 すぐ近くでまた、さっきと同じ 男の声がした。 「隣です」犬山さんの声を合図に、 我々は急いで隣の檻に移り、中を見ると、 ベッドの上で起き上がろうとしている 人がいた。 「君なの?」と私が聞くと、 その人はようやく上体を起こし終わり、 肩を大きく上下させて、 荒い息をしている。 「そうだ。そいつらに声を掛けても 無駄だ。多分もう話せるのは・・・ 俺だけだろうよ。 舌の無い奴も、いるしな」 瀕死の男は、 ゼイゼイと息を吐きながら、 恐ろしい言葉を口にした。 舌の無い奴もいる? 舌が無いって事は 切り取られたって事かい・・・ うえっ、冗談じゃない、 こりゃとんでもない所に 来ちまったようだ。 私は恐怖のあまりに、 心臓が縮み上がり、 小さく固まってしまうような 気持ちになった。 でも、あれ?何か変だぞ・・・ 「ねえ、おかしいと思わない?」 私はふと感じた疑問をすぐさま ママに向けた。 「確かに変だわ」 即座にママが呟いた。 さすがママだ、ママも私と同じ事を 考えていたとみえる。 「何がおかしいんですか」 と涼子さんが怪訝な顔をした。 犬山さんも中田先生も 不思議そうな顔をしている。 「あのね、僕はいままで 生きている人達の世界に 何度も飛んだんだけど、 そこの人達とは一言も喋れなかったし、 僕の姿も見えていないようだったよ。 それなのに、この人 何で僕達が見えるし喋れるの? これは変だよ、それともこの人は もう死んでるって事なのかな」 私の言葉に、涼子さん、犬山さん 中田先生が一斉に顔を見合わせた。 「そうなんですか?」と先生が ママに聞く。 「そう言う事でしょうねえ・・・」 ママの声は暗かった。 「みんな檻の中に閉じ込められている って感じなんだけど、 ここは何処? 君達いったい何をされたの?」 私は檻の中に向かって聞いた。 「ここは何処、だって? そりゃ俺の方が聞きたいね。 目隠しされて無理やり つれて来られた・・・」 ゴホゴホと激しく咳き込んだ男は、 ゲボッと何かを吐いた。 「大丈夫か!」 中田先生が声を掛けたが、 男は返事どころの騒ぎでは無いようで、 息をする間も無いくらい、 ゴボゴボと激しく吐き続け、 やっと楽になったのか、 大きく息を吸い込んだ。 「あぁ、苦しかった・・・ あいつら俺の腹ん中から内臓を 少しずつ盗んで行きやがるんだ。 何に使うのか知らねえけど、 ここにいる者もみんな何かを 切り取られてるよ」 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.24. (00:41) 小説 文学 /
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フクの特等席 私の膝の上には、チャーとブチとクロとカスガとトウとシマジロウが乗っている。そんな時フクはいつも机の上にあがり、パソコンの後ろに座る。パソコンは熱を持つから暖かいのだ。外は夏日でも、我が家の夏の訪れはまだ。15Fの天辺で、近くが河だからとても冷たい風が入り込んで来る。その場所は暖かいんだけど、ちょっと淋しそうだナ・・・やっぱり膝の上がいいに決まってる。  我が家の猫達は私にとって大切な家族です。猫にもちゃんと感情があります。ナナは淋しいから飴を並べ続けます。飴を並べたら、私が帰って来てくれると信じているからです。そして、母親に捨てられた子猫は母を想い、成長するにつれ、捨てた母を恨みます。だってその母親が目の前をウロチョロしているんですもの、忘れられるはずがありません。 私はこの数年間猫達の様子を見続けて来ました。猫も人間も心は同じだと思っております。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12・・・・本日のママの店お休みさせて頂きます・・・・ 店主敬白 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.23. (00:32) 小説 文学 /
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カリン 我が家の猫達の中でも、カリンは特に喜怒哀楽を顔に出す。怒っている時の彼女の目は光を失いとても暗い。ナナが目の前を通る時、カリンはよくこう言う目でナナをジッと見ているが、我が子にこんな憎しみの目を向けられて、ナナはどんな気持ちでいるのだろうと胸が痛くなる。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11まず分かったのは、 我々が立っているのは コンクリートの床であると言う事。 そして天井も壁も、 床と同じコンクリートで 塗り固めてある個室なのだが、 この部屋はとても広く、前方両側に 頑丈そうな網目状の 鉄の檻がビッシリと並んでいる。 人がいる気配がする・・・・ 呻き声は、あの檻の中のようだ。 両側の檻のせいで、 真ん中が通路のようになっていて、 こりゃまるで監獄、いや、 処分される動物達の収容所みたいだ。 コンクリートの灰色と、 鉄の檻の色のコントラストが、 激しく恐ろしさを醸し出している。 「何だ・・・この場所は・・・」 中田先生が呟いた。 「檻みたいですね、中に何かが いるような気配がします」 犬山さんがそう言うと、 リリーさんが目を大きく見開き、 犬山さんをじっと見つめたまま 首を激しく横に振りたくった。 「私見たくないわ、恐い・・・」 リリーさんの声が震えている。 「ママ、どうする?」 私は無意識にママに声を掛けていた。 「どうするって・・・・ 見なきゃ始まらないでしょうが」 ママは顔をしかめてボソッと答えた。 そのとたん恵子ちゃんがいきなり、 握りこぶしで涼子さんの お腹の辺りを叩き出し、 いやだいやだ、と泣き喚き始めた。 「恵子、落ち着きなさい。 大丈夫よ、見るのが嫌なら、 あんたは見なくていい」 涼子さんは必死に恵子ちゃんを なだめているが、 そりゃ恐いだろう・・・ こんな小さな子供なんだもの。 私でも今すぐ逃げ出したいくらい 恐いのだから。 良太君の腕の中で、だいぶ前から 低く呻っていたワンコが、 いきなり大きな声でワンワンと吼えた。 「こらっ、うるさい、黙れ」 良太君が叱ると、 ワンコは鳴くのを止め、 キュウンと哀しそうに一声鳴いて 静かになった。 「そこに誰かいるのか・・・」 檻の方から、いきなり男の声がした。 苦しげな、腹の底から搾り出すような 声だ。 みんな一斉にギョッとした顔になった。 「いるんだろう?こっちに 来てくれないか」 男はなおも語り掛けて来る。 どうしよう、と言う目でお互いを 見た我々は、素早く目で 取り決めをした。 リリーさんは良太君と一緒に 恵子ちゃんを守る事が、 暗黙の了解となっている。 いつもなら、 おいらも行きたいと言う良太君も、 さすがに今度は何も言わなかった。 ワンコがガチガチ震えていて、 もし檻に近づけば、 何処かに逃げて行きかねないからだ。 ゴクリと唾を飲み込み、 私、ママ、中田先生、犬山さん、 そして涼子さんの五人は、 両側に立ち並ぶ檻の中を 一つずつ覗いて回った。 どの檻の中も暗く、正面から見て 左側にベッドらしきものがあり、 その上に人が横たわっているような 黒い盛り上がりがある。 もう鼻は臭気に慣れているのだが、 近づくと、更なる強烈な臭いに 思わず吐きそうになった。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.22. (00:01) 猫 /
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フクの災難 ナナがシュウ達を産んだ時、フクもパパとして一緒に籠に入り仲睦まじい一家が出来上がっていた。それがある日突然ナナが籠から飛び出して子育てを放棄した。子供達がナナを慕い、後を追いかけると恐い顔をしてシャーと威嚇する。子供達は何故母親から威嚇されるのか分からず、オロオロしながらもフクと一緒に籠の中で暮らしていたが、そこにチャコが擬似ママとして乗り込んで来た為、ややこしい事になった。邪魔になったフクが放り出されたのだ。そして結局フクもナナの為に子供達から憎まれる事になってしまった。神に誓って言うけれど、フクは絶対何も悪くなかった、只ナナのトバッチリを受けただけなのだ。 1 2 3 4 5 6 7 8 9「うぅぅ、しかしまあ、 前から思ってたけど この着地は考えないといけないなあ」 中田先生が腰でも打ったらしく、 唸るような声を出している。 私はこの前犬山さんに驚かされ、 ママの店の前でひっくり返った時の 腰の痛みを思い出した。 「恵子大丈夫?」 涼子さんが恵子ちゃんを気遣うように 声を掛けた。 「大丈夫だけど、くしゃい所だね」 確かに恵子ちゃんの言うように、 さっきから何かが腐ったような 強烈な悪臭が漂っている。 「本当だ、臭せえ・・・」 良太君も口を覆っているのか 変な声になっている。 「ママ、ここは何処だろう? ママのいた世界とは違うように 思うんだけど・・・」 と私が聞くと、 「ええ、違うわね。 とにかく目が慣れて来るまで どうしようもないわ」 私は今まで何度も 異世界に飛んでいるから、 移動した直後は何も見えない事を よく知っている。 ママの言うように、 見えるようになるまで少し時間が 掛かるのだ。 「この臭いが気になるねえ・・・」 中田先生が呟くと、 「えっ、この臭いがどうかしましたか?」 と犬山さんがすぐに聞いた。 「うん・・・これは血の臭いだ」 先生が即答したとたん、 キャッとリリーさんが小さく叫び、 ゴソッと動のが分かった。 暗くて見えないけど、多分犬山さんに しがみついたに違いない。 「そうか、どうりでワンコの様子が おかしいと思ったよ。 こいつ血の臭いに反応しているんだ」 良太君が言う通り、 動物は血の臭いに反応する。 近くに死体があるのかと思った時、 あちこちから微かな音が聞こえて来た。 耳を澄ますと、どうやら 人の呻き声のように思える。 誰かが怪我でもしたのかと心配になり、 「ねえ、誰か怪我したの?」と聞くと、 「私達じゃないわね、この場所に 私達以外の誰かがいるのよ」 ママが囁くような暗い声で、 一番聞きたくない言葉を言った。 「恐いでしゅ、何も見たくないよ」 恵子ちゃんが言うと、 「いや、早く見ないと もっと恐い気がするよ」 良太君の声が震えている。 そうだ、良太君の言う通りだ。 早く見えるようにならなければ、 今我々が置かれている状況が 分からない。 そうこうしているうちに、 辺りの様子が ぼんやりと浮かび上がって来た。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.21. (00:11) 猫 /
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ナナの誤算 『野良猫の習わし。母親はある時期が来たら子猫を捨てて何処かへ行ってしまう。捨てられた子猫は自力で生きて行くか、あるいは死ぬ』 9年前の正月、ゴミ捨て場でガリガリに痩せた雌猫を見つけた。手を差し伸べたら歯を剥いて威嚇して来たので、「おまえが私の家に来たいならダッコされなさい」と声をかけながら体をつかむと、不思議と爪を出さずにおとなしくなった。体を洗ってから病院に連れて行き、予防注射とノミを殺す処置をしてもらい、「ナナ」と命名したとたん妊娠した。避妊手術を翌日に控えていたフクとの間に出来た子だ(チャー、シュウ、カリン、トウ、シマジロウ)。我が家にはすでにゴンとブチ達4兄妹がいたので、一挙に12匹の大家族になってしまった。まあ・・・それはいいとして、出産してしばらくは子煩悩な親ぶりを見せてくれていたナナだったのに、野良の癖が出て子供達の目が開いたとたん子育てを放棄してしまった。野良の場合は姿をくらます事が出来るので、子も親を忘れるが、狭い家の中では嫌でも顔を突き合わす。ろくに乳離れもしていない時に捨てられた子供達の恨みは日々つのるばかりになった。これがナナと子供達との仲が悪い理由なのだ。  ・・・お知らせ・・・ 本日のママの店はお休みさせて頂きます。 1 2 3 4 5 6 7 8 9「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.20. (00:44) 猫 /
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トウ 「smallone」あるいは「小さいひと」が彼女のあだ名。小さいが賢くて勇敢、大きくつぶらな瞳が彼女の特徴だ。これと言って仲良しもおらず、常に一匹で行動する強い猫で、体は小さいが食欲はブチクロに負けないほどある。困った事に玉葱の皮と卵の殻、それに神様の榊が大好きで、台所の床に落ちてないかいつも探している。どれもみんな毒ばかり、お願いだからやめてちょうだい、それだけは。 1 2 3 4 5 6 7 8 9私の左足はしっかりと固い地面を 踏みしめている。 これは大丈夫だと安心して、 右足も中へ入れた。 「みんな、大丈夫だよ。 ちゃんと地面がある・・・」 そう言ったとたん 私の足元にあった感触が一瞬にして消えた。 わぁっ、と叫び声が勝手に 口から飛び出して来て、 深い深い闇の中を私は落ちて行った。 落ちたのは私だけなんだろうか、 ママ達はどうなったんだろうと 思った時、女性男性入り混じる 叫び声が上の方から聞こえて来た。 みんなも飛び降りてくれたんだ・・・ そうはっきりと分かった時、 いきなり心に余裕が生まれた。 「みんな大丈夫? 僕の声が聞こえる? 聞こえたら誰か返事して」 私がそう叫ぶと、あちこちから 大丈夫だ、と言う声が聞こえて来た。 「恵子ちゃん、良太君いるか?」 と聞くと、 「うん、兄ちゃんおいらは大丈夫だ。 ワンコもしっかり抱いてるよ。 恵子、大丈夫か?」 と良太君が声を張り上げた。 「だ、だいじょうぶでしゅう・・・」 恵子ちゃんが風の泣くような声を出して 返事した。 「ありがとう、私達は大丈夫です。 リリーさん、犬山さん、大丈夫?」 涼子さんが聞いた。 「大丈夫です。ありがとう、 猛さん!いる?」 リリーさんが鋭い声で 犬山さんに呼びかけると、 「大丈夫だ、ここにいるよ」 と即座に返事が返って来た。 「ママも中田先生もいるね?」 と最後に声を掛けると、 「ちゃんといるわ、安心して」 「私もいるぞ」 二人の元気な返事が返って来た。 全員一緒だと思うと、 何処まで落ちて行くか分からない この現状に、全く恐怖を感じない。 とても長い時間が過ぎて行った。 これは長すぎる・・・ 私達はさっきから随分長く落ち続けている。 いったい後どのくらい落ちれば 止まるのだろう。 私の心の中に、小さな不安が生まれた。 こうしているうちに、 どんどん本当の昭日町から、 遠ざかってしまうのではなかろうか。 小さかった不安が 急速に大きくなり始める。 「ママ、ちょっと長すぎない? もうそろそろ何処かに着いても 良さそうなものなんだけど」 私が不安な声で言うと、 「私も、ちょっと長すぎるなと 思っていたとこよ。 でも、もう止める事は出来ないわ。 とことん落ちるしかないわねえ」 ママの言葉に、 そんな・・・と言い掛けた時、 私の全身は硬い地面に しこたま打ち付けられ、 肺の中に溜まった空気が 一気に口と鼻の穴から噴出した。 私に続いてすぐに みんなも落ちて来たようで、 グェッと言うような音が聞こえた。 「みんな、大丈夫?」 と私が声を掛けると、 「いってえー・・・」 良太君の声が真っ先に聞こえた。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.19. (00:39) 猫 /
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シマジロウ 我が家で一番甘えん坊のシマジロウ、お尻を撫でながら「高い高い〜」と言ってやるとお尻を高く上げる。とても可愛い子なんだが、ブチやクロにチョッカイを出す悪い癖がある。後ろから噛み付いたり、叩いたり、体当たりしたり、嫌な事ばかりするのだ。もしかして、ブチクロに遊んで貰いたいのかなあ・・・そう考えると不憫な子だ。 1 2 3 4 5 6 7 8ー異世界への扉ー それじゃ、開けるからねと私は言い、 ドアの取っ手を握った。 いつもならカラ〜ンコロ〜ンと高らかに 鳴り響くチャイムも鳴らず、 ギィ〜と軋む音を立てながらドアが開き、 中を見たとたん、全員が息を飲んだ。 一歩足を踏み入れれば地獄の底にまで、 落ちて行きそうな暗闇が詰まっている。 「いやっ、恐い!」 恵子ちゃんが涼子さんにしがみつき、 中に入りたくないと泣きじゃくり始めた。 「おいら・・・」 いつもの良太君なら、 真っ先に入ろうとするだろうに、 今度ばかりは怖気づいたのか、 両足をすぼめてガチガチ震えている。 強い力で抱きしめられて苦しかったのか、 良太君の腕の中で ワンコがキャンと小さく悲鳴をあげた。 「良太、そんなに恐いんだったら 恵子ちゃんと一緒にここに残るか?」 中田先生が良太君を気遣い声を掛けた。 そのとたん、 良太君の震えがピタリと止まり、 キッとした顔で先生を見上げた。 「先生、間違えちゃ困る。 おいらはシッコが出そうなんだよ。 中に入る前に、 シッコをしておきたいんだ。 中では出来ないかもしんねえからな」 そう言って良太君はワンコを先生に預け、 車道に面した所にある 街灯の側まで走って行き、 用を足し始めた。 やがて戻って来た良太君は、 先生からワンコを受け取り、 「あぁ、さっぱりした」 と言ってニッと笑った。 そのとたん緊張がほぐれ、 みんなの間に小さな笑いが生まれた。 私は心の中で、 この子は絶対大物の素質があると 思い、一人頷いていたのだが、 「ねえ、恵子ちゃんはどうするの? こんなに恐がってるわ」 リリーさんの声で現実に引き戻された。 ママが恵子ちゃんの側にしゃがみ込み、 顔を近づけ、ニッコリ笑って 話し掛ける。 「ねえ、恵子ちゃん良く聞いて、 おばちゃん達はどうしてもこの中に 入らなきゃならないの。 中はこんなに真っ暗で恐いけど、 ここで待っていても 何が起るか分からないのよ。 それどころか、ここで離れてしまえば、 もう二度と会う事が 出来なくなるかも知れない。 だから、恐くても一緒に来てほしいの。 おばちゃん達は恵子ちゃんと 離れ離れになりたくないわ、 恵子ちゃんもそう思わない?」 ママは恵子ちゃんの目をしっかりと見て そう言った。 「恵子、頑張って一緒に行こう」 涼子さんに肩をつかまれ、 「おいらも一緒だ、大丈夫だよ」 と良太君にも励まされ、 恵子ちゃんはゆっくり顔をあげた。 「一緒に行くわね?」 とママがもう一度聞くと、 恵子ちゃんは歯を食い縛り、 コックリと頷いた。 私が先頭に立ち、その後がママ、 中田先生と良太君、 恵子ちゃんと涼子さんリリーさんと続き、 一番最後が犬山さんだ。 どうか地面がありますようにと祈りながら、 私は闇の中に一歩足を踏み入れた。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.18. (00:50) 猫 /
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クロ&ブチ いつも書いているが、クロとブチは本当に仲が良い。片方にだけ何かあげたら、絶対相棒の所に運んで行って一緒に食べる。ソレが一個の時はどうするのか見ていたら、口で噛んで半分ずつにして食べている。思わずホーと感心してしまった。我が家のように兄弟姉妹親子が一緒に暮らしていても、こんな行為は珍しいのだ。 1 2 3 4 5 6 7ママの店に着くのは早かった。 着くと同時にドアの横に掛かっている 黒い木の看板を見た。 案の定看板は今までの古い看板では無く、 真新しく艶やかな、 漆黒の洒落た看板になっている。 以前私が見た時と違っているのは、 看板にはっきりと 『ママの店』と刻まれている事だけだ。 やっぱり『ママの店』だったのかと 思ったが、今はそんな事は どうでも良くなっていた。 それよりも、ドアの向こうに どんな世界があるのかと 言う事の方が気になる。 「新しい看板になっているよ。 あの時と同じだ。 多分このドアを開けたら、 何処かの世界に行くと思う」 私がそう言うと、恵子ちゃんが 涼子さんの腰にしがみついた。 そりゃそうだ、 子供にこの状況は惨(むご)すぎる。 遊園地のお化け屋敷の入り口ですら、 幼い恵子ちゃんにとっては恐いはず。 しかし遊園地のお化け屋敷は、 あくまでも スリルを楽しむ為に用意された物。 しかしこのドアを開ければ、 スリルどころか本物の恐怖が 襲って来る可能性があるのだ。 「豊さんが見たのと同じ看板ですか?」 犬山さんが聞いて来たので、私が 多分・・・と言って頷くと、 「その時、中はどんな世界でしたか?」 とまた聞いて来た。 私はママの顔をチラッと見てから、 「ママの・・・過去だった」 と正直に答えた。 ママの顔が一瞬強張ったようで焦ったが、 すぐ元に戻るのを見て安心した。 「それじゃまた静江さんの過去に 行くって事なんでしょうか」 涼子さんが遠慮がちにそう言うと、 今度は中田先生が、 「豊が見たのと同じ世界だとは 限らないだろうが・・・ いずれにしてもママさんの過去の世界に 行ってしまう可能性は大だと思う。 もしそうだとしたら、 ママさんのプライバシィが我々に 知れてしまうって事なんだが・・・」 先生は溜息とも唸り声ともつかない 声を出し、ママを見た。 「それはママさんが決める事だと思います。 ママさんが嫌なら、私達は 他の場所から異世界に入りましょう」 犬山さんがきっぱりと言い切った。 みんなの視線を浴びながら、 ママは下を向いて何やら考え込んでいたが、 やがて顔を上げ、 「いいえ、このドアから入りましょう」 と言った。 「ここは私の店、ここを拠点として 物語が始まっているのだから、 私達が入るのはこのドア以外に 無いと思うのよ。 私はあなた達に何を見られても 構わないわ。 現に豊には、私の一番惨めな姿を 見られているものね」 ママは目を閉じ、微笑みを浮かべた。 「惨めな姿だなんて・・・ 絶対そんな事無かったからね」 私は慌ててママの言葉を否定した。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.17. (00:43) 猫 /
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優しいブチ ブチがチャーの首の毛を舐めてきれいにしてやっている。チャーはいつもブチを噛んだり叩いたりするので、凡人の私は正直ブチの優しさが腹立たしい。チャーは我が儘だ。自分の座りたい場所にブチが居たと言うだけで、噛んだり叩いたりしてブチを追い出す。そんな子に気を使ってやる必要など無いと私は思うのだ。でも、ブチはチャーに限らず誰にでも優しい。私にはブチが天使に見える。でも天使はタクアンをくわえて、クロに与える為に走って行かれた・・・天使様タクアン返して〜  ・・・お知らせ・・・ 体調不良の為本日のママの店はお休みさせて頂きます。 1 2 3 4 5 6 7「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.16. (00:38) 小説 文学 /
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勢ぞろい 今夜のオカズは鯖・・・味付けをしない生の物を猫達の為に先に焼く。 香ばしい匂いにつられてカウンターの上と私の足元に猫達がワラワラと集まって来た。今日の鯖は油がのっていて美味しいよ!病み上がりの子鼻炎の子、年寄りちゃん達には特に沢山食べてもらうからね〜カリンちゃんも頑張って食べるんだよ、食べるのが遅くたっていい、しっかり最後まで食べるんだ。 1 2 3 4 5 6広い車道を隔てて右は海岸、 左はさまざまな店が立ち並ぶ 通りになっている。 いつもなら、その先に デパートがあるせいか、 この通りはたくさんの人が 行き来している。 それが今は我々以外に 誰もいないのだ。 道路を渡って左に行けば私の家で、 右に少し歩いてすぐ左折すれば ママの店がある。 そのもう少し向こうに 商店街の入り口があり、 私の両親の店があるのだ。 我々は涼子さんの言葉を聞いて、 立ち並ぶ店舗を順番に覗いて行った。 中に入って確かめたかったが、 入り口はすべて異界に通じる扉だと 思った方がいいので、 ドア越し、窓越しに中を確かめるのに 留めておいた。 涼子さんの言う通り、 見事に人の気配が無い。 その時ふと頭の中を過ぎったのは、 我々の行き先はどうせ異世界、 それならわざわざ ママの店に行かなくても、 何処かの扉を開ければ突入できる。 こうして周りを警戒しながら 歩いている時間が、 もったいないような気がした。 「ねえ、どうせ異世界に 続いているのだったら、 何処かの店のドアを開けて 入っちゃえば 手っ取り早いんじゃないの?」 私が誰ともなしにそう言うと、 ママが厳しい顔をして首を横に振った。 「今やこの町にあるドアは、確かに 異世界に通じている可能性がある。 でも、異世界は一つだけとは限らないのよ」 異世界は一つだけとは限らない・・・ 間違って両親が存在しない世界に 入り込んだりしたら、 それこそ無駄な時間を 費やしてしまう事になる。 しかし、ママの店が必ず 目的とする世界に、 通じていると言う保証はあるのか。 「そうですね、ママの店なら 私達と深く関わりのある世界に 通じている可能性が大きいですよね」 涼子さんが私の疑問に、 答えてくれるかのように言った。 そりゃそうだ、すべてはママの店から 始まっているのだ。 「そうと決まりゃ早く行こう。 ぐずぐずしている暇はない」 中田先生がそう言った。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.15. (00:42) 猫 /
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チャオ ストレス性鼻炎になっているチャオのクシャミがすごい。クシャンと一発やる度に鼻水が飛び散るので、みんな(猫も人間も)逃げ回る。 自分のクシャミをみんなが嫌がっている事をチャオは知り、クシャミが出そうになったら誰もいないところに走って行くようになった。私はチャオの、その後ろ姿が可哀相でたまらない。娘達、チャオに向かってバイキンと言うな、猫ども、クシャミくらいでうろたえるな!チャオはみんなの家族じゃないか、淋しい思いをさせてはいけない。絶対いけないのだ。 1 2 3 4 5「あの時僕はゆっくり道路を渡っていて、 真ん中くらいで 立ち止まってしまったんだ。 物凄いスピードとは言え、 まるきし見えないんでは無かったよ。 車らしき姿は確かに見た。 だから、何も来ない事を確かめたら、 一気に駆け抜けるのがいいと思う」 果たしてそれが いいアイデアなのかどうか、 自分でも不安だったが、 ゆっくり歩くよりはまだ安心な気がした。 「よし、そうと決まったら一、二、の三で 走り抜けよう」 中田先生がそう言って、 犬山さんと私の背中に それぞれリリーさんと恵子ちゃんが おんぶされているのを確かめた。 「それ、一、二、の三!」 我々は一斉に走り出した。 幅二十メートルあるかないかの道路だ、 あっという間に向こう側に辿り着き、 全員何事も無くホッと胸を撫で下ろす。 「別に、何にも走っちゃ来なかったね」 と良太君が言ったとたん、 ヒュンと音を立て、風が背中を通り抜けた。 みんな目を丸くしてお互いの顔を見る。 「通ったよ・・・」 恵子ちゃんがポソッと呟いた。 全員硬直したかのように沈黙したが、 中田先生が咳きを一つして 「さて、じゃあこれからママさんの店に 行こうとするか」と言ったので、 みんなやっと歩き始めた。 「ねえ、豊の時はどうだったの。 この後私の店に行って、 何か変わった事があった?」 歩きながらママが聞いて来た。 「前から聞きたかったんだけど、 入り口の所に掛けてある看板、 何て書いてあるのか分からないんだよ」 私はトンチンカンな返事をしてしまった。 いつも気になっていた事が、 口をついて出てしまったのだ。 「ママの店って書いてあるんだよ」 中田先生がママに代わってそう答えると、 ママは「え、ええ・・・」と ちょっとどもりながら相槌を打った。 みんなもいきなりニコニコ顔になって、 そうですよ、ママの店って 名前なんですよと口々に言う。 恵子ちゃんは字が読めないからか、 興味の無さそうな顔をして、 良太君にダッコされている ワンコの後ろ足を触って楽しんでいるし、 良太君も話しに入る気は無さそうだ。 ママの店・・・そうだったのか。 何だ、そのものじゃないか、 と私は思いながらも、 何となくいいかげんな名前を 言われたような気がして、 後味が悪かった。しかし、 「今のあんたはビジターなんだからね、 知らなくていい事は、 知らなくていいの」 そう言ってママが チラッと見せた真剣な眼差しに、 私はもうそれ以上 何も聞いてはいけないんだと了解した。 「あ、そうそう、看板が新しかった。 それと、店の中に入ったとたん 停電したんだ」 私があの時の状態を説明すると、 中田先生が 「道路とかドアとかはよく異次元に 続いているもんなんだよ」と言った。 「じゃあ、ちょっと恐いですね。 店のドアを開けたとたん、 奈落の底に落ちる可能性があると 言う事だ」 犬山さんがそう言うとリリーさんが、 不安気に腕を絡ませて来るのが見えた。 「僕が胃の中に入っちゃったのも、 ママの店からだった・・・」 私がそう言ったら、 みんなの足が止まってしまった。 そりゃそうだ、ドアを開けたとたん、 何が起こるか分からないだなんて 不安でしょうがない。 「ねえ、道路を渡ってからずっと、 誰にも会いませんね。 何処の店も開いてはいるみたいだけど、 人の気配がしませんよ」 涼子さんが声を少し潜めて言い、 ブティックのウインドウ越しに 中を覗いている。 〜つづく 「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。 別荘「怪談奇談」に (幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、 暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので ご注意ください。 出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.14. (00:20) 小説 文学 /
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カスガ カスガはめったに膝の上に来ない。ダッコされるのも嫌みたいで、無理やりダッコすると顔を背けてエビゾリする。それなのに、今日は珍しく膝の上に乗って来た。小説を書いている時、膝の上にズッシリと重たい物が・・・と思ったとたん、スカートを激しくバリバリ掻きだした。何事かと見てみたらカスガだ。掻いているのではなくて、モミモミだったみたい。あのねえ、モミモミにしてはやりすぎなんだよ、スカートに穴があいちゃうじゃないか。でも、あんたが膝に来るなんてめったにないもんね、だから許しちゃう。  奇妙な出来事(怪しい屋敷の怪しい面々) 1五十代の後半くらいの主人は、 金縁眼鏡を掛けており、 神経質そうに見えたが色白で美人、 小太りの体に花柄のブラウスと 地味なスカートといったいでたちの、 ごく普通の女性だった。 遠い所まですみませんでしたねえ、と 笑顔で頭を下げられ、 慌てて頭を下げ返したものの、 さっきの祭壇を思い出し、 「あのう・・・」と私は切り出した。 女主人、借りにAさんとしておこう。 Aさんは、何でしょうかと微笑みながら 小首を傾げている。 「今日は着付けの練習をとの ご用命でしたねえ」 と普通なら当たり前の事を聞く私に、 Aさんは別に変な顔もせず、 「はい、もうすぐ私どもの お祭りがありまして、 信者全員着物を着なくては ならないんですが、最近の人達は 着物を着る習慣が無いものでねえ、 自分でよう着ないんですよ。 何とか今日一日で、着れるように ご指導お願いします」 信者・・・やっぱり宗教団体だ・・・ 私の頭の中で警戒警報が鳴っていた。 しかし、最初私に電話をくれた時、 Aさんは学院の紹介で、と言っていた。 私の出身校の紹介なら 間違いは無いはずなのだ。 「それじゃ皆さんに入って来てもらいます」 Aさんが右の襖に向かって、 皆さんお入りくださいと言うと、 さまざまな年齢の女性達が、 大きな風呂敷包みを手に持って ゾロゾロと中に入って来た。 若い人で十代の後半、上は七十くらいか。 三十人全員が私の前に正座して、 よろしくお願いしますと頭を下げた。 風呂敷の中には着物の一式が 入っているらしい。 どうやら私の考えすぎだと気がついた。 宗教であろうが何であろうが、 着付けを教えるのが目的であれば それでいいのだ。 「じゃあ、早速ですが、始めましょうか。 お部屋いっぱいに余裕を持って 広がってください」 |