シマジロウ
我が家で一番甘えん坊のシマジロウ、お尻を撫でながら「高い高い〜」と言ってやるとお尻を高く上げる。とても可愛い子なんだが、ブチやクロにチョッカイを出す悪い癖がある。後ろから噛み付いたり、叩いたり、体当たりしたり、嫌な事ばかりするのだ。もしかして、ブチクロに遊んで貰いたいのかなあ・・・そう考えると不憫な子だ。
1 2 3 4 5 6 7 8ー異世界への扉ー
それじゃ、開けるからねと私は言い、
ドアの取っ手を握った。
いつもならカラ〜ンコロ〜ンと高らかに
鳴り響くチャイムも鳴らず、
ギィ〜と軋む音を立てながらドアが開き、
中を見たとたん、全員が息を飲んだ。
一歩足を踏み入れれば地獄の底にまで、
落ちて行きそうな暗闇が詰まっている。
「いやっ、恐い!」
恵子ちゃんが涼子さんにしがみつき、
中に入りたくないと泣きじゃくり始めた。
「おいら・・・」
いつもの良太君なら、
真っ先に入ろうとするだろうに、
今度ばかりは怖気づいたのか、
両足をすぼめてガチガチ震えている。
強い力で抱きしめられて苦しかったのか、
良太君の腕の中で
ワンコがキャンと小さく悲鳴をあげた。
「良太、そんなに恐いんだったら
恵子ちゃんと一緒にここに残るか?」
中田先生が良太君を気遣い声を掛けた。
そのとたん、
良太君の震えがピタリと止まり、
キッとした顔で先生を見上げた。
「先生、間違えちゃ困る。
おいらはシッコが出そうなんだよ。
中に入る前に、
シッコをしておきたいんだ。
中では出来ないかもしんねえからな」
そう言って良太君はワンコを先生に預け、
車道に面した所にある
街灯の側まで走って行き、
用を足し始めた。
やがて戻って来た良太君は、
先生からワンコを受け取り、
「あぁ、さっぱりした」
と言ってニッと笑った。
そのとたん緊張がほぐれ、
みんなの間に小さな笑いが生まれた。
私は心の中で、
この子は絶対大物の素質があると
思い、一人頷いていたのだが、
「ねえ、恵子ちゃんはどうするの?
こんなに恐がってるわ」
リリーさんの声で現実に引き戻された。
ママが恵子ちゃんの側にしゃがみ込み、
顔を近づけ、ニッコリ笑って
話し掛ける。
「ねえ、恵子ちゃん良く聞いて、
おばちゃん達はどうしてもこの中に
入らなきゃならないの。
中はこんなに真っ暗で恐いけど、
ここで待っていても
何が起るか分からないのよ。
それどころか、ここで離れてしまえば、
もう二度と会う事が
出来なくなるかも知れない。
だから、恐くても一緒に来てほしいの。
おばちゃん達は恵子ちゃんと
離れ離れになりたくないわ、
恵子ちゃんもそう思わない?」
ママは恵子ちゃんの目をしっかりと見て
そう言った。
「恵子、頑張って一緒に行こう」
涼子さんに肩をつかまれ、
「おいらも一緒だ、大丈夫だよ」
と良太君にも励まされ、
恵子ちゃんはゆっくり顔をあげた。
「一緒に行くわね?」
とママがもう一度聞くと、
恵子ちゃんは歯を食い縛り、
コックリと頷いた。
私が先頭に立ち、その後がママ、
中田先生と良太君、
恵子ちゃんと涼子さんリリーさんと続き、
一番最後が犬山さんだ。
どうか地面がありますようにと祈りながら、
私は闇の中に一歩足を踏み入れた。
〜つづく
「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。
別荘「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.18. (00:50)
猫 /
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