カリン
我が家の猫達の中でも、カリンは特に喜怒哀楽を顔に出す。怒っている時の彼女の目は光を失いとても暗い。ナナが目の前を通る時、カリンはよくこう言う目でナナをジッと見ているが、我が子にこんな憎しみの目を向けられて、ナナはどんな気持ちでいるのだろうと胸が痛くなる。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11まず分かったのは、
我々が立っているのは
コンクリートの床であると言う事。
そして天井も壁も、
床と同じコンクリートで
塗り固めてある個室なのだが、
この部屋はとても広く、前方両側に
頑丈そうな網目状の
鉄の檻がビッシリと並んでいる。
人がいる気配がする・・・・
呻き声は、あの檻の中のようだ。
両側の檻のせいで、
真ん中が通路のようになっていて、
こりゃまるで監獄、いや、
処分される動物達の収容所みたいだ。
コンクリートの灰色と、
鉄の檻の色のコントラストが、
激しく恐ろしさを醸し出している。
「何だ・・・この場所は・・・」
中田先生が呟いた。
「檻みたいですね、中に何かが
いるような気配がします」
犬山さんがそう言うと、
リリーさんが目を大きく見開き、
犬山さんをじっと見つめたまま
首を激しく横に振りたくった。
「私見たくないわ、恐い・・・」
リリーさんの声が震えている。
「ママ、どうする?」
私は無意識にママに声を掛けていた。
「どうするって・・・・
見なきゃ始まらないでしょうが」
ママは顔をしかめてボソッと答えた。
そのとたん恵子ちゃんがいきなり、
握りこぶしで涼子さんの
お腹の辺りを叩き出し、
いやだいやだ、と泣き喚き始めた。
「恵子、落ち着きなさい。
大丈夫よ、見るのが嫌なら、
あんたは見なくていい」
涼子さんは必死に恵子ちゃんを
なだめているが、
そりゃ恐いだろう・・・
こんな小さな子供なんだもの。
私でも今すぐ逃げ出したいくらい
恐いのだから。
良太君の腕の中で、だいぶ前から
低く呻っていたワンコが、
いきなり大きな声でワンワンと吼えた。
「こらっ、うるさい、黙れ」
良太君が叱ると、
ワンコは鳴くのを止め、
キュウンと哀しそうに一声鳴いて
静かになった。
「そこに誰かいるのか・・・」
檻の方から、いきなり男の声がした。
苦しげな、腹の底から搾り出すような
声だ。
みんな一斉にギョッとした顔になった。
「いるんだろう?こっちに
来てくれないか」
男はなおも語り掛けて来る。
どうしよう、と言う目でお互いを
見た我々は、素早く目で
取り決めをした。
リリーさんは良太君と一緒に
恵子ちゃんを守る事が、
暗黙の了解となっている。
いつもなら、
おいらも行きたいと言う良太君も、
さすがに今度は何も言わなかった。
ワンコがガチガチ震えていて、
もし檻に近づけば、
何処かに逃げて行きかねないからだ。
ゴクリと唾を飲み込み、
私、ママ、中田先生、犬山さん、
そして涼子さんの五人は、
両側に立ち並ぶ檻の中を
一つずつ覗いて回った。
どの檻の中も暗く、正面から見て
左側にベッドらしきものがあり、
その上に人が横たわっているような
黒い盛り上がりがある。
もう鼻は臭気に慣れているのだが、
近づくと、更なる強烈な臭いに
思わず吐きそうになった。
〜つづく
「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。
別荘「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」10話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.05.22. (00:01)
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