またちょっと元気に
チャコは少し高い所にヒョイと飛び上がる事が出来るようになった。
でもその後ゼイゼイ呼吸が荒くなるので、あまり無理をしてくれるなと心配になる。そのうち走り出すのではないかと不安になったり期待したり・・・。体重が2.6キロまで落ちていたのが4キロ近くにまで増えていた。嬉しい。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28ところが信じられない事態に陥った。
ドアの向こうに行こうとしても
物凄い圧力に押し戻されてしまう。
分厚いと言ってもたかだか
ドアの厚み、霊体の我々が
通り抜けられないなんて
おかしな話しだ。
「何故?どうしてなの」
涼子さんの、
抗議するような声を聞きながら、
頬から腕にかけての皮膚が、
ブワッと泡立つのを感じた。
ドアの向こう側から何かが
出て来ようとしている・・・
「ここにいちゃダメだ、
ドアから離れて!」
思わず私は叫んでいた。
みんな一斉に走り出したその時、
「ぐあぁーっ」と背後で
叫び声が上がった。
驚いて振り返ると、
真っ白い巨大な芋虫が
ドアの前に出現しており、
何と犬山さんがそれに全身を
グルグル巻きにされている。
「キャー!犬山さんが・・・」
涼子さんが悲鳴を上げた。
「な・・・何だあれは」
中田先生の声が裏返っている。
芋虫の先には
長い黒髪を振り乱した
女の顔がくっついており、
切れ長の目の中で、
眼球が空ろに上を向き、
笑っているかのように
耳まで裂けた真っ赤な口の端から、
ドクドクと水っぽい白濁した汁を
犬山さんの頭に浴びせかけている。
きっ、気持ち悪い・・・
ゲェッと吐きそうになった口を
手で押さえた時、
「れ、玲子さん・・・?」
私の横で山村が驚いた声を上げた。
「知ってるの?」と私が聞くと
山村は頷き、
「あぁ、あの人は玲子さんだ。
さっき運ばれた包帯だらけの・・・」
えっ、あの血だらけ包帯
グルグル巻きの・・・
しかし驚いている場合ではなかった。
巨大な芋虫と化した玲子さんは、
犬山さんをグイグイ締め上げ、
今にも握り潰しそうな勢いだ。
「クソッ、やめろ」
中田先生が剣を振りかざし、
玲子さんに切りつけた。
白い肌がスパンと切れ、
切り口から
乳白色の液がドバッと溢れ出る。
ウゴオォォォォーと
恐ろしい声を上げ、
玲子さんが犬山さんを巻き込んだまま、
ドオンと地響きを上げて床に倒れ込んだ。
そして、犬山さんを巻き込んだままでは
動けないと分かったのか、
犬山さんを解放し、
ガラガラ蛇のように鎌首を立てて、
ギョロギョロと目玉を転がしながら、
誰から攻撃しようか考えているようだ。
「ちょっと、山村さん、
あんたあの人と親しいんだろ、
何とか説得してよ。
このままじゃ僕達あの人を
ズタズタにしなくちゃならなくなるよ。
あの人も犠牲者だ、
助けてあげたいんだ」
私は今にも攻撃を仕掛けて来そうな
玲子さんを見ながら、
山村に向かって叫んでいた。
ママ達は玲子さんどころでは無く、
倒れて動かない犬山さんを引きずって
何処かに避難させようと必死だ。
「玲子さん、俺だ山村だ。
この人達は味方だ、
落ち着いてくれ、冷静になるんだ!」
山村が玲子さんに声を掛けてくれたが、
玲子さんの表情は変わらない。
仕方がない、この上は彼女を倒し、
後はママに魂を浄化して貰うしか無い。
私は精神を集中させて剣を構え、
玲子さんの顔目掛けて突進して行った。
トンッと軽やかに床を蹴り、
鳥のように飛び上がった私は
剣を目線に構え、玲子さんの
顔目掛けて剣を突き出した。
ブスッと嫌な音を立てて、
額の真ん中に剣が突き刺さる。
ギャアァァァ・・・と悲鳴を上げながら、
玲子さんがのた打ち回る。
剣を引き抜き着地した私が
留めを刺そうとした時、
「豊、やめなさい。
もうそれ以上想像を膨らませては
いけないわ!」
ママの鋭い声が私の耳を貫いた。
〜つづく
「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。
別荘「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」11話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」
2007.06.25. (00:57)
小説 文学 /
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