退屈
最近シマジロウがおとなしい。ちょっと前まではカスガと一緒に走り回っていたのに今日も朝からゴロゴロ寝転がっている。暑いからクーラーをかけているのだが、かけたらかけたで体がだるい。私でもゴロゴロしたくなるんだから猫だったら当たり前カモ。
ビリー3二日目さすが毎日やっているから筋肉痛は無いけれど、夜になるとすぐに眠くなってしまう。夜にこそやりたいことがいっぱいあるのに、眠気が襲って来るのがちょっと困るなあ。でも朝の目覚めは爽快だ。
1〜57は「続きを読む」の中 58 59 60
山村親子が消えてから、
カーテンの外に出ると、
部屋の中いっぱいに
冷気が立ち込めている事に
気がついた。
立ち並ぶ、
真っ白いカーテンに
囲まれた死の個室から、
微かに聞こえて来るのは
空調機の音か、
それとも死んだ子供達の
寝息なのか。
「みんな待っているのよ、
お父さんやお母さんが
迎えに来てくれるのをね」
ママが鳶色の瞳に暗い影を落とし
呟いた。
言うべき言葉が見つからない。
隣の204号室の死人達は、
多分全員行くべき場所に
行ってしまった。
だけど、この部屋の子供達は
一人で行くには
あまりにも幼すぎる。だから、
このままずっと迎えが来るまで、
眠り続けるのだ。
「玲子さんの娘さんは、
ここには居ませんね」
涼子さんがママに聞いた。
ママは辺りをもう一度見回し、
「そうね、
ここは死の部屋だもの」
と言った。
そうだ、玲子さんの子供は、
まだ生きているんだ。
「確か、珠江ちゃんと言う
名前でしたね」
犬山さんが言った。
そうだ珠江ちゃんだ、
私は玲子さんの子供の名前を
すっかり忘れてしまっていた。
「子供達をみんな
昇天させてあげたいけど、
親がまだ居るかもしれないから
ここは後回しにしましょう。
出来れば親と一緒に
行かせてあげたいわ」
ママはそう言ってから、
さあ次の部屋へ行きましょうと
みんなを促した。
廊下に出た我々は、
203号室の真向かいにある
201号室に入る事にした。
しかし201号室の
ドアの前に立った私は
不安と期待が
入り混じったような
奇妙な気持ちに襲われた。
これはひょっとしたら、
また異次元に続いているドア?
でも、たとえ
このドアの向こうが
異次元であったとしても、
私は入っていかねば
ならないのだ。
ママに知らせようかと思ったが、
ママはもうみんなと一緒に
中に入ってしまっていた。
私が最後か・・・
私は深く息を吸い込み、
ドアの中に一歩足を踏み出した。
視界がグニャリと歪み、
いきなり甲高い子供の声が
耳に飛び込んで来た。
そして次第に辺りの景色が
見えて来ると、
そこは見覚えのある
場所だった。
昭日町の私の家には
ドアがたくさんあって、
考えも無しにうっかり開けると
とんでもない世界に
繋がっている。
あの日、日頃開けない部屋の
ドアを開けてしまった為に、
保育園らしき所に出てしまった。
その保育園と全く同じ風景が
今私の目の前にある。
砂場で山を作り、
トンネルを掘って
遊んでいる子供・・・
三つあるブランコが
交互に揺れている。
簡易プールで水遊びをしている
小さな子供・・・
子供達の声が、まるで
真夏の蝉時雨のように
私の全身に降り注いで来る。
人工に造られた物なのか、
はたまた異次元だからか、
空の色が不自然に蒼い。
先生達はスカイブルーの
ワンピースの上に
真っ白いエプロンをつけ、
遊んでいる子供らを
見守っていた。
〜つづく
「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。
別荘「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」11話目ブログに書き溜めたものをアレンジしておりますが、
暴力シーンやグロテスクな表現が含まれておりますので
ご注意ください。
出版「ハレルヤ」「ひとでなしの倫理」電子出版「短編集 闇の中の住人」