クロ
原稿を書いている時の膝の上は、いつもフクと決まっていた。
それが最近ではクロが乗っている。
クロ、ブチ、チャオは我が家で一番の高齢になったから、出来るだけ側に置いて大事にしてやりたい。その思いが通じて、フクは私の膝の上をクロに譲った・・・・
なあ〜んて美談は無いだろうなあ。でも、もしそうならフクは何て賢い良い猫だろう。
1〜57は「続きを読む」の中 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67いきなり恩他の顔から笑いが消えた。
ソファーの背もたれにドンと
背中を持たれかけさせ、
恩他は平然とした顔で
私の顔をまじまじと見ている。
「君が今いるのは、私がこの病院の
研修医をしていた頃の時代だ」
私は恩他の過去に来ているのか・・・
「医大に行く者は大抵親も医者、
かなり家庭が裕福でなけりゃ、
行く事が出来ないもんだ。
私の家は貧しくは無いが、
ごく普通のサラリーマンの
父親で・・・」
恩他は何を言おうとしているんだろう。
自分の生い立ちを話したいようだが、
こいつには今までさんざん騙されて来た。
「そんな話しはもう止めろよ、
僕はあんたの生い立ちなんて
聞きたくないよ。
あんたの言う事は嘘ばかりだからね、
ママの店に初めて来た時から
あんたは嘘をつき続けている」
私が、もううんざりなんだよと
言わんばかりにそう言うと、
恩他は一瞬とても哀しい目をした。
えっ、と思ったが、
騙されるもんか、これも演技だ。
「そうか・・・
聞きたくないか。
でも君は私に何者だと聞いたね、
君達に何を要求しているのか、
とも 聞いて来た。
それを今から説明しようと
思っていたんだがね」
恩他は意地悪い笑みを
口元に浮かべた。
「ああ、だからさあ・・・
カヤクはいらないんだ、
要点だけを話せよ。
あんたの話しには嘘が多すぎる。
そんなお涙頂戴を話してくれても
僕はあんたに同情なんて
しないからね」
私がそう言うと、
恩他は薄い唇を歪ませ、
「言いたい事を言ってくれるじゃないか」
と言ってゲラゲラ笑い出した。
「それじゃ、信用出来ないんだけど
一応質問したって事か?
そりゃ君ぃ、とっても矛盾しているよ」
うっ、確かにそうだ・・・
「そうか、そう言うのなら
今すぐ決着をつけるしか無いな」
私はソファーから飛びのき、
背中に縮めて隠してあった
神剣を引き抜き、
恩他の鼻元に突きつけた。
ちなみにこの神剣は、使わない時は
小さく縮んで背中に隠して置くように
なっているのだ。
「まあまあ、豊君待ちたまえ」
恩他は苦笑いを浮かべて
手で押し止める格好をした。
「何がまあまあだ、
それより、そんなに腕を
前に出したりしていいのかい、
僕が剣を振り下ろしたら、
スッ飛んじゃうよ」
私がそう言ってやると、
恩他はニヤリと笑い
「やってみたまえ」と言って
グイッと前に伸ばした為に腕を切り、
横に走った裂傷から
ポタポタと血が滴り落ちている。
私は切られる恐れがあると
忠告しただけだ。
戦う意志の無い者の腕を
さあ、切れと言われても
切れるはずが無い。
いくら悪人でも、
今目の前にいるのは人間だ。
生々しい傷を見て、
私が動揺しているのが分かったのか、
恩他はぎゅっと握りこぶしを作り、
「やると言った以上はやれ!
その根性もないのなら、
二度と口にするな」
と低い声で私を叱りつけた。
たちまち私は、
自分の愚かさを指摘されて
叱られているような気持ちになった。
手の中で用済みとなった剣が、
シュルシュルシュルと縮んで行く。
その時、頭の中にいきなり
ママの声が飛び込んで来た。
「豊、恩他のペースに乗せられちゃダメ!」
〜つづく
「ママの店」(激闘編)をHPにUPしました。
別荘「怪談奇談」に
(幽霊屋敷) 連載小説「ドタバタ 新米刑事とベテラン刑事」12話目
2007.09.07. (00:27)
小説 文学 /
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