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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 改訂版 『ママの店』



・・・前回までのお話・・・  

「おい!おまえ、何で信二君を苛めるんだ」

しかしそいつは私を無視して、
下を向いたまま黙っている。

「聞いているのか?こっちを向けよ」

怒鳴りながら観察すると、首から下の筋肉が
まるで重量挙げの選手かゴリラのようだ。
さぞかし喧嘩慣れしていて強いだろう、
しかし私だって負けちゃいないぜ。
いくら強いと言っても、
お前はチンケな苛めしか出来ないカス野郎だ。
そんなお前が私に勝てるわけがない。

「おいっ、シカトかよ!」

無視されたことでよけいに腹が立った私は
身を屈め、ゴリラの胸倉をつかんで
引きずり上げようとしたが、
何と私の指はそいつの体を素通りしてしまい、
勢い余ってもう少しで頭から床に激突する所だった。
ひゃあ、危なかった・・・でも何でだろう?
何でつかめなかったんだろうと考えていたとき、
連中の中でいかにもシンナー中毒の末期らしい、
痩せて顔色の悪い少年が口を開いた。

「先公(先生)にチクッたのがあいつじゃなかったって、
もうちょっと早くにわかっていたら、
あんな酷いヤキを入れなかったんだけどなあ」

それを聞いて、ゴリラ以外の少年達が
口々に喋り出した。

「ヤキなんかじゃないよ、あれは拷問だ。
みんな頭が変になっていたんだ、
それでなきゃ、あんな酷いこと出来ないよ。
それに、あいつは無実だって
本当はみんな知ってたんじゃないのか?
ただ、たんに信二が鬱陶しかっただけなんだよ。
俺がそうだったからわかるんだけど・・・」

「うん、信二ってさあ、俺達の仲間のくせに
モク(煙草)もやらないし
アンパン(シンナー)もやらなかったじゃん?
何かイライラさせる奴だったんだよなあー」

「おまえら何言ってるんだよ、
それじゃまるで信二が自殺したのは
当たり前みたいじゃないか。
信二は俺達の仲間なんだぞ。みんな思い出せよ、
あいつは優しくて思いやりがあって
いい奴だったじゃないか。
鬱陶しいなんて言うな、
俺、あいつの笑った顔が忘れられねえよ・・・
あいつが裏切るわけなんてないのにさ、
俺たち馬鹿じゃねえの?
俺、俺、何であんな酷いことやっちまったんだろう」

「うおぉぉぉぉー!」

今まで黙って下を向いていたゴリラが
いきなり大声を上げたので、
仲間はもちろん教室にいる他の生徒達の視線が
みんなゴリラに集中した。一瞬辺りが、
水を打ったようにシーンと静まり返ったとき、
ゴリラは目を真っ赤にして立ち上がり、
ヨロヨロと信二君の机に向かって歩き出した。
そして崩れるように机の横に膝を突くと、
花瓶を両手でつかみ頭を垂れた。

「しんちゃん!ごめん、ごめんなあ・・・」

静かだった教室に
クスクスと笑い声が聞こえ始める。
生徒達の驚きはすぐに嘲りに変わり、
お互いの耳元で何かを言っては
意地の悪い笑い声を漏らしている。
笑わないのはゴリラの仲間だけだ。
大声で詫びて泣き崩れるゴリラの側に
仲間が全員集まった。
みんな心の素直ないい奴らじゃないか、
私は胸がポッと温かくなるのを感じた。
それにしてもクラスの連中は最低だ。
何をいつまでも笑ってやがる・・・

「信二君、君も見ただろう?
みんな心から後悔しているよ、
もう許してやってもいいんじゃないかな」

私の隣で一部始終を見ていたから、
てっきり彼も仲間を許しているとばかり思って声をかけた。

〜つづく

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2008.02.16. (09:25) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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