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樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
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オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 改訂版 『ママの店』



・・・前回までのお話・・・   

心から詫びて泣いている姿を見たら、
誰だってもう許してもいいと言う気持ちになるだろう。
ところが信二君の顔を見て、
私は自分の考えが甘かったことに気がついた。
彼は冷めた目をして、
黙ってゴリラとその仲間達を見つめている。
その目の中には、許してたまるかと言うような
激しい怒りの炎が燃えていた。
あれっ、これは何だ?
いつの間にか教室側と私達がいる側の間に
透明なガラスの壁のようなものが
出来ているのに気がついた。
これって今まで見えていなかったけど、
もしかして次元の壁?触ろうとして手を近づけると
壁は逃げるようにスッと後ろに下がる。
どうやら次元の壁は
私の動きに合わせて移動しているようで、
さっきゴリラの胸倉を
つかもうとしてつかめなかったのは、
この壁が邪魔をしていたかららしい。
なるほど、こう言うわけだったのか・・・
と今は感心している場合ではない。
恐る恐る信二君?と声をかけたとたん、
彼は突然カクンと背中を曲げて
顔を苦しそうに歪め、グエーと言いながら
口から白濁した水を吐き出した。
とっさに片足を宙に浮かせ、
被弾を避けたから良かったものの、
危いところだった。
床にビシャッと広がった水の中で、
何やら黒いものが動いている。
何だろうと思い顔を近づけて良く見ようとしたとき、
第二のゲロが降ってきた。
今度は逃げ切れず思いきり頭から被ってしまい、
こう言うときは汚いと思うよりも、
情けなくて惨めな気持ちになるものなんだと
初めて知った。
鼻の穴に何かがしがみ付いている感じがして
摘まみ取って見ると、
それは半分に千切れたゴキブリで、
瀕死の力を振り絞り私の鼻の穴に
触手を引っかけてぶら下がったものの、
摘まれた瞬間に事切れたらしく、
もうピクリとも動かない。
何でこんなものが・・・
自分でも驚くほどの余裕だ。
いつもの私ならすぐさま悲鳴をあげて
投げ捨てるだろうに、今はこの異常事態に
感覚が麻痺してしまったのか、
不思議と冷静に観察することが出来た。
ゲロの中にコレがいたとすると、
それじゃさっきの黒い物はもしかして・・・・
空ろな目で足元を見ると、
広がったゲロ水の中で数十匹のゴキブリが
のた打ち回っている。
あまりの気持ち悪さに
感覚が正常に戻り、まだ千切れたゴキブリを
持っていることに気づいた私は、
すぐさまソレを爪で弾き飛ばしたが、
たちまち強烈な吐き気に襲われた。

「ウップ!し、信二君大丈夫かい?」

吐かないように右手でしっかり口を押さえながら、
信二君に声をかけたとき、
ママから聞いた話しを思い出した。
彼はトイレの水を飲まされただけでなく、
ゴキブリまで食べさせられたんだ・・・・
信二君は腹を押さえて苦しんでいたが、
やがてグエエーとばかりに第三のゲロを、
しかも今度は止まることなく
滝のような凄い勢いで噴き出し始めた。
もちろんゲロの中には
半殺しになったゴキブリが大量に混じっている。
止まることなく放出されるゲロ水の水位が、
膝の辺りにまで上がってきた。
ズボンの裾から入り込んで来る
ゴキブリの不気味な感触に耐えながら、
どうしようかと考えあぐねているとき、
教室側でシンナー中毒が悲鳴を上げ、
同時に教室中が大騒ぎになっていた。
何と、次元を超えたゲロ水が、
信二君の机の引き出しを噴出し口にして、
教室の中にも流れ込み始めたのだ。

〜つづく

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2008.02.18. (09:59) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
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