
・・・前回までのお話・・・
1 2 3 45「け、けんちゃん!しんちゃんの机から水が、
あっゴキブリも出てきているよ」
ゴリラの名前はけんちゃんと言うらしい。
ギャーッ!生徒達は悲鳴を上げながら水を蹴り、
出口目がけて走り出したが、
ドアはピシッと鋭い音をたてて閉鎖してしまった。
開けようとしてもロックがかけられたらしく開かない。
男子達が狂ったようにドアを蹴り、
体当たりして壊そうとしたが、びくともしない。
ドアがダメなら窓からと、
今度は一斉に窓に走り寄ったが、
窓もピッチリ閉められてしまっている。
どけっ!と一人の男子が喚き、
パイプ椅子を振り上げ、
窓ガラスを割ろうとしたが、
ガラスは魔法でもかかっているみたいに
びくともしなかった。
脱出不可能・・・絶望の色が漂うゲロ水の中で、
女子達は一塊になって立ちすくみ、
抱き合ってシクシクと泣き始めた。
教室は完全に密閉されたらしく、
あちらでもゲロ水のプールが出来上がっている。
「信二君、君のゲロが大変なことに・・・うわっ!」
彼を見た瞬間、サーッと私の全身に悪寒が走った。
「な、何だこりゃ?」
今や信二君の体は怪しく虹色に光り、
体全体が粒子と化して、
電波の悪い映像の様に歪みながら
激しく流動し始めている。
そのとき私はある確信を持った。
彼はきっと恨みを晴らす為に、
あっちの世界にいこうとしているんだ。
これから起きる恐しい光景を想像して、
私の顎がカタカタと鳴り始める。
そして予感したとおり、
彼の体は一瞬ビカーッと眩しく光り、
ビビビッと言う音を最後に次元の壁を突き抜けた。
ゴキブリ混じりのゲロ水も
一滴残らず彼と一緒に移動したらしく、
膝の上まであった水はいつの間にか引いており、
ビッシリ浮いていたゴキブリもいなくなっている。
その代わりあちらの世界では
溜まった水がいきなり渦を巻き始め、
渦の中心からズボボボッと出てきた信二君を見て、
生徒達の表情は新たな恐怖に凍りついた。
たちまち教室は阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、
怒号と悲鳴が飛び交う中で、
一人の男子が心臓麻痺でも起こしたのか
口からブクブクと泡を吹き、
白目を剥いたまま水の中に沈んでいった。
信二君を苛めていた例の五人は
全員顔面蒼白になり、ガチガチと歯を鳴らせ、
立ったまま動かない。
早く信二君をこちら側に連れ戻さなきゃマズイ。
私は彼があっちにいく前に
激しく放電していたことを思い出した。
あれはきっと電気だ、
信二君は体から電気を出していたのだ。
どうやったら電気が出てくれるのだろうかと考えて、
腹に力を入れてきばったが・・・
プリッ!電気が出るどころかガスが出た。
〜つづく
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2008.02.20. (11:08)
小説 文学 /
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