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改訂版 『ママの店』
・・・前回までのお話・・・
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―アボカド―
『ママの店』にいった。カウンターには相変わらず
あの総合病院の先生がいて、
病院内での愚痴をママに聞いてもらっている。
こんにちはと挨拶すると、
先生は私に背中を向けたまま、
グラスを目の高さくらいにまで上げて軽く振り、
中の氷をカランと鳴らせて見せた。
ママにコーヒーを頼み、
私は自分の座る場所と決めている
壁際のソファーにいき、深く腰を沈めて、
ぼんやりとしていた。
「いらっしゃい、今日は早いのね」
コーヒーをテーブルの上に置いた後、
ママも私の向かい側に座った。
「ねえ、あれから信二君はここにきた?」
ママはニコニコしながら、きてないよと言う。
この店を訪れる客は、
まだ自分への答えを出せない人ばかりなんだと、
随分前にママから聞いたことがある。
信二君が自分を苛めた連中を許し、
消えていく瞬間見せた笑顔を思い出した。
あのときの彼の笑顔は
とても満足気で幸せそうだった。
そうか、信二君は
答えを見つけることが出来たんだ。
だからもうここへはこないし、
私とは二度と会うこともないだろう。
人と人との出会いと別れの儚さを噛みしめ、
ママの作ってくれたコーヒーが、
今日はやけに苦く感じるなあと思っていたとき、
ドアチャイムが鳴る暇もなく、
バタンと大きな音をたててドアが開かれた。
驚いたのは私やママだけでなく、
カウンターにいる先生も
ビックリしたような顔をしている。
強い風とともに店の中に入ってきたのは
背もあまり高くない小太りした中年の男で、
後ろ手で風を押し戻すように
グイッとドアを閉めた後、
滑るようにカウンターの席についた。
茶系の格子柄のシャツの上に
同系色のブレザーを着た男の年は
四、五十代くらい。
髪をオールバックにしており顔は色白、
下がった目尻とタラコ唇が特徴だ。
黒いセカンドバックを
カウンターの上にポンと置いた後、
男は店の中をキョロキョロ見回して
チッと舌打ちした。そしてその後小さな声で、
流行っていなさそうだなと言ったのを
私は聞き逃さなかった。
いつの間にかママがカウンターの中に入っており、
男の前に立っている。
「いらっしゃいませ」
ママが満面の笑顔で挨拶したのに、
男は笑いもせずメニューと白けた声で言った。
何んと言う失礼で横柄な野郎だ、
こんな奴に何も作ってやる必要なんかない。
私の怒りが沸騰しかけていたが、
ママが別に気にしているふうでもないので
もう少し様子を見ようと我慢した。
ママがメニューを渡した。
〜つづく
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