筆者  活動状況  オンライン小説  新刊+出版本  更新情報 ブログ
メルマガ Link HOME MAIL


fc2-BlogRanking   Blog Entry
管理人

樋口裕子

  • 名前:樋口裕子
  • HP⇒ハレルヤ

    モバイル版を開設しました!


    毎日の「ママの店」の更新情報を、お届けするメルマガを始めました!
月別ログ
カテゴリ
最新記事
コメント
トラックバック
リンク




2008.03

1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

オンライン小説&出版本紹介のHP「ハレルヤ-樋口裕子-」のブログ、夢日記や短編小説など書いていく予定です。(コメントの欄に業者の方の宣伝はご遠慮願います)
 改訂版 「ママの店」



前回までのお話・・・       10 11 12 13 14 15

「そうよ、あなたは死んでいるのよ」

ママがアボカドの頭の上に
サーッと手をかざすと、
黒いレースの袖がヒラヒラと風に舞った。
それはほんの数分の間だったが、
アボカドは今自分の人生を
見ているのだと私は思った。
放心状態から目覚めたアボカドの目から
たちまち涙が溢れ出る。

「俺は・・・・俺はいろんな人を
不幸にしたんだな。妻にも諭されたが、
直そうとしなかった。
人の悪は咎めるが、自分の悪には
がつかない大馬鹿者だった」

「あんたはお婆さんが
倒れてきたときに避けただろ?
そんな酷いことをするから
バチが当たったんだよ」

私がそう言うと、アボカドは
床にひざまずき激しく泣き出した。

「うん、お婆さんには、
も、申しわけないことをした。
こんな俺は死んで当然だ。でも、
俺が死んだことで家族まで
不幸にしてしまったよ。妻と娘らは
これから先どうやって
暮らしていくんだろう・・・
知っていたよ、妻はいつも
俺と娘らの間で苦しんでいたんだ。
俺は娘らに嫌われていたからなあ――
二人の娘にとって俺は、
さぞかし嫌な男だっただろうな、
尊敬出来ない父親だったに違いない。
い、いつの間にかショク、ショクジモ
ヒャゾクトベチュニ・・・」     

アボガドの顔が涙と鼻水でグジャグャだ。
それに鼻水のせいで、もはや
何を言っているのか全くわからない。
ママが壁に取り付けられている棚から
タオルを一枚取り、
アボカドにそっと手渡した。
アホカドは何度も頭を下げ、
そのタオルでしっかり鼻をかんだ後、
また話し始めた。

「俺は自分の部屋で
一人ポツンと食事して、
食堂では妻と子供が一緒に食べている。
楽しい笑い声が聞こえてきてねえ、
本当に寂しかったよ・・・
ちょっとしたことで腹を立て、
自分の気がすむまで怒鳴り散らすなんて
最低な人間のすることだ。
こんな嫌な性格が、
自分から家族を遠ざけているってことに
早く気がつくべきだった」

タオルを顔に当て
号泣するアボカドを見ても、
私は全然同情する気にはなれなかった。
こいつのせいで、外の人達の人生は
メチャクチャになったのだ。

「あんたはトラブルメーカーだったんだよ。
あの人達の人生を返してやれよ!」

私は怒りを込めてドアを指差した。
ドアに張り付いている
たくさんの顔を見たアボカドは
カッと目を見開いて真っ青になり、
全身をブルブルと震わせ始めた。

「うわ、ありゃ何だ!」

病院の先生も
ドアに張り付いている人達に気がつき、
椅子からずり落ちそうになっている。

「あの人達はな、あんたの為に・・・」

まだ言い足りない私を止めるように、
いきなりママが口をはさんだ。

「あなたが心から謝まれば、
きっと許してくれるわ。
私が一緒についていってあげるから
外に出ましょう」

アボカドはすがるような目でママを見て、
イヤイヤをするように首を横に振っている。

「さあ、勇気を出して」

ママに促され、ようやくアボカドは
心を決めたのか、深呼吸を一つしてから
ドアに向かって歩き始めた。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.31. (08:44) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版 「ママの店」


前回までのお話・・・       10 11 12 13 14

包丁を持った母親の手が止まる。

「お姉ちゃん、そりゃまずいよ。
あんなんでもいないよりずっとマシなんだからね」
「毎日毎日、怒鳴り声を聞くのが嫌なのよ。
頭が変になっちゃうわ」

姉は両耳を手で押さえ、
目を閉じてブンブン首を横に振る。
さっきまで笑っていたのが嘘のような暗い顔だ。

「あんた達いいかげんにしなさい、
自分が何を言っているのかわかっているの?
だいたいお父さんのことをあいつだなんて・・・」

我慢出来なくなった母親が
二人の娘をきつく叱ったそのとき――

「今何て言った、俺は客だぞ!」

またもやアボカドの怒声が轟き、
その後シーンと静かになった。
母親は黙ったまま
切り終わった大根を鍋に入れ、
娘達は黙々と食卓に食器などを並べ始めた。
父親のことを、あんなんでもいないより
ずっとマシだと言った妹の方はまだいいが、
耳を塞いで嫌々をしていた姉娘の心は、
相当病んでいるに違いない。
いやそれよりも、
亭主と娘の間に立った母親の心中は・・・・
私はアボカドの前で泣いていた奥さんを
思い出していた。
イヤダイヤダ、もうこれ以上
こんな場面を見せられるのはゴメンだ。
重苦しくなった空気に
耐えられなくなった私は目を閉じた。

「ママ、もうこんな所にいたくないよ、
お願いそっちに帰らせて・・・」

それはそんなに長い時間ではなかった。
スッと辺りの空気が変わるのを感じたので、
恐る恐る目を開けてみると、
私はやっと『ママの店』に戻っていた。
いつの間にかママはアボカドの側にいっている。

「ほっといてくれ!」

アボカドがいきなり大声を出して立ち上がった。
その声で、酔っ払ってカウンターの上で
居眠っていたらしい先生が驚いて飛び起きた。

「おい!ママにおかしなことをしたら承知しないぞ」

私はすぐさまママの側へ飛んでいき、
アボカドを怒鳴りつけた。
アボカドは目を細め、
私の頭から足先まで見下ろしている。

「何んだ?おまえは」

「ママの友人だ、文句あるか!
おいっ、表に出ろ」

私はグイと身を乗り出し、
アボカドの前に胸を突き出してやった。
私の剣幕にビビッたらしく、
アボカドは顔色を変えて腰を引いた。
この男は自分より弱い者にしか
威張れないのだ。
私の身長はアボカドより高く、
あっちは弛んだ脂肪、こっちは鍛えた筋肉だ。

「大丈夫よ落ち着いて、
この人自分のしてきたことを本当は
後悔しているの。それを知られるのが怖くて
興奮しているだけなのよ」

「黙れ、俺は後悔なんぞしてはいない!」

アボカドは怒りで顔を真っ赤にして喚いた。

「俺は悪くないぞ、不愉快なやつらだ!
もうこんな店出てやる。
カネはいくらだ千円もあれば足りるだろう、
コーヒー一杯だからな」

アボカドは財布を出そうとして
バッグのチャックを開け、
中を見たとたんアッと声を出した。
私もヒョイとのぞき込んでやったら、
何とまあー空っぽだ。
赤かった顔が、たちまち色を失い、
ジャケットやズボンのポケットをまで
ひっくり返して探していたが、
出てくるのはホコリばかり。

「金を忘れてきたようだな、
後で持ってくるから・・・」

アボカドのエンジンがしぼんでゆく。
私が何か言う前に、ママが先に声をかけた。

「この店にくるお客様には、
お金なんて必要ないんです」

アボカドは怪訝な顔をした。

「しかし、メニューには――」

「良く見て、何処にも値段なんて
書いてないでしょう?」

ママはカウンターの上にある
メニューを取って彼に渡した。
食い入るようにメニューを見るアボカド、
メニューには何も書かれていなかった。

「白紙じゃないか、
何も書いていない。
さっきは確かに品書きがあったぞ」

「あなたが望めば出てくるわ」

ママがパチンと指を鳴らすと、
たちまちメニューに品書きが浮き出てきた。
だらしなく口を半開きにして
呆然としているアボカドにママが言う。

「死人にお金はいらないわ、
ここは死んだ人がくる場所なの」

「死んだ?俺が?」
アボカドが口をポカンと開いた。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.25. (10:11) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版 「ママの店」


前回までのお話・・・       10 11 12 13

うえっ、冗談じゃないよ停電かなあ?
焦りかけたとたんパッと明るくなった。
しかし私のいるところはもう和室ではなく、
どうやらここは台所らしい。
さっきアボカドの前で泣いていた奥さんが
料理を作っていて、
カウンターをはさんで向こう側にあるテーブルでは、
二人の娘が椅子に座って
ペチャクチャ話しをしている。
楽しそうに笑ってはいるが、
こりゃどうも悪口らしい。それも父親の悪口だ。
二人ともよっぽど父親を嫌っているらしく、
聞いているこっちの胸が痛くなるような会話だ。
まな板の上で大根を切りながら
時折娘達の方をチラチラ見ている母親の顔が、
何とも言えないほど悲しげに見える。

「あんたらの教育がなってないから、
こんないいかげんな社員が出来るんだ!」

いきなり聞こえてきた怒鳴り声に、
私は思わず首をすくめた。
アボカドの声だ――

「おぉ、恐っ・・・凄い声」

妹もビックリしたように目を丸くしている。

「はあー、今きているのは電気屋だっけ?
このあいだ郵便屋を呼んだときも凄かったけど、
今回のはまた一段とパワーアップしてますねー」

溜息を吐き出し、冷たい声で姉が言う。

「さっきトイレに入ろうとしたらいきなり、
土下座しろっ!てお父さんが叫んだんだよね、
私が言われたんだと思ってビビッちゃったよ。
それからね、たぶん電気屋さん達は
家にきてからずーっと 正座したまんまなんだよ。
誰が足を崩していいと言った!って
お父さん凄い剣幕で怒鳴ってたからね、キャハッ」

妹が好奇心に目をキラキラさせながら
嬉しそうに言う。

「良子(よしこ)、あんた笑いごとじゃないよ。
あいつに酷い目に遭わされた人達の恨みは
相当なものよ。その恨みが全部
あいつにだけいくのならかまわないけど、
私らにも降りかかってくるかも知れないじゃない。
そんなの嫌だよ」

妹の名前は良子と言うらしい。

「そうか、恨みって恐ろしいもんね。
外から帰ってくるのを待ち伏せされて、
ナイフか何かでグサッ、ブスッてやられたら・・・
ひゃん、怖い!」

「カナズチでガン!てのもあるし、
ガソリンかけられて
焼き殺されたりするかも知れないよ」
姉の言うことは恐ろしい。
しかし二人は何がおもしろいのか
ケラケラ笑いあっている。
母親は顔を上げず、黙って調理を続けているが、
その心中は決して穏やかではないはずだ。

「いっそ殺されちまえばいいのよ」

いきなり真顔になった姉がボソッと呟いた。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.20. (21:34) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版 「ママの店」


・・・前回までのお話・・・       10 11 12

お婆さんが弱々しい足取りで
近づいてくるのを見て
アボカドが顔をしかめていたのは、
何もお婆さんが心配だったからではなく、
側にやってこられるのが嫌で
顔をしかめていただけだったらしい。
幸いお婆さんは
ホームの上で尻餅をついて無事、
アボカドは天罰を受けたのか、
足を踏み外して線路に落ちた。
その後私は、人が電車に轢かれる瞬間を
目の当たりにすることになる。
落ちたアボカドの上を、
ホームに入ってきた特急電車が
プアーッ!と大きな警笛を鳴らしながら
フルスピードで通過していった。
ホームに座り込んでいるお婆さんの顔に
ビシャッと血飛沫が飛んだが、
何が起こったのかわからないらしく
血だらけのままポカンと口を開いている。
電車が急ブレーキをかける鈍い音が
構内に響き渡ると、
あちこちから人が集まってきた。
大変だ人が落ちた!事故が起こったぞー!
キャー血だわ、血が飛び散っている!
たちまち怒号と悲鳴が沸き起り、
辺りは黒山の人だかりが出来て
大騒ぎになった。
恐る恐る下をのぞき込んだ私は、
グジャグジャに潰れた
トマトのようになったアボカドの頭が、
線路の上にこびり付いているのを見て、
思わずゲーゲーと吐いてしまった。
何んと言う死に方だ・・・
吐き気が治まると今度は
心臓がドキドキして苦しくてたまらない。
目を閉じて
気持ちを鎮めようとしている間に、
私はまた別の場所に移動させられていた。

今度移動させられたのは
六帖くらいの和室、
アボカドが奥さんらしき女性と
座敷机を挟んで向かい合わせに座っている。
まだ死んでいない彼を見て、
私は複雑な気持ちになった。
アボカドは
親に叱られたときの子供みたいに
オドオドした目で
奥さんの顔色をうかがっている。

「もう、情けないったらありゃしない・・・
あなた自分のしたことがわかっているの?
あの人会社をクビになるかも知れないのよ」

それを聞いたアボカドが
何か言いかけたのを奥さんは手で止めた。

「ダメ!お願いだからもう何にも喋らないで、
あなたの言いわけなんて聞きたくないわ。
あなたが家に人を呼びつけて、
大声で罵ってばかりいるから
子供の心も離れていくのよ。
二人ともあなたを嫌っているわ」

奥さんはエプロンを顔に押し付けて
シクシク泣き出した。
どうすんだよ泣かせちゃって・・・・
重い気持ちで
下を向いたままのアボカドを見ていたら、
いきなり電気が消えて真っ暗になった。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.15. (11:24) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版「ママの店」


・・・前回までのお話・・・   

10 11

あの人、あの人と言っても
ここには病院の先生もいてややこしいから、
これからあの野郎のことを
アボカドと呼ぶことにする。と言うことで、
ママの目がアボカドを見る。

「いつになったら料理が出てくるんだ!って
いきなり大声を出したから、
みんな驚いて一斉にあの人を見ていたわ。
すぐに店長が飛んできて、
申しわけありませんでした今から
大急ぎで作りますと言っても、
そんな問題じゃない!って怒り出したのよ。
そこでいったい誰が注文を聞いたのか
調べた結果、彼女だとわかっちゃった。
そりゃもう平身低頭に謝ったけど
なかなか許して貰えなかったわ。
他の客達の好奇な視線を浴びながら、
泣くだけ泣いて泣ききって、
とうとう彼女の心は壊れちゃったの。
それ以後家から一歩も出なくなって、
自分の部屋に引篭もったままよ。
手首はズタズタ、カミソリの痕だらけ。
あのぶんだと彼女も
もうすぐこっちの住人になるわね。
あの青い背広を着た人も、あの白いヒゲの人も、
その隣にいるあの人も、
みんなあそこで暢気にコーヒーを飲んでいる
彼を恨んでいるのよ」

アボカドに聞こえないように気をつかい、
小さな声で喋った為に疲れたのか、
話し終わったママはフウーッと深い溜息をついた。
そうだったのか・・・でも、
何でアボカドがここにいるのだろう?

「ちょっと目を閉じてみて、見せたいものがあるの」

ママがまた小さな声で言った。
目を閉じて心をカラッポにしてと
言われるがままにしていると、
ガーッという雑音の後から音声が流れてきた。

『特急電車がホームに入ってきますので、
白線から外にお下がりください――』

ここは何処かの駅なんだな、あれ?
あそこに立っているアホ面は、アボカドじゃん。
アボカドが私の斜め前方五メートルくらいの位置に、
今と同じ服装でホームに引かれた
白線辺りに立っている。そして、向こうから
お婆さんがヨタヨタとした足取りで
近づいてくるのが見えた。
お婆さんは青白い顔をしていて、
とても具合が悪そうだ。
アボカドもお婆さんに気がついたらしく、
顔をしかめ心配そうにしている。
私は何となく気になり、アボカドの横に移動した。
信二君のときで経験しているから、
私の姿はアボカドはもちろん
誰にも見えないはずだ。
案の定私が横に立ってもアボカドは気がつかず、
お婆さんの方ばかりチラチラ見ている。
やがてお婆さんが私とアボカドの間を
通り過ぎようとしたとき、
眩暈でも起こしたのかフラッと体が傾いた。
危ない!お婆さんを抱き留めようとした私の腕は、
またもやみごとに空振り。
あのときと同じで私には彼女に触れることすら
出来ないのだ。でも、アボカドがいるから大丈夫。
私は心の中でアボカドが
彼女を支えてくれるものとばかり思っていた。
しかし・・・何とアボカドは、
お婆さんが倒れ掛かってきた瞬間に
飛びのいたのだ。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.11. (23:01) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版 「ママの店」


・・・前回までのお話・・・   

10

「えっ、あいつなの?」

ママは暗い目をして頷いた。
ママは、この店にくる客のことを、何でも知っているのだ。

「あの人はね・・・」

ママがアボカド野郎に聞こえないように、
小声でドアの向こうにいる人達の話を始めた。

「ほらあの青いジャンパーを着た人、
あの人は家電メーカーに雇われている
修理屋さんなの。
真面目な人でね、朝早くから夜遅くまで
テレビやビデオの出張修理をしていたわ。
それがある夏の日、運が悪かったとしか
言いようのない出来事が起ったの。
夜になっても三十度を割らない
熱帯夜が続いていて、
寝不足になっていたのよね、
いつもなら客のどんな質問にでも
笑顔で丁寧に応えるように努めていたんだけど、
そのときは疲れていて
ちょっとした言葉使いで客を怒らせてしまったのよ」

「そうか、その客ってのがあいつだったんだね」

私はチラッとカウンターを見た。
その通りと言うように、ママは頷き、話しを続けた。

「ほら、腹を立てたら
すぐに社長を出せって喚く人がいるでしょ、
あの人は正にソレ。怒り出したら最後、
自分の気がすむまでトコトンやるの。
修理屋さんは土下座までして謝ったけど
許して貰えなかった。
結局は彼の会社の上司まで家に呼びつけて、
お前の会社は社員に対する教育がなっていないって
何時間も説教し続けたのよ」

「ひえー、普通そこまでやる?」

「ええ、トコトンやらないと気が済まない人なのね。
まあ、それで彼はクビになっちゃったってわけ。
会社にしてみれば
修理屋の代わりなんていくらでもあるから、
痛くも痒くもないんでしょうけれど、
辞めさせられた人はたまったもんじゃないわ。
なかなか次の職って見つからないものなのね、
失業保険もいつまでも貰えないし、
たちまち家のローンと子供の学費に困った奥さんは
ノイローゼになって入院。
その入院代も払えない自分に絶望して
彼は首を吊って自殺を図ったの。
今親族の援助を受けて集中治療室にいるけど、
もうすぐこっちの人になるかもね」

「じゃあ、もうすぐこの店の中に入ってくるってこと?」

「そうね」

ママは暗い目をして頷いた。

「あのウエイトレスさんはね・・・」

ママは時々カウンターの方を気にしながら、
一層声のトーンを落とし、
掠れて消えそうな声で
話をウエイトレスの格好をした若い女性に移した。

彼女もジリジリと焼ける音が聞こえてきそうなほどに、
恨みのこもった熱い視線をあいつに向けている。

「ファミリーレストランに勤めていたんだけど、
あの日は日曜日で
店は家族連れの客でいっぱいだった。
きっと忙しすぎて頭がボーッとしていたのよね、
一人できていた客の注文を
調理場に通すのを忘れてしまったの。
その客ってのが、あの人だったから
大変なことになったのよ」

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘

2008.03.08. (19:08) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
 改訂版 『ママの店』


・・・前回までのお話・・・   


「何でもありますよ、お客さんのお望みのものが」

ママが優しく声をかけてやっているのに、
男は目を丸くして口をすぼめ、
人を小馬鹿にしたような顔でホホーと言った。

「と言うことはメニュー以外にも出来るってことなの?」

気持ちの悪い猫なで声だ。
はい、と言ってママが笑顔で頷く。

「じゃあ、メニューには書いてないけど、
アボカドジュースを貰おうか」

男は平然とした顔でそう言った。
ぬぁにい?よりにもよってアボカドかい!
ママがちょっとでも困った顔をしたら
男を外に引きずり出してやろうと思っていた。
しかしママは少しも動ぜず、ニコニコ笑っている。

「承知いたしました。でも、アボカドジュースは
ちゃんとメニューに書いてございますよ」

ママは男の持っているメニューの何処かを指さした。

「何?そんなもん何処に・・・あっ!」

男はメニューに顔を近づけて絶句した。
ウヒャヒャッ、ざまあ見ろ
アボカドジュースはあったんだよっ!
私はとても愉快だった。

「アボカドジュースでよろしいですか?」

男は苦々しい顔をして、もういいよとばかりに
ママにメニューを返した。

「ホットコーヒーにして」

小さい声でボソッとそう言うと、
つまらなさそうに横を向いた。
カウンターに男が二人離れて座っている。
一人は水割りのグラスをじっと見つめている
孤独な医者。
もう一人は、アボカドジュースと言ったくせに
ホットコーヒーを飲んでいる馬鹿。
ママが私の側に戻ってきた。
あの人、ヤな奴だねえと小声で言うと、
ママはふっと悲しい顔をして首をかしげる。
鳶色の瞳が涙で潤み始めているのに気がついて、
私はドキッとした。

「ママ、どうかしたの?」

慌てて声をかけると、
ママはスーッと私に顔を近づけた。

「あれを見て・・・」

囁くような小さな声でそう言うと、
ドアの方を目で指した。
いったい何が?と思いながら目をやった瞬間、
いきなりブアッと全身の毛が逆立った。
何と驚いたことに、
ドアの枠にはめ込んである大きな飾りガラスに
ベッタリくっついたたくさんの顔が、
目をキョロキョロ動かして
店の中をのぞいているのだ。
誰が垂れたのか、顔と顔の隙間を縫う様に、
ガラスの表面をヨダレが流れていく。
ゲッ気持ち悪りぃ・・・吐きそう。

「な、何をしているのかな?あの人達」

口を押さえた為か恐怖のせいか、
私の声が恥ずかしいくらい裏返る。

「恨んでるのよ」

ママの声はとても小さいのに、
地の底にまで響きそうなくらい重く響いた。

「恨むって、誰をさ・・・」 

その後の、まさか私じゃないよねの言葉を
ゴクリと飲み込んだ。

「あんたじゃないわ安心して」

ママは私の不安がわかったのか、
フッと笑って軽く首を横に振った。
そしてカウンターでのんびりコーヒーを飲んでいる
アボカド野郎を目で指した。

〜つづく

『ハレルヤ』youtube宣伝フラッシュ

『ひとでなしの倫理』youtube宣伝フラッシュ

『闇の中の住人』youtube宣伝フラッシュ


   ・・・・・・・私サイトへのリンク・・・・・・・

ハレルヤ公式サイト

ひとでなしの倫理

ハレルヤ

ロバの耳

FC2が見れない時の別荘
2008.03.04. (18:51) 小説 文学 / TRACKBACK(-) / COMMENT(-) /
ハレルヤ

Copyright © 2004 Powered by FC2 All Rights Reserved.
Photo by Wisteria Field  Template by lovehelm